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第34期 王位戦 決勝戦

決勝観戦記(前編)

(文責:松崎 良文)

古典落語に「崇徳院」という演目がある。
第75代天皇として政争の渦中に生きた不遇さを払拭するかのような興趣溢れるその作品に私が初めて触れたのは、今から約五年前。

知人である噺家の独演会で感嘆の声を漏らした私は、終了後にこんな質問をした。

「何故、噺家を目指そうと思ったんですか?」

その返答は、意外なほど単純なものだった。

「いや、上手く演る人がどうしようもなく格好良く見えちゃったんだよ。格好良く見えちゃったんだから、しょうがないよな。」

きっと、人が誰かに憧れるということは、つまりはそういうことなのだと思う。


私にとってのそれは、荒正義。
これまで多くの憧憬の視線を浴びたであろうその背中が、決勝の舞台に帰ってきた。

荒 正義



堂々とした勝ち上がりを礎に、本命との前評判を引っさげての登場であったが、
結果は、まさかの五位足切り。

まず、この前編では、
荒敗退までの五回戦、その模様をお伝えしたい。





一回戦(起家から荒・小田・大橋・山井、抜け番・清水)


最初に、報告したいことがある。
日本プロ麻雀連盟では、今回の決勝でPC採譜システムの発展形ともいうべきモニター表示を試行した。





やがて実現すべき別室観戦・ウェブ観戦への足掛かりとして、有意義な試みであったように思う。





では、視点を決勝卓へ。

開局は、12巡目リーチの山井が一人テンパイで流局。
親番の荒はタンヤオ三色の1シャンテンから生牌のを掴んでオリを選択。

思えば、これが荒の地獄の始まり。
ノーテン罰符1.000点を支払った荒は、ここから四回戦東一局まで原点を上回ることなく茨の道を歩むのであった。

さて、先制は大橋。
東二局一本場、11巡目に、

 ツモ ドラ

選択としては四通り。or切り、またリーチか否か。
大橋は切りの闇聴を選択。
三色形を追いつつ、ドラ引きにも対応できる、攻守バランスの取れた一打と言える。
結果、3巡後にツモ和了り。

大橋の麻雀を表現するならば、損得勘定に長けた押し引き重視型であろうか。
決勝までの勝ち上がり方を見ても、実に賢明であり、堅実であった。

大橋 良弘

 


次局、荒にチャンス手が入る。8巡目に、

 ツモ ドラ

絶好の高目ツモで意気揚々とリーチ宣言も、が先制リーチの山井に御用。
値段が1.300と安かったこと、親・大橋の、

 

この大物手を未然に防いだことを考慮しても、哀れみの念は晴れない。


荒の憂いを孕んだ視線を縫って、大橋に台頭したのは山井だった。南一局、

 リーチツモ ドラ

A級決勝レポートでも記したように、攻撃型雀士へフルモデルチャンジを果たした山井。
以前は、このようなピンフドラ2の手牌でリーチを躊躇うことも多かったが、全くのノータイムでリーチ敢行。
以前にも増して打ち手としての艶を放つ山井、その姿は載冠を予感させるほどの躍動を伴っていた。

山井 弘

 

この和了りが決め手となり、山井が初戦を飾った。

一回戦終了時
山井 +27.9P 大橋 +7.4P 清水 ±0P 荒 ▲8.6P 小田 ▲26.7P





二回戦(起家から大橋・清水・山井・小田、抜け番・荒)

この二回戦を、今決勝前半での最重要半荘と位置付けたい。

まずは開局。親・大橋の配牌が以下。

 ドラ

「反則でしょ、これは。」と思わず言いたくなるような好手牌だが、無論ルールの範疇内。
次巡に引いたを3巡目に重ね、--待ちのリーチに出た。

これに飛び込んだのは、座って間もない清水。5巡目に、

 ツモ

この1シャンテンから、高目ので放銃。
「18.000!」
一瞬、清水の動きが止まる。
表情に大きな変化は見られないが、やや目容に陰りが生じた。

清水 香織

 

「まぁ真っ直ぐ行っての放銃だから後悔はしてないけど、ちょっと高いよね。」

第27期以来の復位への道程が相当に険しいことを察した清水、
迎えた東二局の親番で連続ツモ和了りを果たし、素点を一万点以上回復させて東二局二本場へ。
ここで、清水に疑問手が生まれる。

