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タイトル戦情報

第17期 麻雀マスターズ 

決勝観戦記(後半)

(文責:今里 邦彦)


4回戦

しばしの休憩を経て、4回戦が始まった。
この半荘は、「死に体」と見られても仕方ないはずの猿川の為に存在したようなものであった。
全12局中、9局でテンパイを入れ、7本のリーチ棒を放ったのだ。
常に局面をリードし、6回のアガリ(しかも1局を除き、他家の放銃)をもぎ取る。

だが、これはある意味では予測の範疇にあったことなのかもしれない。
既に戦いは中盤にさしかかり、圧倒的(に近い)リードを保つ黒田の首根っこを捕まえなければ森山/大川ともに展望が開けないのだから。
その為には…当然、自分のトップが望ましいが、それと同じ位に望ましいのが黒田のラス、それが無理でも3着を引いてくれること。(※ラスは▲30P、3位は▲10Pの順位ポイントが付く)

だが、今日の黒田はなかなかにしぶとい。
沈みそうな展開でポンとアガり、親番でグイっと連荘を重ねて安全圏に到達してしまう。
追走する立場の森山と大川にとっては、いささかヤキモキした状態が続いている。
そんなターゲット黒田に「リーチ」という名のプレッシャーを与え続けてくれ、しかも少々のアガりでは追いつかないほどの傷を負った存在、それが猿川なのだ。


◆ 1〜3回戦、全44局でのリーチ宣言回数(宣言牌がロン牌だったものも含め)は…
大川11回・森山11回・猿川12回・黒田13回と、ほとんど互角。
しかし、先行リーチの数になると猿川が圧倒的に多く、また全局におけるシャンテン数の対比でも、猿川が他より最も早い手牌進行となっている。

東1・東2と黒田→猿川という、追う3者にとって理想的な展開が起こる。
しかし、これは決して卑屈な放銃ではなく、むしろ猿川に真っ向から立ち向かう姿勢を崩さなかったゆえのもの。
考えてみれば、今年還暦の黒田にとってこのマスターズ決勝は久々に訪れた晴れの舞台。
そして悲願の初優勝に一歩また一歩と進む道のりの、まだまだ途中なのである。
ここで受けるのは簡単だが、その姿勢だと残り3半荘に渡って自分の麻雀スタイルとは異なる模打を続けることになる。それを良しとしなかったのかも知れない。

現実的にも東1は2,000点、東2は3,900点という半荘における致命傷となる放銃点数ではなく、そのかわりに東1の親・大川のタンピンドラ2イーシャンテン、南家・森山の国士無双1シャンテンを封じ、
東2も親の森山の9,600イーシャンテン、大川の8巡目ヤミテン、

 ドラ

このハネマンテンパイを阻止している。
今日の黒田は放銃さえも展開の利となっている、そう感じながら東4局を迎えた。
親となった猿川、6巡目にリーチを打つ。

 ドラ

もちろん引っかかってもいないし、に気が行くような捨て牌状況ではない。
ドラのも顔を見せてはいない。それでも即リーチ。
とにかく、尻までボウボウと火の粉が舞っているのだ。
相手を押さえつけるしかない。そんな心の囁きが聞こえてくるようなリーチであった。

そこに黒田がいつもと同じように淡々と、しかし一歩一歩踏みしめるかのように手を整えていく。
その刹那、ツモ切りのが当たる。
その瞬間の黒田の顔が一瞬曇る。
先ほどの連続放銃の際には見せなかった表情だった。
「なぜこんな牌を持ってきたんだ?」
そう言いたげな顔を垣間見せ、素直にリーチのみの2,000点を支払い、手を伏せた。


そして1本場。
先ほどまでの往き方が間違っていなかった、そう思わせるような中張牌に溢れる配牌をもらい、丁寧に内に寄せていく黒田。
7巡目にタンピン三色のイーシャンテンに到達し、ラス目(3着目森山まで1,500点ほどの差だが)脱出どころかトップまで狙える状況に。
その時点ではまだホンイツ2シャンテンだった猿川は、黒田がツモ切りを続ける3巡の間に追いつき、そして追い越しテンパイを入れる。

 ドラ

1枚、1枚切れの11巡目。
当然、即リーなのだろうと思いきや…。
スッとテンパイ打の(1枚切れ)を置き、ヤミテン。

待ちの良し悪しだけではない。これをヤミにするのなら、ついさきほどのペンはなぜリーチなのか。
東1のメンピンリーチだって、東2のピンフイーペーコーできあいのリーチだって、むしろヤミでいいんじゃないか?とその場では強い違和感を覚えたのだった。

