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タイトル戦情報

第18期 麻雀マスターズ 

決勝観戦記

(文責:山井 弘)


マスターズ決勝の5日前、私は同世代のプロから丁度こんな話を聞いたところだった。

そのプロが、「東風戦で、よくポン・チーする打ち手がいますけど、どうします?」と、あるトッププロに質問したという。
それを受けたトッププロは、「そんなの、我慢して手が入るまで待つしかないよ」と、答えたという。

そのプロは、気になったので他の人にも聞いてみることにした。
すると、「そんなの、一緒になってポン・チーするしかないよ」
と、麻雀プロではないが長く麻雀に関わる仕事をする人から、このような答えが返ってきたという。

どちらが正しいのだろう・・
この時、ちらっとそう思ったが、あまり考えはしなかった。

それから5日後、私は、そのタイプの打ち手をマスターズの決勝で目の当たりにすることになる。
そして、そのことを深く考えさせられる事になった・・


4月29日は、昭和の日。
全国的にお休みだが、ここ新橋にて麻雀マスターズの決勝が行われようとしていた。
私が30分前に会場に着くと、すでに朝倉と牧野がこれから戦う卓の近くで談笑していた。

朝倉 ゆかり



朝倉ゆかり(協会)
日本プロ麻雀協会に所属。協会のタイトル戦である、新人王や女流雀王などを獲得。
ベスト8では、前原雄大・沢崎誠の二人を敗って決勝進出。
これまでの戦いを見る限り、愚形でのリーチが少なくきれいな麻雀を打つという印象が強い。
大事な局面では、しっかりと相手をかわす仕掛けやヤミテンが決勝でも決まるか。

牧野 卓人


牧野卓人(一般)
一般参加の牧野は、予選で9万点条件をクリアーするなど、その爆発力は計り知れない。
それに加えて、ベスト8では朝倉と沢崎がシバ棒差で競っていたのを素早く計算し、最後はどちらを決勝に残すかまで考えていたという。
仕掛けを多用し、相手にプレッシャーをかけていく戦法は、その素早い計算から基づくものかもしれない。


その二人の様子を見ていると、会場へさっそうと現れたのは今里。

今里 邦彦


今里之彦(連盟)
日本プロ麻雀連盟A2リーグ所属。第14期麻雀マスターズチャンピオン。
マスターズを制した年度に、チャンピオンズリーグやグランプリ2005の決勝まで駒を進めるが、惜しくも敗れる。
久しぶりの決勝進出に、再びこのマスターズの栄冠を手にしたいという思いが伝わる。



そして、開始の時間が迫り、ようやく4人目の決勝進出者が顔を見せた。
ガースである。雀ネームなどではなく、れっきとしたアメリカンである。

ガース・ネルソン


ガース・ネルソン(連盟)
日本プロ麻雀連盟D1リーグ所属。カリフォルニア出身。
連盟に入って4年目のガースは、ベスト8を3連勝で飾り、自身初、そして外国人初の決勝進出となった。
「エキサイトすると、ダメダメね」こう、自らの弱点を語るガース。
その弱点を克服し、優勝すればもちろん日本人以外の初のタイトルホルダーとなる。

この4名が揃ったところで、マスターズの決勝は開始された。







1回戦(起家から、今里・ガース・朝倉・牧野)

開局は、ガースが先手を取って仕掛ける。
それに追いついた朝倉がリーチ。
そのリーチに怯まず、さらにを仕掛けてテンパイを入れたガースが、

 ポン ポン ポン ツモ ドラ 

この2.000・4.000をアガリ、開局を制した。
この時のガースが、あまりにも自然だったので、対局終了後、

「ガースあまり緊張してなかったの?」と、聞くと。

「ノー!緊張してたね、手が震えてたよ」と、身振り手振りで答えてくれた。
私は、ガースも日本人と同じように、普通に緊張することを初めて知った。

さて、そのまま波に乗りたいガースだが、迎えた親番で痛恨のアガリ逃しをしてしまう。
東2局、まず朝倉からリーチが入る。

 ドラ

朝倉は、が入って切りリーチ。これにガースが追いつく。

 ツモ

は1枚切れ。は筋とはいえ、切りのリーチに対しての危険度は同じくらいだろう。
ならば、前局、朝倉に競り勝ったことも加味し、打点の高い方で受けるのが自然に思うのだが、ガースの選択は切りリーチ。
そして、一発でを被ったガースは、すぐにを掴み3.900の放銃となってしまう。

