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第25期 鳳凰位決定戦

鳳凰位決定戦観戦記 〜二日目〜

(文責:望月 雅継)

前日降り注いだ雨はいつしか止み、
初春の空らしく、どんよりと重苦しい雲の隙間から暖かい春の陽光が差し込む。

春の嵐が吹き荒れた神楽坂から戦いの舞台をいつもの新橋へと移し、二日目の幕が切って落とされる。


初日の柴田の独走はある程度予想された出来事ではあったが、
古川と朝武の苦戦の理由は果たして何故だったのだろうか?

そのヒントは、前日までのインタビューにあると感じた。

鳳凰位決定戦を前に、自然体で臨むと語った柴田・古川・朝武。
柴田が自然体で臨む初めての戦いとは違い、朝武と古川は十分な経験を積んでいる。

それを踏まえて稽古に励んだ前原と、あくまで自然体を強調した二人。
出来、不出来はあるにせよ、心構えと準備がやはりこの戦いには必要ではないか?

私も昨年戦い終えて、昨年と一昨年との違いは準備段階にあったのだと痛感した。

その準備が吉と出るか、果たして自然体が勝るのか、その点も注目したいところである。

7回戦(起家から朝武、前原、柴田、古川)

初日の朝武の牌勢は、他の三人に比べて段違いに悪かった。
平均2〜3手は遅れていたのではないか。
門前志向の打ち手の最大の欠点は、スピードについていけなくなる場合が多いということ。
本手をぶつけることができずに、朝武はずっと耐える局面が続いていた。



朝武 雅晴

 

そんな朝武、日を跨いで最初に手にした配牌は、

 ドラ

「今日は戦えそうだ・・・。」

そんな朝武の声が聞こえてきそうな配牌。第1ツモが
親でもあり、ようやく土俵に上がることができそうなのだが、
そんな朝武を上回るスピードを見せたのが、昨日からの好調を持続する柴田。親・朝武をも上回る好配牌。

この配牌にとツモ。わずか2巡でのリーチ。

昨日は真正面からぶつかる事のなかった朝武。まだ二日目が始まったばかりだが、ここはさすがに勝負所。
次巡、を引き堂々の追っかけリーチ。

-待ちと-待ち。
上下が被ったこの戦い、追っかけた朝武に柴田が高目のを放銃するケースや、また同テンのを朝武がツモるケースがあった場合、二日目は波乱が起こるのではと直感的に思った。
また、観戦記者という立場を忘れ、一ファンとしてそういった展開を望んでいた自分がいた。

それくらい、初日の柴田と朝武との間には絶対的な体勢の差を感じていたのだ。
朝武がいつもの自分を取り戻すことが出来るのなら、まだまだ勝負はわからない。
逆に、柴田がこの局面を制することが出来るのなら、
朝武との一対一に関しては、この決定戦での勝負付けが済んでしまう。
そこまで大事な一瞬であった。

意気揚々と山に手を伸ばす朝武。
だが、その瞳の先に輝きを感じられたのもほんの一瞬だった。

指先に感じた違和感に朝武が顔を顰める。
一呼吸置いて朝武が柴田の牌姿を確認すると、自らの立ち位置を再確認したかのような、「はい。」の声。

 ロン

そう簡単には鳳凰も二度目の微笑を見せてはくれない。
またしても苦難の一日が始まる朝武であった。


『体勢の差』というものがあるとするならば、続く東2局も触れておかねばならないだろう。



早々の1シャンテンは朝武。
メンホン七対子の1シャンテンなのだが、なかなかテンパイを果たせず。
13巡目にはドラのを引き、ここは受け気味に。

差を比べて欲しいのは、14巡目の古川と柴田の差。
同じ1シャンテンからドラのを引きテンパイを果たす南家・柴田と、
同巡テンパイを果たすものの、テンパイを取る為にはドラをリリースしなければならない古川。
同巡内の出来事とはいえ、この一打の差は果てしなく大きい。
を切るのは古川のスタイルではないが、局面としてはを切らなければいけない所。
が重なって何事もなくテンパイを果たす柴田と、打牌選択に迫られる古川とでは、やはり体勢の差を感じずにはいられない。
結果、古川はテンパイを諦め、受けに回る。
この局は柴田と前原の二人テンパイで終わるのだが、
たった一枚の牌の後先、そして対応の仕方の違いによって局面は大きく変化してしまうのだ。