この局は次巡、猿川がをツモって4,000オールになった(リーチをかけていれば6,000オール、裏が一枚載れば8,000オール)事が余計に強いインパクトとなっているのかも知れない。
局の終了後、私はメモにこう書き残している。
「猿川、なぜかヤミテン。大川の現物待ちだが、初めから今局は黒田の気配がプンプン。だからこそのヤミ?それは猿川の姿勢とは異なるのでは?」

今回、この観戦記を書くにあたって、全局を一気に並べてみた。
その時、ふと思ったこと。それは…
「この局の猿川は前局までの黒田の往き方にある程度のシンパシーを感じていて、満を持した感のある黒田のリーチに対し、対峙するにはやや分が悪いと感じていた」からなのか、と。
まるっきり見当違いなのかも知れない。
だが、それまで一貫してきた猿川の攻めの姿勢がなぜ今局に限ってヤミテンを選択させたのかが、そうとでも考えない限りどうしても腑に落ちないのだ。

畢竟、麻雀とは人と人との思惑が交錯し、ある人には良く、ある人には悪しき結果をもたらす、その繰り返しに過ぎない。
思惑を漲らせるのも一局。観る人の憶測を覆すのも一局。
それを司る「意志の力」。
私が麻雀に惹かれる源は、そこにあるような気がする。


猿川、次局はあっさりと親落ち。しかも黒田の満貫ツモ。
このアガりで黒田は2着目に浮上。…やはりあのヤミテン選択がいけなかったから…と甚だ非論理的なことを考えていたら。



黒田の姿勢がほんの少し揺らぐ。その揺らぎの瞬間を鋭く捉え、猿川がなぎ倒した。
これまでの3回戦、黒田はこの手格好からツモってきたを止める麻雀を打ってはこなかったのだ。
おそらく、猿川の異様な河を感じたのだろう。
それまでの黒田はある意味不公平な位に、他者のロン牌を掴まなかった。おおむね、放銃の時は手牌から打ち出されたそれであったのだ。
が危ない、そう感じた黒田の洞察力は決して間違いではないのだ。
大川も猿川もゴツゴツした手に特有の捨て牌相になっているのだから。
だからこそ、ではない何かを必死で感じ、放って欲しかった。
この12,000ですら、タイトル戦自体を左右するほどの決定打ではない。
それは対局者のみならず会場全員が感じることであっただろう。
だが、この一撃が、黒田失墜のターニングポイントであったのだ。

この局以降、黒田には反撃のチャンスが与えられぬまま、オーラスも黒田ラスを確定させる森山の3着確定和了で6巡目に終了。
トータル成績とは逆の着順となったことにより、一気に差が縮まったのだった。

4回戦成績
猿川 +56.4P 大川 +10.0P 森山 ▲20.7P 黒田 ▲45.7P

4回戦終了時
黒田 +60.2P 大川 ▲3.9P 森山 ▲12.7P 猿川 ▲43.6P






5回戦

休憩の間、いち早く席に戻った黒田は卓の中央を眺めていた。
強い眼力ではないのだが、決して放心した様子でもない。一種表現のしにくい表情がそこにあった。
「あと2回…」と思っていたのだろうか。それとも、何の神にだかはわからないが心の中で祈りを捧げていたのだろうか。
じきに選手が揃い、5回戦が始まった際の顔つきは、凛としたものが備わった実にいいそれであった。

逆に大川の表情がかなり固い。4回戦で期するものがあったのだろうか、手つきもややギクシャクし、小考が増している。

森山はというと、打つ姿勢は緒戦から変化はないものの、4回戦途中かなり室温の低い(ように私には感じられた)対局場の温度を下げてもらうよう立会人に依頼している。よくみると顔も赤みを帯びている。(※後で伺うと、当日微熱があったとのこと)

猿川はというと、ただ一人毎回変わらない様子で対局場外の喫煙スペースに行き、一服。それを終えると無表情でスッと戻る。その行動を繰り返している。

猿川はほぼトップ縛りだが、森山と大川は黒田次第では2着でも最終戦の目は残る。
黒田はラスさえ引かなければ最終戦を優位に迎えられる(次戦のトップ者に詰め寄られはするが)。