ガースの短所は、自分でも分かっている通りエキサイトしてしまうこと。
では、長所は?といえば、相手に怯まず攻め、その波に乗った時の破壊力だろう。
この時は緊張で、いつものガースらしさを失っていたのかもしれない。

次局、牧野がフリテンのリャンメンをチーして、バックの1.000点の仕掛けで朝倉の親を落としに行く。
それがうまくアガれ、迎えた親番でも遠いところから仕掛けていく。

 ドラ 

7巡目、この形から、をチー。
そこに、西家・ガースからリーチが入る。

牧野が、一発でをつかみ5.200の放銃となった。
予選で見た牧野は、本手の仕掛けでない場合は、受けに回って絶対と言っていいほど放銃を回避してきたのだが、この時は、決勝という重圧に負けけたのだろうと思った。

しかし、それは私の大きな勘違いで、この後、牧野の親に対する執念の深さを知ることとなる。

そして南1局、ここでも牧野は徹底して仕掛けて行く。
その鳴きで、ここまで静かだった今里に、

 リーチツモ ドラ ウラ

この初アガリの4.000オールが飛び出し、トップ目となった。

その今里の連荘を止めたのは朝倉。

危険を感じたのか、のポンテンで軽く捌いて今里の親を落とす好判断。
同じような場面を、予選で何度も見せてくれた。

南2局は、またも牧野が、今度はドラ暗刻で仕掛けて行く。それを朝倉が、

 アンカン ロン ドラ カンドラ

このヤミテンでかわすが、ここは自分に流れがきていると信じて、リーチといってほしかった。
牧野の仕掛けに、対応してしまったのかもしれない。

南3局、これまで牧野の仕掛けはすでに4局。その仕掛けを警戒してしまったのは今里。8巡目に、

 ツモ

まだ、仕掛けもリーチも入っていない局面で、ここから打としてしまう。

三色はあるが、ドラが2枚もあるので1枚切れのカンを嫌う理由はない。
牧野に鳴かれたくないという思いが、この一打を打たせているように思う。

朝倉もそうだったが、卓に座っていなければ分からないような、仕掛けに対する重圧がこの二人に重くのしかかっているのかもしれない。

それを知ってか知らずか、またも牧野が仕掛ける。

 ポン ポン ポン ドラ

これだけ鳴いていれば、エネルギー切れで失速してしまいそうだが、牧野は本当にパワーがある。
また鳴こうとしても、ここまでそう鳴けるものでもないと思うのだが・・

しかし、この仕掛けに対してを叩きつけ、アガリ切ったのはガース。

ガースは、このアガリで今里を捲ってこのまま1回戦のトップを決め、好スタートを切った。
2着には、オーラスに今里を100点差でかわした朝倉が浮上。
今里は、そのまま3着となり、全12局中、7局仕掛けた牧野はラスとなってしまった。

しかし、この仕掛けはすべて牧野の計算だったのかもしれない・・


1回戦成績  ガース+44.7P  朝倉+10.9P  今里▲9.2P  牧野▲46.4P




2回戦(起家から、朝倉・今里・牧野・ガース)

東1局から、朝倉が果敢に仕掛けて、ガースと二人テンパイ。

朝倉は、予選で牧野と対戦しており、仕掛けが多い打ち手という情報はあった。
そして、その仕掛けに対応するか否かを決めかねたまま、決勝戦の朝を迎えてしまったと、後に話す。

その朝倉が、決勝を戦いながら出した答えは、自らが仕掛けていき、逆にイニシアチブをとるという作戦だった。
東2局、その朝倉がまたも仕掛ける。

 ドラ

この形から、北家で1枚目のを仕掛けて行く。こんな遠い仕掛けをする朝倉は、予選を通じて初めて見た。
そして、4巡目にを切ると、それが牧野に捕まってしまう。

 ポン ポン ロン

普通の人の仕掛けであれば、当然警戒する仕掛けなのだが、これまでの牧野の仕掛けからは、今回開かれた手牌は想像もできなかったであろう。
また、その仕掛けに対応するべく、自らも仕掛けている訳だから当然アガリに向かうのは仕方がないのだが・・