古川は、昨日に引き続き、不調を意識している。
ただ、前日と違ったのはここからの捌き。


古川 孝次



捌き方は昨日の古川と全く同じなのだが、違うのはその後の牌の動き方である。
東2局2本場、専売特許のような古川の1巡目ポン。

ここから柴田の切ったをポン。打
昨日の古川のこの手の仕掛けは、全て前原と柴田にとってプラスに作用していた。
古川が喰い仕掛けを成就させた局は皆無。
私のメモにも「サーフィン切れ悪し!」との記述が。

しかし、今日の古川は違った。
この後も軽快に仕掛け、3フーロ。
単騎選択を迫られるのだが、悩む素振りもなくタンキに。

 ポン ポン ポン ツモ ドラ

そして、いとも簡単にツモ
体が反応したのか、指がそれを選んだのか、真実を窺い知る事は今となってはできないことであるが、
とにかく昨日はあれだけ正解を導き出すのに苦労した古川が、二日目早々に結果を出すことができた事実が、
この後の展開を混沌とさせるのであった。

古川の仕掛けが門前に変わる時、それは古川の復調を示すサインでもある。南2局、

 リーチツモ ドラ

この2.000・3.900を皮切りに、迎えたオーラスの親番でも大連荘。
持ち点も60.000点を超え、昨日の負債をたった半荘一回で取り返す。


ようやく、古川の鳳凰位決定戦が始まった。

7回戦結果
古川 +43.9P 柴田 ▲2.8P 前原 ▲15.3P 朝武 ▲25.8P

7回戦終了時
柴田 +63.9P 前原 +6.5P 古川 +3.0P 朝武 ▲73.4P




8回戦(起家から前原、朝武、柴田、古川)

仕掛けと言えば古川の代名詞であるが、今回戦っている3人も決して仕掛けが苦手な訳ではない。
アガリに対する精度で言えば、前原も古川のそれには決して引けを取らないし、
朝武も肝心な所での捌き手は確実に打って出るタイプである。

しかし、柴田の仕掛けは、前述の3名とはまた違ったタイプの仕掛け方なのである。
今決定戦での柴田は、牌勢も手伝っていたこともあるが、とにかく手数が多い。
しかも、その多い手数がアガリに全て直結しているといっても過言ではない前半戦であった。
遠くを見て仕掛け始める古川、瞬発力を生かす仕掛け方の前原と朝武とは違って、柴田の仕掛けはパワフルで直線的なのだ。
相手との間合いや状態の差もあるとは思うが、
アガリがあると見るや、脇目も振らずダイレクトに最終形を目指す柴田のアグレッシブな姿勢が、ここまでの独走につながっているのではないか。


柴田 弘幸


顕著だったのが8回戦開局、北家・古川の受け、

 ポン ポン ドラ

この序盤での仕掛けを受けての西家・柴田の8巡目、

この牌姿から2枚目のオタ風をポン。
続けざまにポン、ポンと仕掛け、以下の牌姿に。

 ポン ポン ポン

そして、あっさりをツモ。
古川の仕掛けを見切っていたのなら話はわからなくもないが、
それにしても力強く深い踏み込みでのこのアガリは、やはり脅威である。

小心者の私には、とても打てる仕掛けではない。
もし仕掛けがマイナスに作用したら・・・、と考えてしまうと、到底打てるものではないだろう。

柴田の潤んだ瞳には、きっと己のアガリしか見えていないのだ。
自らを強く信じることで、この鳳凰位決定戦の切符も手に入れたに違いない。
一見飄々と戦っているように見える柴田の内面を垣間見るような攻撃に、三者の足も止まる。


東3局、久々のチャンス手をもらった朝武の仕掛けを受けても、親・柴田の攻勢はまだまだ続く。
「ドラの所在など知ったことか!」
なんて思っていたかどうかはわからないが、朝武の存在をも無視するかのように堂々とリーチを宣言。

 リーチロン ドラ

上昇気配の古川から7.700を召し取ると、その古川から立て続けに、

 リーチロン ドラ

 ポン ポン ロン ドラ

これで、独走態勢に。
大幅に加点した柴田にとって追い風が吹くように、その後は互いが牽制しあって小場で卓が回る。

オーラス、柴田49.100、朝武29.100、前原28.400、そして古川が13.400と、柴田にとって願ってもない展開に。
いつものように古川が細かいアガリで連荘すると、この後は思いもよらぬ展開に。



