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タイトル戦情報

第37期 王位戦 決勝戦

( 観戦記:勝又健志)



第37期王位戦、まずは決勝進出者の紹介からさせて頂く。

1位通過:内川幸太郎

準決勝では充実した戦いぶりを見せ、最終戦では箱ラスでも通過という圧勝劇であった。
打点の狙える手牌ではしっかりと手役を追い、そうでない時の序盤はスピードを重視し、
アガリ切れないと見るやきちんと受けに回る。バランスの良い打ち手である。
2位通過:緒方剛さん

今決勝唯一のアマチュアだが、準決勝からもその実力の高さが窺がえた。
5、6回戦ではほぼ2連勝条件であったが、持ち味の攻撃力の強さを発揮し見事に2連勝を飾った。
3位通過:筒井久美子

先日行われたプロクイーン決定戦では、初日を終えて▲74,9Pとかなり苦しい位置にいたのだが、
最終日には2、2、1、1、1、1と怒涛の追い上げをみせて準優勝。
アガれると判断した局では、かなり深くまで踏み込んでいく。うまくマッチすれば一発で決める破壊力を持っている。
4位通過:滝沢和典

32期、33期王位であり、もう説明するまでもないプロ連盟若手のエース。
局面だけでなく、相手の思惑や大局をも読みバランス良い攻撃を繰り広げていく。
もちろん受けも強い。
5位通過:宮崎和樹

30期王位。準決勝では、最終戦のオーラスでかなり苦しい状況であったが、
値千金の1,000・2,000を引きアガリ、わずか3,1P差の接戦を制し決勝にコマを進めた。
相手の手牌や、山に残っている牌を丁寧に読み、常にリスクの少ない選択を繰り返していく。

最年長が31才の滝沢であり、調べてはいないがおそらく王位戦史上最もフレッシュな決勝戦であろう。
気持ちのこもった素晴らしい決勝戦。王位に輝くのは誰であろうか。



1回戦(起家から、内川・緒方・滝沢・筒井、抜け番:宮崎)

まずは東1局7巡目、滝沢が以下のリーチ。

 リーチ ドラ

決勝戦ともなると、開局は是が非とも好スタートを切りたいところである。
巡目、打点、待ち、共に申し分のない先制リーチだ。
対するは、親の内川。9巡目には以下の形になり全面対決。

先制されたものの、親でこの1シャンテンは十分勝負手。しっかりと押し返していく。
さらに11巡目。ここまで危険な牌は打ち出さずに1シャンテンとなっていた緒方さんにテンパイが入る。

 ツモ

マンズが場に高く、他に安全牌もなくこのはすっと切りだしていく。
決着はすぐについた。12巡目、を引き入れた内川が、押し出される形でを打ち出した。
筒井もしっかりと安全牌を選びながら1シャンテンを維持していた。
今局は、4人共に最善手を打った結果だが、放銃した内川、先行リーチを打った滝沢の2人、
逆にアガった緒方さんは、ツモって2,000・4,000とはならなかったものの、十分満足のアガリといえるだろう。

東2局は、筒井が好配牌をしっかりとものにして1,300・2,600。
その後は全員ノーテン、内川の1人テンパイと流局が続いた。
そして、南1局。10巡目、親の内川の手牌は以下。

 ツモ ドラ

ここから打。三色はなくなってしまったものの、ドラが絡めば満貫が見込める好牌姿。
しかし、この後はを暗カンするも、ツモが利かずテンパイができない。
そうしている間に13巡目、滝沢に大物手のテンパイが入る。

 

はカンされていて、残りは高めのが1枚。
さすがにアガリは厳しいかと思われたが、16巡目これを見事に引き寄せた。

アガった滝沢にとってはもちろん大きな跳満だが、それ以上に内川にとってのダメージが大きいといえるであろう。
2度の親番が、共に手は入りながらもアガリに結びつかず、放銃と親かぶりになってしまった。
点数以上に心理的には痛いところである。
さらに南2局。9巡目に、絶好のペンを引いた内川がリーチにいく。