そんな各自の状況を踏まえ、5回戦が始まった。

序盤は森山が1,300出和了り、続いて500オールをツモと軽快に進めていく。
だが、今までに比べてやや打点力の低い手組みでもスピード優先にしているのが若干気になった矢先の同1本場、黒田のタンキ(と切ってのリーチ)のリーチ一発チートイツに痛恨の放銃、続いて大川にも7,700(リーチ裏2)に放銃して森山の勝機はやや遠のいてしまった。
もちろん、黒田のリーチは「なぜタンキ?」と思わせるものであったし、大川のリーチも唯一の複数枚ある牌が裏ドラになるという不運の結果。
押し引きで言えば決して間違いではないのだが…。

その和了を機に、大川が伸びていく。
猿川から2,900(+300)、2,600は2.800オール、500は800オールと加点して、持ち点は50,000点を超える。
大川は対局に集中するとその局面に没頭するタイプなのか、いつの間にか模打も手際いいテンポを取り戻している。

森山にはその後も好手が入り続けるのだが、なぜかイーシャンテンになるとピタリと手が止まってしまい、他家の後塵を拝す展開ばかりが続いていく。
なぜなんだろう。
実に丁寧に手牌に接し、押すべき時に押し、引くべきときに引く。
言うなれば当たり前、だけど行うには難しい。その様を目の当たりにして、なおこの展開。
それでも、どうにかこうにか南場の親番で連荘を続けた南2局2本場。

この局のアガリは森山のポン(の形から)が結果的には引き出したもの。

対局終了後、森山はこの局についてこう語っている。
「根本的にこの仕掛けは間違い、最悪だったね。 必死に流れを作って連荘して、やっと手が入ったその<なんとかなりそうな時>瞬間、集中力が途切れ、「ポン」と声が出てしまった。苦しい時は一つのミスが致命傷になる。チャンスの手ごたえは感じていたのにポンで元の木阿弥、自分の状態を悪い流れに引き戻してしまった。
仮にポンが吉と出たとしても、それは、この局に限ればいい加減な責められるべき仕掛けだと思う。苦しい対戦だったけど、このミスが無ければチャンスは十分にあったね。」

まさにその通りだと私も思う。
結果もさることながら過程/内容重視の麻雀、その言葉を実践してきた今日の森山だったからこそ、この局が悔やまれるのであろう。
それはこの日全局を通じて後ろで観戦していた私自身の思いでもあるし、テレビ放送等を通じ全国に存在する森山ファン共通の思いなのかも知れない。


そして最終局。
ラス目(17,800点)の森山はラス脱出まで5,200点差の中の7巡目、

 ドラ

ここが分岐点となった。
-がドラ表を含めて4枚見え、-は1枚、1枚見えの状況。
3,900(メンピンドラ1)では条件を満たせない事もあり、ドラ引きの可能性も見ての打。この場にいたら私もそう打つのだと思う。しかし…。
ここで打としての5巡後引きリーチ、最終巡目でのツモ。これしかラス回避の道は無かったのだ。
実戦では打の後、すぐにターゲットである3着目の黒田からリーチ。
一気に条件が緩和した事もあり、そのまま無筋もツモ切ってツモで追いついた森山の選択は、ドラ単騎リーチであった。
山に一枚だけ残っていたその牌は、16巡目に下家・大川の手牌の奥へと仕舞われて終局となった。

猿川はここにきての連勝、まさかの逆転優勝も夢ではない状況に復活。
森山はトータル首位を守る黒田とのトップラスが前提条件、その上で37,000点差をひっくり返す必要がある。
大川は首位まで33P差。少ない数字ではないが、黒田より1順位+13P差なので現実的にも初優勝の目は充分にあるといっていいだろう。
そして黒田。後続の馬群が迫ってきたとはいえ、あの(4回戦南1局)以降も表面上はあまり変化もなく、アガりに純粋な姿勢を崩さないように見受けられる。
森山が後退した今、大川/猿川の若武者2人であれば貫目で勝てると自分を鼓舞する事だってできるだろう。
だが黒田は、またも一人闘志を蓄えるかのように最終戦までのひとときを、じっと席に座って佇んでいた。
まるでエネルギーを充填しているアンドロイドのように。

5回戦成績
猿川 +42.0P 大川 +14.2P 黒田 ▲16.5P 森山 ▲41.7P

5回戦終了時
黒田 +43.7P 大川 +10.3P 猿川 ▲1.6P 森山 ▲54.4P






6回戦

いよいよ、最終戦。
起家から猿川・大川・森山・黒田(規定により、首位の黒田は南4局の荘家の座順となる)。
もうここからは4者の殴り合いとなるだろう、そう予想した通りに激しい攻防が東1局から繰り広げられた。