南4局2本場、本日は元気のない前原の6巡目、

 ツモ ドラ

ここで打とした前原、10巡目のツモで大長考に入る。
場況としては、古川が8巡目にオタ風のを鳴いている。

 ポン

ここは勝負と、前原は打を選択。しかし、2巡後のツモで撤退。
その後のツモがと前原にとっては最悪。
アガリ逃しにも映るその牌姿を見て、力なく肩を落とす前原。
実際、古川にそのは通っていた。そんなことは前原にはわかるはずもなく、明らかにダメージを受けた様子。

しかし、本当に痛手を負っていたのは朝武。前原がを掴む2巡前、朝武は、

このテンパイを果たしていたのだ。
朝武にとっては、この古川の親をおとなしく落とし、自らの首を守るのが理想。
よって、ここはダマを選択するのがセオリー。
恐らく、誰が座ってもそのような選択をするのではないか。
しかし朝武の誤算は、待ちが古川と同色だったということ。
これでは誰も放銃するはずもなく、前原もさすがにこの状況ではを打つまい。

ここでもたらればの話になってしまうが、
このまま前原がを朝武に放銃した場合、柴田のトップは変わらないものの、前原と古川にとってはかなり苦しい展開に追い込まれたことだろう。
逆に朝武はプラスを維持することで、なんとか首の皮一枚繋ぎとめたという結果になっていたはずだ。

この選択が、古川と、この後の前原にプラスとなる。
古川がを引いた後、すぐに朝武から絶好のをポン。

 ポン ポン

これで勝負あり。
朝武が掴んだは自身が暗刻の牌。しかし、テンパイを維持するために切らざるを得ない牌は、全て古川のアタリ牌。
ここまでに大きな痛手を負っている朝武にこれを止めるエネルギーがあるはずもなく、吸い込まれるように古川の力へと変わっていった。


このアガリを足がかりに、柴田追撃の狼煙を上げたい古川。
ここで柴田に立ち向かえるようなら、柴田vs古川の構図が鮮明になってくる。

しかし、この大事な局面で古川に痛恨のミス。
後に古川もこの局が敗着だと語るように、古川にとっても、そして前原にとっても大事な瞬間が訪れる。
南4局4本場、前原10巡目、朝武の切ったにポンの声を掛ける。

 ポン ドラ

本来は門前で進めたいこの手、これを門前で仕上げてこその前原なのだが、
この連荘を止めることが先決と見たか、片アガリに賭ける。

すると次巡、望外のツモ。ここは前原も焦らず打
すぐにを引き、あっという間の7.700テンパイ。
前原の仕掛けにも対応せず悠然と構える北家・柴田。
メンホンの1シャンテンも、前原にをぶつけられては黙っていない。

 ポン

この柴田の仕掛けに対応したのが古川。
今局は勝負にならないだろうと受け気味に進めるも、柴田にだけは放銃しまいとピンズを絞る。
迎えた18巡目、2シャンテンの古川の牌姿に飛び込むのは柴田の当たり牌

 ツモ

残りツモ一回の古川、柴田の仕掛けを見て打。それが前原に御用。
放銃した古川も、そしてアガった前原も、一瞬戸惑いを隠しきれずに沈黙。そして天を仰ぐ古川。

前原にとっては、終わったはずの半荘。古川にとっては、柴田の尻尾に手が掛かった瞬間。
この放銃が最後に大きな重石になるとは、
アガった前原も、放銃した古川も、そして我々ギャラリーも、誰もが予想だにしなかった。

8回戦結果
柴田 +25.8P 前原 +6.7P 古川 ▲10.1P 朝武 ▲22.4P

8回戦終了時
柴田 +89.7P 前原 +13.2P 古川 ▲7.1P 朝武 ▲95.8P




9回戦(起家から柴田、前原、古川、朝武)

ようやく折り返し地点の9回戦。
首位・柴田と最下位・朝武との差は、およそ180P。
現実的に見ても、これ以上の差は逆転不可能だろう。
朝武にとっては、これからの一戦一戦が勝負駆けになってくる。

