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タイトル戦情報

第21期 新人王戦

 


予選が終わり、決勝卓のセッティングが終わるまでしばしの休憩時間。スタッフ達は、せわしなくパソコンの準備をしている。

「時代は変わったな・・俺らの頃は、あんなの無かったもんな・・」

6年前、予選を2位で通過した私は決勝を前に自分でも驚くほど落ち着いていた。
「滝沢(和典、現王位)もやっつけたし、大体俺はただ一人のBリーガーなんだから・・」
余裕があったわけではないが、やることはやってきた自負とプライドがそうさせていた。
そして決勝戦、今から見ればかなり荒かったと思うが、2回戦オーラスの親を迎えるまで、とにかくよく攻めた。打牌はほとんどノータイムであったし、平和ドラ3なんかも平気で曲げていた。
「あの頃は強かったんだな」
自分の現状を思うと自然にそんな言葉が浮かんできた。

気がつくと、上村が横にいた。
「絶対勝てよ」
「はい」
適切な言葉とは思えないが、他の言葉も見当たらなかった。上村も研修生の時の私の教え子であった。

決勝卓のセッティングも終わり、選手が卓に着いた。
次第に会場のざわつきも消え、静かに決勝戦が始まった。




1回戦
(起家から仲田・上村・寺戸・石橋)

静かな立ち上がりであった。石橋が10巡目に、

 ドラ

このテンパイ。直前に寺戸が切ったに待ちを合わせた。上村が合わせるようにを切り決着が着いた。
安手だが先制できたことに気分が悪かろうはずもない。ここも石橋が勝ってしまうのだろうか・・



石橋 薫



石橋の本職は自営のシステムエンジニアで現在42歳。学生時代に将棋で全国3位になった経験があるそうだ。
この世界に入ったのは遅いが、ただ今絶好調の男である。リーグ戦は連続優勝、第11期チャンピオンズリーグも制した。
そのチャンピオンズリーグの決勝で手も足も出なかったのは私である。その時感じたのは、とにかくやりづらいということであった。リズムにまるっきり乗れずに負けた感じであった。まあ、ここで負けた時のグチを言っても仕方がない・・話を決勝に戻そう。

点棒は小動きの中、東3局を迎える。ここまで静かにしていた親の寺戸の配牌がこれ。

 ドラ

ホンイツ好きの私としてはヨダレが出そうな配牌である。寺戸がヨダレを垂らしたかどうかはわからなかったが、寺戸もホンイツに向かって、7巡目には、

 チー

とテンパイした。この後14巡目までツモ切りが続き、このまま流局かと思われたが、決着は突然訪れた。南家石橋の手牌、

 ポン

寺戸の切ったをチーして打。寺戸の初アガリか・・・「ロン」・・・ん、寺戸ってこんな女性声だっけ?場を見ると、手を倒していたのは仲田だった。



を押さえきっての今テンであった。石橋の切りに疑問を感じないでもないが、現実に助かったのは石橋であって、やられたのは寺戸。こういう時は助かった石橋にツキが回ってくるものだが、はたして・・

東場は点数的には静かに終了した。だが、こういう展開の時ほど南場は荒れるものだ。
そして、南1局にそれが現実となる。最初に動きがあったのが7巡目。南家上村が先制リーチを打った。

 ドラ

カンは決して良い待ちではないが、混戦を抜け出すべく決意のリーチであろう。だが、厳しい言い方をすれば、形で打ってしまったリーチにも見える。今は東1局ではない。南1局なのだ。

次巡、寺戸が追いかける。しかしこちらも万全ではない。



は1枚切れで、入り目が出アガリが利かないとはいえ、この手に上村のリーチをかわすだけの力はあるのだろうか。寺戸も戦いが終わった後でこのリーチを1番悔いていた。
「・・小場の展開にじれて、ダメなリーチを打ってしまった。あれが敗因だと思います・・」




寺戸 孝志



寺戸は名古屋在住の27歳。普段は市場で働いている。静岡リーグにも参加している彼の勇姿を見届けようと、最後まで多くの仲間が応援していた。
いつも思うことだが、こういうタイトル戦やリーグ戦は地方在住者の方が賭ける思いは強い気がする。それは会場に来るまでのエネルギーが余計に必要だからだと思うが、真のところは私にはわからない。
2軒リーチを受けた親の仲田がツモってきたのが。手牌は、

 ツモ

仲田の選択はツモ切り。これが正解なのかどうかは分からないが、迷うことなく切ったのには感心させられた。次巡、絶好のを引き入れると、さも当然かのように追っかけた。
掴んだのは寺戸。ならばツモ和了りだったが、それは切るしかないであった。
予選を立派に戦い抜き決勝に進んだ寺戸であったが、彼の新人王戦は事実上この局で幕を閉じてしまった。

