<第3節レポート:近野 理智男>
Aリーグ1卓(中田一幸・中川保・貫上洋志・長野靖憲)
12名で行われるリーグ戦は熾烈である。
特に対局を重ねる毎に、お互いの打ち筋が理解できる為、間合いの近接した試合展開になるからだ。
この卓の中田はインタビューの初めにこうコメントしてくれた。
中田「お互い手の内がわかるだけに、長野プロとの対局はやりにくかったです。」
2回戦東2局、最初に山場を迎えたのはその中田。
            ドラ
この配牌をもらった時点で、中田は一つの目標を決意したという。
         ポン 
貫上の親リーチが6巡目に入った展開で、 を中川からポンして理想の形に追いついた。
しかし、これは惜しくも親の3,900に放銃となりアガれず。
だが、中田はこれに気負わず、ここから極力我慢の戦いに努めたという。
長野「今回は何度か対局したことのある選手だったから、気負わず自分の麻雀が打てました。」
普段のリーグ戦は緊張して自分のスタイルで打てなかったという長野だが、
今回のリーグ戦では、2回戦目からは持ち味である仕掛けによるテンパイ攻勢で序々にポイントを積み重ねた。
残りの半荘をオールプラスでまとめたが、反省点があるなら軽い手を早くテンパイしてからの打ち込みが多かったことだと語る。
中田、中川、貫上も長野を調子づかせまいと抑え込みにいった結果だが、ペースを掴んだ長野の存在がこの試合を制した。
これで長野はトータルプラスに浮上しただけに、ここからが正念場だと自分自身に言い聞かせ今後の戦いに挑むに違いない。
Aリーグ2卓(勝間伸生・花岡章生・藤川議次・宮前一馬)
インタビューに答えてくれたのは藤川。
藤川「2回戦東3局、親の花岡プロの5巡目、
         ポン  ロン ドラ
の仕掛けが入った同巡に、タンヤオテンパイが入り、そこでこの18,000点に打ち込みになってしまったのがめちゃくちゃ痛かったです。
ただ、そのオーラスの親番で、覚悟を決め手役狙いに行き、ソーズが場に高くなった濃い捨て牌の河になったけれど、
宮前プロから が出てこれをアガれたのが大きかったですわ」
            ロン ドラ
このアガりが効いて踏みとどまると、残りの試合を手堅くまとめてトップを取りまとめた。
この時の藤川はいつもの落ち着いたペースを守りながらも、相手を吹かせないよう注意したという。
藤川の麻雀には大きな波をかぶっても、それをかわしきる繊細さがある。これで長野と同じくトータルプラスの位置につけた。
Aリーグ3卓(横山毅・佐々木亮・近野理智男・玉木章司)
            ツモ ドラ
1回戦東2局0本場、13巡目の上図のテンパイから小考したのは近野。
入り目の違和感と1枚切れの北を見て考えたが、迷いをもって選んだ打牌は 切りリーチ。
これに、すぐに五を引いた揚句、横山にハイテイドラ1を打ち込み、自分の弱さに強い危機感を感じた。
そして、この組み合わせは関西リーグで最も重たいパンチを繰り出す面子だったと痛感させられた結果となる。
東1局1本場から打点重視のフルスイングの殴り合い。西家・佐々木。
      暗カン   暗カン   リーチ
この異様なリーチに対して怯まなかった親の玉木もリーチ。
            リーチ ロン ドラ
これを佐々木から仕留めて、まずは1回戦を制覇する。
しかし、ただ倒されただけで終わらないのが首位である佐々木の意地。オーラスの5巡目リーチは、
            リーチ ドラ
この鬼手をすぐに高めで、今度は横山から得点を分捕る形で試合を終える。
2回戦は先ほどラスを押しつけられた横山に怒りが伝播する。
玉木と同じく東場は親の跳満で打点を叩き出すと、そこからいつものマイペースに持ち込んだ横山には誰も逆らえない。
オーラスも佐々木、近野がせめぎ合う中でダントツのところから、
            ドラ
この良形で場を制するところは、前節のデジャヴュを感じさせる持ち味と言えるだろう。
3回戦も、競技ルールでありながら平均打点が明らかに満貫を超えていた。
ここまでトータルラスだった佐々木がリーチ合戦でタンヤオドラ3をツモアガると、1人抜けて苦しいのはここまでアガりの全く拾えていない近野。
南2局、先行する横山のリーチに対して、先に 、 と切り飛ばして以下のテンパイで追いつくも、
            ドラ
佐々木の三フーロからの打 で強烈な寒気がした。
   ポン  ポン  ポン  ロン
結果は言うまでもないというところか、4回戦の最後まで近野が1人沈み。3人がプラスを分け合った結果となった。
私自身の感想として、不調時に弱い選手は基本姿勢が悪いから大きく沈む。
太閤位の板川プロから注意されていることを常々から守り切れていない自身の弱さを痛感した。
ここで少し閑話休題。
3回戦南2局、南家・近野の10巡目(16,800点持ち)
             ドラ
ソーズとピンズの上が安くて、 は1枚、 は0枚、 は場に2枚切れで何を切る?
この時に頭の端では が重なることを感じるも、結果はそれを切ってすぐに重ねる始末だった。
自身不調の手組に持って行ったのに、それを信用できないのは姿勢が悪いに他ならない。
それが表情にまで出ていただけに、自身の敗北は当然のように感じた。
4節を終えても首位はダントツの佐々木だが、中田が我慢の積み重ねでトータル2位に浮上、2期連続の意地を見せつけた。
中盤向けて、花岡、横山、長野、藤川、といった選手たちも中段を抜けてくる。
12名というマッチレースは体験するものが過酷だけに、見ているものもハラハラするに違いない。
4という数字は「死」となぞらえて不吉とされるが、人間は死を感じる事ができるから、生きる喜びも感じることができる。
生きている限り、麻雀は勝っても負けてもまた明日がくる。
勝っても負けても明日に向かっていける喜びを感じられる選手だけが、上に登りつめていける世界ではないだろうか。
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