 ツモ ドラ

10巡目、親の緒方さんが追いつきこちらもリーチに。

 ツモ

2巡後、内川の放銃で決着がついた。
ここでの内川の選択はどうであっただろうか。

一発裏ドラがないAルールでは、2翻役の価値はかなり高い。
点数状況と打点バランスを考えたらリーチの一手である。
しかし、待ちがあまりにも悪い。捨て牌の1段目(6巡目)までに相手3者はだれもソーズの上を切っていない。
ドラも持っていない(=相手に高打点のテンパイが入りやすい)だけに、かなりリスクも伴う局面である。
勝負と打って出たが、その代償はあまりにも大きかった。

フラットな状況ならば、リスクは大きいものの、メリットも十分に大きく勝負と行くのもうなずける。
しかし、ここまでの展開は内川にとってかなり厳しく、劣勢と感じていたならヤミテンに受け、親リーチを受けたならば撤退とするのが本筋であろう。
1回戦だからこそ原点復帰を目指したいのだが、逆に1回戦だからこそラスを受け止め、体勢を整えにいくという考え方もできる。

さらに南2局1本場8巡目、前局のアガリでトップ目の滝沢にせまった緒方さんが、今局も内川を捕らえる。

 ロン ドラ

5巡目には、

この絶好の1シャンテンになっているのだが、すでに-が4枚切られている。
そこにが切られ、5,800のチーテンを取ることも考えられる局面だが、これをスル―して面前で仕上げ12,000。
「決められる時に決める」見事なアガリであった。
逆に、打ち込みとなった内川は、6巡目に以下の手牌。

 ツモ

ドラが2枚あり、体勢的に苦しくとも他家に動きがあるまでは素直に手を進めていくべき局面である。
ならば、ここは2枚切れのをトイツ落としといくのが普通の応手であるが、ここでをツモ切りとした。
七対子を見ての一打であるが、これは手順ミスではなかろうか。

この手牌はが2枚切れである以上、三暗刻の可能性がかなり低く、次の有効牌以降、メンツ手とトイツ手の天秤にかけることができない。
ならば、現段階で方針を絞るべき局面であった。
次巡、を引きメンツ手に向かった内川は、ここからのトイツ落としを始め、2枚目が緒方さんに間に合ってしまうという最悪の結果にしてしまった。

南2局2本場では、緒方さんが1,300は1,500オールを引きトップの座を盤石なものにしていった。
3本場、緒方さんはなおも攻め立てるが、筒井が何とか2,600は3,500を緒方さんより打ちとり連荘はここまで。
しかし、緒方さんはこの後も安定した手組みで局を進め、1回戦を制した。

1回戦成績
緒方剛+29.2P  滝沢和典+13.0P  筒井久美子+1.5P  内川幸太郎▲43.7P



2回戦(緒方・筒井・宮崎・内川、抜け番:滝沢)

大きな点棒移動がなく迎えた東3局1本場6巡目。
1回戦トップだった緒方さんが決めにいった。

 ドラ

このリーチを見た瞬間「強い」と感じた。
数々の決勝戦を見てきた経験から思うことは、優勝者はどこかで腹を括った決め手を引きアガる。
これは、まさに決められる時に決めにいく、そんなリーチであると感じた。
今局は、緒方さんの山との戦いかと思っていたのだが、ここに筒井が攻め込んでいく。

跳満まで見込める1シャンテンから無筋を2枚押す。結果は14巡目、筒井がを掴み放銃となった。
実は筒井、1回戦でも同様にリーチに対して攻め込んでいった局面があった。
2件リーチを受けて手牌は、