これが、実は牧野の計算だとは・・

「よく仕掛けるのは、本手の鳴きをごまかすため。かくすんですよ。」
と対局後に牧野が語る。

朝倉は、牧野に対してどう対応しようか考えている時点で、すでに牧野の術中にはまっていたのかもしれない。

その牧野の仕掛けに、まだ動じていなかったのはガース。
東3局1本場、配牌でガースにドラ暗刻の勝負手が入る。

 ドラ

7巡目にこうなり、今里からが出るが、それをスルー。

鳴いた形が、のリャンメンの仕掛けだと、相手に警戒されてしまうので鳴かない手もあるが、ポンとカンのチーはそれほど警戒も少ないと思うので鳴く手はある。{まあ、警戒されても、この形ならどこからでも仕掛ける打ち手の方が多いと思うが}

だが、ガースはそれをスルーして同巡に、を引いて迷わずリーチ!
見ていて、気持ちがいい。つい応援したくなってしまうのは、私だけではあるまい。

しかし結果は流局・・
仕掛けていれば恐らく牧野が、そして、ヤミテンにしていたら、朝倉がで放銃となっていた可能性が高い。

次局は、体勢の悪い朝倉が牧野に一発で5.200を献上。
そして南1局、前局に放銃となった朝倉の親番で、今度は牧野が凄いところから仕掛ける。

 ドラ

この配牌から、今里の切った第一打のをチー!?
何をしたいのか、まったく分からない。
こんな仕掛けをして、体勢の悪い朝倉にアガリが入るようなことになれば、私なら後悔してしまうので鳴けない。

しかし、テンパイしたのは朝倉ではなく、今里であった。

 ドラ

今里が即リーチに行くと、その宣言牌を今度はチーして、次巡手出しで今鳴いた牌を切って見せる牧野。
いわゆる一発消しというやつだ。

これも、うまく食い下げればいいが、もしツモられるようなことになれば、後悔するのでやはり私には出来ない。

そして、私が心配していた通り、牧野は食い下げるどころか、今里にをツモらせてしまう。
ウラは乗らず、1.300・2.600。

そして、これをアガった今里が、迎えた南2局の親番で、4巡目に早くもリーチ。

 ドラ

これは、さすがに決まったかと思われたのだが、今里のリーチ宣言牌をまたもや牧野が、チー!?
前局鳴いてツモられているだけに、普通ここでは鳴けないだろう。
しかし、牧野はノータイムで鳴く。
しかも、今度は高めのを食い下げた。

「一発の時は、感覚で動きます。できることはやっておこうって感じです。」
と、話していた牧野。

結果は、今里が終盤に安目のをツモアガるが、今里にしてみれば鳴きで、何が下がったのか気になる。
一発とか高目とかがあったのではないかと、自然に考えてしまうものだ。
ましてや、アガれなかった日には、本当に食い下がってしまったのではないかと、不安になる。

また、そう思わせるように牧野は、ツモ切りをあまり見せず、手出しを多くすることで相手を疑心暗鬼に追い込む。
その心理をつく仕掛け恐るべし。

そして、この辺りから牧野が何をやりたいのか、少しずつ分かってきた。

その牧野が、南3局の親番で、全員の心を折る、

 リーチツモ ドラ ウラ

この4.000オールのアガリ。
{なんで、あんなにポン、チーしている人にこんな手が入るのだろう・・しかも、リーのみが親満になるなんて・・}
と、対局者の心の声が聞こえてきそうなアガリである。

そして、牧野はこの後も、
南3局1本場、形式テンパイ。(3フーロ)
南3局2本場、役なしカンのリーチのみ。流局。
南3局3本場、バックの仕掛けで、朝倉から1.500。
と、好き放題やって、親の連荘に執念を燃やす。

その牧野から、南3局4本場、

 チー ロン ドラ

この8.000をガースがアガリ、一矢報いたのだが・・

迎えたオーラス。
牧野がトップ目で、今里がそれを追う。ガースは今のアガリで牧野を射程圏内に捉え、2連勝を狙う。朝倉は一人大きく沈んでいる。
そして、親のガースにドラドラの早い1シャンテンが入る。

 ドラ

これをアガれば、先ほどトップのガースはかなり有利となる。
朝倉が、ホンイツ模様ではしばらく鳴けないだろうが、-が入ってのリーチも悪くない。
そう思っていたら、トップ目の牧野から7巡目にリーチが入った。

