日本プロ麻雀連盟
第2回ロン2カップ
日本プロ麻雀連盟HOME 日本プロ麻雀連盟のご案内 牌譜データサービス ロン2のご案内 タイトル戦のご案内 インフォメーション プロ雀士情報 雀力アップ
ホームタイトル戦情報 > 第22期 新人王戦

タイトル戦情報

第22期 新人王戦

(文責:天音 まこと)


深呼吸をしていた。
二年前のあの日。

予想外に勝ち残った決勝戦を前にして、とにかく精一杯やるしかないんだ、と自分に言い聞かせていた。

決勝が始まると、思ったよりも手が震えていた。

この状態は、覚えがある。
練習不足の状態で舞台に立つと、決まってこの震えに襲われた。

当たり前だよなあ。
この決勝メンバーの中で、経験値は明らかに私が一番少ない。

しかし、そんな私が優勝した。

唐突だが、「麻雀」には「麻雀ハイ」なるものが、いわゆる「ランナーズハイ」と同じように存在すると思う。
私は、あの日優勝した時と、特昇リーグと發王戦が重なって一日10半荘をこなした時に、似たような「麻雀ハイ」状態になっていた。
役者でいうなら、憑かれたような演技をする状態。
理屈を通り越したような状態だ。

もともと絵を描くように麻雀を打とうと心がけていた。
絵合わせではない。美意識を持った手創りをしたいと今も思っている。
その感覚が、この「麻雀ハイ」状態になると鋭くなるといえばよいだろうか。

最近は息が詰まるような試合を一日8半荘以上打つ機会がないので、この感覚から遠ざかっている。
ちなみに、この感覚に陥った時は、微妙に心地よい。
だから、ハイ状態・・・、はいはい、前置きはこれくらいにして、そろそろ本題に移ろう。

といっても、すでに多くの方が御存知の通り、第22期新人王戦の決勝は、平尾昌邦の圧勝で終わる。

平尾 昌邦



決め手となったのは、1回戦東4局。圧巻の国士無双ツモ。
事実上、この局で勝負はついてしまったと言っても過言ではないだろう。
では早速、再現フィルムスタート。


決勝1回戦 東4局 ドラ



東家 青木胤道  21.000点

配牌
ツモ    
捨牌
最終形



南家 平尾昌邦   39.000点

配牌
ツモ
捨牌
最終形  ツモ


西家 儀間 翔   23.100点

配牌
ツモ
捨牌
最終形



北家 赤司美奈子  36.900点


配牌
ツモ ポン
捨牌    
最終形  ポン

 


誰を責められるだろう。
和了りに向かって一直線の軌跡が万人の目に見える。
後日、赤司は自分のポンが国士をツモらせてしまったと後悔したというが、正直そんな事はないと思う。
この全体牌譜だけを見ると、確かにポンの後に聴牌ツモとなっているが、ポンがなくても残り7枚生きていた二種類の牌だもの。
ただ、もしかしたら、ピンフ形だった儀間に和了りがあったかもしれない。

実は、平尾は予選2回戦でも国士を和了っている。
前の日に一体何を食べたんでしょうねえ〜。

序盤でアガり浮いていた赤司は、和了られた直後は「ふ〜ん役満かあ」と気丈に思っていたという。

赤司 美奈子



しかし、そんな赤司の心に次局、儀間から平尾への11.600移動でヒビが入る。

決勝1回戦 南1局 ドラ



東家 平尾昌邦 71.000点

配牌
ツモ    チー
捨牌   
最終形  チー ロン

 

南家 儀間 翔 15.100点

配牌
ツモ
捨牌
最終形

 

やってしまった、と思ったかもしれない。
儀間は超超々〜攻撃タイプである。
役満でつけられた差を縮めるには攻撃あるのみ、と思ったのか。

儀間 翔



予選は攻撃質が噛み合って、大量得点を叩いてきた。
決勝でそのまっすぐな攻撃が空振りしてきたなと思った矢先の国士無双。
きっと、心に余裕がなくなってしまったのかもしれない。
次局も、その真っ直ぐさから致命的な放銃をしてしまう。

決勝1回戦 南1局 1本場  ドラ



東家 平尾昌邦  82.600点

配牌
ツモ    
捨牌
最終形  ロン

南家 儀間 翔  3.500点

配牌
ツモ チー
捨牌   
最終形  チー

 

この局は、北家の青木から4巡目にの仕掛けが入っている。
その5巡後の儀間の仕掛けになるので、おそらく平尾には少し別の形の聴牌が入る予定だった。
だが無常にも、最初の青木の仕掛けでが入り、儀間の仕掛けで戻ったツモで最も高いテンパイが入ってしまう。
もし同じような手組みで仕掛けが入らず平尾がテンパイに向かっていたとすると、おそらくがロン牌になるが、このも2枚生きなので、たぶん和了っていたであろう。

