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タイトル戦情報

第16期 麻雀マスターズ 

決勝


▼プロローグ

大きな旅行カバン。
会場に着くと、運営席の近くにドカッと置いてあった。

そうか、ゴールデンウィーク!
青く澄み渡った空。
この戦いが終ったら、きっとどこかに行くのだろう。
なんかいいなあ。

「準備はじめまーす!」

連盟員がそのカバンをスッと開けると、中から出てきたのは4台のノートパソコン。
プロ連盟の革新的なプロジェクト。新採譜システムだ。
GWなのは私の頭の中だけか。

もうご存知の方もいると思うが、このシステムは従来手書きで行っていた採譜(麻雀の打牌の記録)をパソコンでつなぎ直接入力するというもの。

これがすごく便利で、なんと対局中リアルタイムで4人の手牌が同時に見られるのだ。

将来はロン2で解説付きで観戦出来たり、別室にモニターをつないでワイワイ言いながら観戦。
そんなことも可能になるかもしれない。


まあ百聞は一見にしかず。とりあえずイメージをご覧頂こう。

これくらい便利なものなのだ!

 

食い流されたのは玉井。

「ペンチャンのは絶対和了れる自信があるんですわ。」

こういった大会で決勝まで勝ち上がってくる強者たちは、独自のポリシーのようなものを必ず一つは持っている。

 

玉井 清。
大阪予選を勝ち上がってきた一般代表。
麻雀は月に2日しか打つ事ができない。

「家内との約束ですから。」

前日に勝ち上がりを決めた時も、喜びながらも真っ先にこう話してた。

「また、かあちゃんに怒られるわ。どうしよう(笑)」

話は戻るが、食い流されてしまった
終盤になって玉井は、何事もなかったかのように、を手元に引き寄せた。
なんてこった…






▼1回戦

 

今回、プロ連盟唯一の決勝進出者、沢崎誠。
第13期十段位獲得の実績を持つ。

その沢崎に【東1局】いきなり選択肢が現れた。

 
注:捨て牌で薄暗くなっているものはツモ切りです


その沢崎は昨年の不調をこう語る。

「人とやらなすぎた。」

以前はパソコンを使ったことはほとんどなかった沢崎だが、
ロン2を始めてから使うようになった。

現在なんと、プロアマ含めロン2レーティング1位。

世代的に、ネット麻雀は合わないのでは?
という周囲の心配をよそに、勝ち続ける。


図の話に戻ると、この局面での選択肢は、

切りリーチ
切りダマ
切りリーチ
切りダマ

東1局なので、どれもあるだろう。

そこで沢崎が選んだ選択は、切りダマだった。

「下家が合わせ打つかもしれない。
 合わせ打たなかったらツモ切りリーチするつもりだった。」

ドラが見えてないことに関する、防御的な感覚ではない。

「この局はただ和了りに行くつもりだった。
 打ち込んだって別にいいんだ。」

打点は高くないが、実に攻撃的なダマ。

沢崎の読みは適切で、実際に下家の荒井はを持っていた。
親に対する安全牌として1巡保留しただけだった。

そして一発でをツモる。
一見あまりにも地味な700・1,300

沢崎はここで確かな手応えを感じた。

誰も点数のダメージは受けないこの和了りが、
全ての始まりとなるのだった。


【東2局】

竹内にとって、勝負の時はあまりにも早く訪れた。

 


竹内 孝之(日本プロ麻雀協会)

本戦は圧倒的だった。
208人中1位通過。

このマスターズは特殊なシステムで、本戦で1位通過をすると、
ベスト16に飛び越しでシードされる。
マスターズ名物ともいえるシステム。おまけに全自動卓までプレゼントされる。

毎年この時期になるとプロ連盟員の間では、
全自動卓どこに置こう?
というジョークのようなヤル気宣言が飛び交う。

優勝したらどうしよう、と言わないところが、なんとも奥ゆかしいところである。
いや、どうでもいいや。

実はそのシステムが出来て以来、その1位通過者は誰も決勝に残っていなかった。
なぜか尽き果てるのだ。

しかし、竹内は違った。
今年の春に發王位を獲ったばかり。
そして今度は1位通過+決勝に残るという活躍。
一発裏ドラありのルールが得意なのだろうか?

