A級本戦にあっさり負けて、その帰り道1本の電話が。着信:山井プロ。
「明日、暇だよね?」
「それはまあ、何でですか?」
「明日のレポートやらない?」
少し悩んだが、公私共にお世話になっている山井さんの頼みならという事で、今回のA級決勝のレポートを担当させて頂くことになりました。
今年はいい所がなく、麻雀プロ人生消えかけている、私猿川が書かせてもらいます。
簡単にシステムを説明します。
ポイントは1日を通して持ちこしとなり、4回戦終了時にまずは24名足切り。
5回戦〜7回戦まで常時足切りとなり、残った15名が現王位のダンプ大橋の待つ準決勝(ベスト16)に駒を進めることができる。
また今年から、順位点が従来のリーグ戦で使用している12ポイント加減方式となった。
例)
1人浮き 1着+12P 2着▲1P 3着▲3P 4着▲8P
2人浮き 1着+8P 2着+4P 3着▲4P 4着▲8P
(日本プロ麻雀連盟Aルール)
自分も何回かタイトル戦の決勝に残った事はあるが、タイプにもよるがこの王位戦が1番難しいと思っている。
特に、7回戦行われるこのA級決勝が。
理由は、1日好調をキープしなければいけないこと、卓内では勝負が決まらないことからだと思う。
ある程度の予測ボーダーがあり、自分との戦いということも言えなくはないが、毎回相手が変わるので、相手の調子を探りにくいことと、
各自の条件によって打牌が変わるので展開が読みにくくなるからだろう。
シード選手は歴代王位、前年度決勝進出者、現鳳凰位、現十段位である。
会場に入ると、当たり前だが前日に比べ豪華メンバーが揃っている。
ここに残っていない自分が情けなく思えた。
1回戦
長い道のりの最初の半荘ということもあるが、全体的におとなしいなと思っていた矢先、大物手が炸裂。
東3局、九州本部のアイドル、24期生の筒井久美子(連盟)が国士をツモると、その後も順調に点棒を重ね、8万点オーバーの大トップ。
大きなアドバンテージを取った。
しかし、筒井を見ていて気になったことを1つ。
オーラスの親で、ピンフ、ドラ1の出アガりと、その次局のメンタンピン、イーペーコーまで見える手を仕掛けての1.500にしてしまったのが、
1回戦であることや、点棒状況、そしてこの王位戦のシステムということを考えると勿体無く映った。
叩ける時に叩いて置かないと、後々きつくなるだろうから。
新人の筒井にこの舞台で求めるのは酷かも知れないが、エールだと思って受け止めて欲しい。
結果がどうなったかは後ほど。
注目卓は{小島武夫(連盟)、藤崎智(連盟)、滝沢和典(連盟)、山村峯巨(協会)}
東場、山村が着々と持ち点を増やす。
南1局、藤崎が滝沢から12,000をアガりトップを勝ち取る。
滝沢はこの放銃が効いて、順位点込みで▲33,3Pの苦しいスタートとなった。
去年ファイナリストの、荒正義(連盟)、清水香織(連盟)、山井弘(連盟)、小田悟志(連盟)は全員プラス。
前日1位の鈴木郁孝(連盟)、ベストアマの鹿嶋昭男さん(一般)もプラススタート。
特に鹿嶋さんは、+27,3Pの1人浮きのトップで好調を維持しているようだ。
現鳳凰位、十段位の前原雄大(連盟)もトップスタート。
自分も少し観戦していたが、トップ目で迎えた東4局、簡単にアガれそうな2.000点のポンテンを取るが、リーチと仕掛けに挟まれ結局オリを選択。
オリた後、さっきまでのあたり牌を2枚続けてツモ切られる。
ファインプレーで放銃こそ回避するが1人ノーテンで流局。
明らかに体勢は悪いと感じるが、それでもトップを取るのはさすがの一言。
ここで食事休憩にはいる。
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休憩中の滝沢に近づくと、「見せてやるからな!」
残るという意味なのか、マイナス記録を作ってくれるという意味なのかは分からないが、何かやってくれるみたいなので今後に期待しよう。
ここからはダイジェスト。
2回戦
注目卓{小島武夫(連盟)、前原雄大(連盟)、藤井すみれ(連盟)、鹿嶋昭男さん(一般)}
ミスター麻雀・小島武夫と、現鳳凰位・十段位の二つのタイトルホルダーである前原と、本日絶好調の鹿嶋さんとの好カード。
オーラスを迎え、トップ目は39,000点持ちの鹿嶋さん。
前原は22,000点持ちのラス目。
小島、前原の二人でも勢いには勝てないのか?