 ドラ

ここから、2人に無筋かつ4枚持ちの筋であるを打つ。
一通と三色、またはピンフイーペーコーへの手変りも見込める手牌だ。

実際には役なしテンパイだが、感覚としては勝負手の1シャンテンという感覚であろう。
このように手牌が型に入った時には、深く踏み込んでいく戦い方だ。
ならば1度の放銃はなんてことはないであろう。それを取り返すだけの攻撃力があるのだから。
しかし、今局は少し違った。問題は12巡目。
上記の手牌にツモと引いて以下の形。

ここからをツモ切りとした。
を切ったところでを引いたら、おそらくドラを切ってリーチと行くであろう。
また、この1シャンテンが安全牌を切りながらとりあえずキープしていたものならば分かる。
しかし、ここは、危険牌を押し勝負している場面だ。ならば手牌の可能性を少しでも高めるために、ここはドラ切りとする一手である。

攻めと決めた局面にも関わらずドラで放銃すると高いという、守りの気持ちが出てしまった1局となった。
同じ放銃でも真っ直ぐでない打ち込みは、よほど強い気持ちでいないと引きずってしまうことが多い。

そして、それがすぐに形になって表れてしまう。
東4局。ターニングポイントが訪れる。7巡目、宮崎が以下の形からを仕掛ける。

 

形は苦しい2シャンテンの上に打点は見込めない、さらに他家に攻められたときの受けも苦しい安定感に欠ける仕掛けをうってでた。
捨て牌も弱く、プレッシャーにもなりづらくこれは疑問手と言わざるを得ない。
この仕掛けを受け、親の内川にすっと手が入る。

 リーチ ドラ

このリーチには真っ向から戦える者はおらず、河には内川の現物が並べられていく。
ここまで劣勢の内川だけに、今局は流局、もしくは安目でのアガリになるかと考えていのだがここで動きが入る。
12巡目、1シャンテンで粘っていた宮崎が、

 ポン 打

ここからをチーして打といく。
ドラまたぎのが内川にかなり厳しく、撤退かと思われたが、宮崎の判断は現物を切りながらのあわよくばのテンパイ狙い。
このチーで、内川にハイテイが回ってきた。そしてハイテイ、そっと手元に高目であるが置かれた。

これまで苦しい展開が続いていた内川に、値千金の6,000オールであった。
宮崎の仕掛けは、目的がラスを引かないことであれば戦略的に有りだとは思うが、
優勝を狙いにいく決勝戦の2回戦ならば、ゆっくりと構えるのが最善策だったのではないだろうか。
少なくとも私は、この仕掛けは、敗因にはなっても勝因にはなり得ない仕掛けだと考える。

実は、今局もう1つのポイントがあった。
14巡目、筒井は以下の形になっていた。

 ツモ

三色は崩れ、打点はかなり下がってしまったものの、ドラ表示牌のを打てばタンヤオのテンパイである。
内川の捨て牌から、マンズはかなり危険に見えるのだが、ツモなら話は別だ。

が4枚見えのノーチャンスとなった。また、ドラがとはいえ、より前にが切られているのでカンは考えづらい。
同様に、等も考えづらいため、現実的にが当たるケースはシャンポン待ちしかない。
これもドラがだけに、ツモり四暗刻のようによほどシャンポンにしたい手牌以外では考えづらいので、ここはテンパイにとる一手であった。

筒井自身も「前局の放銃で動揺してしまった。」と言っているように、心に弱い気持ちが生まれてしまったのであろう。
別の見方をすれば、これが決勝のプレッシャーなのであろう。
そして、ここからの筒井の攻めは、判断の良く攻めるべき局面を見極めてというものではなく、
トータルポイントから攻めざるを得ないからといったものになってしまった。
この後、親番の内川は持ち前の打点力、バランスの良い攻めで、

