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タイトル戦情報

第36期 王位戦 決勝戦

( 観戦記:ダンプ大橋)


11/28(日)新橋にて第36期王位戦が開催された。
前日の準決勝より見事勝ち上がった5人は以下の通り。

1位通過:井出一寛
日本プロ麻雀連盟東京本部所属、12期生 現在A2リーグ 37歳

 

15年目にして初のビックタイトル決勝進出。粘り強さと競り合いの強さには定評あり。
リーグ戦の成績はここ最近芳しくないので、このタイトルにかける思いは誰よりも強い。
準決勝ではオールプラスと実に安定した勝ち上がりを見せた。

2位通過:牧野卓人さん
第18期麻雀マスターズ優勝 34歳


マスターズ、王位と予選を数えれば、どちらも1,000人以上の参加者がいる中で、マスターズ優勝、そして今回王位戦の決勝進出は快挙といっていい。
そして、この舞台にいるという事は、マスターズは決してフロックで無いという証明でもある。
プロ4人に囲まれて厳しい戦いが予想されるが、ぜひとも頑張っていただきたい。

3位通過:坂本健二
日本プロ麻雀連盟関西本部所属 現王位 42歳

 

前年度の覇者が今年も決勝に残った。
ディフェンディングチャンピオンは準決勝からの出場となるので、5/16を勝ち残れば良いだけと思うかもしれないが、
1,000人以上の中から勝ち残った15人を相手にするのは非常に厳しいもの。
そんな中、堂々の3位通過は『連覇』の二文字を色濃く予感させてくれる結果と言える。

4位通過:勝又健志
日本プロ麻雀連盟東京本部所属、17期生 現在A2リーグ 29歳

 

こちらも井出と同じく初のビックタイトル決勝進出。
若手プロの中でも、牌理や麻雀に対しての考えの深さは間違いなくトップクラスにあるが、
ここ最近の実績はベスト8、ベスト16といった善戦までといった印象が目立つ。
この決勝の舞台でイメージを払拭させたいところか。

5位通過:荒正義
日本プロ麻雀連盟東京本部所属 1期生 現在A1リーグ 58歳

 

もはや説明は不要。麻雀界を代表するトッププロ。
数々のタイトルのその手に収め、自らの著書も多数。
決勝に進めば誰もが本命の◎を付ける。それが荒正義という人物である。


既に予選から数えれば1/200以上の確率を潜り抜けてこの舞台に立った5人。
しかし、誰もがここで満足という思いはない。
それだけ優勝とそれ以外の順位には大きな壁がある。
そんな思いを持った5人がこれから半荘7回をどのように創っていくのか。

自分がその舞台に立てなかった事に悔しさは残れど非常に楽しみである。


そして決勝が始まった。




1回戦(起親から、荒 、勝又、井出、坂本)抜け番:牧野

東1局、まずは4人の配牌を見てみよう。

 ドラ

勝又

井出

坂本


誰かが飛びぬけて良いわけではなく、強いて挙げれば、荒に役牌のがトイツで勝又が中張牌に寄っているといったところだろうか。

荒の第一打は。いきなりのターツ外しだが、字牌2トイツを生かした手組みをするつもりだろうか。
ではなくからなのは、をツモればの早仕掛けも見ているのかもしれない。

そして2巡目にツモ
これで4トイツになり、ソーズのホンイツ又は七対子が見えてきた。
さらに、3巡目の、4巡目のでテンパイ一番乗り。

七対子のみのテンパイだが、いきなりの有効牌連続ツモ、しかも親となれば気分は悪くない。
このまま待ちを変えつつヤミテンで押し、8巡目にドラをツモると、ドラタンキでリーチ。