西家・小田のドラ切りリーチを受けた場面、清水は打と七対子の1シャンテンに構えたが、これはどうか。

リーチ者が初戦ラスと不調の小田であることを加味する以前に、
積み重ねた親番での攻勢を自らの手で沈静してしまう行為は、優勝を狙う者としてあまりに消極的に映ってしまう。
確かに開局での傷は完治していないが、ここは押しの一手が最善であっただろう。

小田の当たり牌を掴むことなく、を引いてのツモで和了りを逃した清水は、
終盤で七対子の聴牌を入れるも、本来であれば無用な単騎選択ミスで小田に放銃。


瞭然たる劣勢に立たされた清水を尻目に、小田・山井が和了りを重ね、局面は南一局へ。
この南一局が、大橋優勝・山井敗退の大きな分岐点になった。

15巡目でチーテンを入れた親・大橋は、連荘御の字。
山井は、この仕掛け以降、続けざまに有効牌を引いたことで、大橋の動きに少なからず恩恵を感じたはずである。
また、リーチをしてのハイテイツモで満貫という高打点も意識した。

しかしそれは、絵に描いた餅。
山井の希望ともいうべき白餅は、更なる加点を渇望する大橋にスッと吸い込まれた。

この放銃を目にした私は、或る光景を思い出した。
それは、第20期鳳凰位決定戦、九回戦南四局三本場での朝武の放銃である。
多くの糾弾を浴びたこの時の打牌、私はノータイムであったと記憶している。

対して、山井の打は、今後の伸び代を示唆するかのように、幾らかの逡巡を含んでいた。
おそらく、葛藤の末での決断であったはずだ。

この山井→大橋間での11.600移動は、素点だけでも23.2Pの移動を意味する。
また、三つ巴だったトップ争いから大橋が一歩抜け出し、山井が大きく後退したことで、
順位点の側面でも重大な出来事であると言える。

思わぬ施しを受けた大橋であったが、この半荘トップを逃してしまう。
南三局一本場、南家・小田は、

 ポン ツモ ドラ

この和了りをきっかけに、オーラスの親番で2.600オール、3.900は4.200を決め、大橋を逆転。

「山井さんの放銃を見て、みんな苦しいんだと思ったら、少し気が楽になったんです。」

どうやら白餅事件は、小田躍進の呼び水でもあったようだ。

小田はメンバー5名の中で唯一のタイトル戦決勝初出場。
これまでPC採譜の中心人物として裏方に徹してきた苦労が実り、この晴れ舞台を迎えた。
A級決勝・準決勝共に絶望的な位置から勝ち上がりを決めてきた小田は、
この決勝でも苦しい立ち上がりながら戦線に踏み止まり、底力を感じさせた。

小田 悟志

 


二回戦成績
小田 +31.4P 大橋 +18.9P 山井 ▲13.6P 清水 ▲36.7P

二回戦終了時
大橋 +26.3P 山井 +14.3P 小田 +4.7P 荒 ▲8.6P 清水 ▲36.7P





三回戦(起家から清水・山井・小田・荒、抜け番・大橋)

これまでの形勢が崩れることなく、局面は山井・小田の和了りによって進行していく。
東二局、南家・小田が前局に満貫をツモった山井の親番で、

 暗カン ポン ツモ ドラ

この3.000・6.000をツモってリードを奪うと、続く東三局では山井が返す刀で6巡目リーチ。

 ドラ

劣勢打破に向け敢然と立ち向かう荒であったが、

 ツモ

形は作るものの、余剰牌が当たり牌。安目ながら、如何にも苦しい。
そして場面は、荒が唯一敗因に挙げた局へと進む。

東四局、親番・荒。

下家から放たれたに、荒が声を掛けた。
門前での進行に見切りを付け、連荘を強く意識した仕掛けである。
荒はをポンして、打
ドラのくっつきに構える、自然な一打に思える。

しかし、以後のツモが。つまり、

 ポン ツモ

この形での2.600オールを逃したことになる。
また不幸なことに、荒が仕掛けを入れた次巡、山井が-待ちの聴牌を果たした。

目に見えての和了り逃しに加えての親流れ。
かの孫子の兵法における名言『激水の疾くして石を漂わすは勢なり』。
百戦錬磨の荒とて、勢いを増す激流には抗えず、見る見るうちに点棒が削ぎ落とされていった。