 リーチ ツモ ドラ

 リーチ ツモ ドラ

 リーチ ロン ドラ

これらを含むアガリを繰り返し、81,900点の大トップとなった。

2回戦成績
内川幸太郎+63.9P  宮崎和樹▲11.6P  緒方剛▲18.2P  筒井久美子▲34.1P

2回戦終了時
内川幸太郎+20.2P  滝沢和典+13.0P  緒方剛+11.0P  宮崎和樹▲11.6P  筒井久美子▲32.6P



3回戦(筒井・宮崎・内川・滝沢、抜け番:緒方)

1回戦では大きなラスを引いてしまい、苦しい立場となっていた内川だが、2回戦のたった1度の親番でトータルトップまで躍り出た。
このまま、勢いを活かしてポイントを伸ばしていきたいところだ。

2回戦抜け番だった滝沢は、内川がどんどんポイントを伸ばしていっても何もできず歯痒い半荘であっただろう。
しかし、ポイント的には自分の麻雀を貫くことだけ考えていれば良いだろう。
まだ抜け番を消化していない筒井は、敗退候補とならないためにも、3回戦は何としてもプラスで終わりたい。
宮崎もプラスにしたい半荘ではある。しかし、自身の2回戦目ということや、ポイントを踏まえるとまだまだ余裕はある。
そんな、状況で始まった3回戦東1局は全員ノーテンで流局。

東2局1本場。親の宮崎に絶好の配牌がきた。

 ドラ

ツモが利き、ホンイツまで手牌が伸びれば、18,000以上のアガりが見込める。
ここは、丁寧に進めていきたい。と引き、

こうなった3巡目、ここで河にが放たれる。宮崎はこれをポンといった。
一撃で半荘を決めうる手牌だけに、出来るならばメンゼン、仕掛けるにしてもからいきたいところである。
宮崎は、「もちろん高い手にはしたいが、アガリを逃したくはないので。字牌は1枚切れてしまうと苦しい受けになってしまうので」と。
ここではホンイツへの渡りもみて打とするが、を引いたところで手広くを切り、1,300オールのアガリとなった。

 チー ポン ツモ

東3局、今度は滝沢に絶好の配牌が訪れる。

 ドラ

ドラの東が暗刻であり、くっつきテンパイの1シャンテンである。
そして3巡目、早くもテンパイが入る。

 ツモ

だがこれは難しいところ。ツモ切りや切りのテンパイとらずとすれば、リャンメン以上の好形テンパイに組みやすくなる。
しかし、役ありテンパイならばヤミテンから待ちかえを狙えるので、ここは切りとしテンパイをとった。
すると次巡、宮崎からリーチが入る。

 リーチ

6巡目、滝沢が引いてきたのは。またしても悩ましいところだ。
あくまでも好形変化を目指すならばツモ切り。
瞬間のアガリ易さと、打点を重視するならば切りである。

滝沢の選択は後者であった。
宮崎の-待ちは安目のが残り2枚。
滝沢のカンも残り2枚であった。(のシャンポンなら残り1枚)

8巡目、宮崎の河にが。シャンポンに受けていれば捕らえていた牌だ。
そして次巡、滝沢が掴んだのは。これは止まるはずもなく、宮崎のアガリとなった。

 ロン

滝沢の手牌進行は非常に難解で、これが正解とは言い切れない手牌ではある。
しかし、きっかけになりうる手牌だっただけに、非常に悔やまれる局面であった。
続く東4局、またも滝沢にドラが暗刻の勝負手が入る。2巡目にして以下の形だ。

 ドラ

これを丁寧に進めていくが、先手を取ったのはまたも宮崎。10巡目にリーチが入る。

 リーチ

同巡、滝沢の手牌は以下に。

が山に3枚残っていただけに、十分アガリは見込めたのだが、次巡のツモは無情にも。連続で放銃となった。
一方、アガッた宮崎は、打点は低いものの正確にリスクを回避して攻めを繋いでいる。
南1局も、親の筒井が役牌を2つポンして攻め込むが、丁寧にヤミテンでピンフドラ1をアガリ切り、持ち点は40,000点を超えた。
南2局、3局連続でアガリをものにしている宮崎の親番である。
まずは8巡目、内川がを仕掛ける。