続く1本場、北家石橋は5巡目にイーシャンテン。

 ドラ

次巡のツモが。まだ巡目が浅いこともあり、を落としてホンイツへ向かう。これがうまくいき9巡目にはこのテンパイ。



一方、親の仲田もイーシャンテン。



10巡目のツモがだったのは流れが向いている証拠か。
「ツイている時は素直に打てばいいんだよ・・」頭にこんな言葉が浮かんできた。
「そうだよな・・」仲田の手牌だったら何を切るのが素直なんだろう。多少ひねくれている私でもを切っての即リーチに思えた。前局の和了り、親であること、すでに10巡目ということ、を落とす前にテンパイが入ったこと・・。
しかし、仲田はを落として石橋に8.000を放銃してしまう。これが麻雀の難しいところである。流れが向いたと思い、高目にもっていこうとすると、それが落とし穴だったりする。
仲田は「リーチだったら絶対打たないんですけど・・」と語っていたが、そういう問題でもないように思う。これが勢いを失うきっかけにならないとは限らないからである。

痛恨の放銃をした仲田であったが、南2局、南3局1本場と立て続けに寺戸から和了り、ほぼ失点を取り返してしまった。
そういえば仲田はこんなことも言っていた。「・・でも、放銃したことは別に気にしてません。」・・私も見習いたいものだ・・

そして迎えたオーラス、仲田41.400、石橋38.700、上村31.800、寺戸8.100と仲田、石橋の一騎打ちの様相。上村も2回戦に向けて浮きをキープしたいところだ。

親の石橋の5巡目、早くもイーシャンテンに辿り着く。

 ツモ ドラ

打と石橋はしたのだが、次巡にツモとくると今度は打とペンチャンを落としにかかる。プレッシャーからなのか、方向性が曖昧に感じる。

一方トップ目の南家仲田は、9巡目にこのテンパイ。



和了ればいいのだから、超攻撃型仲田でもさすがにダマ。石橋も10巡目にはイーシャンテンに戻り、



と方向を見出したようだ。動きがあったのは12巡目、石橋は鳴いてしまう。

 チー

「これで、仲田の和了りだな・・」多分石橋はここまでこうやって勝ってきたのだろう。ただここまでは、自分の方が優位に立っていたはずである。今は優位ではない。仮にこの手、で1.500を打って誰がダメージを受けるだろうか。石橋の焦りを感じずにはいられなかった。
「来るな・・」そう思った瞬間、仲田はツモ切りリーチにいった。この間合いは素晴らしい。結果は見るまでも無かったし、時間も掛からなかった。一発ツモで勝負は決した。

1回戦終了時
仲田 +27.4P
石橋 +8.7P
上村 ▲4.2P
寺戸 ▲31.9P






最終戦を前に、しばしの休憩。
本部席に伊藤優孝がいた。私は伊藤に近づき、「弟子が勝ちそうですね。」と声をかけた。
「いや紺野な、違うんだよ。俺は師匠なんかじゃないんだよ。ただ、鍛錬の場を提供しているだけなんだから・・」いいネタを拾おうと振った私にとって意外な答えが返ってきた。
「だけど相当ハードだぞ。漢塾は。」その言葉には重みを感じた。仲田の精神力の強さはそこで培われたのであろう。


 
 




2回戦
(起家から石橋・寺戸・上村・仲田)

並びが出来ての最終戦、他三名は仲田を沈ませることが優勝への最低条件となった。

東3局、親の上村がドラを重ねてイーシャンテン。

 ツモ ドラ

配牌から七対子に絞っての手筋であったが、ここで上村は1枚切れのを残して、生牌のを切り出す。そうすると、そのが活きて9巡目にテンパイを果たす。

 ツモ

捨て牌にがあるが、仲田を沈ませたい状況だけにそれはあまり関係なかろう。1枚切れのか、生牌のか・・・この瞬間はが1枚、は3枚山に残っていた。上村がそんな事を知る由も無いが・・
「リーチ」上村が曲げたのはであった。
「よしツモれ」やはりどこかで上村を応援している自分がいた。



上村 慎太郎

 

上村は大学を中退し、今は高田馬場にある雀荘を切り盛りして生活している。私にも経験があるが、店を自分でなんとかしようとしたら、時間はいくらあっても足らなくなる。上村もたまに会うといつも「休みがなかなか取れなくて・・」と言っていた。そんな中で出てきた新人王戦なのだから、私は結果を残して欲しかった。
親からリーチを受けたとはいえ、仲田も石橋もそう簡単には引き下がらなかった。石橋は13巡目にテンパイ、14巡目に受け変えてこの形。



仲田もドラを押さえつつイーシャンテン。

 (は安全牌)

しかし、お互いにここからが動かない。上村の手も流れてしまうのか・・
17巡目、上村がツモ切ったのが。仲田の手が止まる。「チー」動いた。どっかで見たような光景が目の前を流れた。
こういう時の結果は決まって・・・「ツモ。6.000オール」「だよな」
上村のツモ筋にはいなかったが、仲田の鳴きでツモらせてしまった。
こんな時、動いたほうが得か損かと考えたら動いたほうが得だと思う。しかし良いか悪いかと考えたら悪い気がする。自分でも何を書いてるんだかと思うが、そういう事なんだろうとも思う。なんにせよこの6.000オールで上村優勝の形は出来たはずであった。