「もともと一発裏ドラなしが好きでした。
 私が好きなのは、地味に二着を積み重ねていく麻雀です。」

そういえば、この決勝に残ってる4名は、
雀風のことを尋ねた質問に、全員が受けに関するコメントをしていた。

「すぐ降りちゃうんです。」「弱気だからすぐへたれてしまってな。」
「守備系なので。」「俺なんか、配牌からしょっちゅうオリてるぞ。」

殴り合いの得意な人が残るようなイメージも強いが、
実はそうでもないのだ。

コメントは、誰が誰のものかは想像してください。


親番の竹内、6巡目に早々にテンパイを入れる。
 ドラ

それに対し沢崎。今度はこの手で即リーチ。
 ツモ

東1局に手応えを感じていたからだろう。

さて、このリーチ。は沢崎の現物。
ダマにしていれば、簡単に拾えそうである。

をつかむが、特に止める理由もなくスッと河に置く。

裏ドラが
がウラになると思ってたよ。」

祝勝会で沢崎は、笑いながら言っていた。

【東3局】

優位に立ってからの沢崎の戦略、これがまた辛かった。

親でこの配牌。

 

手なりでテンパイを目指しても、すぐにまとまりそう。
最速テンパイを目指しリーチでたたみかける、という手もあるかと思ったが。

沢崎はスピードを捨て、チャンタ狙い。
一見もったいないようだが、その真の狙いが終盤で明らかになる。

この打ち切れない

スピード合戦でリーチを打って圧力もあるが、
北家の竹内にとってはその方がまだ楽。

ただ、黙っておりればいいし、行けそうならメクり合いに行って、
もう一度沢崎と勝負にできる。

だが、このプレッシャー。
ドラを持っているのか、いないのか。
張っているのか、いないのか。
張ってないなら、どこが欲しいのか。

汗を流しながらを切ったところで、ただ親を蹴るだけの手。
失敗したら脱落だ。勝負に見合わない。

結局、竹内は撤収。
沢崎もノーテンに終ったのだが、
この最終図を見てもらいたい。

 

3人ともが、沢崎に対しテンパイを崩している。
完全な作戦勝ち。

1回戦、沢崎は、点棒を増やしにいってなかった。
ただ点棒が入るシステムを作り上げにいっていた。


 ◎1回戦結果
 

  沢崎 竹内 玉井 荒井
1回戦 45.1 ▲ 50.8 22.6 ▲ 16.9

 





▼2回戦

【東2局】

東1局に700・1300をツモり上げて、この局。

配牌がこれ。
 


この局は特にポイントになるとは思っていなかったため、
実は、最初あまりメモを取っていなかった。

だが突如、異変を感じてメモを取り始める。
ちょっと待ってください…ああ待ってってば…

7巡目にリーチ。次巡、一発でツモ。
観戦記者をも追いつかせぬほどのスピードだ。

そして沢崎は、とても静かに手を倒した。

 ツモ
 

そういえば、沢崎は2年前の十段戦でこんな手を和了っている。

 

和了ると不吉、なんていわれる九連宝燈。
しかし沢崎は、今もピンピンしてる。あの頃よりも、さらにずっと。


 ◎2回戦結果
 

  沢崎 竹内 玉井 荒井
2回戦 73.0 20.6 ▲ 61.2 ▲ 32.4
2回戦までの合計 118.1 ▲ 30.2 ▲ 38.6 ▲ 49.3

 

 

 






▼3回戦

「万全の状態だったが、簡単に四暗刻を引けて、
 かえっておかしくなった。」

祝勝会で沢崎は、そう語った。


【東2局】

冒頭でも使った、沢崎のツモずらし。
ドンピシャで一発ツモが食い流れたファインセーブ。
心技体すべてがそろっている。
観ている自分の目からは、そんな印象すら受けた。

 ツモ

だがそれでも、自分の鳴きで玉井にツモられた。
沢崎の目からみると、そう見えてしまう。

これが麻雀のとても恐いところで、
最高の麻雀を打っていても、本人は最悪の事をしたのかもしれない、
と思うケースが存在する。

【東4局】

そして、眠っていた竹内に再びチャンスが訪れる。
 ツモ

5巡目に絶好のを引きリーチ。
ここにドラトイツの沢崎がを放銃し5,800。

 