同巡、こちらも七対子のテンパイを果たしていた勝又もドラをツモり、待ち変え。
そして坂本の手牌にもドラは1枚。

荒はリーチ、勝又もドラから待ちを変える事はないだろうから、荒の待ち牌は既に残り1枚。
流局濃厚かと思えた矢先、荒の1発目のツモがなんと

 リーチ ツモ ドラ

4人の配牌から静かな立ち上がりになりそうと見ていたが、いきなりの6,000オールとなる。

荒 正義



荒はもちろん「今日はツイているな」と思うだろう。

対局者の3人は動揺はせずとも、開始5分弱で6,000点の失点は良い気分ではないだろう。

そして、1回戦抜け番の牧野さん。
決勝終了後の打ち上げの席で話を伺ったが、

「荒さんの6,000オールを見て、今日自分は勝てるんじゃないかと思った」

このように話していた。

確かに、開局一番6,000点の失点が免れたという事実は精神的に余裕を持たせるには十分だろう。
この6,000オール、好調を感じたのは荒だけではなかったようだ。

しかし、荒の勢いは止まらない。

親落ちの後の東2局2本場、親の勝又のリーチにひるむ事無く3フーロ。

 チー ポン ポン ドラ

無筋を数枚切り飛ばした後にツモったで、迷う事無く現物のをトイツ落としでまわる。

この時の勝又のリーチは、

 リーチ

荒のは放銃牌で、これは見事である。だが、これだけでは終わらない。
何と終局間際にを重ねてテンパイ復帰。
そして次巡の勝又のツモは荒の当たり牌となる

麻雀の神様は荒に微笑んでいるのか、それとも勝又に厳しい試練を与えたのか・・・

さらに次局の荒の配牌が、

 ドラ

とツモり、

テンパイした同巡にまたもや勝又がで放銃。
早くもこの2人の間には因果関係が出来てしまっているように見えてしまう。
結果、荒は東場終了時に持ち点60,000点オーバーを記録。

誰もが、「荒はどこまで持ち点を伸ばすのだろう」こう思ったはずだ。

しかし、その期待はあっけなく崩される事となる。

南1局、14巡目親である荒の手牌。

 ツモ ドラ

ドラのを切ればテンパイ。どこからもリーチや仕掛けが入ってなく現在60000点オーバーの親ならば、テンパイ取りは当然と打
これを北家の坂本がポンをして、トイトイドラ3のテンパイ。

 ポン ドラ

次巡の荒はツモ。タンヤオからタンピン高目イーペーコーになる。
ドラをポンされたからダマに受けるのか?

「ここで決めにいかないでどうするんだ?」

そんな声が聞こえてくるかのようにノータイムでリーチ。

 リーチ ドラ

この時点で坂本の待ち牌は残り2枚、荒は1枚。
どちらもツモれず巡目は進み、ハイテイの荒のツモはまさかの
坂本に痛恨の跳満放銃となってしまった。

この跳満をきっかけに坂本の反撃が始まる。
南3局に1,600・3,200をツモり荒に1,500点差まで詰め寄ると、オーラスの親番では迷う事の無い2,600オールで一気に逆転。
そのままトップをもぎ取っていった。

坂本 健二

 

こうなると開局の6,000オールはどこへやら、浮きで終われど荒の気分は晴れない事だろう。
だが、2回戦は抜け番。嫌な流れを断ち切るには最高のタイミングでの抜け番ともいえる。

そして、何か重大なミスを犯したわけもなく、ただただ点棒を削られ続けた勝又の心中やいかに。
A級決勝7連勝の勢いはこのまま潰えてしまうのだろうか。

1回戦成績

坂本+27,7P  荒+15,8P  井出▲6,6P  勝又▲36,9P




2回戦 (起親から:井出、坂本、牧野、勝又)抜け番:荒

東1局、1回戦トップの坂本が勢いそのままに6巡目に3メンチャンリーチ。

 リーチ ドラ

次巡ツモで2,000・3,900。

東2局、坂本がダブ東トイツで2巡目にして5トイツという好配牌を貰うが、その坂本の2巡目のに食いついたのが牧野さん。

 ドラ

ここからをポン、ソーズをツモった後、をチー。
最終的には親の坂本から安目ではあるが、で2,000点を直撃。トップ目の親を流した。

東3局、前局に引き続き、坂本と牧野さんがぶつかる。

親の牧野さんは、配牌こそ平凡なものだが、ダブ東を2枚自力で引き込んでのリャンメンリーチ。

対して坂本は、

 ドラ

この配牌からマンズを伸ばして、牧野さんのリーチの時点では、

 ドラ

ここまで手牌を伸ばす。
リーチ後にを仕掛け、満貫の-テンパイに取る。
しかし、この局は意外にも勝又のアガリに。

牧野さんのリーチの時点で七対子の1シャンテンだった勝又は、2巡後にテンパイし、待ち選択はか。
は生牌、はリーチのスジだが、安易に字牌を切らず、アガる為に待ちのテンパイに取る。
これが功を奏し、次巡、牧野さんのアガリ牌であるを掴まされるも、を切って待ち替え、
その西を対面の坂本が仕掛け、次巡の勝又のツモがでアガリとなった。

