いよいよ二日目を迎えた。初日は、涼崎が充実した内容の麻雀で一歩抜け出した。
しかし他の四名も、ポイントこそ離されてはいるが、その内容は肉薄しており、巻き返しに期待がかかる。
一日目終了時のポイントは、
涼崎+148.9P 崎見+56.4P 奥村▲42.3P 内田▲59.1P 仲田▲105.9P
となっている。
六回戦(起家から内田、仲田、崎見、奥村 抜け番・涼崎)
東一局
初日▲105.9と大きく沈んでしまった南家の仲田が、6巡目までに
、 とポンしてピンズのホンイツ模様、場をリードする。
これに親の内田が真っ向勝負。
             ドラ
ここからから打 、そして絶好の を引いて打 。
            
高目ツモで親跳の聴牌となる。
12巡目に をツモ切り、仲田がポンして、
   ポン  ポン  ポン  
こちらは倍満の聴牌。
東一局から今日の大激戦を予感させる大物手のぶつかり合い。
この局の結末は、早くからオリていた奥村の手が詰まり、場に激安のソウズで内田に12.000の放銃となった。
和了った内田は昨日の借りを返すべく大トップものにしようと積極的に攻めて、南一局の親番が終わる頃には点棒を5万点台に乗せた。
内田がトップを確定させると、焦点は残り三者による二着争い。

内田美乃里
東一局のビハインドを取り戻していた奥村が二着を取りそうだなと思っていると、南三局、仲田が6巡目にチートイツを聴牌。生牌の 単騎でリーチと出た。
            ドラ
この時の奥村の手牌、
            
一発目のツモは 。現物はなく、 も も生牌。 を切っての手仕舞いは弱いと感じてか、 に手をかけてしまう。裏ドラは 、大きな大きな12.000の放銃となった。
奥村の手は門前で三暗刻またはホンイツにならないと打点が安い。優勝のためにはトップが欲しいところだが、リャンシャンテンということを考えると頭を下げる局面だったのではなかろうか。
オーラスは前局、僥倖の跳満で二着まで400点差となった仲田が1.300で締めくくった。
六回戦終了時
涼崎+148.9P 崎見+41.8P 内田▲7.9P 奥村▲85.2P 仲田▲99.6P 供託2.0P
七回戦(起家から涼崎、内田、仲田、崎見 抜け番・奥村)
東一局
初日トップで折り返した涼崎の配牌は、昨日の勢いはどこへ?といったものだった。
             ドラ
しかし、この手が育つ。4巡目にダブ をポンすると、 も重なりその をポンして9巡目には、
      ポン  ポン  
の一向聴となる。さらに も重なってホンイツへ向かう。12巡目に仲田から をポンして跳満の聴牌を果たした。
   ポン  ポン  ポン  
この時点で は山に残り三枚生きていた。今日も涼崎のものかと思った瞬間、
「リーチ!」の声と共に が放たれた。崎見だ。
            
この勝負、崎見がすぐに をツモり上げた。
点数は700、1.300だが、点数以上の大きな和了りに思えた。
宣言牌の は、当たれば18.000どころか、24.000まである牌だ。崎見の勝負勘の鋭さと、勝ちへの闘志を見ることができた一局であった。

崎見百合
東二局は、仲田がさばいて300、500。
東三局は、内田が早い巡目に手なりの一通をツモって2.000、4.000となった。
東四局、親の崎見が、
            ドラ
から をポンしてチンイツへ向かう。9巡目に をチーして一向聴となった。
      チー  ポン  
この時内田の手は、
            
ここに東を引いて、大物手が見えるが、崎見の仕掛けを丁寧に受けて打 。
次巡、ツモ で一向聴になった。
            
しかし最初に聴牌が入ったのは涼崎だ。
            ツモ
打 で待ちを にとり、マンズなら誰からでも出てきそうなことと、5.200でラスから二着へ浮上するので、堅実にヤミテンに受ける。
その同巡、内田も をポンして聴牌。
         ポン  
そして崎見も を引いて聴牌する。
      チー  ポン  
誰もが和了りたいこの場面は、ひとり絶好のマンズ待ちである涼崎が をツモって2.000、4.000、一気にトップ目まで突き抜けた。
南二局
二日目になってなかなか調子があがってこない崎見に好配牌が入る。
            ドラ
 と有効牌を引き入れ、5巡目にはタンピン三色の一向聴。タンヤオは崩れたものの、11巡目に聴牌してリーチと出る。
            
