開始前、
5 人の女性たちの様子を観察してみる。
二階堂、平岡は非常にリラックスして見える。市川、桑原は初の決勝からかやはり緊張感あふれている。
女王・清水は以外にも顔つきがやや堅いか。
1回戦 市川vs桑原vs清水vs二階堂 抜け番・平岡
東1局 ドラ 裏ドラ 親・桑原
市川が手なりで 11 巡目リーチ
            
17 巡目に をツモあがり、
2000-4000。
まず市川が先手をとった。桑原、市川ともに初の決勝だが、市川の緊張感はいい意味の緊張であり、桑原の緊張感はマイナスに作用してしまう。それが東1局2人の麻雀にあらわれていた。
12
巡目、親の桑原は西家・市川の をポンして、市川にドラの を流してしまっている。
本来なら桑原がこのドラ をツモり、七対子、ドラ2をテンパイしていたはずだった。
桑原には早く本来の自分を取り戻して欲しい。
その後、小場で場が進み、オーラス。
桑原 25600 清水 31700
二階堂 30000 市川 32700 の大接戦を、市川が 1300 をあがり、大きな初トップをものにする。
1回戦 市川
+34.0 清水 +11.7 二階堂 ▲ 10.0 桑原 ▲ 35.7
2回戦 市川vs桑原vs清水vs平岡 抜け番・二階堂亜樹
東1局 ドラ
南家・桑原が 13 巡目テンパイ
           
がポンされていることもあり、即リーチ。
桑原も半荘1回を終え、ようやく本来の自分らしさを取り戻しつつあった。この手はあがれるなと私は思った。
西家・平岡はこのとき、
         ポン  
のテンパイ。桑原のリーチ宣言牌の をポンして、
      ポン  ポン  
に待ち変えするが桑原の一発ツモの を喰い下げ、そのまま放銃。
ただこの放銃は前に進んでのものであり、必ずこの点棒は戻ってくるな、と思った。
それより喰い下げられた桑原の方が嫌な感触だっただろう。
しかし東2局、平岡が消極的になる。
東家・桑原が3巡目に をポン。 ドラは
         ポン  
かなり苦しい仕掛けである。
平岡はこの時、
            となり、
12 巡目のツモ で、打 、次のツモ で、打
このとき、桑原はの捨て牌は、
     
・ ・
     
・ ・ ・ ・ ・ ・ はツモ切り
で、手牌が
         ポン  
平岡がいつもの平岡らしく打 としておけば、
            
となっており、先程の放銃が生きるところだった。が、この局は結局、桑原の一人テンパイとなる。
平岡は一昨年のプロクイーンで2位となり、本人も相当に悔しがっていた。今年、私の予想ではモチベーションでは平岡が一番高く、2番手が二階堂亜樹だなと思っていた。
平岡は以後、東場に出番がなくなってしまう。しかし不調者にも不調者しかあがれない幸運が南1局に舞い降りる。
この局は平岡が生き返るための1局となった。
南1局1本場 ドラ
西家 平岡の配牌が、
            
この配牌が 11 巡目までに
            ツモ となる。
途中、チャンタ三色を狙ったため、 を切っている平岡。
場に が3枚、 が2枚切れているため仕方なく打 の 単騎。平岡が調子が良ければあがれないところだが、不調になっているため次巡ツモが 、怪我の功名のようなあがりが生まれる。
そして平岡のいいところは1つのあがりを必ず次のあがりに結びつけるところである。
南2局0本場 ドラ カンドラ
南家・平岡
         アンカン   ロン
2局連続のあがりで一気にトップ目に立ち、2回戦を制する。
2回戦 平岡
+39.5 清水 +17.7 桑原 ▲ 16.7 市川 ▲ 40.5
3回戦 市川vs桑原vs二階堂vs平岡 抜け番・清水
勢いづく平岡は3回戦も東1局、二階堂とのリーチ合戦に勝ち波に乗る。
その平岡に待ったをかけたのは二階堂。
東2局0本場 ドラ ウラ
            