もし、から切っていたら、は坂本に流れ、牧野さんに7,700の放銃となっていた可能性がある。
唯一、アガリへの道を辿りきった勝又の繊細さが光る1局となった。

この後、牧野さんが七対子ドラ2をツモりアガリ、井出1人が置いていかれる展開となるが、ラス前に井出が7巡目にピンフ高目三色でリーチ。
リーチを受けた親の牧野さんの手牌。

 ドラ

流石にこれでは戦えそうにないが、坂本の切ったをチー。
形テンで連荘狙いだろうが、結果的に井出にをツモらせてしまう。

牧野さんは元々仕掛けが非常に多い打ち手なのだが、この決勝戦に関しては、
仕掛けてアガるよりも、門前でじっくり攻めた方が手が入ってたのではと思う。
この2回戦でも、七対子ドラ2をツモり、アガれはせずとも、ダブ東暗刻のリーチを打っているのだから。

先の事を書いてしまうが、この決勝戦、牧野さんが仕掛けると井出に良い事が起きるケースが非常に多かった。
1回戦に因果関係がという話しをしたが、井出と牧野さんの間にもそういった物があったのかもしれない。

そして2回戦オーラス。
東発の坂本のアガリから派手な展開が予想されたが、オーラス各自の持ち点は、

勝又:32,300
牧野:30,300
坂本:29,400
井出:28,000

非常に僅差になっている。
全員にトップ、ラスの可能性があり、ノーテンでも原点を割ってしまうので、前に出て戦わなくてはならない。

そんな中、前局満貫をツモった井出が配牌3トイツからノーミスでドラ2七対子をテンパイ。
タンキで強気にリーチを打った。

しかし、ヤミテンなら勝又から即出たであろうが、リーチによって止まり、しかもトイツになってしまう。
このリーチ、非常に難しい判断であったと思う。

筆者は恐らくヤミテンにしていたであろう。
が、周りの人に聞けば、リーチもいればヤミテンもいるわけで。
もちろん、どちらの選択でもメリット、デメリットが存在するわけなので正解はないのだが。

これを読んだ皆さんならどうするか、一度考えていただきたい。

この局の結果は、30,300持ちの牧野さんがラス牌の白を掴み、井出に放銃。
終盤2局を連続満貫で仕留めた井出がトップを取った。
逆に牧野さんは、手痛いラススタートとなってしまった。

2回戦成績

井出+14,0P  勝又+6,3P  坂本▲4,8P  牧野▲15,7P

2回戦終了時

坂本+23,1P  荒+15,8P  井出+7,4P  牧野▲14,1P  勝又▲30,6P




3回戦 (起親から、勝又、荒、牧野、井出)抜け番:坂本

大きく局が動いたのは東4局1本場。親は井出、ドラは

4人の配牌はごく平凡。強いて挙げるならば牧野さんにソーズが多いくらいか。
が、9巡目。勝又の切ったに牧野さんがポン。

その時、牧野さんの手牌は、

ここからのポンである。
通常なら考えられない仕掛けだが、2回戦でも書いた通り、牧野さんは非常に仕掛けの多い打ち手である。
戦略と割り切り、自分がアガリに向かわない鳴きをする事がある。今鳴いたは正にその典型であろう。

この局に関しては、配牌から手牌が動かず、仕掛けられるソーズも出ない。
それなら形テン狙いで周りにプレッシャーを掛けるといった狙いか。
しかし、この仕掛けによって、他3人の手牌が進む。

まずは親の井出。

 リーチ ドラ

15巡目にこのリーチ。

そして16巡目に勝又が井出のをポンし追いつく。

 ポン ドラ

なんと、ツモれば三倍満である。

最後は荒。終局間際に、

 ドラ

この形でテンパイ。

勝又のが山に眠ったまま流局かと思われたが、ハイテイで荒がをツモり500・1,000。

このまま荒が逃げ切るかと思われたが、南入後、井出が1,300・2,600を2回ツモって逆転に成功。2連勝を飾った。
牧野さんはオーラスに勝又へ3,900放銃により、連続ラスとなってしまう。