捨て牌が、


 

このような、七対子を匂わせるような捨て牌である。

しかし、ここはガースもチャンス手なのでアガって連荘したい。
そして、そのガースが数巡後にを切ると、牧野の手牌が倒された。

「九種だったら、流そうと思っていたんですけど、第一ツモで10種になったので国士に行きました。
リーチは、それをしないで他の人にアガられるのが、嫌だったのでしました。」
と牧野は語る。

注目は、捨て牌の順番である。すでに国士の匂いを消そうとを3巡目に切り、その後は少しでもホンイツに見えるように工夫している。
これは、始めからリーチも想定して捨て牌を作っているということである。
また、この大舞台で、堂々と国士のリーチを掛ける牧野の勝負根性、そして、その経験則はかなり高いレベルにあると私は思う。

まさか国士のリーチだとは、夢にも思っていなかったガースは、牧野に対し「ふざけた鳴きをする人」と、そのイメージを語る。

それは、これまでの戦いで、牧野が全員に植え付けてきたイメージであった。


2回戦成績  牧野+77.3P  今里+16.1P  朝倉 ▲36.2P  ガース▲57.2P

2回戦終了時 牧野+30.9P  今里+ 6.9P  ガース▲12.5P 朝倉 ▲25.3P




3回戦(起家から、牧野・今里・朝倉・ガース)

ガースの国士放銃で助かったのは、朝倉。
ダントツのラス目だったのが、3着に上がり少し落ち着きを取り戻した。

東1局、今里、ガースのリーチを受け、冷静にピンフのヤミテンでかわす朝倉。
その後も、テンパイや細かいアガリで点棒を増やし連荘すると、それに待ったをかけたのは、牧野。
東3局2本場、3巡目、

 ドラ

ここからを仕掛ける。朝倉に、これ以上は連荘させませんよ、ということだろう。
今里が軽くピンフをアガリ、牧野してやったり。

南1局、今度は、朝倉が仕掛けて牧野の親を落としに行くが、それは牧野の土俵で戦っているようなもの。
牧野も仕掛け返して、連荘。

南1局1本場では、今里に勝負手が入るが、やはり牧野の仕掛けでツモがずれ、面前で入るはずのテンパイが入らない。

 ポン ツモ ドラ

渋々この1.000・2.000。

牧野の仕掛けが、場面を捻じ曲げ展開がまるで読めない。
戦っている3人はもちろん、本人もどうなるか分かっていないのではないかと思うくらいである。
ただ牧野は、本能と経験則を頼りに、勝利を目指し普段通りの麻雀をしているだけなのかもしれない。

南2局、アガって迎えた、今里の親番。牧野が、を切って先制リーチ。
同巡に、七対子のドラ単騎で追いついた今里が横に曲げた牌は
しかし、無情にもそれは牧野の当たり牌であった。

 ロン ドラ ウラ

南3局、今度はガースから、

 リーチロン ドラ ウラ

これを、一発で打ち取る。
牧野の河に視線を落とすと、そこにはが妖しく光輝いていた・・

これを放銃してしまったガースだが、最初はトップだったので、2回戦が終わった時点では、まだそんなに悲観する点差ではなかった。
しかし、この舞台での役満放銃はさすが堪えたと見える。
それにもまして、この半荘何度もチャンス手を潰され、遂にその弱点が出てしまったのかもしれない。
止めに、筋を切ったら一発とウラウラで8.000点とは・・
まるで、ガースの心が折れる音が聞こえてきそうであった。

これをアガった牧野は、朝倉をかわしトップ目となり、オーラス迎えた。

牧野と朝倉の点差は、2.800点。朝倉は、ここで何としても牧野を捲っておきたいところ。
その朝倉のと、如何にも早そうな捨て牌に、素早く反応したのは牧野。
1面子もない、3〜4シャンテンの牌姿から、ドラのを放つ。
それに、ポンとしたのは、親のガース。

これには、朝倉、今里の二人も行くに行けない・・
そして、牧野も当然オリ、ガースの一人テンパイ。

牧野にしてみれば、ガースがアガったとしてもまだ自分がトップ目、ガースの体勢ではアガリまではないくらいに考えていたかもしれない。
例え、朝倉や今里がそれを鳴いてアガったとしても、自分が2着なら首位の座は変わらない。

