<第3節レポート:近野 理智男>
リーグ戦とは、予め決められたメンバーが互いの威信をかけて争う競技だが、見方を変えればその期間はずっと付き合いのある仲間でもある。
関西のプロリーグは月一の定例会であり、各リーグの開始前はやはり楽しげな笑顔や会話がこぼれた。
それは、皆が麻雀を愛してやまないという共通の思いがあるからだろう。
そして、それだけに三度目の攻防もまた熱かった。
1卓、佐々木亮・勝間伸生・貫上洋志・宮前克馬。
レポートの冒頭からで申し訳ないが、今回の主役はなんといっても「佐々木亮」である。
第1節で+118,2Pという驚異的な上積みを見せた。
佐々木は、普段から音もなく静かに牌を下ろす打ち手だが、勝負処で流れを掴むとアガリに対する騒がしさが止まらない。
佐々木の手役を重視する麻雀が場を圧倒し、3回戦で+84,3Pを叩き出す。
並の打ち手ならこれで満足するところだが、ここからさらに追い込むのが佐々木の勝負強いところでもある。
4回戦は、貫上が奮起してダントツの様相を見せても、2着目の佐々木はただの安全を拾わない。
            ツモ
ここから、満貫をアガってよしのところを、 切りのフリテンに構え、次巡に を引いて受けかえ見事に役満をアガりきった。
            ツモ
試合も終盤で、ギャラリーを背負っていただけに、互いに温度の上昇した対局になっただろう。
結果は、これで宮前が大きく沈み、勝間と貫上はそれぞれ1回戦ずつ見せ場を作ってこの試合を乗り切った。
その勝間に対局終了後、感想を聞いてみた。
「私は2回戦の親番で、6巡目に倍満を取りにリーチをかけて、それを空振りしたのが勝負のあやだった。
勢いのある佐々木プロに対して不用意な打ち込みも多かったし、この反省を次に繋げていくよ。
貫上プロは若いけど、少しずつ粘り強くなってきた。宮前プロは今回、押し引きがかみ合っていなかったね。」
2卓、花岡章生・横山毅・中川保・近野理智男。
今期の中川はやはり印象が違う。
同卓した私であったが、普段のにこやかな中川の表情から想像できない真剣味に思わず恐々とした。
東場の親でダントツの点棒を積み上げると、南場の親でもさらりと連続でたたき出す。
しかも、ポイントはほとんどダマテンで登りつめたことに意味を感じる。
私は初めから怖さを感じて、首を引っ込めていたことで助かったが、85,000点を超えてもその結果だけには満足してはいなかったことだろう。
これまで不調にあえいでいた横山だったが、前期太閤位として折り紙つきの実力者であることは間違いない。
中川が暫定トップ、私が2位で3回戦を終えた時点で横山はまだダンラスであったが、4回戦は私のまずい選択ひとつが局面をガラリと変えてしまう。
東場で上家の横山が親の7巡目、手出しでドラ側の がこぼれると、
            ドラ
私が上図の牌姿からチーをかける。
今、振り返っても大ミスだとわかるお粗末な鳴きに震えがきた。
ドラ2で一見いい受けにも見えるが、待ちが急所だらけで、しかも最悪なのはペン が透けて見える。
ここは何が出ても七対子まで意識してきっちり我慢すべきところだったが、その答えはすぐに出た。
次巡、親の横山からすぐにリーチが入ると、点数は安かったが私の一発の打ち込みで終わった。
ここから当然のように横山の猛反撃が始まる。
オーラスまでに7万点まで点数を積み上げその片鱗を魅せると、ポイントを減らした中川、私も一矢報いたいところで、まずは親の中川が立直。
            リーチ ドラ
西家の私も踏ん張って先が見えるテンパイ。
            ドラ
しかし、この局を制したのも横山だった。
      チー  チー  ドラ ロン
開幕は、中川が勢いでみせたが、それを土俵際でひっくり返せるのが横山の大局観。
横山自身、「今節マイナスだったら危ないと言い聞かせて、4回戦で全てのポイントを取り戻す麻雀を心がけた。」と語った。
どこから上昇してくるかわからないのが強者の麻雀だろう。
3卓、中田一幸・玉木章司・藤川議次・長野靖憲。
1回戦、隣の卓で威勢のいいハネ満の発声が聞こえた。現在2位を走る中田は今日も調子がよさそうだ。
先に試合を終えた私は、早速隣の卓に目を移すと、4回戦ではその中田が苦戦していた。
この拮抗した試合を制したのは藤川。
藤川はどんな状況でも我慢の効いた粘り強い麻雀を打つ。
大きく勝つ選手ではないが、大きく負けないことも年間リーグ戦にとっては必要な能力である。
2回戦でトップを決めたのが親のハネ満。
            ツモ ドラ
このアガリであったが、これをダマでツモる辺り、藤川らしいセンスを感じた。
麻雀は1局の勝負ではない。まだまだ先は長く、慌てることはないのだ。
今回は、自身のスタイルを貫いた選手が見せ場を作った試合展開だった。その中でも佐々木の首位返り咲きは圧巻である。
それでも、各選手が次の主役を虎視眈々と狙っている。これからのプロリーグレポートにも注目して頂きたい。
「石の上にも三年」、「二度あることは三度ある。」など「三」という数字は確認や念押しの意味によく使われる。
だからといって、第3節までがいい結果の選手も、悪い結果の選手も、「三度目の正直」をどう継続していくかは、これからの自身の努力次第だと思う。
各リーグ選手は繋がっていないようで、実は皆が同じ目的を共有する仲間である。
試合を終えても、プロ意識を持って様々な活動に取り組んでいこうではないか。
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