今年で15年目を迎えた関西プロアマリーグ、晴れの日も、雨の日も、規定の第2日曜日には欠かさず試合が行われてきました。
そこにはいつも参加者の「笑顔」があり、また選手たちの「挑戦」という名前の決して止まない、勇ましい気持ちに満ち溢れていました。
続ける事は苦しい事もありましょうが、苦しい事を乗り越えなければ、また喜びも感動も生まれません。
今年はいかなる選手たちが困難を乗り越え、最後にはどんなドラマが生み出されるのか。
いざ最終節のスタートです。
最終節ラインナップ
初めに、このレポートは最終節のトップ卓を中心に、実況形式でお送りしたいと思います。

ここまで首位を走り続けてきたのが、なんと女性一般参加の稲岡ミカさん。
麻雀で大事なのはやはり姿勢。打牌のリズムもよく、常に凛とした打ち筋で、ここまで強い勝ち星を残してきました。
これを追う最番手のプロが、今年、史上初の最強戦2連覇を果たした板川和俊プロ、麻雀に対する熱意とストイックさは関西随一です。
重厚なうちまわしの中に織り交ぜられる鋭い速攻には、まさに「疾風怒濤」の四字熟語が相応しいでしょう。
続く3位の勝間伸生プロは、関西のタイトル戦でも活躍を見せる常連選手で、落ち着いた姿勢から時折見せる強気の攻めには定評があります。
4位の押谷勇輝さんは一般参加から、前期の冬の陣では見事にリーグ優勝を決め、今期もその勢いのままに充実した成績を見せています。
4者が実力、結果、共にそろい踏みの選手だけに、ここからどんな波乱を巻き起こすか期待しどころです。
尚、プロアマリーグの最終節は、1回戦ごとに集計を行い、現在の成績順に対局を組み替えて試合が行われます。
最後まで条件が厳しい戦いだからこそ優勝に価値があり、最後まで息を飲んで見守る意味のあるレースでもある事は間違いないでしょう。
1回戦トップ卓、起家から 勝間・稲岡・押谷・板川(以下、敬称略)

首位の稲岡が2位の板川、3位の勝間との差を80P以上保つも、4回戦は毎回成績順に対局を行うのが今大会のシステムです。
稲岡自身も常に目標を自分に向けられて対局を行う事は十分に理解しているに違いありません。
開局から板川の打牌には、そんな熱い意志がありあり感じられました。
それが特に感じられたのが東2局、14巡目にも関わらずタンピンドラ1の手をリーチに来た時には、本気で優勝を狙いにいく気迫が伝わりました。
その裏で、序盤に好機をつかみかけたのが押谷、
押谷
            
流れるように有効牌がなだれこみ、9巡目に国士無双の1シャンテン。
そのまま一気にテンパイまで引き入れるかと思いきや、「これぞプロの呼吸」とばかりに、すぐさま板川、勝間から同時に が切り出されました。
この局が影響したのか、押谷は次局に親の勝間に高め三色の11,600点を放銃してしまいます。
勝間
            ロン
トップラスができた状況から、首位の稲岡は以下の形から、
稲岡
           
にチーをかけ、局を流しにいく辺り、冷静に場況を理解して対局に臨んでいる気概が伝わります。
しかし、ここから奮起したのがラス目の押谷。板川から2回の2,600点を打ち取ると、さらにリーチを畳かけ、
稲岡
           ツモ ドラ 打
押谷
            ドラ ロン
稲岡が親でフリテンながら を勝負すれば、打ちこみの5200点のアガリ。
こうなると押谷の勢いは止まらず、
押谷
            ツモ ドラ
ここからノータイムで ピン切りリーチをきっちりツモりきる辺りには、これまでに継続してリーグ戦に打ちこんできた情熱やひたむきさを感じました。
これで押谷は1万点台の点数から一挙に3万点越えまで取り戻すも、
展開を振り返れば「あの国士さえものに出来ればな」という思いはあったのではないでしょうか。
2回戦、起家から、小田・板川・稲岡・勝間

2回戦は2卓でトップをとった一般参加の小田と、押谷が入れ替わりました。
1回戦でラスをひかされた苦しい板川ですが、2回戦でも自分の姿勢を変えません。
本手を常に意識しながら、テンパイが入ればリーチでツモりにいくスタイルを貫きますが、
親でダブ東を暗刻で抱え込んで好形に構えるも、ここはどこまでもツモが応えてくれません。
更には小田と板川で溜めた3本のリーチ棒を、追われる立場の稲岡が400・700でさらりとかわしてしまうと、ペースは一気に稲岡に流れます。
稲岡
             ツモ ドラ
稲岡は横綱相撲でこの手も当然のようにヤミテンに構え、更に1本のリーチ棒を得て、首位を追う側にとっても状況は厳しくなりました。
逆襲をかけたい板川は、早いファン牌の連続ポンから、さらに激しく攻めるも、
板川
      ポン  ポン  ドラ
板川のツモがやはりどこまでも届かず。しかし、気迫だけはどこまでも首位を追い詰めるものがありました。
また、勝間も慌てず冷静に着実にポイント差をつめている辺り、首位の稲岡にとってはまだまだ予断は許さない状況。
3回戦、起家から、稲岡・小田・板川・勝間