と思って見ていたら、前回チャンピオンズリーグで決勝に残った25期生の藤井が、親で怒涛の4連荘を決め、この三人を相手に見事トップをもぎ取った。
1回戦ラススタートだっただけに、嬉しいトップだったと思う。
3回戦
前年度決勝進出者の山井は、オーラス31,000点持ちの3着目。トップ目は34,000点。
8巡目に、
            リーチ
このカン をノータイムリーチ。結果は親との2人テンパイ。
続く1本場、14巡目に今度は、カン のノータイムリーチを1発で力強く引きアガりトップとなる。
どちらもタンヤオが確定しており、リーチ選択にはかなりの度胸と読みが必要になる。
超攻撃型に生まれ変わった山井には微塵の迷いも感じなかった。
自分の今のスタイルには、その気迫や攻める姿勢が足りず、タイトル戦で勝つために必要不可欠だと感じてはいるのだが…
最近のタイトル戦で不甲斐ない成績に終わっている1番の要因だと実感させられた。
4回戦
ここで、終了時に24名が足切りとなる。ボーダーは▲10Pぐらいか。
ぎりぎりで通過しても残りがトップ条件になるので難しい。
ここまでのトップは鹿嶋さん。
前回のファイナリストの荒、山井、清水、共にオールプラスで、現状は清水が3位、山井が4位につけている。
小田も3着が1度あるがプラスで通過。
余談だが、去年1番悔しい思いをしたのは小田だろう。
最終戦の東場で、ほぼ王位を手中にしていたのだから。
自分も観戦していたが、場慣れしていないからか優勝を意識したからかは分からないが、総合での未熟さが敗因に繋がったと思った。
その経験があったからだろう、今回はかなりいい麻雀を打っていると思う。
以前、自分のイメージにある小田の麻雀とは雲泥の差がついていた。
特に、精神力が大幅にアップしたようだ。
敗退者コメント
瀬戸熊「ボーリングでの負傷が影響しました」
増田 「勝負弱いです」
内川 「何もないです」
福光 「リスクを回避して勝てる相手ではなかったです。安全にいきすぎました」
5回戦
足切り12名、勝ち上がり36名。
ここで鹿嶋さんと清水も小さいながら、初めてのマイナスを引いた。
2冠の前原はここで足切り。その後会場中ずっと、
前原「負けると悔しいんだよ」
自分「それはみんな同じです」
と言うような会話を幾度となく交わした。
敗退者コメント
前原「本当に悔しい」
伊藤「今日はスタートからエンジンがかからなかったから、厳しいだろうなと思って打っていた」
朝武「去年と同じだよ」
森脇「ものにしなきゃならない手をものに出来なかった」
6回戦
足切り8名、勝ち上がり28名。
ここで鹿嶋さんをかわし、私が所属する静岡支部の鈴木秀幸(連盟)が、5回戦で55,000点オーバーのトップ。
6回戦で60,000オーバーの1人浮きのトップで首位になる。
また、今回のA級決勝に残った女流プロが5名。
清水、筒井、藤井の他には、仲田加南(連盟)、赤荻めぐみ(連盟)。
ここで、赤荻と藤井の2人が足切りになったが、ここまで残るのも大変なことで、女流のレベルが着実に上がっている証明だと言えるだろう。
清水に続く、2人目の女流王位も今年を含めそう遠くはないと感じた。
ついでに何かをみせてくれると言っていた滝沢だが、2回戦からオールプラスで、+75,5Pまできており、
最終ボーダーが、+55P前後と思われるのを考えると、勢い的にはクリアーしそうな気がした。
敗退者コメント
吉田「藤崎よりは上に行きたかった」
小田「来年必ず」
赤荻「予選からよく打てた。悔いはないです」
藤井「最後まで打ちたかった、来年はこの先まで。力負けしました」
7回戦
足切り13名、準決勝へ15名進出。
ここで、去年のファイナリスト、そして5回戦までトップだった鹿嶋さんが消えることとなった。
敗退者コメント
森山「特になし」
荒 「鳳凰戦頑張るか」
山井「最後たれた、打ち込み不足」
清水「・・・」
準決勝進出者
現王位・ダンプ大橋 1位通過・鈴木秀幸(連盟) 2位通過・岸赴生(協会) 3位通過・藤本敬三(連盟)
4位通過・坂本健二(連盟) 5位通過・仲田加南(連盟) 6位通過・明石定家(連盟) 7位通過・羽山真生(歴代王位)
8位通過・滝沢和典(連盟) 9位通過・藤崎智(連盟) 10位通過・ジャガー真鍋(連盟) 11位通過・神林剛(連盟)
12位通過・筒井久美子(連盟) 13位通過・甲州龍太(東京代表) 14位通過・中村瞬(連盟) 15位通過・新谷翔平(連盟)
以上のメンバーに決定した。
滝沢、鈴木(秀)が、この一週間好調を維持できるか?
6回戦で、忍者・藤崎を捕らえた、最近注目を浴びている筒井がダークホース。
あれは見事でした。自分の1回戦終了時の予想は外れましたが…
最後に、現王位・ダンプ大橋のコメント。
「決勝がスタート地点だと思っているので、ここで負けるわけには行かないです」
いずれにしても見どころ満載!!
28日空いている方は、ぜひ観戦しに来てみてはいかがでしょうか。
大会独特の雰囲気が心地よいですよ。

(
レポート:猿川 真寿 文中敬称略 )
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