大川が一見遠く見える仕掛けをうまくさばき、テンパイを入れる。おそらく気があったであろうタンキを-ノベタンに替えた同巡、猿川も黒田もテンパイを果たす。そこに森山が参戦、猿川の最終手出しにぶつける打でリーチ。
黒田がこのフリテン状態で森山のリーチに打とかぶせた瞬間、ビリリと背筋に電流が走った思いがした。
褒めるとか貶すとかそんな感情とは別の何か。いうなれば「人間の業」に近いむき出しの感情の発露。
そんな匂いを感じる一打に思えたからだ。


そして次局。ついに猿川が首位に立った。
3巡目のリーチ。おなじみの?ペンチャン待ち愚形リーチ。

 ツモ ドラ 裏

この2,600は2.700オール(+R1,000)で、あくまで途中段階ではあるが黒田を1.5P交わして、トータル首位に。

しかし2本場は300/500(+200)を黒田がツモ。
わずか3分ほどの時を経て、再び黒田が首位奪回。
そして、ここからめまぐるしい首位の入れ替わりが発生する。

◆東2局、森山が黒田からリーチタンヤオ2,600和了。 
首位は猿川(+40.8P)、黒田はラス落ちにより(+9.1P) 大川は3着めで(▲4.2P)

◆東3局、猿川が決める。

 ロン ドラ 裏

捨て牌

この前巡、黒田もカンのタンヤオでチーテンを入れている。
1,000点を和了るだけでラス→2着に浮上し、首位逆転となるだけに間違いとはいえないのだが、このチーにより下家の猿川にペン、ペンを送り込み、一気呵成のテンパイを入れさせてしまう結果に。
そして親の森山はリーチ同巡に、

となり、手牌の可能性を優先しての放銃となってしまった。
一見、猿川絶対優位の加点に見えるが、森山がラス目に移行したことで黒田は3着目となり、2着目の大川との差400点をまくれば、首位猿川との差・約8,000点を追いかける事となって、実は黒田にとっては決して大差ではない。

この後は流局、森山→大川2,600は2.900(R1,000)と続き、南1局。
親・猿川の6巡目、淀みない模打からのリーチ。

 ドラ

この時点で山に3枚生きだったこの手牌。
雰囲気からするとツモる感じがプンプンしていた。
本人も好感触を得ていたようで、「すぐにツモれると思っていた」そうだ。
そこに森山が立ちはだかる。
当然の事だが、森山は南3局の親番まで望みが消えているわけではないのだ。
自分の優勝を目指してこの猿川の勢いを食い止めるべくメンタンピンでリーチをかける。
結果は3巡後についた。

 ロン ドラ 裏

まさかの猿川放銃。
最後の親番を満貫放銃で終え、森山は3着目に浮上。そして猿川にとって何より嫌なのは黒田が2着目になったこと。
トータルポイントも、猿川+47.2Pに対し、黒田+51.1Pと再逆転となってしまったのだ。


大川にとって、引導を渡される事になったのが南2局。
789の三色と格闘する親の大川に対し、森山がドラ暗刻リーチで攻める。
2巡目から抱えていた孤立牌のを放すとともに、森山の手が開かれた。

攻めのキツい3者に対して粘り強く受けながら手牌を膨らまし打点をつけて互角に渡り合ってきた大川であったが、この時点でほぼ優勝の望みを絶たれてしまった。


続いてラス前、森山の最後の親番を迎える。



森山は途中から連荘に狙いを定めているのだが、ここでの焦点は猿川の見逃しである。

もう一度おさらいしてみよう。

6回戦開始時
黒田 +43.7P 大川 +10.3P 猿川 ▲1.6P 森山 ▲54.4P

猿川がをアガると49,400点。(トータル 47.8P)
黒田27,400点  (トータル 51.1P)
森山 21.500点 (トータル▲92.9P)
大川 21.700点 (トータル▲8.0P) ※前回までの供託2.0P

つまり3.3P下回った状態で残り1局+α(黒田がラス親なので、黒田は猿川とのテンパイノーテンで変わらない点差になった時点で終局に持ち込む)となるのを猿川は忌避したのだ。
私は猿川がテンパイを入れた時点で、「このは黒田から出ないと和了らないんだろうな」と思いつつ、サラっと和了る猿川もまた想像できて、どういう選択をするのだろうかと注視していた。
頭で考えれば、黒田からの点棒を削りにいった方がトクな訳だ。
だが、見逃して森山が和了ったり、黒田にテンパイが入っていたりすれば元も子もない訳でもあり、なかなか微妙な選択でもある。

