日本プロ麻雀連盟
第2回ロン2カップ
日本プロ麻雀連盟HOME 日本プロ麻雀連盟のご案内 牌譜データサービス ロン2のご案内 タイトル戦のご案内 インフォメーション プロ雀士情報 雀力アップ
ホームタイトル戦情報鳳凰位戦 > 第27期 鳳凰位決定戦

タイトル戦情報

第27期 鳳凰位決定戦

鳳凰位決定戦観戦記 〜二日目〜

(執筆:望月 雅継)




初日を終え、首位・前原と4位・沢崎とのポイント差は約150P。
この数字を大きいとみるか小さいとみるかは、人それぞれだと思う。
しかし、ここまでのゲームプランとして捉えると、考え方は大きく異なる。

初日観戦記でもお伝えしたように、一番気持ち良く初日を終えたのは板川。
それは、ポイントの大小ではなく、自身のゲームプランに沿った内容で戦い抜くことが出来たという観点からだ。
「最終日勝負!」を公言する通り、首位との40P差は想定の範囲内。
末脚を発揮できる位置取りでこの二日目をクリアすることができるか。

対して、ゲームプランが大幅に狂ってしまったのは沢崎。
予想外の大差で、後がなくなってしまった。
ここからの戦い方は考え方1つだと思うが、まず1つ目のプランは、最終18回戦に照準を定めて徐々に間を詰めていくという考え方。
ここで問題なのは残りの半荘数。残り12回を多いと捉えるか少ないと捉えるかで戦い方は大きく異なる。
もう1つは、一戦一戦、一局一局、に意識を置き換え、目の前の障害を1つずつクリアしていく考え方。
これらは戦いが口火を切れば沢崎の思惑がすぐに対応として現れるため、他三者の対応にも興味が沸くところである。

現鳳凰位・瀬戸熊、ここまでは順調と見る。
板川の出来の良さを差し引けば、全くスキのない盤石な戦い方に映る。
しかし、4回戦、6回戦のようなゲーム展開も十分に考えられるため、“瀬戸熊の時間”にどこまで加点できるかがカギとなろう。
精神的にも肉体的にも一番充実しているようにも見受けられ、大きな穴はないのではないか。
昨年の鳳凰位決定戦の二日目の入り方と比べても、かなり楽な気持ちで対局に臨むことが出来ることもプラス材料だ。
今決定戦も、瀬戸熊中心で対局が進むことは必至だ。

さて、首位で二日目を迎えた前原だが、どこか元気がない。
本調子でないことは、ギャラリーも、そして本人も自覚しているのではないだろうか。
しかし、それでも首位に立つのは前原なのだ。
この出来で、しかも鳳凰位決定戦というステージで首位に立っているという現実は、やはり前原の地力の違いを感じる部分でもある。
初日6回戦のような爆発を見せる瞬間が常にあるのではと期待させることが、前原の魅力の1つであり、
そして、それを常に実行するところも前原の凄さなのである。
鳳凰位奪還にピントが合った時、前原の攻勢の凄さを3者とも知っているだけに、前原を目覚めさせないように戦うことがポイントになるであろう。
そして前原自身は、本来の姿を取り戻すことが出来るかどうかが、勝敗を分ける大きなカギとなる。


初日終了時

前原+49.7P  瀬戸熊+40.8P  板川+8.6P  沢崎▲98.7P




7回戦(起家から、前原・瀬戸熊・沢崎・板川)

【迷走】

初日同様、比較的静かな立ち上がりとなった7回戦。
大きな動きが出たのは東3局1本場、前原6巡目にポンでターツ選択。

  ポン  ドラ

ここから---の受け入れ選択で前原は打。これが正解。
10巡目、も鳴けてテンパイ。

 チー ポン

その前原に相対するのは板川。
三色変化の見える1シャンテンも、前原の当たり牌であるを引くと打としてここは迂回。

  ツモ  

前原はツモでシャンポンに受け変え打とすると、それに呼応して板川も打。そしてチー、ツモで再度テンパイを果たす。

  チー  

しかし、この勝負に競り勝ったのは前原。

 チー ポン ツモ  

板川は信条の粘り強さを出し、当たり牌を掴むも放銃を回避し再度テンパイを果たすと、この受けでは難しいと前原は待ちを受け変え。
そしてツモと互いに結果を出す。
ギリギリまで攻めて、当たり牌を掴むと受ける。この待ちではアガルことは難しいと判断すると待ちを変える。
これだから本物の対局を観戦していることは楽しいし、ギャラリーもワクワクするのだろう。

そうなると瀬戸熊も黙ってはいない。
南1局、この1,300・2,600を引きアガると、

 リーチ ツモ ドラ

南2局1本場、今度はシャンポンをツモ。

 リーチ ツモ ドラ

この半荘もリードする。

そして迎えた南3局、現在の点数状況は、
瀬戸熊・44,200、前原・32,200、沢崎・29,400、板川・14,200。

前原7巡目にポン。
この仕掛けを受けた瀬戸熊、9巡目にテンパイを果たす。

 ドラ

ここはダマ。それは何故か?-は前原の現物。そしては場に3枚切れ、という理由も1つある。が…
11巡目、前原、ポン打。同巡、瀬戸熊ツモ
この時点で瀬戸熊の思惑が私にも強烈に伝わった。前原の捨て牌はここまで、

