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タイトル戦情報

第17期 麻雀マスターズ 

決勝観戦記(前半)

(文責:今里 邦彦)


4月29日。例年と同じような柔らかい春の陽光のなか、決勝戦が行われた。

開始20分前に会場の「じゃん亭Nobu」に入ると、黒田容吉と目が合った。
対局開始までの過ごし方には、各選手それぞれのスタイルがある。
緊張を解きほぐす為に会話を続ける者、一人静かに佇む者、できるだけ自然で振舞おうとする者。
どちらかというと黒田は「一人静かに〜」タイプかと思っていたので、開始前に声を掛けるのは控えようと決めていたのだが、その眼差しがなんともいえない優しげなものだったので、一言。

「今朝、来られたのですか?」

黒田は仙台在住。日本プロ麻雀連盟(以下・プロ連盟)東北本部長として選手と運営を司りながら、自ら経営する麻雀荘にも目を向けなければならない日々を過ごしている。
4月26・27日と丸々2日間、マスターズの本戦が行われたわけで、決勝前日の28日は当然自宅に帰ってまたUターンしてきたのだろうと思ったのだが…。

「来る時に4日分準備してきたんだよね」

・・・・・。
念の為に説明すると、マスターズは各地予選通過者+シード選手(各団体の実績上位者など)による200人以上で本戦を行い、半荘5回で上位52名を選出。
1位通過者はベスト16にジャンプアップ。
2位〜52位までに加え、前年決勝進出者3名+プロ連盟の2大タイトル「鳳凰位」「十段位」の計56名として、以後半荘2〜3回戦のトーナメント方式(4人の対戦者のうち上位2名を勝者とする方式を4セットを経て)で決勝進出者4名が選ばれる。(本戦1位と前年度優勝者はベスト16より参戦)

ざっと書くだけで、いかに困難な道のりかがお解り頂けると思う。
だから、少しでも楽をしたいと本戦の後半(半荘3回戦から最終5回戦あたり)では成績上位者同士での壮絶な叩き合いが行われる。
「通過確定だから」といったぬるま湯気分などどこにもない、まるでボーダーギリギリの立場のような必死さがこのタイトル戦の妙味にもなっている。

かくいう私、今期のマスターズで本戦2位でした…。
5回戦全力で叩きあってヘトヘトになりながら満足できる成績を挙げ、「やったかも!」とぬか喜びしたあげく、219人を交わしながらたった一人を抜けぬまま、また混戦に逆戻りのせつなさを味わうことに…。
その本戦1位こそが、この黒田。

そうか、新幹線に乗る時に既に決勝を想定した仕度を全て済ませていたのか…。
そりゃ納得だナ。

森山茂和は、運営席の脇で運営担当に一言二言指示を与えている。
その指示の声が、いつもより一段階小さめに聞こえる。
おそらく、選手である自分が運営に指示をしているその姿を威圧的に見せぬよう、慮っているのだろう。

森山というと「アトミックリーチ」に代表される攻撃型の雀風・性格と思われがちなのだが、実態は守備も利き、他者に対する配慮もまたしかり。
王位・最強位などタイトル実績も随一、というより今回の対局者でタイトル獲得歴があるのは森山だけなのだから、色々な意味で本命といえる存在である。
ただ今年に入ってやや体調を崩しているのが気になるところ。

大川哲哉は、応援と思われるギャラリー数人と話しこんでいる。
昨年、群馬県高崎市に麻雀荘「-4℃」をオープンさせたばかり。
幸いに店も盛況、まさに充実している上り調子の様子。

関係者に聞くと、なんと本戦時からの半荘16回、全て1着か2着との事。
「要注目」とノートにさらりと書き込んだ。

昨年の王位戦で滝沢和典と大激闘を繰り広げ、惜しくも栄誉を逃した猿川真寿は、大川同様に静岡支部の仲間たちに笑顔を見せていた。

プロリーグも順調にB1まで昇級を重ね、タイトル戦でも常連の一人になりつつある。
その勢いのままに栄冠を勝ち取るのか、それとも「決勝までの人」となってしまうのか。ある意味、正念場なのかも知れない、かな?