東1局から、板川の攻めは高みを目指して止みません。
板川
      ポン  ポン  ドラ
待ちは苦しいですが、予想外までに最高形に仕上げる辺り、相変わらずギャラリーを魅せてくれます。
しかし、ここまで稲岡も凄いことに、激しい攻めの板川に対して一切のロン牌を切り出していません。
3回戦を見ても、どこまでも注意深く場をよく見て、極力甘いは切り出さないようにしっかりと手牌を組んでいました。
3者が稲岡とのポイントの壁をなかなか崩せない中、ここは勝間がよく踏ん張って、
3回戦終了時では暫定2位、首位と60P差で最終戦に望みをかけることになりました。
最終戦、起家から 板川・稲岡・勝間・小田

板川
      チー 
ポン 
ロン
重ねるしかない板川が苦しい配牌から鋭い鳴きを見せて2度の連荘。
しかし、親が流れてしまった後に、北家の北暗刻から8巡目のペン を捌いてしまうと、親の稲岡に絶好の牌が流れました。
稲岡
            ツモ ドラ
普段からノータイムの稲岡が、ここで食い入るようにじっと手牌を見つめました。
誰が見ても絶好形だけに、誰もが勇んでリーチにいく形。しかしここまでの戦いは、稲岡だけに違う風景が見えていたのでしょう。
稲岡がここで手を止めて考える事が、これまでどれだけ我慢をして局を進める事に苦心してきたかを、心の底から痛感させられた名場面となりました。
稲岡
            ツモ ドラ
ため息をつくようにリーチ後、すぐさま が手元に届いた時には、あっと驚いた表情を浮かべたのも印象的でした。
これまでの稲岡の我慢さと勝負強さが、ついに認められた瞬間だったのではないかと思います。
こうして第29期関西プロアマリーグの優勝は、稲岡ミカさんに決定いたしまた。
(フィナーレ)
戦いを終えた後の選手の表情はみな穏やかで笑みが溢れています。
運営の立場として、半年間の戦いをやり遂げた全ての参加選手に拍手を送りたい気持でいっぱいになりました。
集計が終われば、大会もいよいよ佳境を迎える結果発表。
いざ第29期の表彰式です。表彰は、稲森関西本部長より送られました。
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5位:小田 雅之さん
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3位:勝間 伸生プロ
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2位:花岡 章生プロ |
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優勝:稲岡 ミカさん |
5位入賞は小田雅之さん。
毎ペースながらきっちり押し引きを図る手堅い姿勢で上位に食い込み、今期は一般参加者の2位にて、王位戦シードを獲得されました。
4位入賞は板川和俊プロ。
過去のプロアマリーグでも数々の活躍をみせる事で、これまでリーグ戦の価値を高め続けてくれたのが板川プロでした。
今後とも多方面の活躍を期待いたしましょう。
3位入賞は勝間伸生プロ。
今年の活躍は素晴らしいものがあり、現在はプロリーグでもBリーグダントツの首位と、Aリーグ復帰への期待を持たせてくれています。
2位入賞は当日トップという怒涛の捲りを見せて、0.8P差で逆転を決めた花岡章生プロ。
最終戦では開局から親のトイトイドラ2が技ありだったと観戦者から報告を頂きました。
今期は惜しくもトップ卓へは参戦できませんでしたが、関西プロリーグの頂点を決める「太閤位決定戦」の常連選手だけに、
いかなる戦いでも上位に標準を合わせる事のできる実力の持ち主でしょう。
そして、総合優勝は一般参加の稲岡ミカさん。
今期リーグ戦では国士無双をアガった他、リーグ初の2節連続の当日トップにも輝かれ、今期MVPといえるすばらしい活躍をみせてくれました。
こうして第29期プロアマリーグは幕を閉じました。
優勝した稲岡ミカさんには、大会閉幕後に優勝コメントを頂きました。

「今回は最終節の前に、たくさんの方々にアドバイスを貰って対局に臨みました。
優勝はとても嬉しいですけど、内容にはまだまだ納得できていなくて、私自身もっとレベルを上げたいと思います。
今後の目標としては、周りの方たちに一緒に打ちたいと思ってもらえるような打ち手を目指して頑張ります。ありがとうございました。」
大会開催中にとある一般参加者の方から、
「稲岡さんは本当に強いですね。打ち方もプロみたいですわ。」と、にこやかに話しかけられました。
稲岡さんの対局の姿勢から伝わる熱気に心打たれたご様子で、今でもその気持ちは十分に反映されていると感じました。
今年の王位戦本戦を含め、これから益々のご活躍を応援いたしております。
最後になりましたが、これからも関西における競技麻雀の登竜門として、あるいはみなさまの麻雀コミュニケーションの窓口として、
これからも関西プロアマリーグの輪を未来へと繋げていきたいと考えています。
どうぞみなさま、お気軽に関西プロアマリーグにご参加し、お楽しみ下さるよう宜しくお願い致します。
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