捨て牌 
     
      
キーは前原の3巡目打、そして4巡目打。さらにポン→ポンの仕掛けの順番。
もちろん、普通のメンツ手としての序盤の捨て牌としては違和感がない。
しかし、ポンを打つ理由について仮説を立てるとすると、3巡目打、4巡目打はドラのトイツ以上と考えても不思議ではない。
そしてポンの後のポン。これはどうしてもトイツ手を連想させる。
とすれば3巡目のはドラが固まっていると考えるのが自然だというもの。

そこにツモ。ということは、ドラは暗刻ではない。
待ちがリャンメンでドラが雀頭のケースも考えられるが、前原の最終手出しは2枚切れの
これがテンパイ打牌ならば、タンヤオ移行を考えている仕掛け方ではない。

可能性でいえば、場に見えていないの暗刻にリャンメンターツもありえるが、それは五分以下だろう。
残された手役は、やはりトイトイが濃厚。そうなると待ちの形として有力なのは、

か、、そして

の部分はわからないにしても、この3つのケースだけには放銃できない。

だからこその9巡目ダマなのだろうと推測する。
瀬戸熊の持ち点は44,200。前原は32,200。その差12,000。理想は早期の決着で、オーラスを逆転が難しい点差で迎えることだった。
それを果たせなかった以上、このを使い切ることが必要不可欠になる。
その上で戦うか否かといった判断が迫られるのだ。

を掴んだ瀬戸熊、少考に入る。
瀬戸熊のスタイルなら、もしが打牌候補に入っているとすればノータイムでのツモ切りのはず。
それはダマを選択した時点で、打を想定しているからである。
とすると、瀬戸熊の選択はリーチを掛けるか否か、またはこの手は成就せぬと考え、受ける態勢に入るかどうかの選択だろう。

そして瀬戸熊は、打のリーチを選択。前原に対し真っ向勝負を挑む。
ここで瀬戸熊に誤算が生じる。1つ目の誤算は、前原の打はテンパイ打牌ではなかったということ。
瀬戸熊のリーチを受け、前原は手出し打。これは完全安牌。

実は前原の11巡目は、

 ポン ポン  

この牌姿が2つ目の誤算。前原の手にドラは1枚もなかったということ。
前原の対局を連盟一研究している瀬戸熊にとって、もちろんそれは想定内。
しかし、直近での前原の仕掛けで脳裏に焼き付いているのは、3回戦東4局の前原の3,900オールだろう。

 ポン ツモ  ドラ

この手の仕掛け、3巡目ポンがあるからこそ、このは打ちきれなかったのではないか?
そこまでの感覚があったかどうかは定かではないが、さらに3つ目の誤算は、リーチを受けた前原のツモがであったということ。
そして、瀬戸熊の現物にがあったこと。
この2つが複合されているために、ポン打となり、前原の1シャンテンが伝わった上にテンパイが入り、
そして瀬戸熊の目にアガリ逃しが明らかになるのであった。

 ポン ポン ポン  

最後の誤算は、瀬戸熊のハイテイツモ。
瀬戸熊の待ちは0枚。対する前原の待ちは僅か1枚だが山に眠っている。
そのたった1枚を、瀬戸熊が掘り起こしてしまったのだ。

ホウテイも付き、瀬戸熊痛恨の8,000放銃。
前原にとっては僥倖の結果ではあるが、何はともあれ瀬戸熊を捕らえることに成功。首位に躍り出る。
瀬戸熊にとっては大きなダメージも、牌姿を見て納得の様子。
この放銃が引き金になったかどうかはわからないが、ここからいつもに増して瀬戸熊の踏み込みが深くなったのだ。

さて、この半荘の結末は、意外な形で決着する。
前原と板川の仕掛け合いの中、苦しい形からテンパイを果たした沢崎が、板川からホウテイロン。

 ポン  チー  ドラ

この形で何とか30,000をキープ。首の皮一枚繋げる。
逆に板川は、展開にも恵まれず不運にも感じられるノーホーラの1人沈みのラス。半荘終了後は吹っ切れた表情であったのが印象的であった。
日を跨いでの連勝で首位固めの前原、ようやくエンジンがかかってきた様子。このままの勢いで2日目を乗り切ることができるのであろうか?

7回戦成績

前原+21.7P  瀬戸熊+6.7P  沢崎+3.1P  板川▲31.5P

7回戦終了時

前原+71.0P  瀬戸熊+47.5P  板川▲22.9P  沢崎▲95.6P



8回戦(起家から、前原・沢崎・瀬戸熊・板川)

【乱舞】

7回戦終了時、席を立った板川は観戦記者の私に向かいこっそり、
「きっとこの後は噴くぞ」と、意味深なコメントを残した。
不運な展開が続き苦しみ抜いた半荘を終え、何か自らに言い聞かせるような呟き方に私は、今までと違った闘志を板川から感じたのだ。

ここまで粘り強く戦ってきた板川だが、実はまだノートップ。
後半にピークを持っていきたいとはいえ、そろそろ形が欲しいところ。
現実的にも、首位・前原との点差は、これ以上離されてしまうと苦しくなる。