南二局、親・山井


 暗カン リーチツモ ドラ

南三局、親・小田

 リーチツモ ドラ

小田に至っては、リーチ後に引いたをツモ切っての親満成就。
その事実を察知して口元を緩ませた荒は、挙げ句の果てにオーラスで三着争いの標的だった清水に、

 ロン ドラ

無情の跳満直撃で引導を渡され、箱割れ寸前の大きいラス。

終局すると、荒が苦笑いを浮かべた。
今回の王位戦で三度目の苦笑いであったが、今日のそれは、これまでには決して垣間見ることの無かった落胆さを色濃く帯びていた。


三回戦成績
山井 +33.3P 小田 +14.5P 清水 ▲3.5P 荒 ▲44.3P

三回戦終了時
山井 +47.6P 大橋 +26.3P 小田 +19.2P 清水 ▲40.2P 荒 ▲52.9P





四回戦(起家から荒・大橋・清水・山井、抜け番・小田)

開局、起家の荒が7巡目リーチ。

 ドラ

10巡目、ドラが暗刻の清水からが切り出された。
荒、少考後に手牌を倒す。

「負けてる立場だから、他家から出たら見逃そうかと思ったんだけど、当面の敵から出たからさ・・・。」

渋々ロンの荒は連荘での回復を期すも、次局一本場は蚊帳の外。

が枯れている為、山に一枚ずつ残る-のメクり合いを制したのは大橋。
この結果、私には二回戦南一局の山井放銃に起因しているような気がしてならない。
失意の山井は、この半荘痛恨のラス。


そして、荒の策略虚しく、ここから清水のビックショットが連続で炸裂。
東三局一本場

 ツモ ドラ

南一局

 ツモ ドラ

清水は、五万点を越える大トップで優勝が狙える位置にまで浮上。

全員が、荒との真剣勝負を全身で愉しむことの出来る悦びに活力を漲らせている。
もはや四面楚歌の荒、打つ手なしか。

四回戦成績
清水 +36.6P 大橋 +6.8P 荒 ▲14.8P 山井 ▲28.6P

四回戦終了時
大橋 +33.1P 小田 +19.2P 山井 +19.0P 清水 ▲3.6P 荒 ▲67.7P





五回戦(起家から大橋・清水・荒・小田、抜け番・山井)

この半荘は、不思議と二回戦に類似している。
まずは光明が差した清水であったが、開局で悪夢の再来。

直前にカンを引いて聴牌の大橋は、手堅く闇に構える。
ここまでトータル首位ではあるが、オール二着とトップが無いことを踏まえての賢明な選択に思える。

さて、放銃の清水、その胸中は如何に。
二回戦よりも値段は安いが、ダメージは深かろう。
治り掛けた古傷の脇に更なる深手を負い、女王はここから失脚の一途を辿った。


目論見通りの先制を成した大橋であったが、ここから小田の猛勢に遭い、原点割れと後退。
しかし、南一局の親番で脅威の山彦返し。
まずは小田から一盃口ドラ2の7.700を直撃すると、続く一本場では、

 ツモ ドラ

この2.600は2.700オールを実らせ、小田を逆転。
圧巻は、南二局。7巡目に、

 ツモ ドラ

とし、1シャンテン。
打点を求めるなら引きや引きが理想だが、次巡のツモは絶好の3メンチャンが残る
「優勝者のツモですな。」との囁きが聞こえそうな好風を感じながら、大橋は当然のリーチ宣言。

残念ながら高目のはすでに枯れていたが、
終盤で親権を維持したい清水から最安目のが飛び出し、そのまま念願の初トップを飾った。


五回戦成績
大橋 +31.6P 小田 +13.8P 荒 ▲16.0P 清水 ▲29.4P

五回戦終了時
大橋 +64.7P 小田 +33.0P 山井 +19.0P 清水 ▲33.0P 荒 ▲83.7P





『瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ』


小倉百人一首、その七十七番目に詠われている崇徳院の歌である。


瀬の流れが岩にあたり二つに分かれても再び一つの流れに戻るように、
今は離れ離れになってしまっても、私たちはきっといつかまた一緒になる時が来るでしょう。





荒の背中が遠のく。

しかし、その勇姿を再びこのタイトル戦決勝という舞台で見ることが出来る日を、私は待ち望んでいる。





荒正義、五位敗退。

残すは、あと半荘二回戦。





 


(文責:松崎 良文 文中敬称略)

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