皆、それぞれの方法で迫りくる時を待ちながら、闘志を養っているのが伺えた。
そして皆、いい表情だ。
決勝戦初進出の大川を除いて皆決勝経験があるからなのかも知れないが、これなら「本来の俺はこんなはずじゃなかったのに…」といった悔いを残すことのない熱戦が繰り広げられるのでは、と期待に胸を弾ませたのだった。

3年前のこの日、私はこの会場で勝者となった。
優勝が決まった瞬間。
100人近くいた会場中のギャラリーの視線が私のみに注がれているのを感じた、あの瞬間。
その時、私はいったいどんな表情をしていたのだろう。

優勝して数ヶ月経って、ふとそんなどうでもいい事を思うようになってから、なぜか決勝戦を見に行っても「決まった瞬間の勝者の表情」を覗けないようになった。
うまく説明できないのだけど、その表情を眺めてしまうと自分の本性が鏡のように映し出されてしまうような気がするのだ。
今日は、そんな己の「小さなトラウマ」を払拭させてくれる、いい機会なのかも。





1回戦

定刻となり開始された1回戦。長考派の誰もいないメンツなのに、なんと全21局・2時間10分を要した。その熱闘を制したのは黒田。

◆ダイジェストで展開を記すと…
東1:森山→大川 7,700(親・大川のホンイツにリーチの森山が放銃) 
東1-1:森山 1,300/2,600(+300)ツモ(メンタンピンツモ) 
東2:黒田→森山 1,500(+R1,000)(親・森山の2フーロ1,500に猿川がノミ手リーチ。前巡テンパイの黒田もツモ切りで一通リーチ、2巡後に放銃) 
東2-1:猿川 2,000/4,000(+300)ツモ(リーツモ表裏)
東3:大川→猿川 2,000(親・猿川が11巡目にノミ手をリーチ。14巡目にテンパイした大川のリーチ宣言牌を捉える)
東3-1:猿川 2,000オールツモ(リーツモ裏1)
東3-2:森山→猿川 3,900(+600)(リーチ裏1)( ドラ 裏 の8巡目リーチに、
のイーシャンテンとなった森山がまっすぐ押して放銃。
森山いわく「放銃自体は悪くない。三者が漫然と受けて、をツモられ4,000オールを引かれる方がよっぽど悪い」との事。)
東3-3:流局(森山リーチ/テンパイ、他はノーテン)
東4-4:流局(黒田/猿川の2人テンパイ)

この時点で、東家から黒田 22,400/大川 27,300/森山 20,100/猿川 49,200となっている。
ここで迎えた東4局5本場がターニングポイントとなった。


猿川8巡目、ここから彼はほんの少しの逡巡の末、をツモ切り。
ノータイムのツモ切りなら牌姿の勘違いという事もありえるが、逆に普段の模打がほぼノータイムの猿川だけに、逡巡の理由が結果如何に関わらずとも気になった。

※対局終了後、観戦記者である事のメリットを生かしてこの点を聞こうとしたら、既に何人もが対局最中にも関わらず聞いていたらしい。
どのような立場であれ、「対局中(本当は対局終了直後であっても)に選手に尋ねる」という行為は控えましょう。
控えるべき理由がわからない人は是非考えてみてください。どうしてもわからない人には直接お答え致します。

猿川の回答は「カンに気があって、-が薄いと思っていたので」との話。
「・・・?」という気持ちのまま、「を安全牌として抱いたからでは?」と尋ねると、「・・・それもあると言えばありますが・・・」
いうまでもない事だが、の形からを打った理由なのだから、打でもを受け止める事に何ら問題はない。
その後も話を聞いておぼろげに分かってきたのは、「どうやらこの手に(メンタンピン好型のイーシャンテンにも関わらず)あまり魅力を感じていなかったのでは」という事。
形や理で打つタイプなら「ゴチッ!」としか思えない手組みでも、自らの感覚で見切る気持ちを抱ける(まあ、結果は結果として巌然と現れてしまっているが)というのはなかなかお目にかかれない。
ただし、 を安全牌に思う気持ちももちろんあったわけで、その理由をあえて詳しくは聞かなかったが、おそらく猿川は森山5巡目の打に触発されるものを感じていたのではないだろうか。
実際、

ここからの打。静かなトーンではあったが、傍目から見ても気の乗った打牌に思えた。

猿川の今局の結果は、3巡後にをカブり(本来はここで-待ちのタンピンテンパイ。ヤミテンの選択肢ももちろんあるが、おそらく彼はリーチを宣言していただろう)、
次巡(12巡目)に南家・大川から切りリーチが入る。
大川の手牌は、

断定はできないが、猿川のリーチに一発でをブツけて宣戦布告していた可能性が高いのでは。
本来は大川→猿川 8,000となっている筈の局であったが、まだ今局のドラマは終わらない。リーチを受けた同巡、1枚切れのを引いた猿川は温存していた現物のを打つ。
実の所そのは安全牌でも何でもなく、