そうなると、展開の利が向くのは、やはり柴田。
朝武に点棒を持たせることは悪いことではない。
気持ち良く大逃げを打っている間、柴田の理想は前原と古川の小競り合いだろう。
そんな展開も十分に考えられる中、9回戦がスタートした。

前回、漁夫の利を得る形でプラスに転じた前原。
その勢いのままに、東2局の親番で絶好の先制リーチと打って出る。

 ドラ

そんなリーチはお構い無しと前に出るのは柴田。ドラは暗刻だが一見苦しそうなこの牌姿から、

ポン、ポンと電光石火の仕掛け。わずか2巡で前原に追いつく。

こうなってしまっては、勝負は決まったも同然。
前原がを掴み、この勝負は柴田に軍配。柴田の勢いは衰えることを知らない。

 ポン ポン ロン


続く東3局には朝武の2巡目リーチに飛び込むも、そこはご愛嬌の柴田。

 ロン ドラ

これで柴田にとっては絶好の並びが出来る。
朝武が点棒を持つことはつまり、古川・前原の二人をマイナスに押し付けるということ。
自らがトップを取ることと同等か、それ以上の価値があるのだ。
柴田が夢に向かっての布石を今、着実に打ち始めていた。

南1局1本場、柴田の親番。
前局に1.000オールを引いた柴田が7巡目、今決定戦初めての駆け引きリーチを打つ。

 ドラ

ドラが風牌のということ、手型が不十分であるということ、待ちがあまり良くないということから、
私にはリーチの声はかけられない。
柴田の目から場況的にが良く見えたことや、局面の完全先手を取っていることを差し引いたとしても、
やはり押し返された時のリスクを考えると躊躇してしまいそうだ。

しかし、ここでリーチを打てる柴田であるからこそ、この鳳凰位決定戦まで駆け上がってきたわけだ。
柴田の目には、私には決して見ることのできないであろう何かが、はっきりと映っていたはずだ。

柴田よりも遥か先、3巡目に1シャンテンとしていた前原、柴田のリーチを受けてすぐに当たり牌のを掴む。
そして、何かを悟ったかのように受けに回る。そして流局。
柴田のテンパイ形を見て、手牌のに視線を落とす。

そしてこの瞬間、卓上から前原の気配が消える。
歯を喰いしばって必死に戦っているのでもなく、無気力さが表に出ているわけでもなく、本当に消えてしまったと形容するのが正しいとも感じられる前原の気。
その理由は対局後に判明するのであるが、
この時私が見た前原の背中には、今まで誰と対戦しても感じることのなかったただならぬ気配を感じるのであった。


卓上から前原がいなくなると、突然場の空気が変化する。
続く2本場、いつものように柴田が先制リーチを放つと、

 ドラ

ここに追いついたのは古川。
「仕方なく打ったんですよ、あのリーチは。アガれるとは全然思っていなかったですから。」

 リーチツモ ドラ

普段から七対子は苦手だと公言する古川。
ドラ単騎になり、手変わりもせず、かと言ってオリる理由もない古川。
仕方無しに打ったリーチが僥倖のアガリを拾う。

このアガリに続くのが朝武。得意のドラ単騎リーチ。
調子がいい時の朝武はこの手のリーチをよくツモるのだが今日は・・・と見ていると、一発でをアンカン。そしてリンシャンツモ!

 アンカン リンシャンツモ ドラ

この二つのアガリで、逆に柴田を沈ませることに成功。
このまま古川−朝武−柴田−前原の並びで終局。

柴田はあまりダメージを受けていない様子だが、
古川と朝武にとっては大きな大きなワンツーフィニッシュ。逆転に向けての大事な足がかりとなった。

不気味なのは前原。
このまま消えていってしまうような男ではない。状況打破に向けて何か秘策はあるのだろうか。


前原 雄大

 

15分間の休憩を過ごす為、誰よりも先に会場を出る前原。
この15分での気持ちの切り替えが、鳳凰の道程をも変えるとは誰も思うまい。

9回戦結果
古川 +24.2P 朝武 +6.1P 柴田 ▲5.9P 前原 ▲24.4P

9回戦終了時
柴田 +83.8P 古川 +17.1P 前原 ▲11.2P 朝武 ▲89.7P




10回戦(起家から古川、前原、朝武、柴田)