出来たはずの形を仲田は1局でまたひっくり返す。1本場の18巡目

 ドラ ロン

四者テンパイの中で、掴んだのは上村。親権を維持する為に仕方が無いようにも思えるが、まだ東場であったことや、が通ってない牌だったことを考えれば、オリの選択もあったのではないだろうか。結果的にこの放銃が効いてきてしまう。

南1局、親の石橋にオバケが入る。

 ドラ

これが配牌でツモが、あっという間に



上家の仲田の手も石橋ほどではないが入っていた。



6巡目にを引くが、無論ツモ切り。石橋はで鳴いて打。本当はこの鳴き方は疵なのだが、(私ならで鳴いて打、もしくはスルー)仲田は次巡に掴んだを打ってしまった。決着までのあまりの短さに状況を把握できなかったが、並びが一変した。

さて、ここで得点状況を1度整理しよう。寺戸は圏外、3人の争いである。
現在の持ち点が仲田14.500、石橋39.200、上村43.800、寺戸22.500。
トータルを計算すると石橋+21.9P、上村+17.6P、仲田+3.9P、寺戸▲43.4Pとなる。この時は石橋、上村の争いと思われたが・・

残り3局。南2局2本場、上村が先制リーチを放つ。

 ドラ

でもいい。和了れれば勝てる気がした。しかし仲田が追いかける。



結果は仲田ののツモ和了。上村がこれを見てどう思ったかは知らないが、私はこれで上村の目は消えたかなと思え、寂しさを覚えた。

南3局、今度は石橋の心を仲田が折る。

 ドラ

8巡目テンパイ直後に石橋からを撃ち取った。大きすぎる6.400。石橋はこの放銃を最も悔やんでいた。

 ツモ

「いつもならもっと早くに切ってしまうのですが・・」仲田のテンパイ打牌はを切るのは今しかないと考えたらしいが、トータルトップならなぜ握りつぶすという選択が出来なかったのだろうか。

オーラス。仲田30.500、石橋30.600、上村40.600、寺戸18.300。

条件はツモ和了で上村1.200,2.300(現実的には1.300,2.600か)、石橋は2.000,3.900、直撃で上村5.200、石橋6.400が必要となる。親の仲田は伏せれば優勝なので、1局勝負となる。

そんな仲田の配牌が、

 ドラ

うん。オリるのは比較的簡単な手牌だ。しかし仲田はそんな観戦者達の考えを覆す。4巡目に行くしかない石橋がを切ると仕掛ける。




仲田 加南

 


「連勝しか考えていませんでした」

そして仕上げたのが、

 ポン 加カン ツモ

勝負を決定付ける3.200オールであった。
こうして、仲田の完勝で第21期新人王戦は幕を閉じた。




優勝:仲田 加南
左から3位:石橋 薫 2位:上村 慎太郎 4位:寺戸 孝志



2年連続の女流新人王となった仲田は、現在渋谷の雀荘で週1勤務する一方、母親という一面も持つ。
「娘は絶対連盟に入れたいんですよ。将来、母娘で活躍できたらいいなとおもいます。」
仲田は男達をなぎ倒して勝ったが結局、母は強しということなのだろうか。

「仲田は漢塾に3年間も通ってトレーニングしていた。その成果を出してくれて、俺はうれしい。」
立場上おおっぴらには喜べないだろうが、伊藤も嬉しそうであった。
「漢塾に参加して、恥ずかしくない麻雀を打とうと心掛けるようになりました。今日は(伊藤が)見守ってくれるかのように見ていてくれたので安心して打てました。ありがとうございました。」と仲田は伊藤への感謝を述べた。
 
 
最終成績
仲田 +45.5P
上村 +7.2P
石橋 +2.1P
寺戸 ▲54.8P



決勝を終えてのコメント

仲田「今日は出だしからすごく調子が良くて、決勝まで行ければ必ず優勝できると思ってました。色んな人からおめでとうと言ってもらい、本当に嬉しいです。」

上村「緊張することもなく初めての決勝という気がしなかった。6.000オールを引いた時は勝ったと思ったが・・」

石橋「未熟なところと良く出来たと思うところがありました。あのがやっぱり甘かったですね・・」

寺戸「決勝までは手が入りポイントを叩けたんですが・・今度は静岡プロアマリーグの決勝があるので、切り替えて頑張りたいと思います。」

 

戦い終わって打ち上げの席、私の前にいた上村が口を開く「なんで負けたかがわからない。負ける気はしなかったんですけど・・」
「力は出し切れたんだろ?」
「はい」
「ということは・・」
「まだ足りないってことですかね」
「・・だな」
「・・ですね」
精一杯戦った教え子にもっと掛けるべき言葉はあったであろうが、上辺だけで言う気もなれずここで会話が途切れた・・

周りのざわつきはいつまでも途絶えることはなく宴は続くのであった。








( 文責:紺野 真太郎 文中敬称略 )

 
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