を平岡のリーチ宣言牌 で討ち取り、主導権をとる。
あがって迎えた東3局0本場の親番で、二階堂の配牌。ドラは
             
桑原の一打目の を平然とスルー。手材料に恵まれている親番でこの を仕掛けないところに二階堂の落ち着きを感じる。
3回戦 二階堂
+40.3 平岡 +19.3 桑原 ▲ 14.1 市川 ▲ 46.5
4回戦 桑原vs清水vs二階堂vs平岡 抜け番・市川
二階堂がここからエンジン全開かと思われたが、ストップをかけたのが女王・清水。
に変化させ、見事、二階堂から出あがる。
1、2回戦とも惜しいところでトップを逃していた清水だが、はじめて先手をとった。他の4人と清水の違いを問われれば、点棒を持って勢いに乗ったときにしっかりとツキを落とさず攻めきれるところだろう。
二階堂はこの放銃から崩れ、この半荘、箱を割ってしまう。
4回戦 清水
+43.7 桑原 +19.8 平岡 ▲ 4.5 二階堂 ▲ 60.0
5回戦は市川が取り、初日を終える。
初日合計(5回戦まで) 平岡
+47.2 清水 +27.4 市川 ▲ 14.6 二階堂 ▲ 15.3 桑原 ▲ 46.7
初日を終えた感想は、平岡が一番自分の麻雀を打てており好感が持てた。状態的には市川がツキを見方につけていた。桑原が自分を見失っており、明日どのように変われるかが大切だろう。
清水、二階堂は状態が悪いなりに、明日へつなげたと思う。
プロクイーン決定戦 決勝戦2日目
6回戦
初日はトップを取った者が次の半荘必ずつぶされ、誰一人として抜け出ることが出来なかった。そんな中、桑原だけ一度もトップがなく今日の初戦にすべてをかけてるだろうと思われた。実は桑原、決勝が始まる前の前評判はかなり高かった。十段位を取った土田浩翔も準々決勝での桑原の麻雀をほめちぎっていた。あとは本人がいかに開き直れるかだろう。
ハイテイ牌で を卓に静かに踊らせた。
昨日よほど悔しかったのだろう。今日は表情が別人のように集中していた。
6回戦を桑原、7回戦を二階堂が取り、初日からここまでのトータルが以下。
平岡 +40.9 二階堂 +17.8
市川 ▲ 4.4 清水 ▲ 22.3 桑原 ▲ 34.0
以上で迎えた8回戦。大きな波乱が待ち受ける。
東場を二階堂が、南場を市川が制し、清水があおりをくらい箱を割ってしまう。
特に市川は、南 1 局1本場 ドラ の親番で、
         チー   ツモ 
の 4000 オールをはじめ、
ラス前 ドラ ウラドラ では、
            ツモ 
の 4000-8000 をツモりあげ大トップを取る。
市川の長所は攻める手の時は手牌とツモに正直に素直に手を進められるところだろう。
8回戦 市川
+67.3 二階堂 +19.7 桑原 ▲ 24.4 清水 ▲ 62.6
続く9回戦も二階堂の追撃を振り切り、市川が連続トップを取り、初タイトル奪取へ向けて大きく前進した。
9回戦 市川
+43.9 二階堂 +19.6 桑原 ▲ 21.2 平岡 ▲ 42.3
9回戦までのトータル 市川
+106.8 二階堂 +57.1 平岡 ▲ 1.4 桑原 ▲ 79.6 清水 ▲ 84.9
10回戦 市川vs清水vs二階堂vs平岡 抜け番・桑原
桑原が▲ 79.6 で終えたため、▲
84.9 の清水は最低 2 着に入らなければ足切りになってしまう。そして清水が連覇するためには、ここからの残り3回戦を3連勝しなければならない。しかし卓につく清水にはそうしてやる、という気迫が満ちていた。
東1局0本場 ドラ
親の市川が連勝の勢いに乗り 10 巡目リーチ。
            