「全然ダメ!話にならないっす!」

こう語るのは、前原のセコンド役の佐々木寿人。
早々に席を立った前原の代わりに佐々木に尋ねると、即答でこう言い放った。

「今から説教ですよ!」

と話す佐々木の目には、辛辣な言葉とは裏腹に何か思惑がありそうな気配が感じられる。

「ヒサトに怒られちゃってさぁ〜。怖いんだよ、先生は。」

と語るのは、対局後の打ち上げの席での前原。

「でも、あれで逆に気合いが入ったよね。9回戦は、捨てたんだ。一度気持ちを切り替えて、そしてもう一度戦おうと。」

前原の気持ちを切り替え、そして新たな闘志を奮い立たせるには、佐々木の一言と、15分の休息で十分であった。


東1局、好配牌からドラを暗刻にしてのテンパイもダマを選択。前原、じっと息を潜める。

 ドラ

これが好判断、目下首位の柴田から直撃。
この放銃がきっかけで、柴田の歯車が少しずつ狂い始める。

東3局、先手を取り続ける柴田がポンテン。

 ポン ドラ

ここに古川がリーチ。

柴田が掴んだのは、古川の捨て牌の間4軒に当たる
柴田、ノータイムで打
驚く古川。一呼吸置いて静かに手を開ける。

この放銃の持つ意味は、点数以上に限りなく大きい。

なぜなら、柴田がリーチに向かって放銃したのも、捌きに向かって失敗したのも今対局で初めてだからだ。
柴田は対局後、
「あの半荘はラスを引きにいきました。どうせラスなんだから、思い切り良くラスを引こうと。いつかこのような半荘が来るのはわかっていたので、そんなにダメージはなかったですよ。」

と語る柴田ではあるが、それは本心だろうか?
私の目には、明らかに柴田の変調が見て取れた。

顕著なのが東4局、柴田の親番。配牌が、

 ドラ

ここから2巡目にをポン。4巡目にをポン。

 ポン ポン ドラ

柴田の戦い方の特徴の一つに、親権の使い方がある。
子方での手組みとは明らかに違った戦い方を仕掛けてくるのも事実である。
局面先手を取ること、主導権を取る事に重きを置いているのは良くわかるが、
この仕掛けは鳳凰位を獲ることの出来る男のそれではない。

話が逸れるが、今対局における戦い方の話で、前原から興味深い話が聞けた。

「半荘18回とは、36回の親が回ってくると考えることも出来る。いくら周りが自分の親を落とそうと必死になっても、36回の親全てでそれが出来るわけでもない。残された親でいかにして戦うかが大事なんだ。」

前原の言葉を借りるならば、10回戦東場の親一回くらい軽く捌かれたって、現在の柴田の状態を考えたらそんなに大きな問題ではないと思われる。
この親番を死守しようとする代わりに、もっと大事なものを失ってしまう気がするのだ。

本当に大事なことは、18回戦を終えて頭に立っていること。
それ以外には何の意味もないこの勝負。
目に見えないこの柴田の心の揺れが、この先の大混戦につながってくるのだ。

親番の落ちた柴田、南1局に親・古川に1.500を放銃すると、
続く1本場、やや焦り気味の3巡目、4巡目ポンでこの形。

 ポン ポン ドラ

ここに前原が5巡目リーチで襲い掛かる。

-待ち対待ち。
こんな時、見ている側からすると、麻雀は本当に忠実に出来ているゲームだなぁと感じる。
どちらが勝つのかも、誰が何を放銃するのかも、手に取るように予測できる。

そしてギャラリーのほとんどがそう感じたように、柴田の手に引き寄せられるのは
当然のようにツモ切る柴田の姿も、これもまた予測できるモノだった。
それは、柴田の明白な変調を告げた瞬間であった。

この後も柴田の変調に気がつかないのは、会場内で柴田たった一人。
次局、柴田のエラーで出来上がってしまった前原が、親の本手リーチ!

 ドラ

ギャラリーの誰もが、前原のツモアガリを確信した瞬間、そこに暴走した柴田が突っ込む。

 ドラ

焦ったか、柴田がリーチ。
場況が全く見えていない。こうなると、柴田が前原のアタリ牌を掴むのも時間の問題。
このリーチは自ら絞首台に足を踏み入れるようなものだ。柴田絶体絶命!!