 ドラ

ここから打。トイトイも見つつかわせるならばかわしてしまおうという仕掛けだ。
この仕掛けを受けた宮崎は、11巡目にテンパイが入る。

内川はをポンして打。そして次巡、手出しでとカンチャンターツを落とした形。その後はツモ切りだ。
これならばまだ、テンパイしていない可能性の方が高く、親で先制テンパイならばリーチにいきたいところだ。
しかし、宮崎の選択はヤミテン手変り待ち。その後、生牌のダブ南を引くとオリに回った。
そして、内川の1人テンパイで流局となった。

50P差を追いかける立場を考えると消極的に映ったが今局について尋ねると、
「ここまで、内川さんはかなり強気に攻めてきていたので、今局も攻め込んでくると思いました。
そうなると、この手牌ではリスクと見合わないので。それと、勝負どころはまだ先にあると考えました。」という。

確かに、内川の手牌が本手ならば、全く勝負に見合わない手牌である。宮崎のスタイルを考えると当然のヤミテンかもしれない。
また、後半に言っている勝負どころはまだ先という言葉から、歴代王位のゲームプランが窺い知れた。

南3局、今半荘の決定打が生まれた。
トータルトップに立ってはいるものの、3回戦は先手が取れず苦しんでいた内川が、1度のチャンスをきっちりとものにした。

 ツモ  ドラ

他家3人がツモが利かず攻めあぐねている中、すんなりと本手が決まる。
このアガリは、内川の好調が本格化しているのを感じさせるのに十分なものであった。

3回戦成績
内川幸太郎+23.8P  宮崎和樹+14.3P  滝沢和典▲15.8P  筒井久美子▲22.3P

3回戦終了時
内川幸太郎+44.0P  緒方剛+11.0P  宮崎和樹+2.7P  滝沢和典▲2.8P  筒井久美子▲54.9P



4回戦(滝沢・内川・宮崎・緒方、抜け番:筒井)

ここまでのトータルトップは内川。
1回戦大きな1人沈みのラスを引かされたことなど遠い過去のことのように、1つのアガリ以降、繊細な手順でアガリを積み重ねている。
攻守のバランスの良さに体勢の良さが後押しし、万全に局を進めている。このまま抜け出すのか?
東1局4巡目、内川がいきなりを仕掛ける。

 ドラ

ドラ2とはいえかなり苦しい形からの仕掛けである。
ここまで好調な波にもたれかかり万全に進めてきたのなら、じっくりとメンゼンで行くのが本筋であろう。
アガッたとしても決め手にはならず、他家とぶつかって敗れた時に、崩れるきっかけになってしまうような仕掛けに見えた。
3フーロしてテンパイを入れるも、親の滝沢からリーチがかかる。

内川 
 ポン チー ポン

滝沢 
 リーチ

内川は、を引くも同巡にが通っていたため放銃は免れ流局。
私は危うい仕掛けと感じたが、ここで内川の言葉が思い出される。
「気持ちで頭を取りに行く」見た目には不格好かもしれないが、内川の王位に掛ける想いが十分に伝わる1局でもあった。

東2局1本場、緒方さんが、内川に待ったをかけるのは俺だと言わんばかりに、好手順から満貫をものにする。

 ロン ドラ

ここから緒方さんの選択は切りであった。そしてこの七対子が、最速かつ最高打点のアガリであった。
私は、その構想力の高さに驚きを隠せなかった。
ここまで緒方さんは、アガリ逃しがほとんどない。かなりの訓練を積んでいるのであろう。
決め手を決め切る力は、プロ4人の中に入っても全く遜色のないものである。