まさに、牌に憑かれた状態である。
儀間の仕掛けは、これまたちょっとやっちゃったかもしれないが、これだけの点差がつくと、ましてや2回戦勝負と考えるとは止められないのだろうなあ。
ただ一つ言えることは、この振込みで儀間は自分の心よりも赤司、青木の心を折ってしまった。
特に、静かに摸打を繰り返す青木。
この時ばかりは、その表情に雲がかかったように感じた。

青木 胤道

この和了りが生まれた瞬間、私は一度席を離れてしまった。

この一連の3局で均衡が崩れすぎて、あとは普通に打てなくなってしまった3人がいた。
若干の抵抗はあったものの、平尾優勢を揺るがすまでには至らず、淡々と局は進んでいった。


2回戦オーラス、ラス親の平尾が手牌を伏せ、第22期新人王戦は幕を閉じた。



・・・、これじゃダメだ。
こんなに短くては、編集部に怒られてしまう・・・。
なにより、決勝を戦った4人の魅力が伝えられない!

というわけで、話は打ち上げの席に移ることにする。

天音「平尾君、おめでと〜〜〜〜!!」
平尾「ありがとうございます。」
天音「何々、今日最初から狙ってたんだって??」
平尾「ええ、まあ。新人王戦は相性良いんですよ。1年目8位、2年目6位、今年は優勝するぞって思ってました。」
天音「あの国士は、どんな感触だった?」
平尾「二回戦に出和了りですけど一度国士を和了ってて、あれも和了れる感触でした。」
天音「ついに初タイトル。これからの目標は?」
平尾「この結果に慢心せず、次のタイトルを獲ることです。」

現在、池袋「ジャンファイト」で主任を務める平尾。
平尾君についつい砕けた口調で話してしまうのは、二ヶ月に一度くらいの割合でセットを組む間柄でもあるからだ。
自然と、他の選手よりもクセを知っている。
そんなに感情移入もなかったが、平尾君、今日の仕掛けは本手ばっかりだったね。


平尾の横でうつむきながらジョッキを持つ赤司は、現在「さかえ松戸店」「新宿スリーファイブ店」に勤務している。
4年連続女流プロ決勝進出となった赤司は、後期リーグ戦昇級、前期特昇リーグでの奮戦。
23期で連盟に入ってから着実に歩を進めている。

昔、派遣で銀行業務をしていたが、もともと好きな接客業であり雀荘勤務が合っていると、麻雀の世界へ。
今は働いているところ共々、麻雀の世間イメージを少しでも良くしたいと奮闘中である。
彼女から大きな目標を聞いた。
法学部出身で法律に明るいこともあり、麻雀を縛る古い法律を将来少しずつ変えていければ、と思っているそうだ。
芯のしっかりした女性である。頼もしい同士が育っているのだと嬉しくなってしまった。

また、彼女が連盟に入った動機が面白かった。
もともと佐々木寿人プロを目標にしており、彼が連盟に入ったのでそれならば、というわけだ。
寿人プロはアマチュアの頃から名前が売れているが、連盟に入ったのは22期である。
その影響がすぐ23期に表れているあたりが、寿人プロの存在感を示す。
そして、こうやって大きくなっていくつながりの世界。
麻雀に懸ける皆の思いが、この世界で糸を紡いでいくのだなぁと感じた。

最後に目標を聞いてみると、
「タイトルを獲りたいっていうのはもちろんなんですけど、ホームページでレポートを書いてみたいです。」という答え。
丁度横にいた編集長は「それなら、ぜひ。」と、すぐに話が決まったようだ。
楽しみがひとつ増えた瞬間だった。

今回は残念だったけれど、この126人の中から決勝にのった事自体凄いのである。
是非これからの活躍に注目していきたい。


やがて、少し離れた席で顔をほんのりと赤く染る青木の隣へ座った。
私は開口一番、「あの失礼ですが・・・」と言うと、青木はみなまで聞かずとも「48です。」とにっこり返してくれた。
そして柔らかく笑って、「ひそかに最年長優勝狙ってたんですけどね。」と言った。

九州本部に所属している青木のひととなりは今日まで知りようがなかったが、彼の腰の重い雀風に好感が持てた。
若い時にプロの道を考えた事もあったが、いろいろあり流れてしまったらしい。
まだアマチュアだった頃、九州本部副本部長であるグランバザール浜上プロの雀荘によく顔を出している時に、一時九州にいた元A1リーガー・森谷健プロと出会う。

競技の世界、また中央の人の麻雀って、こんなに違うのか・・・。

血が騒いだ。
遅咲きを照れつつ腰低く人と接する姿に、名前も相まって、てっきりお坊さんかと思ったのは私だけではあるまい。

「決勝は、感覚がズレました。」
確かに、1回戦東3局、違和感いっぱいの放銃をしている。

決勝1回戦 東3局 ドラ



南家 青木胤道  29.000点

配牌
ツモ ポンチー
捨牌      
最終形  チー ポン

 