そんな板川が、開局早々に飛び出す。
瀬戸熊の仕掛けを受けた板川、9巡目にテンパイ。そして即リーチ。

 リーチ ドラ

同巡瀬戸熊、

 ポン

ここにツモ、板川の当たり牌だけに回避し打
テンパイは維持したものの15巡目ツモ。さすがに押し切れず受けに。

瀬戸熊に当たり牌を吸収される嫌な展開に、今局も苦しめられるかと思いきや、ハイテイには板川の待ち望むが眠っていた。
大きな大きな2,000・4,000で一歩抜け出すことに成功。

続く東2局、13巡目の沢崎、をチーして以下のテンパイ。

 チー ポン ドラ

板川は、

となっていた。

沢崎のチーにより、同巡瀬戸熊はをツモって、

 ツモ  

四暗刻のテンパイを果たす。今、このタイミングならはポンで済む。
しかし瀬戸熊は、歯を喰いしばってをツモ切る。

このあたりが、瀬戸熊の一貫性の部分であろう。
後にも触れるが、鳳凰位決定戦での瀬戸熊の打牌には、こういった選択に迫られるとき一切の“ブレ”がなかった。
役満テンパイでも、アガれる保証はない。そして、テンパイ打牌はリスキーな牌。
普段私は自らの欲や手形に負け、丁半博打的な一打を求めてしまう傾向がある。
今回私は、瀬戸熊の背中を通じ、麻雀プロとして勝負に向かう『姿勢』をも学ばせてもらったのである。

結果、この手は成就せず、瀬戸熊→沢崎への放銃で終わるのだが、瀬戸熊の今決定戦への強い気持ちを感じることのできた一局になった。


時は進んで南2局1本場、ここまで今半荘攻勢をかける板川と瀬戸熊の思惑がぶつかる局となる。

まずは板川。最初の岐路は6巡目、七対子1シャンテンからツモでホンイツへ移行する打
更なる加点を目指す板川の思考がギャラリーにも伝わってくるようだ。

 ツモ 打 ドラ

そして7巡目ポンと攻めに入る。
しかし、11巡目、親・沢崎から先制リーチ。

  リーチ  

ここで登場は瀬戸熊。12巡目テンパイも、

 ツモ  

ドラが暗刻の三色含みの勝負手。ここに三色ならずのツモ
ここでの瀬戸熊の選択はなんと打!そしてリーチ。
沢崎の現物は。場にはが1枚、が1枚。対して-は沢崎の現物だが5枚飛んでいる。この比較でも瀬戸熊は打を選択するのだ。
もちろんどちらが正解となるかはわからない。しかし、このような選択を取り続けることが出来ることが瀬戸熊の強さであり、一貫性なのだ。

そして、リーチを受けた板川の牌姿はこう。

 ポン  

ここから…を打たないのだ。
もちろんきちんと受けることを前提にすれば、終局までわずか1本だけだが受け手順が存在する。その受け手順を、板川は忠実に守りきるのだ。
少しでもアガリに欲を出した瞬間、瀬戸熊に捕らえられる。そんな危機を、こちらも板川の一貫性で回避するのだ。


板川 和俊

 

結果、この局は流局。瀬戸熊目線で言えば、打としていれば沢崎から8,000のアガリとなっているわけだが、瀬戸熊にとっては大きな問題ではないように映った。
アガることよりも、自身を見失わないこと。それが大事だと感じた瞬間、私の中での瀬戸熊の選択基準が氷解した。

それは、1回戦東2局のドラタンキから始まり、4回戦東4局の中ぶくれドラタンキリーチ、5回戦東4局のドラタンキダマ、同4本場タンキリーチ、
7回戦南3局の打リーチ、そして今半荘、東2局打の四暗刻テンパイ取らず、この局の打リーチまでが一本の線で結ばれるのだ。
瀬戸熊の“決め”と板川の“受け”。形さえ違えど、これらは2人の麻雀への覚悟と想いを投影した『一貫性』という言葉に集約されるのではないだろうか。

キチンと受け切った板川に、今度はプレゼントが舞い降りる。
南2局2本場、5巡目に、

 ドラ

高めツモ跳満の勝負手も、ここは慎重にダマを選択。
そしてあっさりと安目ながらをツモる板川。
実は5巡目までに瀬戸熊が、を2枚とを1枚河にリリース済み。

ここで助かったのは前原。「リーチを打たれていたらヤバかった」というように、前原の打牌候補にはが。
リーチを選択できるかは微妙な線であるが、ここでリーチを告げることが出来たのなら、板川のエンジンはさらに加速することになったのかもしれない。

そしてクライマックスは、南4局1本場、前原の執筆した中級講座にも登場したシーンである。

立会人の藤原も、タイトル戦の決勝戦では初めて見たと言っていた四槓算了。(複数人によって4つのカンが入り流局すること)。
中級講座にも記されていたが、前原3巡目、

 ツモ ドラ

ここで打。テンパイ取らず。
現状の前原は22,500のラス目。ドラがということもあり、私も打を選択しそうだ。
しかし前原の見解は中級講座の通り。読めば読むほど納得する。前原の思考からすると、やはり常時は打と打ちそうな気がする。