3回戦成績

井出+17,5  荒+5,4  勝又▲8,8  牧野▲14,1

3回戦終了時

井出+24,9  坂本+23,1  荒+21,2  牧野▲29,8  勝又▲39,4




4回戦(起親から、井出、坂本、荒、牧野)抜け番:勝又

3回戦が終了した時点で、自分の手帳にこんな事を書いていた。

「配牌、ツモの良さは坂本>荒=井出>牧野>勝又

井出は存在感こそ薄いが、要所要所でのアガリが非常に効果的に見える。

牧野さんは、本人こそ気にしてなさそうだが、普段の仕掛けが悪い方向に。
面前で手が入っていないわけではないので、仕掛けが減れば勝機が?

坂本は配牌もツモも対戦者の中では間違いなくナンバーワン。
このまま流れに乗れれば優勝の二文字が見えてくる。」

荒、勝又についての記載がなかったのは、荒がここから5回戦で敗退するのは考えられないし、
逆に勝又は調子云々よりも、とにかく5回戦でトータル順位を上げない事には始まらないからだろうか。

それはともかく4回戦が始まった。

まず、先手を取ったのは牧野さん。
東1局に7巡目リーチで満貫をツモると、次局も井出から8,000直撃。
連続ラスの鬱憤を晴らすかのように点数を積み上げた。

しかし、荒も黙ってはいない。
東3局の親番で、700オール、7,700は8,000、700は900オールとアガリを重ね、牧野さんへ追撃を図る。

2人が一進一退の攻防を続ける中、大きく局が動いたのは南2局2本場。
親は坂本で第一打が

これを西家の牧野さんがポン。牧野さんの配牌は、

 ドラ

らしいと言えばらしいのだが、これまでの展開を考えると、仕掛けにあまり良い思い出が無いところでのこの仕掛けは少しもったいないと感じてしまう。
門前ならメンホン、一通まで見える好配牌なのだから、ここはじっくりと構えても良かったのではないだろうか。

最終的には、

 チー ポン ドラ

以上のテンパイに。
ドラを持っていない者から見れば、怖い仕掛けに見えるが、ドラを固めている者からすれば、絶好の被せ所だろう。
荒、坂本は受けて回るが、序盤でドラのをトイツにした井出だけは前に出る。

そして、終盤にドラを暗刻にし、テンパイを入れ、牧野さんから満貫の直撃。

牧野さんは残りツモの無い状態からの放銃となったが、相当悔やむ放銃だったようで、終了後に何度もこの局の話をされていた。

なるほど、一見しょうがない放銃に見えるかもしれないが、既に自分で切っているを残りツモ1回で手出し、
しかもそれを見た坂本が白を合わせ打ったという事は1枚切れのを切った井出は安牌に窮したわけでなければ、
ドラを持ったテンパイである可能性は考慮できる。
それならば、安全に井出の現物を打ってオリるという選択肢は確かに存在しているわけだ。

結局、牧野さんはこの放銃が響き2着止まり。
5回戦の敗退を逃れる為に、できる事ならトータル順位を1つ上げたいところではあったが、その願いは叶わなかった。

そして、東場での連荘が効き、トップを取った荒はこの決勝、初めてトータルで抜け出した形となる。
いよいよ次回は最初の敗退が決まる5回戦。各人それぞれの想いが交差する。

4回戦成績

荒+21,3P  牧野+10,0P  坂本▲13,5P  井出▲17,8P

4回戦終了時

荒+42,5P  坂本+9,6P  井出+7,1P  牧野▲19,8P  勝又▲39,4P




5回戦(起親から、坂本、勝又、牧野、荒)抜け番:井出

この半荘が終わると最下位が敗退となる。
抜け番の井出は+7,1Pなので最下位になる可能性はゼロ。
荒もここから落ちる事はよほどの事がなければ考えられないので除外。
最初の敗退者は、坂本、牧野さん、勝又の3人にほぼ絞られたといって間違いないだろう。

 