西家 平尾昌邦  29.000点

配牌
ツモ ポン
捨牌   
最終形  ポン チー ロン

 

私はこの時、平尾の後ろで観戦していた。
仕掛けた青木に違和感を感じ、平尾が仕掛け返してシャンポンに受けたとき、青木から出るなと思った。
後で牌譜を見直して、違和感の元がわかった。
多分、これが決勝戦の怖さなのだろう。
彼は普段、このを打たない人なのだ。
決勝戦の緊張の中で、自分のリズム・感覚がズレてしまったのだろう。
それ以降は、タイトル欲というより、自分の納得できるように打とうと心がけたと話す。

「今年は無理ですが、来年あたりから中央のリーグ戦にも参加しようかと。大変だけど、こっちに来て、いろいろな方と対局して、視野を広めたいと思っています。」
48歳。まだまだ元気。生来の負けず嫌いと探究心が、彼を衝き動かす。
現在彼は、「ロン2」を精力的にプレイしている。
「その為にパソコンを買いました。いい修行の場です。」
本当に頭の下がる思いになりました。


宴席の隅で静かに体を丸めていた儀間を、私は連盟入りする前から知っていた。
2年前まで水道橋の雀荘で教室をやらせていただいていた時、彼はその雀荘にバイトで来ていた。
その当時は、打牌の強い子だなぁという印象だった。
2年前に一度連盟を受験するも不合格。昨年再受験、成長が認められて合格となった。
彼を見ていると、良くも悪くも真っ直ぐだと思った。雀風を尋ねると、「攻撃型」と即座に返る。
「というよりも、守りに入ると弱くなる。人生も守りに入ると、もろくなる気がするから。」
と言う。続けて、
「でも連盟に入ってから麻雀が少し硬くなったと思います。行き過ぎが少なくなった」

えっ???
思わず噴出しそうになるが、でも彼らしい答えだ。
「今日はいい経験になりました。今年は初めてだったので、あと2年で獲れたらいいなと思います。いつかタイトルを獲って、自分で雀荘をやれたらいいなと思っています。決勝卓まで残れた事で自信につながりました。」
終わった後、4人の中で一番ケロッとしているように見えた。

予選の段階での爆発力は目を引くものがあった。
何故かといえば、彼だけなのだ。予選で大きいラスを引いているのに決勝卓に残ったのは。
これに防御力が備わったとき、もっと大きなステージに進出してくるだろう。



オリンピック、参加する事に意義がある。新人王戦、参加することに意義がある。
一緒にする訳ではないが、今回決勝に残った4人にとって、まずは予選7回戦を突破して決勝戦を経験したということが、結果に関わらず、これからの大事な糧となると思う。

昨今は小学生の成績表が3段階になり、かけっこでも1等2等などは存在しない。
絵にしても金賞も銀賞もなく、平等に並べてあるらしい。

反論を承知で言うが、競争をして何が悪いのだろう。
優劣を付ける事で、何が困るのだろう。
競争のないところには、努力もなければ目標もない。それによって得られる満足も自信もない。

新人王戦に限らず、タイトル戦は、いきなり高すぎる目標を持つよりは、少しだけ頑張れば手が届くところに目標を置くことをお勧めする。



打ち上げも一段落、平尾が大きなカップの箱を見ながら困ったように、
「天音さん、僕もう帰ってもいいんですかね?」と聞く。
「う〜〜ん、主役なんだからさ、一次会は最後までいないと駄目よ〜。」

たぶん、まだ実感が湧かないんだろうな。
じわじわくるのだ、あれは。

私はあの日、大きなカップを持って帰るため、電車ではなくタクシーに乗った。
携帯をチェックをすると、たくさんのお祝いメールが届いていた。
決勝を採譜してくれた市川さんのメールもある。

急激に、頬を涙がつたう。
周りのおめでとうが、胸を熱く熱く締めつけた。

この夜、平尾の目には、普段見せることのない輝きが宿った。


後列 左から 3位:青木 胤道 準優勝:赤司 美奈子 4位:儀間 翔
前列 優勝:平尾 昌邦






( 文責:天音 まこと 文中敬称略 )

 
ページトップ
麻雀格闘倶楽部 好評稼働中!
GyaOバナー白
ALRAN
麻雀格闘部呂倶
日本プロ麻雀連盟メールマガジン
トップページ牌画の利用について引用・リンクについて広告についてよくあるご質問お問い合わせサイトマップ
日本プロ麻雀連盟
Copyright 1997-2010 Japan Professional Mahjong League. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.
ma-jan.or.jpの記事・写真等の無断転載はお断りします。