これを安目ながら一発ツモ。 の裏ドラものって跳満の和了りとなった。
南三局
この半荘ミスなく進めて来たものの、展開が悪くラス目となっている親の仲田にドラの と がトイツの配牌が入る。
3巡目に をポンすると、7巡目にはカン をチーして、
      チー  ポン  ドラ
この は山に薄く厳しいかと思われていたところに、意外にもトップ目の崎見が飛び込んだ。この時の崎見は、
             
仲田の最終手出しが をチーしての打 である。 と が現物であり、この放銃は安易なものに感じた。これで、大接戦。トップからラスまで5.200点差と大接戦で、残り二局となった。
南三局一本場
痛い5.800を放銃した崎見であったが、ドラトイツのチャンス手が入る。
            ドラ
10巡目には、
            
絶好の聴牌が入りリーチを打って出た。次巡、涼崎に役なしドラなしながら聴牌が入った。すると「リーチ」の声が。
            
この勝負、涼崎が を掴んで崎見に8.000の放銃となった。
初日から通してバランスよい攻めを続けていた涼崎だけに、この放銃はもったいないと感じた。
この南三局で、崎見トップ、涼崎ラスの並びができた。
オーラスは、満貫ツモトップの仲田が5巡目平和ドラ1をリーチしツモったが、裏ドラは乗らず、トップ崎見、ラス涼崎で半荘を終えた。
七回戦終了時
涼崎+108.6P 崎見+80.4P 内田▲22.5P 仲田▲83.3P 奥村▲85.2P 供託2.0P
八回戦(起家から仲田、奥村、涼崎、内田 抜け番・崎見)
この半荘は、トータルトップ目の涼崎と沈んでる3人との戦い。
沈んだ3人にとっては、涼崎を沈めてトップをとれば優勝争いに食い込めるが、ラスを引くと足切り候補となるため、非常に大切な半荘である。
3人が選んだのは、足切りを逃れる麻雀ではなく、優勝争いに入っていくための超攻撃麻雀であった。
この3人にはさまれた涼崎は、なかなか先手がとれず、じりじりと点棒を削られてしまう。
オーラスを迎えての4人の点棒は、
仲田46.000、 内田36.600、涼崎21.000、奥村16.400
南四局
現状足切り争いの内田、仲田はどうしてもトップが欲しい局面。
仲田は2巡目に、
            ドラ
から をチーする。このチーは、和了りトップとはいえ、少し焦った仕掛けに見えた。
この仕掛けによって内田はカン三ながら5巡目に聴牌を果たす。
         暗カン   
5巡目ということもあり、リーチに行くかとも思われたが、内田はヤミテンに構えた。これが正解で、トップ目の仲田から三が出て6.800、トップ逆転となった。
南四局一本場
二着目になったものの、3.900を和了ればトップになる仲田が8巡目にダブ をポンした。
すると次巡、内田に聴牌が入ってしまう。
            ドラ
同巡涼崎も、三着でよしとして、 でポン聴をとる。
         ポン  
このポンを見た内田は、すかさずツモ切りリーチを打つ。
このリーチに涼崎は向かっていけず、オリを選択。仲田はうまく回って聴牌をとることが出来て、二人聴牌で流局となった。
この局、内田のツモ切りリーチの判断がなければ、涼崎がさばいて終了であった。前局は丁寧にヤミテンのまま、今局はリーチを打ち相手にさばかせない、この二局から内田の勝負勘の鋭さが見れた。
南四局二本場
まず、14巡目にトップ奪回を目指す仲田がリーチと出た。
            ドラ
このリーチにラス目の奥村が向かっていく。
仲田のリーチ後に二フーロ、最後は単騎選択を正解し、仲田から3.900の和了、三着に浮上した。
      チー  チー  
涼崎は痛い2ラスを引かされ、トータル首位の座を明け渡した。
一方内田は、オーラスでの親番をうまく使い、初日終了時200Pあった差を60Pにまで詰めた。
八回戦終了時
崎見+80.4P 涼崎+68.1P 内田+21.4P 仲田▲68.1P 奥村▲103.8P 供託2.0P
九回戦(起家から崎見、奥村、仲田、涼崎 抜け番・内田)
まさかの2ラスでトータル首位の座を明け渡した涼崎だが、その表情からは、動揺の色は見られず、この後の巻き返しに期待が持てた。
東二局
その涼崎が4巡目に早くも一向聴となる。
            ドラ
ここに をつもり、平和に受ける を外すか、後の手代わりを考えて を外すかの選択を迫られる。
涼崎が選んだのは 切りだった。この を崎見がポンする。
         ポン  
次巡、涼崎は をツモって を打ち、崎見は をツモってきて を打ち、どちらも広い一向聴となった。
さらに次巡、涼崎は をツモると、 を切りリーチを打つ。
            