 ドラ

11巡目にテンパイしていた親・黒田の3枚切れカンの12,000にジャストミート…。
ラス牌を求めて黒田がどこまでツッパったかわからないだけに、猿川のみならずギャラリー全体に「やっちゃった」感を強く残す一局となった。

ただし、後述する三回戦の18,000オリ打ちとともに、放銃直後の猿川の「ハイ。」という返事が歯切れよく、少年のような瑞々しさを感じたことも事実。
返事ひとつで配牌が変わるわけじゃもちろんないが、少なくとも己のミステイクを受け止めて心に刻み付けようとする様を私は選手として羨ましく感じた。
揺れない心を持つ。その事がどれだけ麻雀に必要な素養であるか。皆わかっているはずなのについつい繰り返してしまう。だって人間だから。
その言い訳を許さない気持ちが、猿川は他人よりほんのちょっと強いだけなんだと思う。が、その「ちょっと」が大切なのだろう。


この12,000でトップに立った黒田は、以後も攻め続ける。
猿川も決して手を縮めているわけではないのだが、いかんせん和了に結びつけることができないまま南2局を迎える。

この時点で、開始から1時間40分。
猿川が9巡目に2枚切れのカンでリーチを打ち、なんと一発でツモ切った黒田から討ち取る結果に。
黒田は3巡目にドラ待ちの役無しカンチャンでテンパイを果たしていて、おそらく引きのリャンメン振り替わりを待っていたのだと思われる。
黒田はを暗刻使いで持っており、自分の手牌優先という意味合いでそのままツモ切った。
リーチ一発表裏の効率良い満貫と言っては放銃した黒田には悪いが、これで再び猿川がトップに返り咲き。


そして南3局。親の猿川がポンポンポンと三つ仕掛けてホンイツの7,700テンパイ。
しかし、3つ目のポンが入る前に既に黒田・大川からリーチが入っている。
残る森山もと仕掛けて染め手の匂いプンプンの猿川・リーチをかけている南家の黒田に対して危険なをツモ切っており、要は全員がっぷり四つの様相。
この局の和了者は大川。
2,000、4,000をツモり、トップの猿川まで4,900点とする。(2位黒田まで1,300点、ラス森山とは7,400点差)

オーラス、ここからは黒田の連荘が再びスタート。持ち点を50,000点オーバーとしてフィニッシュ。
大川はトップとの点差8,300点の南4局2本場にドラ単騎リーチを敢行。すぐに親・黒田の反撃リーチを食らってそのまま7,700放銃したのが響き、森山に微差交わされてラス。
本戦から続いていた連対記録もストップし、ピリ辛い決勝初舞台となってしまった。

1回戦成績
黒田 +52.4P 猿川 +9.7P 森山 ▲20.6P 大川 ▲41.5P






2回戦

長い長い1回戦が終わると、すぐに2回戦の準備となる。
猿川は会場外にて一服、森山は隅に移動してリラックス、黒田は飄々と自分の成績を眺め、大川はトイレの脇でギャラリーと話している。

やはり、気になるのは猿川。
あの痛恨の親満放銃の借りは南2局で半分以上回収したはずだったのに、あっという間に交わされ20,000点以上の差をつけられてフィニッシュ。私だったら結構ゲンナリした気分になってしまいそう。
だけどまだ初戦。そう、正念場はこれからなのだ。

どう気分をリフレッシュさせたのか、東1局いきなり猿川のチンイツ一通が飛び出す。(放銃・大川)
既に親の森山からリーチも入っていて、黒田もひとつ晒してテンパイ気配ムンムン。それを受けての大川、

 ドラ

煮詰まってはいても、は止めてもよかったようにも思えるのだが。
もちろん3者共通の安全牌は無い。それでも大川にとって連敗を避ける意味で、ここは唸ってでも通る牌をひねり出して欲しかった。
しかし、前回炸裂した「黒田ターボ」の馬力はここから始動となった。

黒田 容吉

東2局 2巡目 西家。

 ドラ

ここからですよ、ここから南家の大川が放ったに飛びつく。
正直「…え?」と思った。
ちなみにこの局の森山、1巡目にを捨てて既にイーシャンテンで、手牌も豪華なドラトイツ。

