まだ厳しい暑さが残る中、静岡リーグ決勝戦が始まろうとしている。
今回、前回優勝の林以外は、決勝戦が初のフレッシュなメンバーとなった。
戦い前の心境を聞いてみた 。
1位通過 白澤 宏臣プロ
いつもは勝ちたいという思いがあまり無く、楽な気持ちで打っているのだが、トップ通過での決勝。このチャンスはものにしたい。
普段お世話になっている先輩方に自分の麻雀を見てもらいたい。
2位通過 山田 優駿プロ
前日は遠足気分でワクワクしてあまり眠れなかった。
前回中部リーグで140P叩いて絶好調です。
中部本部の応援してくれている仲間のためにも頑張りたい。
3位通過 林 俊宏プロ
リラックスして決勝は堂々と打とうと思います。
4位通過 魚谷 侑未プロ
初めての決勝の舞台ですが自分らしく、精一杯打ちます。
1か0かのつもりで臨みます。
5位通過 高木 宏昌さん
静岡リーグには、特別な思いがある。
100%とは言わないが60%の力を出す準備はしたつもりなので、自分のいつも通りの打ち方で焦らないように臨みたい。
初決勝卓の面子は、淡々と話す中にも緊張と決勝にかける想いが言葉の節々に感じられる。
前回優勝者の林だけがリラックスしている雰囲気だった。
1回戦(起親から、白澤・高木・林・魚谷)抜け番:山田
東1局、親番の白澤は手が震えている。相当なプレッシャーの中、白澤の第一打の を林が仕掛ける。
普通なら手が縮こまってしまいそうなものだが、白澤は を重ねて次巡ドラ切りリーチを敢行。
林のテンパイ打牌の を打ち取る。
この7,700には緊張感を打ち払う白澤の強い意志が感じられた。
その後は細かい場が続き、迎えた東4局。
親の魚谷が先制立直。
            リーチ
しかし、白澤も無筋を切り飛ばし追っかけ立直。
            リーチ
白澤がツモアガリ。2,000・4,000。
南1局、親番の白澤がメンホンをアガリ。大きくリードを広げる。
1本場、林の3巡目ドラ暗刻リーチ。
            リーチ
終盤、16巡目にツモアガリ。
南2局、ここまで我慢の展開が続いた高木さん。親番を迎えチャンス手が入る。
四暗刻だ!
しかし残念ながら1人テンパイで流局。
その後、魚谷が2局連続の早アガリ。
オーラスは、高木さんの7,700のアガリで終局。
結果は、白澤の独壇場となった。他家は手が入らずスピードでも追いつけない。白澤1人が好調だと感じた。
1回戦終了時
白澤 予選P40,0 +30,4/+70,4
山田 予選P30,0
林 予選P20,0 ▲ 6,9/+13,1
魚谷 予選P10,0 ▲ 4,6/+ 5,4
高木 予選P 0,0 ▲18,9/▲18,9
2回戦(起親から、高木・白澤・魚谷・山田)抜け番:林
東1局、高木さんが14巡目にドラの 西を暗刻にしてのリーチ。
            リーチ ドラ
同巡に、魚谷がメンホン七対子をテンパイ。
            
山田も同巡にテンパイ。
            
白澤が親の高木さんの現物 を切り山田がアガリ。
白澤はこの放銃でバランスを崩す。これを立て直せないままこの半荘を終えることとなる。
南1局、親の高木が九連宝燈1シャーテン
            
しかし、7巡目 のチーテンを取る。
要牌は食い流れなかったが、鳴かないで欲しかった。
山田が500、1,000のアガリ。
南3局、親の魚谷が形式テンパイで粘って連荘。そこから爆走する。
ドラ単騎リーチをツモアガリなどの力強い麻雀で、4連続アガリ。
魚谷のダントツ1人浮きで終局。
2回戦終了時
白澤 ▲22,1/+48,3
魚谷 +42,6/+48,0
山田 ▲ 5,9/+24,1
林 +13,1
高木 ▲14,6/▲33,5
3回戦(起親から、高木・魚谷・林・山田)抜け番:白澤
微差の首位の白澤が抜け番の3回戦、魚谷が気合いの連続トップ。
白澤を交わし、魚谷が首位に躍り出る。
3回戦終了時
魚谷 +13,9/+61,9
白澤 +48,3
山田 + 6,4/+30,5
林 ▲ 7,0/+ 6,1
高木 ▲13,3/▲46,8
4回戦(起親から、林・高木・山田・白澤)抜け番:魚谷
5回戦を抜け番としている高木さん。
ここで大きく浮かないと勝ち上がりがかなり厳しくなる。
しかしいつも通りの麻雀を打つ。非常に好感のもてる対局であった。
2回戦に大きく崩れた白澤。抜け番中に気持ちを切り替えたか。
2、3回戦を連勝している魚谷の抜け番中に転ぶわけにはいかない。
アガリを重ね懸命に食らいつく。
ここは林が意地のトップで終局。
4回戦終了時
魚谷 +61,9
白澤 + 8,5/+56,8
林 +14,6/+20,7
山田 ▲26,9/+ 3,6
高木 + 3,8/▲43,0
5回戦(起親から、山田・林・魚谷・白澤)抜け番:高木
東1局から西家の魚谷が仕掛けていく。配牌。
            ドラ
六巡目、 をチーした形は、
            