崎見は、この で少考した後、ポンして聴牌を取った。
この聴牌打牌の で放銃。裏ドラは 。8.000の打ち込みとなってしまった。
崎見は、ドラトイツで、早いリーチの現物待ちになるため、このポンも仕方がない。
しかし、裏が での8.000は大きな放銃となってしまった。
涼崎は次局も1.000、2.000をツモ和了り、点棒を4万点台に乗せた。
この後は、奥村の1.300、2.600のツモ和了りと仲田が奥村からの6.400で、崎見が一人置いていかれる状況となった。
南三局
なんとか着順を一つでも上げたい崎見。
            ドラ
の配牌から2巡目に が重なると、3巡目には をポンする。
         ポン  
4巡目、親の仲田に愚形ながら聴牌が入る。
            
しかし手変わりする牌が来ないうちに巡目が深くなり、崎見の手がまとまってしまった。
13巡目、崎見はドラの を引いて待望の聴牌を果たした。
         ポン  
親の仲田がすぐに をつかんで、12.000の放銃。
仲田は、崎見からついにピンズが余ったことと、 が字牌で唯一の生牌であることを考えると、オリる選択もあったと思う。
しかしトータルポイントを考えると、優勝のためには親番は是が非でも維持したい。仲田にとって、今回のプロクイーン最後の勝負どころとなってしまった。
仲田加南
一方の崎見は一発の和了りで二着目まで浮上、やはり崎見の追い上げる力は脅威であると感じた。
南四局
崎見が11巡目に、高目ツモならばトップとなるリーチを入れる。
            ドラ
このリーチは奥村から での出和了りとなるが、崎見の心境は充分の二着であったであろう。
九回戦終了時
涼崎+107.2P 崎見+91.1P 内田+21.4P 仲田▲103.1P 奥村▲118.6P 供託2.0P
十回戦(起家から内田、涼崎、崎見、奥村 抜け番・仲田)
奥村は、35.600持ちの2着以上ならば足切りは逃れるが、優勝のためには三連勝が絶対条件である。
内田は残り三回戦でトップ2回は欲しいところ。
崎見は涼崎より、涼崎は崎見より、一つずつでも上の着順を目指して、といったところか。
東一局
涼崎が3巡目に をポンして早くも一向聴。
         ポン  ドラ
次巡に をチーして 待ちの聴牌となる。しかしこの 待ちは第一打が のうえドラまたぎであり、簡単に河に放たれる牌ではなかった。
14巡目、抑えていた を重ねた崎見にチートイツの聴牌が入る。
            ツモ
は生牌、 は二枚切れ。崎見の決断は 単騎でのリーチだった。
結果は、崎見が最後のツモで捨て牌にトイツを被らせること無く、 をツモ。
裏ドラが で跳満、大きなリードを得た。
軽い仕掛けは、さばききれなかった場合に大きなダメージを受けることが多いと感じる。
初日の涼崎は、仕掛ければ常に満貫級であった。それだけに悔やまれる一局ではないだろうか。
東三局一本場
8巡目、大きなリードを持った親の崎見に聴牌が入る。
            ドラ
手変わりが沢山あるが、他の3人が崎見のリーチには向かってこれないと読んだのであろう、即リーチを打つ。
しかし同巡に奥村から追っかけリーチが入ってしまう。
そして、崎見の一発目のツモはドラの 。しまったという顔をして、河に置くと、奥村からロンの声が。
            ドラ
一発がついての12.000であった。
自分も、もしこのリーチが一人聴牌で終わるか、もしくは誰かがオリて和了り逃がしをした後にツモ和了りとなれば流れをつかめると感じた。
リードを持った親番だけに、より効果的であり、突き放したかった場面だった。
結果は放銃であったが、崎見の主張が伝わる一局であった。
東四局
12.000を和了った奥村が、親番を活かして、安いながらも三局和了りをものにして、点棒を5万点台に乗せた。
こういったキレのある攻めが奥村本来の持ち味であり、タイトル戦決勝を勝ち切るには必要不可欠な要素なのだが、今回の奥村は得意パターンに持ち込む時期があまりにも遅すぎた。