そして瀬戸熊の8巡目、暗カン。このタイミングが全てを左右する。

 暗カン  

沢崎10巡目、ポンで1シャンテンに。

 ポン  

次巡、ツモを暗カン。するとリンシャンからをツモりテンパイに。

 暗カン ポン 

同巡板川、七対子1シャンテンも、ツモで打。メンツ手移行もこれが大正解。次巡ツモでリーチと打って出る。

  リーチ 

同巡前原、板川の当たり牌をツモると、打もダマ。※中級講座参照
このに瀬戸熊が反応する。ここが2つ目のキー。

 チー 暗カン  

このチーで、板川にが流れ3つ目の暗カン。

 暗カン  

この暗カンにより、リンシャンからツモ。このを瀬戸熊がポン。打で全員テンパイを果たす。
この時点でのアガリ牌の枚数と打点を記そう。

まず、親の板川はが2枚。
出アガリは12,000でツモだと三暗刻がつき6,000オール。

前原はが2枚とが1枚。
出アガリは3,900、ツモは1,300・2,600。

沢崎はが2枚。
出アガリは6,400も、こちらもツモは三暗刻。2,000・4,000となる。

そして瀬戸熊は、高めのは0枚も、が2枚にが2枚。
出アガリは3,900、ツモは1,000・2,000。

こうなってしまうと、残り枚数よりも牌の後先になるため、誰がアガるのかは全く想像つかないのだが、結果は沢崎がツモを加カンし、四槓算了となった。
沢崎としてみれば、もちろんツモ切る選択肢もあっただろうがここは素直に流局を選択。
観戦記者の立場からすると、この局の結末を見たかった気はするのだが…この結果如何では行く末を大きく左右することになったであろう。
オーラス1本場には、沢崎がアガり板川の1人浮きを阻止。沢崎は7回戦に続き首の皮を繋いだ。


沢崎 誠

 

とは言え、板川にとっては価値のある嬉しい初トップ。
ゲームプランもはっきりとしているだけに、ここからの大きな浮上も期待できる。
首位・前原との差も60P弱まで詰め、次戦以降の活躍に期待したいところだ

8回戦成績

板川+19.9P  沢崎+5.1P  瀬戸熊▲7.9P  前原▲17.1P

8回戦終了時

前原+53.9P  瀬戸熊+39.6P  板川▲3.0P  沢崎▲90.5P




9回戦(起家から板川、瀬戸熊、沢崎、前原)

【覚悟】

1日目終了後の深夜、宿泊先のホテルに戻り取材ノートをまとめながら原稿の準備をしていると、突然携帯が鳴った。
着信を見ると前原からの電話。急いで電話に出ると開口一番、

「瀬戸クンのはすごいよ!」
「あのを見ると、やっぱり稽古を積んでいるんだなぁって感じるよね。」

誤解の無いように記しておくと、対局者には1日の対局の終了後、観戦記用にコメントをもらう段取りとなっていた。
しかし前原からはコメントをもらえず、「後程連絡をする。」との事。それが冒頭の言葉である。

鳳凰位決定戦を終えた打ち上げの席での一コマ。

「あので山井さんを超えたよね。(笑)」とは、瀬戸熊談。

攻撃力が強く、勝負となれば何でも切っていく山井の攻撃力を越えたという意味のコメントである。
その2人が語るとは、東2局2本場での出来事である。
ここまで、開局で沢崎が、

 リーチ ツモ ドラ

この2,000・3,900で先手を取ると、東2局、親の瀬戸熊が、

 リーチ ツモ ドラ

この4,000オールで首位に躍り出る。そして迎えた東2局2本場、まずは板川4巡目、

 ツモ ドラ

この牌姿から珍しく手順ミス。
が自然だが、ドラがだけにを打ちそうであるが、ここから板川は打。すると次巡ツモは裏目の。ここで打
1シャンテンになるものの、前巡に打か打としておけば、

 

この万全の1シャンテンに。しかし現実は、

 

同じ1シャンテンでも雲泥の差。すぐにを引き込みテンパイも、

 

 

これではさすがに苦しいか。
同巡瀬戸熊、こちらも理想形とはいかないもののテンパイ。

 

ここは手変わりを待ちダマに構える。

こちらは沢崎12巡目、をチーして1シャンテンも、

 チー 

この動きで前原にテンパイが入る。ここは前原らしく即リーチを放つ。

 リーチ 

このリーチを受け、アガリ逃しが生まれた板川は一歩後退。
沢崎は、ツモでテンパイ。ここは打タンキに受ける。

 チー 

15巡目、板川は再度テンパイを果たすも、ツモは最初のアガリ牌。ここは意を決してタンキでのリーチを敢行する。

 リーチ

これで全員がテンパイ。
結果は全くわからないといったところだが、ここで瀬戸熊がツモった牌は
これでは無くなり、後は前原のを誰が掴むかといったところに焦点が集まるはずだった。
瀬戸熊、打…とノートに書こうと思った瞬間、私は目を疑った。

ここ一番の強打。河にはが放たれている。息を呑むギャラリー。目を見開く前原。
そこに、板川からのロンの声。ワンテンポ遅れて、沢崎からも声が掛かる。

冒頭の前原の言葉は、もちろん瀬戸熊の牌姿を確認することなく発したものである。
前原にはどのような牌姿から放たれたなのかはわからないが、瀬戸熊が間違いなく放銃を覚悟してのモノだったに違いない。
放銃を恐れない瀬戸熊のその姿勢に、前原は賛辞を送ったのである。