ここからツモが効きアガリに結び付ける。
         チー  ツモ
南2局にも魚谷に染め手が入る。
ヤミテンを選択。5,200の出アガリ。
その後は手を組まざるを得ない3者と、早いアガリで局を進めたい魚谷。
軍配は魚谷に上がる。3者はスピードで追いつけない。白澤は浮きを確保出来ずに痛恨の3着。
5回戦終了時
魚谷 +21,6/+83,5
白澤 ▲ 6,9/+49,8
林 + 6,3/+27,0
山田 ▲21,0/▲17,4
高木 ▲43,0
ここで高木さんが敗退となった。
山田は4回戦、5回戦と連続でラスを押しつけられる苦しい展開。
林は何とか踏みとどまり最終戦に臨みを繋げた。
白澤は予選ポイントのリードも無くなり、ライバル魚谷に大きく離された。追走一番手ながら普段の稽古不足が懸念される。
逆に、魚谷は当面のライバル白澤を沈めて価値あるトップ。抜け番を挟み3連勝と勢いづく。
最終戦を残し30P以上離し現状首位である。
そして、麻雀の怖さを改めて思い知らされる最終戦。
最終戦(起親から、林・白澤・山田・魚谷)
1局目からドラマティックな展開。南家・白澤。
            ドラ
北家・魚谷。
            
白澤7巡目。
            ツモ
ここから、 を切らずに のペンチャンターツを外す。
魚谷10巡目に を仕掛けて1シャンテン。
         ポン  
しかし、このポンで白澤にテンパイの が流れ、リーチ。
            リーチ
魚谷は白澤のリーチに無筋を引かされ撤退。
親の林も立直を受けてからテンパイなのだがしっくり来ない。
ドラ表示牌の 待ち。 を押し、脇からこぼれるのをひっそり待つ。
            
終局間際、17巡目に白澤が力強く牌を引き寄せる。3,000、6,000。
このアガリにより順位点込みながら魚谷に一気に肩を並べる。
次局の親の白澤に注目が集まる。白澤配牌。
             ドラ
ドラトイツの好配牌。
しかし魚谷も負けていない。
            
魚谷はツモ牌の巡りが良く4巡目1シャンテン。
            
5巡目に を引き、 を暗カン。
しかしここから長引く。13巡目に を引きリーチ。
         暗カン   リーチ
白澤もやっとのテンパイ。そしてリーチ。
            リーチ
まさに勝負所。この局の結果が優勝者を決めると言っても過言ではないだろう。観戦者にも力が入る。
1シャンテンの山田が放銃。
河には が放たれていた。
「18,000」
この土壇場、開局で追いつき、次局で振り切った。
2局で30ポイント差を捲り一気に突き放す。
捲った瞬間対局者、会場の空気が変わった気がした。
南場の親でも白澤が再びの18,000。
この勢いのまま走り続ける。どこまで行くのか。5本場まで積み上げ、最後は山田のアガリで親が落ちた。
南3局、最後まで諦めないという意思が見える山田の3連続アガリ。
しかし大勢に影響はない。3本場で白澤がピンフをアガリ。
最終局、魚谷が7巡目ホンイツのポンテン。
         ポン  ドラ
山田が小四喜の1シャンテンまで行くも、白澤が自らの手で優勝を決めるピンフをアガリにて終局となった。
最終戦終了時
白澤 +58,1/+108,0
魚谷 ▲27,6/+ 55,9
山田 +12,5/▲ 4,9
林 ▲43,0/▲ 16,0
高木 ▲43,0(五回戦敗退)
「運が良くて優勝出来た」と謙遜していた白澤。
白澤が最終戦で見せた逆転劇はなぜ出来たのだろう?なぜ優勝出来たのだろう?
このコメントにその答えを見た気がする。
「この結果に怠慢することなく、課題はまだまだ有りますので変わらぬ御指導をよろしくお願いします」
麻雀に対し正直に向き合う。手牌に溺れることなく、局面に状況に焦ることなく、この決勝戦で一番オリたのが白澤だったと思う。
この我慢が優勝への細い道筋を照らす明かりになったのだろう。
彼の人柄がよく出た優勝コメントであった。
(レポート:京平 遥 文中敬称略) |