奥村知美
南二局
前局に和了って親を迎えた涼崎が3巡目に、
            ドラ
で を内田からポンする。この後涼崎は、ドラを引くも二向聴のうちに内田にあっさりと満貫をツモられ、涼崎は親っかぶりでラス目に落ちてしまった。
この仕掛けは、昨日の涼崎からは考えられないものである。
自分が軽い仕掛けを入れると、相手も合わせてさばきに来るケースはよくある。この半荘のトップは厳しく、この局の牌姿も厳しかったため、自分の親番を軽い場にしようという戦術だったのだろうか。
南四局を迎えて、
奥村51.000、内田25.300、崎見23.500、涼崎20.200
このままの並びで終われば、残りの二回戦で誰にも優勝のチャンスがあり面白くなりそうだ。
その南四局の配牌は、内田、涼崎が一歩リードといった感じであった。
4巡目には、内田は
            ドラ
涼崎は、
            
となっていた。5巡目内田はドラの をツモると、なんとツモ切り。これを涼崎がポンして一向聴。圧倒的有利となった。
さらに次巡、内田は をツモるとホンイツへ向かい を切る。涼崎がこれをチーして聴牌となった。
      チー  ポン  
内田は涼崎の二フーロ後に六を引くと、字牌に手をかける。 が重なり を引いて、役なし聴牌をとり、結局 で放銃してしまう。
            
涼崎にとっては、ツモるか、奥村からの和了ならば、崎見にラスを押し付けられるが、この二着浮上の和了りは、大きなものであろう。
内田としては、二番目に望むべき並びで迎えたオーラス。
ホンイツにこだわる理由はさほど無く、三向聴からのドラ切りは、やや不注意に思えた。
十回戦終了時
涼崎+115.4P 崎見+74.6P 内田▲21.3P 奥村▲67.6P 仲田▲103.1P(足切り) 供託2.0P
十一回戦(起家から崎見、涼崎、奥村、内田)
奥村と内田は、二連勝が絶対条件。
崎見は、涼崎より上ならば、最終戦は着順勝負となる。
涼崎は崎見より二つ上の着順ならば勝負ありといったなかで、十一回戦がスタートした。
東一局
親の崎見が を鳴いて、主導権を取りに行く。
すると8巡目、涼崎に役有り聴牌が入る。
            ドラ
ヤミテンに受けていると、10巡目に崎見に二フーロ目が入り、追いつかれる。
      チー  ポン  
そして11巡目には奥村にも追いつかれて、リーチを受ける。
            
このリーチに対して、 を引いた涼崎はノータイムで裏スジの を切って勝負。
次巡も裏スジの をツモ切って、全面対決の構えである。
この戦いの中、崎見はドラの を掴んで、やむなく撤退。
決着は14巡目、内田が奥村のリーチの現物 で涼崎へ8.000の放銃となった。

トータルポイントにゆとりのある涼崎の状況では、オリるという選択をする、もしくは攻めたくても心が弱く、オリてしまう打ち手も沢山いると思う。
そんな中、和了るのは自分、優勝するのは自分なんだ、という気迫と意志を感じる見事な攻めだと感じた。

涼崎いづみ
この後の涼崎は、他家のリーチに手が追いつかず、ノーテン罰符で点棒を減らすものの、東三局二本場にはターツ選択をきっちり正解し、持ち点は4万点を超えた。
さらに東四局にも3.900を和了り、万全の体制。
南一局
親の崎見は、東場では我慢の連続だった。しかしついに親で軽い手が入り、まずは2.900の和了。
一本場でも5巡目にチー聴を入れて、1.000は1.100オールの和了。
続く二本場、ついに配牌でドラがトイツの勝負手が入る。しっかりと最速の聴牌を果たし、タンヤオ三色聴牌の入った奥村から打ち取って、涼崎のトップをまくった。
この後は、内田が自分も優勝争いに食い込むと意地を見せて3.200、1.300、2.600、と連続で和了る。
南三局
その内田は、3巡目にダブ を奥村からポンすると、5巡目には以下の聴牌。
         ポン  ドラ
この早い聴牌に崎見がすぐにつかまって3.900.。内田は三局の和了で、オーラスの親で満貫を和了ればトップ目、という位置まできた。
崎見はこの放銃でトップ目を涼崎に明け渡してしまった。
南四局
親の内田は、なんとしてもトップまで和了り続けなければいけない。
崎見は、涼崎をまくり返さなければ最終戦が厳しい条件になってしまう。
三人とも苦しい配牌をもらう。しかし崎見の第一ツモが で、トップ逆転が見えた。
            ツモ ドラ
その崎見は、3巡目に をポン。しかしその後なかなかツモがかみ合わない。そして、親・内田の捨て牌が濃くなっていく。実際、内田の手牌は、
            