鳳凰位決定戦開始前のコメントで、前原は私にこう語っている。

「麻雀の本質とはぶつかり合うこと。」
そして、
「放銃すべき手はきちんと放銃しようと、心に決めている。」

それは、前原自身がやらねばならないことを瀬戸熊が実践したのだということ。
前原から瀬戸熊が学んだことを、実際の対局で、それも鳳凰位決定戦というプロ連盟最高峰の戦いの場で、
しかも前原相手に打ち切ってくれたことが前原にとっては嬉しかったのだろう。

牌姿を目にしたら、どう感じるかはわからない。
結果だけで言えば、放銃をしていい局面など限られている。
それでも前原がこの放銃に賛辞を贈るのは、前原自身の言葉を借りれば、

「リーグ戦でもタイトル戦でも、ゴールに向けての最善手を打っている。一局単位の最善手を求めないんだ。」

ということなのだろう。
鳳凰位を獲りきるために、瀬戸熊はを切った。
たったそれだけのことなのかもしれない。だがそれは、万人に出来ることなのだろうか?私には選ばれた男にしか出来ないことのように感じた…。


瀬戸熊 直樹

 


さて、対局に話を戻そう。
続く東3局、前原が動く。2巡目、

 ポン  ドラ

それに呼応するように板川も反応する。

 ポン 

時間は掛かったものの、12巡目にツモでテンパイ。

対する前原は、ポンでこの牌姿。

  ポン ポン

ここに沢崎が板川の現物を切り出すと、前原は少考後チー。そして打
このチーを前原は悔やむ。

-をチーしてタンキ選択、またはマンズとドラの縦引きを想定してを仕掛けたのに、チーがね…。
まさかが出るとは思わなかったので、体が反応してしまった。反応した以上は仕掛けないといけないから。」

そう語った前原の手にはが。
打牌選択によってはアガリがあったこのを、前原は力なく卓に置く。
吸い込まれるように板川に7,700の放銃。このアガリをきっかけに、板川が火を噴く。

 ポン ツモ ドラ

 ロン  ドラ

この3連発で瀬戸熊を捕らえ首位浮上。三つ巴の争いになるかと思われたが、ここでも瀬戸熊が一歩抜け出す。

南2局、親・瀬戸熊9巡目、

 ドラ

このテンパイを万全のダマ。程なくツモで4,000オール。板川以下を置き去りに。

ほとんどの者が放銃しないを打ち切る瀬戸熊だからこそ、このを引きアガるのか。
瀬戸熊が鳳凰位を守りきる覚悟があるからこそ、を打ち抜くのか。
そう感じさせる内容と結果に、麻雀の本質を考えさせられる半荘となった。

これで瀬戸熊は前原を捕らえ再び首位に立つ。
折り返し地点を通過し、3人がプラスで後半戦へ。
沢崎にとっては本当に苦しい時間が続く。そして次戦、勝負が大きく動きだすのだった。

9回戦成績

瀬戸熊+17.6P  板川+11.9P  沢崎▲6.7P  前原▲22.8P

9回戦終了時

瀬戸熊+57.2P  前原+31.1P  板川+8.9P  沢崎▲97.2P



10回戦(起家から前原、瀬戸熊、板川、沢崎)

【終焉】

東1局、板川の岐路は8巡目、 

 ツモ 打  ドラ

この1シャンテンを打とし、2シャンテン戻しに。
自らはを打ち出さないという強い意思が窺える。

その意思が通じたか、次巡ツモ。ここでも選択は打と三色に拘った板川。
そしてチーでテンパイを果たす。

 チー  

この仕掛けでテンパイは沢崎。ここは勝負とリーチに打って出る。

  リーチ

しかし、このリーチも虚しく沢崎がを掴む。
後がない沢崎、ここでも苦しいスタートとなってしまった。

この半荘、大きくスタイルチェンジを見せたのは首位に立った瀬戸熊。盤石のゲーム回しで他を抑え込む。
まずは東2局、各人の対応を見てみよう。

最初の選択は西家・沢崎。3巡目、七対子ドラドラ1シャンテンだが、

 ドラ

当然と言えば当然なのだが、前原から打たれるをスルー。七対子1本に。
次は前原。8巡目、こちらも七対子1シャンテンからツモで刻子手も視野に打

 ツモ  

この2者に対する、板川と瀬戸熊の対応が対照的で面白い。
板川9巡目、前原の7巡目打、8巡目打を受け、

 ツモ  

ここで打。手牌だけだとツモ切り。しかも自身の河にはと並んでいる。
前原の気配を感じての受け手順。ここまでの板川の戦い方と一貫している対応だ。

この後は丁寧な合わせ打ち。
前原の打に合わせ打。打を挟み、瀬戸熊のに合わせ打。この手が成就しないと感じた瞬間に受けに入る。
板川が受けに入り、前原と沢崎は七対子。
2人とも手が進まず、前原は刻子手を見切り七対子1本に、沢崎は撤退をし始め、その瞬間、瀬戸熊が反応する。

  チー 

前原の暗刻落としのにすかさずチーを入れ形テンに。
10回戦まで、一度たりとも動かなかった形テンへの仕掛けを、ここで初めて披露する。
3者共に攻められないと見るや、親権維持のアクションを入れる。
ここまで一度も見せてこなかったこの仕掛けに、前原と沢崎は撤退を余儀なくされるのだ。