これを受けたときの清水の手牌が
      チー  ポン  ツモ
市川の捨て牌が、
     
   
腹をくくったであろう清水は、打 、
2 巡後にドラの を引き入れ次巡、市川から を討ち取る。市川にとってはこの手が成就すれば優勝へぐっと近づく手だっただけに相当ショックだったろう。この後、市川からは闘う気持ちがなくなっていったのが、観戦している私にもヒシヒシと伝わってきた。
清水は東3局の親番でも、
            
一発ツモ ドラ ウラドラ をツモりあげ、執念のトップを取る。
10回戦 清水
+52.9 二階堂 +21.3 平岡 ▲ 19.8 市川 ▲ 54.4
10回戦までのトータル 二階堂
+78.4 市川 +52.4 平岡 ▲ 21.2 清水 ▲ 32.0 桑原 ▲ 79.6
となり、桑原が無念の足切りとなった。残すはあと
2 回戦である。
11回戦
二階堂がついにトータルトップに出る。ここまでの闘いの印象としては、本当に我慢してるなと感心していた。あと少しのところでトップが取れそうなとこでも、ダメージを受けないよう辛抱に辛抱を重ね、ついに頂点に手が届きそうな位置にきた。
しかし、そんな二階堂の辛抱をあざ笑うかのような手が平岡に入る。
東2局0本場 ドラ
             
ここに、 、 、 、 、とツモり5巡目テンパイ。
           
ピンフのイーシャンテンの二階堂が何気なく切った 。平岡の無情のロンの声。
「 24000 」
一つのあがりで平岡がトータルトップに並びそうなところまで来た。
以前の二階堂だったら終わっていたかもしれない。
しかし、数々の経験を積んだ二階堂はまた1つ1つ階段を登るようにあがり返していく。
迎えたオーラス。
平岡 52900 清水 25900
二階堂 21000 市川 20200
平岡としては二階堂をラスにしたいところ。市川も二階堂だけはかわしたいところ。
東家・市川 南家・二階堂 西家・平岡 北家・清水 の並び。
ここで平岡にまたしてもマンズのメンホン系の手が入る。
5 巡目にして、
            のテンパイ。 ドラ
も も1枚も出ておらず是が非でも二階堂からあがりたいところ。
実はこの時、 は清水と二階堂に1枚ずつ、 は山に
2 枚いた。
そして同巡、清水が打 、平岡、これにロンをかけてしまう。
このあがりにはいろいろな意見があるだろうが、私は見逃して欲しかった。
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大物手で二階堂を苦しめた平岡理恵
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この結果、二階堂が
2 着となり 11 回戦終了。
11回戦 平岡
+60.9 二階堂 +1.0 市川 ▲ 19.8 清水 ▲ 42.1
11回戦までのトータル 二階堂
+79.4 平岡 +39.7 市川 +32.6 清水 ▲ 74.1
最終戦
いよいよ最終戦である。平岡、市川は二階堂を3着もしくはラスにして自分がトップか2着をとらなければならない。しかし、二階堂が東場、1人テンパイ、
1000-2000 と着実に得点を重ね東ラスでも親番で 3900 をあがり点棒をあっという間に 40000 点台に乗せる。
誰もが決まったと思ったが平岡が東ラス1本場に意地を見せる。
配牌
            ドラ 
から、 、 、 、 、 、と引き、5巡目に
            
6巡目に を引き、
3000-6000 、またも二階堂を脅かすが、南1局、二階堂が追いすがる平岡から
         ポン   ロン 
をあがり、自らの手で優勝に花を供えた。

二階堂優勝の瞬間、会場中があたたかい拍手に包まれた。そして、一粒だけ二階堂の目に光るものが見えた。
二階堂の勝因は、やはり経験の差だろう。敗れた市川、桑原はきっとこの負けが次のチャンスに生かされるだろう。
そして平岡は昨日までの二階堂と同じくらい惜しかった。きっと次は勝てる日が来るだろう。
亜樹ちゃん、本当におめでとう。

優勝の二階堂を囲んで左から5位・桑原、2位・平岡、3位・市川、4位・清水
(文中敬称略 文責・瀬戸熊 直樹)
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