前回のマスターズ覇者・沢崎は「このはあがった方がいい」と指摘していた。
「この最終戦、黒田さんは東1局2本場で和了ったのみでほとんど音沙汰なし。一方の猿川くんは順調にアガりを続けて状態も良いのだから、見逃しを入れることは敵に塩を送るようなもの。例え3.3P差でも状態の差が歴然としているのだから、自分の出来具合を信じてオーラスを迎えるべきだと思う」とのコメント。

私は正直、どちらが正しいのかはわからない。その場に居合わせた時の思いとしては、自分自身はおそらく見逃すだろうな、と感じた事が全てであり、その感覚こそが自分の麻雀感なのだと思う。
ひょっとしたら、そういうこまいプレイを良しとしてしまう心持ちこそが、自分の壁になっているのかもしれないのだが。
ただし、この見逃しを見たとき、私は猿川の強靭な意志の力を感じたのも事実。
たった1,000点の見逃しではあるが、この「打ち手の意志」というものを感じ取れる瞬間こそ、ギャラリー冥利に尽きる時だと思う。

そして沢崎の言葉。打ち手としての絶対的な自信があるからこその発言なのだと私には感じられた。
昨年度は2冠を達成し、若手・中堅プロへの指導、ネット麻雀への取り組みにも積極的な沢崎だからこそ重みを増す言葉に聞こえる訳でもあるのだが。


猿川49,900点。(トータル 48.3P)
黒田25,900点。 (トータル 49.6P)
わずか1.3P黒田が上となった1本場は全員テンパイ。(森山がリーチ棒供出)

そして2本場。
猿川が4巡目にカンを叩いて-テンパイを入れる。
2巡後、ことさら感情を抑えるかのようにして、ことりと牌を横に置いた。
非常にソフトな置き方であったにも関わらず、をツモる際に目視した時の眼差しが溢れ出る思いを必死で抑制しているかのようにギラついていて、「いい眼だな」と思った。

かつて私にもこんな目をしていた時があったのだろうか…。
ギラギラした思いを剥き出しにした、野獣のような目。
私が「優勝が決まった瞬間の勝者の表情」を覗けないようになってしまったのは、欲望をストレートに表現していたであろうかつての自分を恥じる気持ちがあるのかも知れない。
その通りであれば、全く自分は勝負事に向いていないことになるのだと思う。
なぜならこの世界で一番大切なのは、「勝利」という結果を残すためならどんな犠牲もいとわないという強靭な意志であり、
その意志があればこその眼差しなのだから。


最終局。

緊迫のオーラス


黒田は必死の形相でソウズのホンイツへと向かう。
2つ鳴いて、

 ポン チー ドラ

要は、ソウズは何を引いてもテンパイという形で残り6巡。

一方猿川は9巡目にイーシャンテンになるも、さすがにソウズを打ち出せず、テンパイを目指してツモ山と格闘中。

結局、黒田はソウズを引く事ができずに終局。
猿川が第17期マスターズチャンピオンの座に就いた。

6回戦成績
猿川 +52.6P 黒田 +5.4P 森山 ▲17.7P 大川 ▲40.3P

最終成績
猿川 +51.0P 黒田 +49.1P 大川 ▲30.0P 森山 ▲72.1P



優勝決定の瞬間


終わった瞬間、私はあれほど見ようと思っていた勝者・猿川の表情ではなく、黒田の顔に視線を向けた。
朝に見た、優しげな眼差しがそこにあった。
その眼は、猿川をまっすぐに見つめていた。
つい先ほどまで死闘を繰り広げていた相手にあんなにも優しい眼を向けられる、その生き方が何より素晴らしいなと、心から思った。

後列 左から 準優勝:黒田 容吉 4位:森山 茂和 3位:大川 哲哉 
前列 優勝:猿川 真寿


自分はいつから自分勝手に諦めたり、中途半端に物事をまとめようとしたりする癖がついてしまったのだろう。
麻雀打ちとしての自分を、まだ諦めたくはない。
だからこそ、その夢にもっと貪欲でいなければ。そしてもっと真摯に取り組まなくては。
そう感じながら帰途についた。

ふと見上げると、雲の合間にぽっかりと月が見えた。
普段、そんな殊勝なことは考えない自分ではあるけれど、こんな気分の今夜くらい、月に誓いを立ててみよう。
なぜかそう思った。

対局が大幅に押した為、黒田は打ち上げの席を欠席、まっすぐ仙台に戻っていった。
黒田さんもこの月に何か思いを馳せているのだろうか。
そして、月をみつめる眼差しもまた、あの優しげなものなのだろうか。

 

 

 

(文責:今里 邦彦 文中敬称略)

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