決まれば大きいが、現状役なしの一向聴で厳しい。
崎見は万全を期しており、内田の聴牌に期待する。
涼崎は苦しいながらもノーミスで14巡目に聴牌を入れるも、内田をケアしてヤミテン。
            
18巡目、内田がやっとの思いで形聴を入れると、涼崎の最後のツモは 。
涼崎は優勝へ向けて大きなトップをものにした。
十一回戦終了時
涼崎+158.9P 崎見+94.0P 内田▲32.1P 奥村▲119.1P 供託2.0P
最終戦(起家から崎見、内田、奥村、涼崎)
いよいよ最終戦。トータル三着の内田でさえ涼崎とトップラスでなお13万点差が必要なので、実質は涼崎と崎見の一騎打ちとなった。
崎見の条件は、トップラスなら5.000点差、着順二つ差なら2.5000点差をつけること。
東一局
崎見に先制リーチが入るが、涼崎はしっかりオリて流局。
この後は局面を回していけばいい涼崎が、東一局一本場は300.500、東二局は崎見から1.000、東三局は500、1.000と,思惑通りの展開を作りあげていった。
東四局
ここまで涼崎の理想的な展開だったが、内田がまだまだ終わらせないとばかりにメンホンリーチを打つ。
            ドラ
をツモって4.000、8.000。
南一局
親番は崎見。涼崎にとっては、一刻も早くこの親を落としたい。
崎見は、ある程度の並びは出来ているので、問題は内田をかわせるかどうかだ。
涼崎は、配牌からある を崎見に鳴かせてしまうが、8巡目に以下の聴牌になる。
            ドラ
この時、崎見は、
         ポン  
の一向聴であった。涼崎の勝ちかと思った矢先、涼崎のツモはドラの 。涼崎はこれをツモ切ると、崎見は当然これをポンして、広い一向聴に受ける。
      ポン  ポン  
しかしまだ崎見は、入り方によっては涼崎の当たり牌である が出てしまう形である。12巡目、崎見のツモは絶好の 、満貫の聴牌が入る。
涼崎、ここで崎見に打つわけにもいかずオリ。崎見はツモる指に力が入るが、残念ながら流局。
この局の涼崎は、ギリギリまで攻め、崎見の聴牌が入った巡目にオリ始めた。この土壇場でも、冷静な判断力は生きていた。
南一局一本場
崎見、配牌でドラがトイツで入って期待できたが、涼崎が2巡目で早くも一向聴であっさり1.000は1.300でさばいて、崎見の最後の親は落ちた。
南二局
内田45.800 奥村21.600 涼崎26.700 崎見25.900
崎見は、あと三局で20.000点を稼ぎ、内田をまくれるかどうか。
その崎見、5巡目でチートイツを聴牌して、絶好の 単騎でリーチ。
            ドラ
このリーチに親の内田が飛び込んで3.200。
南三局
奥村21.600 涼崎26.700 崎見29.100 内田42.600
崎見は残り二局で条件を満たすためには、今局に涼崎から3.900クラスの出和了りか満貫以上のツモ和了りをしないと、オーラスがかなり厳しくなる。
まずは親の奥村がドラ単騎で聴牌すると、10巡目に崎見が追いつき、リーチを打つ。
            ドラ
あと一ハン欲しいところだが、この牌姿では一発裏ドラを期待してリーチでも致し方ないか。すると11巡目、奥村のツモはドラの で2.000オールの和了が生まれた。
            ツモ
この2.000オールで涼崎がラスになり、崎見は条件がかなり楽になった。
南三局一本場
奥村28.600 涼崎24.700 崎見26.100 内田40.600
崎見は、このまま涼崎にラスを押し付けたまま内田をまくれば優勝である。
11巡目、崎見に三色の聴牌が入り、リーチ。
            ドラ
このリーチに奥村がうまく回って流局し、二人聴牌。
南三局二本場
奥村30.100 涼崎23.200 崎見26.600 内田39.100
ここでも崎見が先手を取り、12巡目にリーチを打つ。
            ドラ
この手をツモればオーラス1.000点で優勝となる。一巡ごとに緊張は高まるが、ここも無念の流局。親の奥村もノーテンで一人聴牌となる。