 ドラ

現在のプロ連盟の採譜システムはノートPCで行われている。
このPC画面は、本観戦記の全体牌図の画面とほぼ同一。
つまりギャラリーは採譜者の近くに陣取れば「対局者全員の手牌構成がリアルタイムで見られる」のだ。
黒田と森山の手牌が見られない位置でも、この仕掛けがどこから鳴いたものかが見られるわけで、革新的でもあるが残酷でもある。
どこが残酷かというと…。今局の結果はこの手を新たに仕掛けることなくと引き込んで余り牌無しのチンイツ(カン待ち)に仕上げた黒田が、あの手牌をテンパイできぬままにいた森山から8,000を和了る様がギャラリーの大多数からわかってしまうのだから。
しかももう一つアヤがあって、既に親の猿川からリーチがかかっている12巡目に大川が、

ここからをポン。この仕掛けで下家・黒田にが重なりテンパイ。即、森山のが捕らえられることに。
大川のこの仕掛けの是非が「和了に向かって」ならば私の麻雀感からあまりにベクトルがかけ離れた感覚なのだろう。また「和了に向かわない」ものなら、その結末を誰よりも真摯に受けとめなければならないし、仕掛けの恩恵を蒙った人間を次局以降十分にマークしていく必要があるのではないだろうか。
そのあたりは選手個々が育み、打ち出していくスタイルでもあるのだけれど。


麻雀を打ってその様を表現していく、そんな生き方を僕らは選択している。
その選択を自己満足に終わらせるのではなく、他人に目を留めてもらい何かを感じてもらえるように磨きこむ。その軸が感じ取れる限り、悪手というものは存在しないと私は考えている。
大川はどう捉えているのだろうか。

大川 哲哉

そして次局。決着はすぐについた。南家・黒田、

 ドラ 裏ドラ
 
この手を10巡目にリーチ、も生牌。一発でツモの4,000、8,000。
今局も、

ここから1枚目のを仕掛ける親の大川。
これだけを持って悪手と言い切る訳ではないが、関係者によると大川は門前手役派ではないかという話が多かった。
本人が自分のスタイルをどう考えているかは別として、周りに与えた強い印象が門前志向ならば、このあたりをもう少し掘り下げてみると、より太い「麻雀の幹=土台」が構築されるのではないかと思う。

この後はもう黒田の独壇場。
持ち点70,000点を越える大トップを取り、初戦を争った猿川はというと、2度も8,000を打ち込み、4,200点残りのラスに。

二つとも詳しく述べないが、なかなかにショッパい放銃で、私ならかなり凹むようなそれであった。
(ひとつは終盤にテンパイ維持で後筋を切って放銃、もうひとつはリーチ時のチートイツのタンキ選択を裏目ってタラレバの牌で放銃)

森山はそのタラレバ牌のおかげでオーラスにラス目→2着になり、上機嫌。
黒田との差はかなりあるものの、追撃一番手に名乗りを上げた。

2回戦成績
黒田 +76.7P 森山 +0.3P 大川 ▲21.2P 猿川 ▲55.8P

2回戦終了時
黒田 +129.1P 森山 ▲20.3P 猿川 ▲46.1P 大川 ▲62.7P






3回戦

毎回東場は調子のいい猿川が、東2局に2,000、4,000をツモ(リーチ一発ツモ)。
次局に先制リーチの大川に対し、ピンフテンパイからリーチしようとした宣言牌で1,300放銃。
まぁ、この辺は積極参加型の猿川にとっては、このくらい蚊に刺された位なものか。

続く東4局、親の大川が11巡目にピンフドラ2をリーチ。ただし、待ちの-は既に山には一枚きり。14巡目の南家・猿川、

 ドラ

ここに、リーチ者の大川からがツモ切られる。は生牌。既に猿川は序盤にを切っている。
ここで小考。取り直して手牌に手を伸ばそうとし、やはり止めて「チー」と一声。

実は私がここでこの局を取り上げたのは、その所作や結果(2巡後ラス牌のを大川がツモって4,000オール)が問題だったからではない。
猿川がこの局の自分の感性の歪みを認識していれば、次局の悲劇は防げたのではないかと思うからだ。

そして、前半戦これだけミス(結果としての)が多発していた猿川が優勝した原因が、いまひとつ私自身理解できていないからでもある。
例えば「今回の決勝内容がひどかった」ならば、前半の不調者の大逆転優勝も理解できなくもない。

だが今回は森山・黒田・猿川・大川ともに十分持ち味も発揮していたと思うし、後半戦で詳しく記す予定だが、私はこの対戦から多くのものを学んだつもりだ。
むやみにオリばかりを繰り返す気の抜けた闘いではなく、皆ギリギリまで読み、押し、そして手の可能性を見切って未練なく崩す、その部分が特に優れていたと思う。

なかでも森山のそれは、私に鳥肌が立つような感動を与えてくれた。
対局者全員だけでなく、ギャラリーの意識までも相手に戦っているかのようなその様は「もっと真剣に取り組め!」と発破を掛けられているように思えてならなかったのだ。

森山 茂和

話がそれたので3回戦東4局1本場に戻そう。


読者の皆さんは何を切りますか?