親の坂本がテンパイ連荘を2回繰り返した東1局2本場。牧野さんにチャンス手が入る。

ドラのテンパイ。カン、カンの選択となる。

ここで牧野さんはノータイムでカンリーチを選択。
を切ればカン、しかも引っ掛けとなるのに、なぜカンなのか。

答えは他家の河を見ていただければわかるだろう。

まずは親の坂本。第一打の後、5巡目に打
これは手牌が端に寄っている可能性がある。従ってを持たれているかもしれない。

次に勝又。ここは少し情報が足りない。
も比較する材料が無いからだ。

そして荒。注目すべきは4巡目の打
を持っていたのなら、この切りは早すぎるのではないか。
逆には持っていたとしても不思議でない。

以上により、カンよりもカンの方が優秀と考えられる。
ちなみに引っ掛けについてだが、リーチ宣言牌の筋というのは、逆に出にくくなってしまうので、この場合は逆効果になりかねない。

そして全体牌譜を見ていただければおわかりの通り、は純カラ、は3枚山。
をツモるのも当然の結果だろう。

当面の敵が大きくプラスしてしまい、俵に足のかかる勝又は、次局の親で荒からタンヤオドラ3をゲット。
しかし、トータルトップ目の荒からでは牧野との点数は未だ大きく水を空けられてしまっている為、厳しい戦いは続く。

そして南入を迎え、4人の点数は以下の通り

牧野:44,600
勝又:35,600
坂本:20,600
 荒:19,200

荒はアドバンテージがあるものの、これ以上マイナスをしては残り2回戦、ほぼ横並びでのスタートになってしまうので、とにかくラス回避と原点復帰が目標。

牧野さんは原点を割らない限りは敗退となる事がほとんど無いので、勢いのままに荒を追撃したいところ。

勝又は目標が牧野から坂本へ。現状12,000点直撃で着順が変わる位置にある。

坂本は非常に難しい立場かもしれない。上も下も見られる立場というのは逆に言えばどちらも注意しなくてはならないのだ。

南1局は荒が牧野さんに2,000点の放銃。
そして最初のターニングポイントとなる南2局、勝又の親。

勝又はここで点数を稼がない限り敗退濃厚となる。
が・・・配牌が悪い。いや、周りが良すぎる。

牧野さんはダブ南がトイツ、荒は七対子2シャンテン。坂本に至っては、ドラ2でしかもピンフに三色まで見える。
懸命な努力も甲斐無く、勝又は坂本に5,200の放銃で親番を落とす。

まだ可能性は残るが、残り2局ではそれこそ役満クラスが必要となってしまう以上、それは現実的ではない。
ここで勝又の王位戦は終わりを告げた。

勝又 健志

 

そして南3局。ここまで空回りしていた牧野さんの仕掛けがついに炸裂する。

 ドラ

この配牌から第一打は。そして、西家の第一打であるをポン。
このポンにより、とツモり、9巡目には、

 ポン ドラ

をツモって4,000オール。
次局も1人テンパイでついに60,000点オーバー。

2本場は坂本に3,900の放銃となるが、オーラスはその坂本から5,200をアガリ返し、終わってみれば61,300点持ちの大トップとなった。

牧野 卓人

 

5回戦成績

牧野+43,3P  勝又▲5,6P  坂本▲11,9P  荒▲25,8P

5回戦終了時

牧野+23,5P  荒+16,7P  井出+7,1P  坂本▲2,3P  勝又▲45,0P(敗退)

なんと、60P以上あった差を1半荘でひっくり返し、牧野さんがトータルトップに躍り出た。
しかし、荒がラスであった為、1位から4位までのポイント差は25P強と混戦のまま6回戦へと4人が進んだ。




6回戦(起親から、井出、荒、牧野、坂本)

残り2回戦。ポイント差が少ないので、この半荘をトップで終えた者がアドバンテージを得るのは間違い無い。
そんな中、東1局は牧野さんが井出から3,900を出アガリ幸先の良いスタート。
今まで牧野さんは井出に対して悪い流れが少なからずあったので、この直撃は大きいだろう。

そして、次局以降もテンパイ流局で点数を増やす牧野さんが迎えた東3局2本場。

先手を取るのは荒。

 ドラ

この形から8巡目に井出のをチー。さらに次巡をポンしてタンヤオのテンパイに。
本来、荒はこの形から仕掛ける事はまずしない。満貫、跳満を十分に狙える手牌だからだ。
しかし、当面のライバルである牧野さんが点数を増やしていくのを、指を銜えて見ているわけにもいかない。
まずはこの親を落とし、自分のリズムを作り直そうとしたのだろう。