南四局三本場
涼崎22.200 崎見28.600 内田38.100 奥村29.100 供託2.0P
ついにオーラス。
親の涼崎は、ノーテンで優勝。
崎見の条件は1.300、2.600ツモ和了りか、涼崎からなら満貫、内田からは3.900、奥村からだと倍満である。
注目の崎見の配牌は、
            ドラ
ドラの がトイツで打点はクリア。あとは和了りきれるかどうか。
第一ツモが で を離し、続いて をツモって打 、そして以下の牌姿。
            
一局勝負の今局に、 、 を鳴ける可能性は極めて薄いが、チートイツの目もある。
しかし、ここからツモがかみあわず、一向聴になったのが13巡目。
            
他の3人が配牌からベタおりになっていたため、場況から山を読むのがかなり困難になっていた。
18巡目、最後は涼崎がきっちりハイテイをずらして、終了。
この瞬間、常にポーカーフェイスだった涼崎から満面の笑みが生まれた。

優勝の瞬間
短いようで長かった12回戦は、すべての半荘が激しい勝負だった。
五人のプロクイーンに懸ける想いがとても深く伝わってきた。特に最終半荘のオーラスは見応えがあった。崎見の想いが優勝条件を満たす配牌を入れ、一巡ごとに緊張感溢れる一局だった。
そして決着が付いた後の涼崎の喜びの笑顔と、緊張から解放された安堵の表情からも、タイトル戦決勝の重みが伝わってきた。
惜しくも二着の崎見は、前年度のクイーンの意地を見せ、最終半荘のオーラスまで見ごたえのある勝負を繰り広げてくれた。
内田、奥村、仲田の3人も充分持ち味を発揮していた。それぞれのプロクイーンを終えて、様々な思いでいると思う。
初の決勝参加となった内田は、3位という結果で終わったが、一年目の新人でここまで活躍できたことが今後彼女の経験として必ず活かされるだろう。
今回、足切りになってしまった仲田からは、「必然的に前へ行かなきゃいけなくなった二日目が、手が入らず何も出来なかった初日よりも闘えていたはずなのにずっと苦しかった。ブレーキがきかなくなりどこから間違いだったかは、今の自分にはわからないがそれを探し続けることが義務だと思っている。」というコメントをもらった。
仲田は新人王戦で、奥村は女流名人戦で、二人ともこの短期間で、決勝戦で勝つことの喜びと惨敗することの悔しさを両方味わった。
喜びも悔しさも忘れずに、今後更なる飛躍を期待したい。
優勝した涼崎は、しっかりとした手順で攻め、苦しいときは冷静に受けて、着々と点棒を増やしていく、充実した内容の麻雀であった。
決勝ともなれば当然気合は入るもの。そして緊張もする。普段の力は中々出せないものだと思う。
そんな中で涼崎は、自分のやってきたことを信じて貫けたことが優勝という結果に結びついたのだろう。
多くの応援団と抱き合い喜びを分かち合っている姿を見て、仲間たちに終始見守られながら闘っていた涼崎は、苦しいときも心強かったのだろうな、と思った。
第5期プロクイーンとなった涼崎いづみ
涼崎「決勝戦は、いつも通りに打てれば良いと思い臨みました。緊張もあり多少バランスが崩れた時もありましたが、精神的には落ち着いて打てていたと思います。一次予選からの参加だったので、長い戦いでしたが、最後に優勝という最高の結果で終われた事は、すごくうれしく思います。また来年も悔いのないように、今後も精進していきたいと思います。」
涼崎プロ、本当におめでとうございます!

前列左から 優勝:涼崎いづみ 2位:崎見百合
後列左から 3位:内田美乃里 4位:奥村知美 5位:仲田加南

(文責・優木
美智 文中敬称略)
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