そして、この仕掛けの恩恵を受けたのは板川。
丁寧に打ち進めてきた結果、瀬戸熊から流れてきた牌を使い切りこちらもテンパイを果たす。
それは奇しくも、自身が対応し始めた瞬間のを手中に置かなければテンパイを果たさないという結果からも、板川の対応が功を奏したという結果になった。
今回の譜は流局牌譜だが、このような譜を繰り返し研究することで、基礎的な雀力が向上するはずだ。
若手プロにはぜひとも検証してほしい1局となった。

瀬戸熊のシフトチェンジに対し、追いかける立場に変わった前原のスタイルは全く変わらない。
東2局1本場6巡目、自然な手順でテンパイを果たした前原、先制リーチ。

 リーチ ドラ

沢崎が追いつきリーチを放つも、沢崎に一度もツモらせることなくをツモ。瀬戸熊への挑戦権を叩きつける。
だが、瀬戸熊も負けてはいない。南2局、これも決定戦初めてのメンピンリーチ。
ここまでこの形でリーチを宣言することのなかった瀬戸熊だが、こちらも一発ツモで結果を出す。

 リーチ ツモ ドラ

そして続く南2局1本場、1人の男の戦いに幕が下りる。
10巡目沢崎、テンパイなのだが…

 ツモ  ドラ

平時なら、沢崎はテンパイを取らないような気がする。恐らく打辺りか。
ピンフイーペーコーを本線に、タンヤオや七対子を視野に入れワイドに構えそうな気がするのだ。

しかし沢崎は打を選択。これは瞬間のツモアガりとツモ、ツモに対応するため、そしてピンズの多メンチャンに対応するための策だと考えていた。
12巡目、ツモ。これをツモ切り。こうなると受け変えするしか策はない。
しかし皮肉にもツモはフリテンの牌ばかり。を切るタイミングがない。

手変わりが果たせぬまま、ついに追手の手が迫る。
板川15巡目、こちらも長かった1シャンテンのトンネルを抜け、ようやくテンパイを遂げる。

 ツモ  

。このテンパイ打牌に鋭く反応した男がいた。そう、瀬戸熊だ。
ポンは、今シリーズ2度目の形テン。

 ポン  

この仕掛けの可否はわからないが、少なくとも板川に対してはプラスに作用したのだ。
同巡沢崎、自身が切っている1枚切れのを手中に残し、打
この瞬間、今決定戦の沢崎の幕が下りた。

アガリ手順が無数に存在する中、放銃手順はこの1本だけ。
常時の沢崎ならば、アガリはあれど放銃だけは絶対と言っていいほどない局面。
板川がテンパイするのを待っていたかのようなタイミングでのこの切り出しは、鳳凰位に君臨する男のそれではない。
随所で見せてきたファインプレーの数々も、リーグ戦での絶対的な安定感も、こと今回の鳳凰位決定戦においてはいい結果をもたらすことにはならなかった。
沢崎自身、この半荘を最後に自ら主導権を取りに行くことは皆無になった。
この半荘で決着がついたことを悟ったかのような戦い方になったのだ。

最後に、沢崎の名誉のために1つ付け加えておこう。
10回戦以降、沢崎の闘牌もあり、今決定戦が素晴らしい内容の戦いになったことは事実である。
強者ほど、負け戦が美しい。それは、昨年の前原然り、一昨年の朝武然り。
想像よりも遥かに早い終焉になってしまったことは残念だが、来年の決定戦での活躍を期待したいところである。


さて、注目はこの半荘の着順勝負に戻りたい。
2度目のトップを目前に控えた板川に、大きなチャンスが訪れる。
南4局2巡目、を重ねた板川、3巡目にそのをポン。

 ポン ドラ

この仕掛けによりが重なり打を選択。
すると、最後の連荘に懸ける沢崎がポン。

  ポン  

何とか板川に迫りたい前原も、6巡目盤石の1シャンテンに。

 

そして7巡目、まずは板川が打。これを沢崎がポン。そして打

 ポン ポン  

このを板川当然のポン。小三元1シャンテンに。

 ポン ポン

すると次巡、板川のツモはなんと!打

 ポン ポン

この仕掛けを受けた前原、好形もさすがにここは撤退開始。
しかしここでもまだ戦いを挑む男がいた。西家・瀬戸熊9巡目、チー。

 チー 

まだまだ戦える牌姿ではない。しかし、瀬戸熊の背中からは一歩も引かないといった闘志が伝わってくる。
そしてこの仕掛けの恩恵を受けツモ。板川、待望のテンパイの瞬間がやってくる。
ひとまずは打タンキに受ける。ここで板川が続けてを切る勇気があれば、結果は違ったものになっていたかもしれない。

板川ツモ、これをツモ切ると、沢崎のツモは
板川ツモ、これもツモ切ると、前原がを合わせる。

このに瀬戸熊が反応。12巡目にを重ねていた瀬戸熊、このチーで板川に追いつくのだ。

 チー  チー  

仕掛けを打った瀬戸熊から板川に流れてきた牌は同じ
もし前原がを合わせていなくても瀬戸熊はテンパイを果たしていた。
それを確認してツモ切ると、なんと沢崎のツモ切る牌もだったのだ。

を切っていれば、を捕らえていたかもしれない。
次巡のに待ちを変えていれば、をツモっていた公算が高い。
どちらも沢崎はツモ切った為に、皮肉にも板川の目には結果が見えてしまったことになる。