この時私は、牧野のすべて計算された打牌、そして、その引き出しの多さに驚愕を覚えた。

オーラス1本場は、やはり牧野が軽く捌いてトップで終了。
牧野が連勝し、他3人にとって次の4回戦は正念場となった。

3回戦成績  牧野+41.9P   朝倉+16.2P  今里 ▲12.8P  ガース▲45.3P

3回戦終了時 牧野+72.8P   今里 ▲5.9P 朝倉 ▲9.1P ガース▲57.8P




4回戦(起家から、今里・朝倉・ガース・牧野)

牧野は、北家でもスタイルを曲げず、3フーロして今里の親を落としに行く。

 ポン チー ポン ロン ドラ

朝倉が、いままで抑えていたが、三色のテンパイで我慢しきれず2.000の放銃。

東2局、親を落とされた今里だが、ここまで3・2・3着とよく粘っている。
それはやはり、今年度に賭ける思いと、2度目のタイトルを取りたいという強い気持ちがあったからではないだろうか。
もちろん狙いは、優勝のみ。じっと我慢して、そのチャンスをうかがう。
そして、ようやくそのチャンスがやってきた。

 ツモ ドラ

しかし、この2.000・4.000をヤミテンでアガる。
ここはリーチに行って跳満にしてほしかったが、久しぶりの決勝ということもあり、慎重にそして丁寧に進めた結果そう判断したのだろうと私は思っていた。
しかし、対局後に今里から聞かされたコメントは、

「この時ツモれると思ったんですけど、牧野さんに動かれてツモ筋をずらされるのが嫌だったんです。」

と、実は牧野の仕掛けに対応してしまった故のヤミテンだと知った。
やはり、3回戦に執拗なまでに今里のリーチを食いずらした牧野の仕掛けが、ここへきて効果をあらわしたのかもしれない。

しかし今里は、この後もアガリを重ね牧野を追う。
自らのアガリで牧野の親を落とし、迎えた親番。

南1局、今里が、

 ツモ ドラ

この4.000オールを決め、この半荘トップ目となり、普通はこれで牧野を追う展開になると思うのだが、どこかしっくりこない今里。
この後、爆発しきれないのは、どこかで牧野を意識しているからかもしれない。

そして、ここからトップ目が何度も入れ替わる乱打戦となり、今里もそれに巻き込まれて行く。
南2局1本場、朝倉が先制リーチ。

 ロン ドラ ウラ 

この12.000をガースからアガって、朝倉がトップ目に立ち、今里に替わって牧野を追う1番手となる。
南2局2本場、ガースが仕掛けて、

 ポン ポン ロン ドラ

この8.000を、リーチの今里から討ち取る。
南3局2本場、朝倉がガースの連荘を止めるため、そして牧野に少しでも近づくためにリーチ。

 アンカン ドラ カンドラ 

しかし、これに追いついたのは、ガース。

 リーチ一発ロン ドラ カンドラ ウラ カンウラ

この12.000を、朝倉から一発で打ち取り、今度はガースがトップ目となった。
南3局3本場、牧野を追うのは俺だ、と言わんばかりに自風の西を鳴いて、ガースの親を落としに行く今里だが、それが牧野に捕まる。

 ロン ドラ ウラ

この、リーチ・一発・ウラで5.200放銃。

ここまでトップ目が、今里→朝倉→ガースと流れてきて、オーラスの親は牧野。
やはりというか、何というか牧野が3局連続のアガリを見せる。

オーラス、500オール。
続くオーラス1本場、

 ポン ロン ドラ

この1.500を朝倉から。
そしてオーラス2本場は、

 ポン ポン ポン ロン ドラ

またもや朝倉から5.800をアガリ、執念の連荘で遂にトップ目となった。   

最後は堪らず、今里がガースをかわして2着となり、残り2回に僅かな希望を残した。

4回戦成績  牧野+41.0P   今里+10.0P  ガース ▲10.2P  朝倉 ▲40.8P

4回戦終了時 牧野+113.8P   今里+4.1P 朝倉 ▲49.9P ガース▲68.0P




5回戦(起家から、今里・朝倉・牧野・ガース)