この後、オーラスの親でも5本場まで積み上げた緒方さんがトップを取りきった。
2着には、最後に滝沢とのリーチ合戦を制した内川が滑り込んだ。

4回戦成績
緒方剛+21.9P  内川幸太郎+10.8P  滝沢和典▲7.5P  宮崎和樹▲25.2P

4回戦終了時
内川幸太郎+54.8P  緒方剛+32.9P  滝沢和典▲10.3P  宮崎和樹▲22.5P  筒井久美子▲54.9P



5回戦(宮崎・筒井・緒方・滝沢、抜け番:内川)

この5回戦終了時に、最下位のものは敗退となる。
内川を追いかける戦いと共に、こちらも1つのポイントとなる。
東1局、ドラ2の手牌をもらった筒井が、ストレートに手を進めてリーチにいく。

 リーチ ドラ

この時滝沢、緒方さんにも手が入っていた。

滝沢 
 ポン

緒方 

筒井のリーチを受けるが、2人共に攻め込んでいく。
13巡目、滝沢はを引きテンパイ。
こうなると緒方さんは、テンパイと同時に放銃になるため一気に厳しくなった。

次巡、滝沢は筋のを引くとカラ切り。さらにを引くとまたも打
これは、トイツ落としに見えるので受けに回ったかのように見える。
しかし、緒方さんは同巡を引くとここで撤退。
こうなると滝沢のアガリは厳しく、筒井の待ちであるを掴み放銃となった。
緒方さんは、ここまで攻めの強さばかりが目立っていたが、受けの強さも見せ付ける形となった。

東2局、ここまで完璧に近い内容で戦ってきた緒方さんだが、ついにここで隙を見せる。
1巡目、宮崎がいきなり仕掛ける。

 ドラ

ここからをポンといった。
この後、トータルポイント的に親番を簡単に落とすことのできない筒井から、が出て12巡目にテンパイを果たす。

 ポン ポン ポン

迫力満点の3フーロが入っても、ここは引けないと筒井はなおも攻め立てる。
しかし、テンパイを入れられぬまま迎えた17巡目、シャンポンに待ちを変えた宮崎が切ったを形テンのチーテンに取る。
緒方さん、滝沢はすでに仕掛けに対応し、中抜きしていたため流局かと思われたが、ここで緒方さんが動く。

 チー

18巡目、筒井がツモ切ったで形テンに取ることができた。しかし、その仕掛けで宮崎に流れたのはであった。

 ポン ポン ポン ツモ ドラ

流れを重視する打ち手からしたら「しまった」と思わざるをえないアガリであろう。
逆に、アガッタ宮崎。ここまで堅実に進めているものの中々手が入らずに苦しんでいた。
しかし、このアガリがきっかけとなり手が入りだす。
まずは次局、4巡目にあっさりとテンパイが入る。それも高打点の。

 ドラ

このリーチを引きアガリ大きなトップ目に立つ。
南1局、ここで大物手がさく裂する。11巡目、筒井にメンホンのテンパイが入る。

 ドラ

しかし、このはすでに純カラ。何とか待ちを変えたいところである。
一方、滝沢の手牌は、

 ツモ 

ここからを打つ。そして次巡、を引くと生牌のを打ち出す。
この南は筒井がポン。打点は倍満になり、そして待ちも4メンチャンに。
14巡目、筒井はこの4メンチャンをきっちりと引きアガる。これで、カットライン争いは筒井が滝沢を逆転した。

滝沢は「カットラインから逃れることを優先するならば、ここはきちんと対応するべき。でも、あくまで優勝を狙って勝負した。」と。
現時点で、トータルトップの内川とは約80ポイント差である。
残り2半荘を現実的な条件にするためには、どこかで勝負にでなくてはならない。
しかし、その結果はあまりにも厳しいものとなった。

5回戦成績
宮崎和樹+26.4P  筒井久美子+21.3P  緒方剛▲16.3P  滝沢和典▲31.4P

5回戦終了時
内川幸太郎+54.8P  緒方剛+16.6P  宮崎和樹+3.9P  筒井久美子▲33.6P  滝沢和典▲41.7P(5位敗退)