この局の大川の手出しには、さほど大きな空気の変化的なものは見られなかったように思う。本当にさりげなくスッと出されたのだ。
まぁを打ってしまう人も結構いるのだろう、この14枚からなら。
だが、私は思うのだ。本当にこの14枚って必然の牌姿なのかと。
リーチ時に森山だけをみているから打になってしまうのであり、親の手出し、ツモ切りという部分をもっとケアしていれば、リーチ後一発目に打つべき牌はなのではないかと。
そう打っていれば、少なくともこの巡目での放銃はない。
もちろん、その後にのシャンポン待ちになって打で放銃という可能性だってあるだろう。
ただし、親のに反応したからこそ安易にを合わせなかった訳だから、その感受性をあと2巡早く作用させておけばよかったのに、それ以前に前局のその感性のズレを認識し、今局の警戒レベルを高めておけばよかったのにと思う。
これは決して後付けの論理ではないと私は考えるのだが。

この局で忘れられないのは、放銃直後の猿川の視線。
相手の手牌ではなく、河をずっと(といっても数秒ではあるが)眺めていたのだ。
失策をその場凌ぎにせず、心に深く刻み込んでいるのではないかと前述した理由はこの視線を感じたからかもしれない。たぶん彼はこうやってひとつひとつエラーの局の河を脳裏に焼き付け反芻して、自分の土台を創っていったんだろう、そう思わせる光景だった。

猿川 真寿

それが良いことなのかどうかはわからない。
麻雀打ちとしてはもちろん悪いことではなくても、情報が氾濫している現代社会の中でそのような情報処理方法はあまりにクラシカルなものだから。
一説によると現代に生きる我々は10年前の26倍の情報に接しているのだとか。そしてやはり10年前の約8倍の情報発信力で世の中と対峙しているそうだ。
いやおうなく我々はそんな社会の住人なのだ。

親・大川 18.000(+300+R1.000)

 ロン ドラ 

猿川にとっての悲劇のクライマックスは南1局に訪れた。



森山はをカブッたあたりから、気配を隠そうともせずに一直線にこの結末に向けて突き進んでいった。
この局は他三者の思惑も入り混じっているのが伺えて想定牌姿の検討等もおもしろいのだが、結局の所は森山の外しのタイミングとの選択くらいしか分岐がないように思う。
猿川が「ドラ単騎ではない受けにしたチートイツ」で構えなければツモでの回避もないだろうし、またそう受ける彼はなかなかに想像しにくい。

このアガリで猿川は箱を割ってしまう。
既に前半戦を終え、中盤に入っている所でこの状況。
応援している立場なら、そっと抜け出して帰りの静岡行きの乗車時刻を検索し始めてもおかしくはない、かも。

このあと、大川と森山による壮絶なトップ争いが繰り広げられるのだが、突然オーラスに簡単なメンピンドラ1テンパイが猿川に入る。
持ち点マイナス5,900点だけど当然リーチ。そして一発ツモ。裏も乗っての3,000、6,000。それまでカッサカサだった手牌が突然潤った。

だけど、さすがに道のりは遠い。「とりあえず後半戦に向けてポイント集めとかなきゃね」
そんな無責任な解説者の声が聞こえていそうな和了だった。
だが、今となっては「まだ俺は生きているぞ!!」という強烈な魂の叫び声だったのかも知れない。


3回戦成績
大川 +48.8P 森山 +28.3P 黒田 ▲23.2P 猿川 ▲53.9P

3回戦終了時
黒田 +105.9P 森山 +8.0P 大川 ▲13.9P 猿川 ▲100.0P





ギャラリーの大半が「黒田と森山の勝負。そこに大川が割って入れるか?」といった予想の中、ただ一人埒外に位置しつつあった猿川。

その逆襲が吹き荒れることになると、いったいこの時点で誰が想像していただろうか…。



 

 

 

(文責:今里 邦彦 文中敬称略)

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