もう後がない3人。ここで牧野がトップを取れば、ほぼ決まってしまう。
朝倉とガースは、自分がトップを取らなければ優勝もないだろう

今里と牧野の差は、109.7P。
マスターズのルールであれば、トップとラスで順位点が60P縮まる。なので絶望的な数字ではない。
しかし、「6回戦を通してラスを引かないことを目標にします」と、決勝進出のコメントで語る牧野が、このあと崩れる姿を想像することはできなかった。

東1局、親の今里にチャンス手が入った。

 ツモ ドラ

今里の打牌は、。このが打てない・・

ここで、目一杯に構えて、勝負をかけなくてはいけないのは、本人も重々承知だと思う。
しかし、自然に牌を絞ってしまう。

これまでの牧野の戦いに翻弄されてしまったのもあったと思う、しかしそれよりも、決勝という舞台を大切に捉え過ぎたのではないだろうか。
勝負所で大胆に攻めるという今里のいいところが、出しきれなかったようにも感じた。
また、このタイトルを一度その手にしているだけに、今回は勝ち方にこだわったのかもしれない。
そして、それはプロとして大切なことだと思う。

しかし私は見てみたかった、14期マスターズを制した時のような、がむしゃらな今里を。

今里はテンパイできず、朝倉がガースから8.000点をアガる。
東2局は、全員ノーテン。そして迎えた、牧野の親番。
東3局1本場、ガースが10巡目にテンパイ一番乗りでリーチ。

 ドラ

3巡後、追いついたのは牧野。

 リーチ一発ツモ ドラ ウラ

この6.000オールで、この半荘トップを飾り、ラススタートの後に4連勝でほぼ優勝を確定させた。

5回戦成績  牧野+57.0P   朝倉+15.6P  ガース ▲22.5P  今里 ▲50.1P

5回戦終了時 牧野+170.8P   朝倉▲34.3P 今里 ▲46.0P ガース▲90.5P


6回戦(起家から、今里・朝倉・ガース・牧野)

しかし、最後まで手を抜かない牧野は、この後も仕掛けにヤミテンにと多彩な技で局を進めて行き、
南3局、牧野が3巡目にリーチ。

 一発ツモ ドラ ウラ

これをアガり、オーラスに役満を打っても優勝が決まった瞬間、牧野の顔からホッと安堵の色が広がった。



6回戦成績  ガース+52.3P   朝倉+12.9P  牧野 ▲11.2P  今里 ▲54.0P

最終成績  
優勝   牧野卓人     +159.6P
準優勝  朝倉ゆかり    ▲21.4P
三位   ガース・ネルソン ▲38.2P
四位   今里之彦     ▲100.0P

後列 左から 第4位:今里 之彦 準優勝:朝倉 ゆかり 第3位:ガース・ネルソン
前列 優勝:牧野 卓人さん

 

「やっと終わったという感じです。最初のラスで開き直って行けたのがよかったですね、それにしても、一発とウラがよくセットになってましたね。」
と、対局後に嬉しそうに話してくれた。

牧野卓人さん、本当に優勝おめでとうございました。




泰然自若

こうして私は、あの時のことを、対戦後、深く考えさせられることになった。
我慢して、手が入るのを待つのか、一緒になってポン・チーをするのか・・

今の私には、どちらが正しいのか、正直分からないというのが本音である。
ただ、やはり一緒になってポン・チーすることはできない。それは、プロとしてのプライドかもしれない。
いずれにしても、私はこれからも麻雀プロとして、麻雀に関わっていく以上、誰の動きに惑わされることなく、
泰然自若に堂々と麻雀と向き合って行きたい。

この日私は、牧野さんの麻雀を見て、ふっとどこか懐かしい気持ちになった。

そういえば、麻雀を覚えたての頃は、タンヤオやトイトイしか知らず、鳴ける牌がでたらどんどん鳴いていたような気がする。
そこには何の打算もなく、ただ純真に真っ直ぐアガることだけを考え、麻雀を楽しんでいた時代だったように思う。
いつの頃からだろう、相手に放銃しないようにとか、この牌を切ったらどう思われるかなんて考えながら麻雀をするようになってしまったのは。

内容ばかりに気を捉われず、勝ちにこだわった戦いも忘れてはいけないと思った春であった。

麻雀を覚えたての頃のように・・


 

 

 

(文責:山井 弘 文中敬称略)

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