6回戦(起家から、緒方・内川・宮崎・筒井)

37期王位戦も残すは2半荘となった。
トータルトップの内川は、残り2回のどちらかでトップを取れば優勝であろう。
緒方さん、宮崎は、最低でも内川より上の着順を取らねばならない。
筒井は2連勝条件。それも2半荘ともに内川を30,000点以下に抑え込む必要がある。
そんな状況で迎えた東1局まずは宮崎のアガリ。

 ツモ ドラ

わすか6巡目のテンパイである。50P差を追いかける立場としては、リーチにいきたいところである。
しかし、宮崎はヤミテン。勝負どころはまだ先とみている。残り2半荘となっても自分のフォームは崩さず、じっとチャンスをうかがっている。
東2局1本場、ここでも宮崎のヤミテンでのアガリ。

 ツモ ドラ

こちらはドラの振り替わりや好形変化があるとはいえ、リーチでも全くおかしくない所だ。懐が深い。
東3局、今度は緒方さんが攻めに出る。4巡目、

 ドラ

ここからをポンして満貫の2シャンテンだ。
すぐにもポンすることができ、6巡目を引いてテンパイ。

 ポン ポン

第一打がと少し目立ってはいるが、まだ6巡目であり待ちは絞れない。
3人は苦しい状況に追い込まれた。そんな中、内川にテンパイが入る。

 ツモ

自分の手牌がリーチを打っても1,300なだけに、受けに回る手も当然ある。
しかし、を切っていったところで後が続かない。ならば、自分でかわしに行こうとリーチに踏み切るが、これが緒方さんに捕まってしまう。

 ポン ポン ロン

続く東4局も緒方さんのアガリ。

 リーチ ロン ドラ

このアガリで一気にトップ目に立つ。
緒方さんはこの後も1,500、3,900とアガリ南3局、持ち点は以下。

緒方42,900、内川18,500、宮崎34,300、筒井22,300。

12巡目、ここで浮きに回れば十分に可能性が残る筒井がリーチ。

 リーチ ドラ

13巡目、内川にもテンパイが入る。

 ツモ

この局面、筒井から入ったリーチはポイント的にもまず間違いなく本手であろう。
放銃してしまえば、最終半荘では、追いかける立場になってしまう。しかし、内川は勝負にいった。

ここを引き勝てば、最終半荘を相当有利な状況で迎えることができる。
内川の気持ちのこもった、正に勝負リーチであった。手に汗握るめくり合いの決着は17巡目。
2件リーチを受けても形は崩さず、ギリギリまで粘っていた緒方さんがチーテンにとる。

  チー

このチーで、次巡緒方さんが引いた牌は、動きがなければ筒井が1,300・2,600を引きアガっていた
さすがにこれは打てずにオリを選択。そして、内川のもとに流れてきたのは、無情にもドラのであった。

 ロン

オーラス、またしても筒井から本手のリーチが入る。
しかし、内川がここは好手順で満貫をアガリ切り、傷を最小限に抑えて6回戦が終了した。

6回戦成績
緒方剛+18.9P  宮崎和樹+6.3P  筒井久美子▲6.4P  内川幸太郎▲18.8P

6回戦終了時
内川幸太郎+36.0P  緒方剛+35.5P  宮崎和樹+10.2P  筒井久美子▲40.0P



最終戦7回戦(起家から、筒井・緒方・宮崎・内川)

内川、緒方さんは着順勝負。
宮崎は、上位2人を30,000点以下に抑えることができれば、40,000点強のトップでも優勝。
筒井は、並びを作った上で、7〜8万点のトップが必要。
そんな条件で最終戦が始まった。

東1局、筒井がタンヤオ条件を目指してタンヤオのテンパイには受けずにトイトイを狙う。
これが上手くいって、まずは2,600オール。このアガリは並びを作りたい宮崎にとってもうれしいところだ。