そんな牧野さんは、荒がを仕掛けた時点で以下の1シャンテン。

ここにを重ねて待ちで即リーチを打つ。
牧野さんもこの入り目には納得はいかなかっただろう。
これだけの手材料を持ちながら、最終形は自分で2枚使っているドラ筋。

いくら仕掛けによってもたらされた牌でも、本当ならリーチを打ちたくない形だ。
しかし、この場面で最悪な出来事は、ダマに受けた場合に当たり牌を打たれる事。
わずかな逡巡があったが、全てを決断してのリーチだったのだろう。

この時点で荒の五、八は山に5枚。牧野さんの-、は山に3枚生きている。
しかしリーチの同巡、井出にが流れ残りは2枚。

荒が有利な状況は変わらない。
しかし、リーチに対して荒のツモった牌は無常にもドラの
親を捌きにいっての仕掛けだった以上、このが止まるわけもなく、牧野さんに12,000の放銃となった。

牧野さんはさらに1人テンパイ、2,000オールとツモり上げ、あっという間に60,000点の大台越え。

逆にトータル2着目だった荒は10,000点と少し。
残り1回戦はあれど、場には決まってしまったかの様な空気が流れ始める。

しかし。それに抗う男がいた。
井出である。

井出 一寛

 

5本場まで積まれた牧野さんの親番を2,000・3,900で流し、一気に原点付近まで浮上。
さらに1,000・2,000ツモに5,200とアガリ、この半荘を浮きで終え、首の皮一枚繋げる結果となった。

さあ、残りは泣いても笑っても後1半荘。
王位に輝くのは誰になるのだろうか。

6回戦成績

牧野+32,5P  井出+12,2P  坂本▲15,5P  荒▲29,2P

6回戦終了時

牧野+56,0P  井出+19,3P  荒▲12,5P  坂本▲17,8P  勝又▲45,0P(敗退)




7回戦(起親から、坂本、井出、荒、牧野)

日本プロ麻雀連盟競技規定により、最終戦のラス親は現在トータルトップの牧野さんとなる。
現在、牧野さんと井出とのポイント差は36,7P
井出が優勝をするにはトップ、ラスで20,000点差が必要。

牧野さんが絶対的有利な状況である事には間違い無いが、井出にしてもいくつか好材料は残っている。
例えば、荒、坂本のトップとの差が、逆転不可能なほど開いていない事。
最終戦、逆転の可能性がほぼ無くなってしまった者はアガリに向かわない事が多い。
結果、点棒はどんどんと削られてしまい、逆転の芽が無い者は3着、4着で終わってしまう。
そうなると、いくら井出が素点を稼いだとしても、牧野さんも原点付近に留まる可能性が非常に高い。

トップラスなら、最高24Pも差がつくのに、2人浮きのトップ2着では縮まる点差はわずか4P。
まずは牧野さんをラスに落とす為にも、井出としては荒、坂本に頑張ってもらいたいと思うのは当然の事だろう。

まず、井出の1人テンパイ流局から7回戦が始まった。
さらに東3局2本場、荒から3,900は4,500をアガリ、リーチ棒2本付きで点数を38,500まで伸ばす。

そして東ラスは荒が2巡目にタンピンドラ1の3メンチャンをリーチ。
すぐにツモりあげ、牧野さんに親被りさせる事に成功。

これにより、牧野さんはラス目に。
東場が終わり4人の持ち点は以下の通り。

井出36,500 荒33,500 坂本26,000 牧野24,000

現在までのポイントを踏まえると

牧野+42,0P 井出+33,8P 荒▲5,0P 坂本▲25,8P

井出が牧野さんに肉薄する。
荒も、現在の並びなら牧野さんから直撃次第では大逆転の可能性も出てきた。

そして南入。
ここで井出にチャンスが訪れる。

ドラのがトイツ、さらにもトイツでピンズが(1234)とあり、染めてくれといわんばかりの配牌だ。
そして、3巡目に親の切ったに反応。さらに同巡、牧野さんの切ったにも飛びつき、あっという間の2フーロ。