「この打ち込みは絶対ダメなんだ。」

この状況で、を切る事が悪いのかどうかはわからない。
多分それは、自分自身に厳しく課したルールの一つなのだろう。


【南1局】

今度は親番で、竹内のリーチに一発で刺さる。
これは自他ともに認める、仕方のない打ち込み。
沢崎はを打てばこうなることが、わかっていたのかもしれない。


オーラスは荒川がきっちりと逃げ3着守り。
沢崎はいやなところでラスを引かされた。

1人で黙々と突き進む沢崎を、みんなで一瞬だけ振り返らせた。
そう、一瞬だけ…


 ◎3回戦結果
 

  沢崎 竹内 玉井 荒井
3回戦 ▲ 46.5 46.7 20.3 ▲ 20.5
3回戦までの合計 71.6 16.5 ▲ 18.3 ▲ 69.8

  





▼4回戦

【東1局】

親の荒井が7巡目にをチー。
北家が、ラスを引かされたばかりの沢崎であることを考えると非常にいい。
優勝を考えるなら、沢崎を楽にさせてはいけないのだろう。

 

荒井節子

横浜予選の一般代表。
「麻雀は、18歳くらいの頃に職場で覚えたんです。
 まわりの人が麻雀ばかりするので、後ろで見て覚えちゃいました。
 だから、点数計算は今でもときどき間違えちゃうんです(笑)」

今は、入門書もたくさんあり、ネット麻雀で気軽に覚えることができるが、
以前はそうやって麻雀を覚える人が多かった。
実際に打ちながら、なんとなくルールを覚えていくのだ。

みんな誰かの先生で、誰かの生徒だった。

最初はよくわからないが、少しずつわかっていく楽しさ。
わからないままにでも、和了った時の嬉しさ。
ああ、点数を自分で申告できるようになった時はいつだったかな…

話を聞いてるうちに、麻雀を覚えた頃のドキドキ感がリフレインした。
10巡目にテンパイを入れた荒井。

 チー

そんな荒井のバック仕掛けに沢崎は苦しめられる。
をギリギリまで引っ張ったが、二役トイトイをテンパイした15巡目に覚悟を決め放銃。

荒井の純真な麻雀が、沢崎の圧倒的な力から、頑張ってこらえているように見え、思わず声援を送りたくなった。

【東1局1本場】

だが沢崎は、何事もなかったかのように、
なめらかにメンタンピンを仕上げる。
これを荒井から討ち取り、またもとのレールに戻した。
ここから先、優勝への停車駅はなかった。

【南3局2本場】

 

ここからを仕掛ける。
そして沢崎、最後の決め手が飛び出す。

 

ドラのをリリース。
一瞬何が起こったのかわからなかった。

「所作動作から玉井さんは絶対張っていないし、
 そして鳴くのは玉井さんだ。」

これが沢崎の読みだった。
大きくリードしているこの状況でも、実に細かく状況を分析している。

竹内は、この親が流れたら優勝は厳しい。
そう、竹内にトドメを刺すための一打だった。

もちろんドラを打たない方が簡単だし、打たなくても勝てるだろう。
もし打って事件が起これば、それは大ミスのように騒がれる。

それでも沢崎は自分の信念に従い、最善を追及した。
これが沢崎の闘い続ける姿勢そのものなのだろう。

そして、玉井にこのテンパイが入る。
 ポン 

竹内は最後の親権を守るため、を打った。

「以前は受けばかりでしたが、最近は行かなくては行けないところで頑張って攻めるようにしてます。」

竹内にとって、最後の勝負所だったのだろう。
結果が最悪となったこの踏み込みも、
今年の好成績を引っ張ってきた何かなのかもしれない。

だからこの打ち込みの善悪を問うのは意味がない。
ただ沢崎の意志が、この結果を作り上げた。
そういうことなのだ。

次局、沢崎は当たり前のように2,600オールを引き、トップ目に戻る。
このままトップかとも思われたが、玉井が頑張って捲り返した。

捲られた沢崎は、ニコニコしてるようにすら見えた。

 ◎4回戦結果

  沢崎 竹内 玉井 荒井
4回戦 30.1 ▲ 53.8 51.8 ▲ 28.1
4回戦までの合計 101.7 ▲ 37.3 33.5 ▲ 97.9

 