もちろん板川には後悔はないだろう。自らの意思で選んだ。自らの指が選んだ
この結果に一喜一憂しているようでは麻雀プロは務まらないが、終局後には悔しさを押し殺したような表情の板川がいた。

逆にほっと一息は瀬戸熊。腹を括った勝負に出て、薄氷の30,000キープ。結果も最良ということで言うことなし。
もし仮に板川がを引きアガっていた場合は、板川に首位の座を明け渡していただけに、この一局は明暗を分ける大きな一局となった。

10回戦成績

板川+18.2P  前原+8.4P  瀬戸熊+2.2P  沢崎▲28.8P

10回戦終了時

瀬戸熊+59.4P  前原+39.5P  板川+27.2P  沢崎▲126.0P



11回戦(起家から前原、板川、瀬戸熊、沢崎)

【世襲】

その男が静かに手を倒すと、一呼吸置いて全てを悟ったかのような「ハイ」の声。
そして何時にも増して丁寧な点棒の授受が終わると、グッと息を堪えていた力みが消え、安堵の表情に。

東1局、いきなりのビッグプレーが飛び出す。
立て続けにドラを引いた瀬戸熊、順調なツモにも後押しされ自然な手順でホンイツへ進む。
そしてロスなくテンパイを果たすものの、-待ちのは枯れているためにじっと息を潜める。

 ドラ

ここに追いついたのは前原。
瞬間の役無しテンパイも、一手変わりでの変化が効く為にこちらもダマを選択。

 

そして前原ツモ
即座にツモ切りのモーションをしたものの、手が止まる。
前原独自の感性が働いたのか、危険察知能力がそうさせたのか。

もちろんここではテンパイを外す打は十分に考えられる。私も打のタイプである。
しかし、前原は臨機応変に選択肢を変える打ち手である。ここでの選択は?

少考後、前原はを河に置く。瀬戸熊の声を、前原はどう聞いたのだろうか。
瀬戸熊が、前原のすぐ傍まで駆け上がってきた足音を、前原は誰よりも強く感じているのだろう。
前原の表情や、所作、そして点棒授受は、すべて一連の流れの中で行われていた。


前原 雄大

 

瀬戸熊の攻勢はさらに続く。
東2局6巡目、ドラの局面で瀬戸熊はをリャンメンでチー。
こういった仕掛けは、ドラがトイツ以上だということを他家に伝える為の仕掛けだと言ってもいい。
これは瀬戸熊の宣戦布告、どこからでもぶつかってこいとの意思表示のように感じた。

 チー  ドラ

この瀬戸熊のメッセージに、前原も全力で応戦。巡目、安目のを引くもリーチを敢行。

 リーチ 

これに親・板川も続く。次巡、こちらもリーチ。

 リーチ

この対決は板川に軍配が上がる。安目ツモながらも2,000オールで瀬戸熊と並ぶ。
ここから一気に3者での乱戦となった。

東4局1本場、前原が板川を捕らえれば、

 ポン ロン ドラ

南1局は、瀬戸熊がツモで突き放す。

 ツモ ドラ

続いては板川。南2局、親・板川はリーチで加点。

 リーチ ロン ドラ

しかし、最後はやはり瀬戸熊。南2局1本場、南家・瀬戸熊は、

 ポン ポン ドラ

この8,000を沢崎から打ち取り勝負あり。
オーラス、前原が瀬戸熊から、

 ロン ドラ 

この5,200をアガリ一矢報いるも、着順を変えるまでには至らず。
瀬戸熊が横綱相撲で首位固め。最終戦に向けて準備は万全。
瀬戸熊がこのまま押し切るのか、三つ巴のまま最終戦に縺れ込むのか、2日目も残るは後一戦、興味は尽きない。

11回戦成績

瀬戸熊+15.5P  板川+9.8P  前原▲5.4P  沢崎▲19.9P

11回戦終了時

瀬戸熊+74.9P  板川+36.9P  前原+34.1P  沢崎▲145.9P



12回戦(起家から前原、沢崎、板川、瀬戸熊)

【覚醒】

この12回戦の重要性を、3者は十分に理解している。
最終日をどの位置で迎えることができるか?これは今までの鳳凰位決定戦の歴史の中でも結果が如実に表している。

面白いデータがある。過去5年間の12回戦の成績を調べてみた。すると驚愕のデータが表れた。
過去、鳳凰位を獲得した者のうち12回戦をトップで終えた者がなんと5人中4人。
ちなみにトップを獲れなかったのは私だけなのだが、それでも2着で終えている。

さらに、12回戦終了時のトータルの成績を追ってみると、こちらも首位で最終日を迎えた者が5人中4人鳳凰位に輝いている。
逆転優勝は、25期の前原ただ1人。

とすると、この12回戦をトップで終えると、またトータルでも首位に立つと、かなりの確率で鳳凰位に輝く確率があると言えるのかもしれない。
もちろんこれは確率の話であるし、対戦者も全く違うデータであるが信憑性はかなり低いと思っている。

過去の観戦記を読んでいる中でふと感じた自分だけの疑問が、ここまで偏った数字になっていたことは驚きだが、
数字的にも気持ちの上でも非常に大事な瞬間であることには間違いないのかもしれない。

特に、追う立場の前原と板川には重要だ。
ここで瀬戸熊を差し切る、もしくは対抗馬として名乗りを挙げることと、瀬戸熊に楽な展開で逃げさせることとでは雲泥の差である。
2人のせめぎ合いは必至であろう。