 ポン ポン ドラ

こうなればは出てくる筈も無く、荒、坂本はもちろん、牧野さんも早々に受けに回ったので、後は自力で山との戦いとなる。

ツモ切りが5巡続いた後、ツモったのは

カンか、カンか。ここでの失敗は許されない。

結局、ピンズの下の伸びを睨み打。しかしこの時すでには山に残り1枚。
しかし、それでも井出の執念が牧野さんを上回ったのか、2巡後にはを手元に引き寄せ値千金の満貫ツモ。
牧野さんとの差はわずかに0,2P。200点差にまで詰め寄る。

南2局は荒がピンフをツモって400、700。さらに南3局の親番では2,600オールツモ。
5回戦以降、中々前に出ることの出来なかった荒が最後の親で粘る。

南3局1本場では、

 ドラ

ここまで手牌を伸ばしギャラリーを沸かせた。
最高形の12,000オールツモなら、一気にトータルトップ目まで駆け上る。
だが、1人が染めに走れば、他の色に染まる人も出てくるのは良くある話。

井出が12巡目までに、

 ドラ

ここからを仕掛けてテンパイ。
数巡後、牧野さんから六を出アガリ、ついに井出がトータルトップに躍り出た。

井出+41,4P 牧野+34,1P


そしてオーラス。2人の差はわずか7,300点。
荒、坂本の2人はアガリに向かわない(荒は役満ツモのみ逆転、坂本は条件無し)為、
実質牧野さんが連荘するか、または井出が自分でアガって決めるかが焦点となる。


2人の配牌は以下の通り。

井出

 ドラ

牧野

牧野さんの配牌が悪い。
まずは井出が一歩リードか。

井出の第一ツモは。そして打
井出の配牌なら仕掛けてタンヤオも十分考えられるので、打とする事もできるが、本人曰く

「役無しテンパイでもリーチはかけるつもりだった」

と、牧野さんとの殴り合いも持さない心が構えであったようで、タンヤオは消えどもカンの受けは消したくなかったそうだ。
その甲斐があり、次巡には1をツモって早くも1シャンテンに。

対する牧野さんは、Tを重ね、を暗刻にしたが、まだ2シャンテン。
それでも、を仕掛け、をツモって、バックながらテンパイに漕ぎ着ける。

そして、牧野さんのテンパイ同巡に井出もを暗刻にし、のシャンポンリーチ。
は1枚、対するも残り1枚。
井出がを掴むか、牧野さんがを掴むか(は純カラ)、それとも流局か。

決着はわずか2巡後。
牧野さんがを河に置いた時、新王位が決定した。

 
優勝の瞬間



第4位:坂本 健二 準優勝:牧野 卓人 第3位:荒 正義 第5位:勝又 健志
優勝:井出 一寛

 


5位:勝又健志
今日一日、誰よりもツイていなかったと、誰もが思っていたことだろう。
しかし、随所随所に見せる一打は見るものを唸らせたに違いない。
決勝終了後の打ち上げの席でも、結果を悲観せず、淡々と話す姿にはプロとしての純度の高さを感じた。


4位:坂本健二
1年前の王位は最後まで前を向いて戦っていた。
去年はハラハラさせる打牌も多かったが、今年はミスらしいミスもなく、別人の様なゲームメイクをしてみせた。
来年、この舞台に再度戻ってくることを大いに期待したい。


3位:荒正義
最後までギャラリーを沸かせた戦い振りは流石の一言に尽きる。
間違いなく優勝に最も近い男であったが、ただ一つの誤算は、ここぞの場面でのぶつかりに全て負けてしまった事だろう。
一度でも勝負局がアガれていれば、全く違う展開になっていたはずだ。


2位:牧野卓人さん
敗れはしたが、前マスターズの意地は見るもの全てを納得させたことだろう。
2ラススタートからここまで優勝争いを繰り広げたという結果はお見事。
悔しがる姿が印象的ではあったが、もっと結果を誇ってもらいたいと思う。


優勝:井出一寛
劣勢を跳ね除け、ついにビッグタイトルを手中に収めた。
6回戦、7回戦は筆者も手に汗を握り観戦にのめり込む程の戦いを見せてくれた。
ありきたりな言葉を伝える事にはなってしまうが、最後はこの言葉を持って締めさせていただこう。


井出さん。新王位おめでとうございます!

 


 

( 観戦記:ダンプ大橋 文中敬称略 )

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