▼5回戦

【東1局】

思い通りとはいえ、玉井にチャンスを与えた。
その事実が、再び玉井を舞台に引き上げる。
3人と戦うゲーム。簡単に楽にはならない。

トータル2位である玉井とのポイント差は約70P。
ウマは1順位毎に20P差がつくから、トップラスで60Pの差が縮まる。
まだ玉井には、チャンスがあるのだ。

 チー ドラ

玉井、5巡目チー。

チーテンのハネマンテンパイ。
さすがに沢崎も1枚は切ったが、次のマンズのツモ切りを見てテンパイを確信し、回った。

ピッタリ和了牌を止めての、2人テンパイ。
 


【東2局1本場】

北家の玉井が5巡目にリーチ。

 ドラ

しかし、14巡目に手牌を倒したのは沢崎だった。

 ツモ

またしても和了牌を止めて、そして和了り切る。
常にしぶとい。

それは偶然にも、玉井の大好きなペンだった。


【南1局1本場】

14巡目、二軒リーチをかいくぐり、沢崎が玉井から直撃。

 ロン ドラ

これで玉井の望みもなくなった。
誰もいなくなった。


【南3局2本場】

南1局2本場でツモドラ3を和了った竹内が、
迎えた南3局2本場でハイテイ一巡前に渾身のリーチ。

 ツモ ドラ

そこにいた!
会場内に響きわたるような力強さでをツモった。

まだ終らせない!

そんな熱い気持ちが会場にいる者たちに伝わった。

【南4局】

だが竹内の願いも、もう届かなかった。

「ロン。」

沢崎は竹内から1,000点の和了り。
気合のこもった竹内の和了とは対照的に、
沢崎の和了はどこまでも静かだった。

「もう勝負はついてしまっているんです。」

沢崎の穏やかな発声からは、
そんな声が聞こえてくるようだった。

この時点で2着目の竹内と170ポイント差をつけた沢崎は、
6回戦も危なげなく局を進め、
そのまま静かに、第16期麻雀マスターズの座に就いた。




 ◎5回戦の結果

  沢崎 竹内 玉井 荒井
5回戦 53.3 24.4 ▲ 60.8 ▲ 16.9
5回戦までの合計 155.0 ▲ 12.9 ▲ 27.3 ▲ 114.8

 

 ◎最終結果

  沢崎 竹内 玉井 荒井
6回戦 ▲ 18.4 ▲ 49.9 59.3 9.0
最終スコア 136.6 ▲ 62.8 32.0 ▲ 105.8

 




▼エピローグ

決勝戦の開始前、沢崎は少し怒っていた。

「マスターズは俺みたいなのではなく、もっと若手(プロ連盟員)が残るべきなんだよ。なまけすぎなんだ。」


これは沢崎のロン2のデータ(5/14現在での最近100戦のデータ)。

  立直率  14.9%
  副露率  27.0%
  和了率  23.9%
  放銃率  11.2%
  平均和了点 4841
  平均順位 2.12位


これがどれだけ好成績なのかは、
ロン2のユーザにしかわからないかもしれない。

ただデータを簡単に説明するならば、
誰よりも攻め、誰よりも和了り、誰よりも回っている。

常に全力で戦い続ける、
その大切さを、沢崎は若手に伝えたかったのかもしれない。

 


祝勝会が終わって、新橋駅に向かってみんなで歩いた。

一向は騒がしくもなく、また沈黙になるわけでもなく。
きっとそれぞれ麻雀の事を考え、そして話していた。

私は、今回のマスターズのことを振り返っていた。

勝った沢崎の印象があまりにも強い。
だが、一般参加者の印象もまた非常に強かった。

6回戦、優勝の芽がなくなった玉井。
それでも落胆することなく、純粋に麻雀を楽しんでいるようだった。
「準決勝で負けたら、次の日別の大会にでようと思ってた(笑)」

玉井の話を思い出しながら、また別の一般参加の人を思い出していた。

「勝ち上がっても本戦には出場できないが、
 どうしても予選に出場したい。」

そんな参加者がいた。

その人は予選の最終戦、通過ボーダーギリギリのところで懸命に凌ぐが、
ボーダーが跳ね上がって補欠に留まった。

それの何がいいのか、と聞かれると
実のところ私にも説明はできない。
ただ、この人の事がどうにも強く印象に残ったのだ。

麻雀に対する熱き想いは、きっと人それぞれだろう。

でも、プロアマ問わず、麻雀に熱い人がもっと増えていったら素敵だろうな。

駅に着いて、それぞれの方向に散っていく対局者たちを見ながら、
私はただ、そんな夢を描いていた。

 

 



 

 

 

(文責・鮎川 卓 文中敬称略)

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