続く1本場、緒方さんが仕掛けて出る。9巡目には2フーロして以下の形。

 チー ポン ドラ

アガリ切れれば相当有利になる。同巡、内川にテンパイが入る。

 ツモ

緒方さんに打ち込めば決定打になりかねない。それだけに、リーチには踏み込みづらい。
しかし、内川の選択はリーチ。気持ちで攻めていく。この局面、本当に判断の難しいところである。

緒方さんの手牌をテンパイと読むならば、やはり自分の手牌が打点的に見合っていないためヤミテンが優ると思うが、
緒方さんが1シャンテンならば、存外最善手かもしれない。
ホンイツの緒方さんの目からはドラが見えておらず、1シャンテンならば押しきることはできないであろう。
リーチを受けた緒方さん。これは苦しくなるかと思われたが、次のツモは。テンパイが入った。

内川の待ちは山に3枚、緒方さんは2枚。2人の気迫に固唾を呑んで見守るギャラリー。
しかし、ここは最終ツモまでに決着はつかず流局となった。
このまま一進一退の攻防が続いたが東4局ついに局面が動く。

7巡目、緒方さん。

 ツモ ドラ

こうなったが1シャンテンとらずで打
着巡勝負の最終戦、普通の打ち手は手牌のスピードを最重視して、打とするであろう。
しかし、緒方さんはここで1,300をアガっても状況は何も変わらないと決め手を作りにいく。
素晴らしい胆力である。11巡目にも、

 ツモ

ここからまたも1シャンテン取らずで打。素晴らしいの一言に尽きる。
この後緒方さんは、と引き、ついに本手のテンパイを入れる。

ここまでツモが伸びたならリーチもあるかと思ったが、ここは万全にヤミテンに受ける。
見事な手筋を見せた緒方さんは、をそっと手元に引き寄せた。

これで一歩リードした緒方さんは、次局もアガリをものにする。それも最高の形で。
6巡目、緒方さんは手なりで、すっとリャンメンテンパイが入るとリーチにいく。

 リーチ ドラ

なんてことはない1,300のリーチなのだが、10巡目、を暗カンすると、リンシャン牌にが。
これで点差は10,000点を超えた。

南2局、今半荘の展開からも完全に緒方さん、内川2人の戦いに目が向けられてきていた。
しかし、勝負どころはまだ先と、ここまで何度も我慢を積み重ねてきた宮崎に、一撃必殺の手牌が訪れる。
5巡目までにとポンした宮崎の手牌は、

 ポン ポン ドラ

何と字一色の1シャンテン。しかもは2枚、は3枚山に残っている。
そんな中、河にすっと生牌のが打ち出される。
しかし2巡後、手牌を開けたのは緒方さんであった。

 ロン ドラ

この後、内川も何とか逆転しようと必死で追いかけるが、南3局、宮崎のリーチに捕まり勝負は決まった。
オーラス1本場、親の内川は逆転を目指し手は作っていったものの、最後の1牌が遠く流局。
手牌を伏せた瞬間、緒方剛さんの優勝が決まった。


最終7回戦成績
筒井久美子+14.9P  宮崎和樹+9.8P  緒方剛+6.1P  内川幸太郎▲31.8P 供託+1.0P

最終成績 
優勝  緒方剛さん+41.6P
準優勝 宮崎和樹+20.0P
3位  内川幸太郎+4.2P
4位  筒井久美子▲25.1P
5位  滝沢和典▲41.7P


勝った緒方さんは、持ち味である攻撃力を遺憾なく発揮するだけでなく、勝負所での対局観は非常に素晴らしいものであった。
攻めるべき局面で、相手の手牌との距離感を見切った数々のアガリは、優勝に相応しいものであった。
また、若手5人による気迫のこもった戦いは、見る者を熱くさせる大熱戦であった。

 


 

( 観戦記:勝又 健二 文中敬称略 )

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