東1局1本場、早々にドラを重ねた板川は6巡目当然のリーチ。

 リーチ ドラ

そこに前原がぶつける。
親・前原8巡目、2枚切れのカンで追いつくも、ここは気合のリーチ。一歩も引く構えは見せない。

 リーチ

前原のカンは残り1枚。対して板川は2枚。ここは前原の闘志が上回る。
3,900は4,000オールで一歩抜け出し、順位点込みで瀬戸熊に肉薄する。

しかし、瀬戸熊は全く動じない。
東2局4本場、瀬戸熊はドラを重ねてテンパイもここは当然のダマ。

 ロン ドラ

ここに飛び込んでしまうのは板川。痛恨の放銃で瀬戸熊は原点復帰。
すると東4局、親を迎えた瀬戸熊の手順に衝撃が走る。巡目、

 ツモ ドラ

ここで打。ここまでの瀬戸熊のスタイルでは、一貫して打としてきた。
ツモならどの選択かは難しいところだが、ここはノータイムで打。一気に勝負を懸けるつもりなのだろう。

すると、瀬戸熊のツモが驚異的な伸びを見せる。
それはまるで、瀬戸熊自身にはツモ筋がはっきりと見えているような、そんな錯覚すら感じさせる手牌変化なのであった。

ツモ、ツモ、ツモ、ツモタンキのメンホンテンパイ。
そしてツモでメンチンへ移行。
このを、こちらもドラトイツの板川がポンテンをかけるも、

 ポン 

次巡、瀬戸熊の手には当然のが。

 ツモ 

この6,000オールで、追いすがる2人を置き去りにすることに成功。
一瞬の変わり身。抜群の嗅覚。これでトップをほぼ手中にする。

こうなると、この瀬戸熊の親をどう落とすかが3者の共通意識。
東4局1本場、前原は積極的に仕掛け、

 ポン ポン ドラ

対する板川は10巡目、

 リーチ 

こちらはドラタンキでリーチ。
-は…板川がを掴んで決着。
何とか瀬戸熊の親を流すことに成功。ここから追撃を開始したいところだったが…

3者がぶつかり合った南3局、追撃一番手の前原に結果的に敗着となる手順が生まれてしまう。
瀬戸熊が789の三色、板川がピンズの一色、そして前原はマンズの一色とはっきりとした色分けがされていた中、前原10巡目、

 ドラ

この牌姿からをポン。結果的にこれが裏目に。このポンで、前原はと喰い流してしまう。
もし仮に、前原がこのを堪えることが出来たなら、前原は2巡後、

 

この7メンチャンのテンパイを果たしていたことになる。
もちろんアガリは濃厚だっただけに、非常に悔やまれる仕掛けとなってしまった。
このポンの後、ツモでテンパイを果たすも、

 ポン 

瀬戸熊にも好牌が流れることに。結果、瀬戸熊が2,000・3,900のツモアガリ。

 ツモ ドラ

前原にとってみれば、瀬戸熊の背中を捕らえる大チャンスだっただけに、この瀬戸熊のアガリは数字以上に重く圧し掛かったのだろう。

12回戦成績

瀬戸熊+46.2P  前原+15.3P  沢崎▲23.0P  板川▲38.5P

12回戦終了時

瀬戸熊+121.1P  前原+49.4P  板川▲1.6P  沢崎▲168.9P



2日目を終え、瀬戸熊と前原の差は約70P。板川に至っては約120Pもの大差がついてしまった。
後ろで各人の姿を見ている限り、内容にそこまでの差があるようには思えない。
しかし、現実的にはこれだけの差がついてしまっていることを考えてみると、小さなことの積み重ねがここまでの差になっていると表現するのが妥当だろう。

そして一番の要因は、瀬戸熊の充実に他ならない。
途中、崩れかける瞬間もあったものの、立て直しを図った後はほぼ万全の試合運び。
自身の決めも、ゲームプランも、全てが瀬戸熊の思うがままに働いていたような印象がある。

残すは後1日。
このまま瀬戸熊が逃げ切るのか。それとも前原と板川が意地を見せるのか。
ポイントこそマイナスではあるが、板川の出来はかなり良いのではないか。
しかし、勝負どころでのマイナスが大きいだけにかなり惜しい気がする。
「後半勝負!」を公言しているだけに、最終日の巻き返しを期待したい。

対する前原は、初日よりは状態が上向いてきたと見た。だが、2日目には本来の爆発力が影を潜めた。
これは、瀬戸熊が前原を上手く阻止していることもあるのだが、本調子の前原を知っているだけに少し物足りない。
一撃で捕らえるだけの攻撃力を秘めているだけに、瀬戸熊のマークが緩んだ瞬間の踏み込みに注目だ。

最終日も4人の素晴らしいパフォーマンスに期待したい。

 

 

 

 


(執筆:望月 雅継 文中敬称略)

                              

ページトップ
麻雀格闘倶楽部 好評稼働中!
GyaOバナー白
ALRAN
麻雀格闘部呂倶
日本プロ麻雀連盟メールマガジン
トップページ牌画の利用について引用・リンクについて広告についてよくあるご質問お問い合わせサイトマップ
日本プロ麻雀連盟
Copyright 1997-2010 Japan Professional Mahjong League. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.
ma-jan.or.jpの記事・写真等の無断転載はお断りします。