しかし、その心配も杞憂に終わる。

「局面を読み違えました。」
とは、古川の弁。
前原のただならぬ気配を感じていた古川、そこにぶつける柴田こそが本手だと想像する(柴田も本手なのには違いないが)と、柴田の安全牌を抜く。

それが前原に突き刺さる。

 リーチロン ドラ

安目とはいえ、11.600。
古川にとっても大きな失点は、柴田の延命を助けることとなった。
もし柴田がを放銃するようなことがあれば、正に三つ巴だった。
まだ神様は柴田に味方する。

あれだけあった前原との差が半荘1回でわずか30P差に肉薄、柴田楽勝ムードが一変。
ここからは大混戦の様を呈す。
そのきっかけは、やはり・・・。

10回戦結果
前原 +32.1P 朝武 +9.9P 古川 ▲9.0P 柴田 ▲33.0P

10回戦終了時
柴田 +50.8P 前原 +20.9P 古川 +8.1P 朝武 ▲79.8P




11回戦(起家から柴田、前原、古川、朝武)

大荒れの10回戦から一転、この11回戦は各自の意識が変わったのか、静かで落ち着いた局進行。
粛々と局が進む。

局が動いたのは東4局、現在ラス目の西家・前原が7巡目リーチ。

 ドラ

これを受け、北家・古川が動く。

 チー

この対決は前原が制す。高目のをツモって1.300・2.600。
柴田の尻尾を捕まえに、敢然とトップ目に立つ。


追いかけられる柴田。本人の意気込みとは裏腹に、もう状態はフラフラである。
南1局の親番、前の半荘でも指摘したように、ポン、ポンでこの形。

 ポン ポン ドラ

柴田の仕掛けの精度は明らかに落ち、スピードも上がらない。
三者とも、さすがに何度もこの仕掛けにやられるような選手ではない。
柴田以外の三者にテンパイが入り、追われる柴田は防戦一方。
リードは保っているものの、いつ二人に捕らえられてもおかしくない、そんな印象であった。


そんな柴田が最後の力を振り絞って振り上げた拳が、ラッキーパンチを生む。
南2局、タンピン三色をも狙える好配牌を手にした柴田、

 ドラ

5巡目にテンパイは果たすものの、ツモは縒れてしまい望まない七対子のテンパイへ。

普段なら、ノータイムでリーチを打つのだろう。
アガれる、アガれないは関係ない。場を制していくのが柴田の信条だからだ。

しかし、柴田の迷いは新たな選択肢を生む。
意を決してリーチを宣言したのは2巡後。
ドラを重ねて戦える体制になった前原、柴田の宣言牌にチーの声を掛ける。

 チー

これが柴田に幸いした。上家・朝武の牌姿は、

 ドラ

朝武に入るはずのは柴田へ。
仕掛けが入らなければ、恐らく勝つのは朝武であろう。

だが、勝ったのは柴田なのだ。
どんな経過があろうとも、プロは結果が全て。
いくつもの岐路を潜り抜けながら、柴田がまた一歩、鳳凰の足元に近づいた。

11回戦結果
柴田 +15.8P 古川 +4.7P 朝武 ▲6.2P 前原 ▲14.3P

11回戦終了時
柴田 +66.6P 古川 +12.8P 前原 +6.6P 朝武 ▲86.0P




12回戦(起家から前原、古川、朝武、柴田)

鳳凰への道を突き進む柴田。
しかし、ここから先の険しさは、戦ったことがあるものでないとわからない。
柴田の良さは、思い切りの良さと踏み込みの深さ。
しかしそれらは、自分の状態と局面状況を正確に見極めることが出来て初めて生かされるスキルでもある。

この日の序盤までは慎重かつ大胆に歩を進めてきた柴田だが、ここへきて状況と状態の微妙なズレを見せ始める。
東1局、朝武の先制リーチに被せる柴田。

 ドラ

朝武には勝てると感じたのだろうが、アガったのは古川。

続く東2局は、手変わりのあるところで我慢が利かずリーチに。

 ドラ

リーチしてすぐにツモ。そしてツモ
リーチすることが決して悪いわけではないが、柴田は常に正解を引く打ち手である。
いかなることがあってもアガリ逃しがあるとしたら罪なのではないか。

バランスの悪さが顕著に映ったのは東4局。

前原の先制リーチは12巡目。

 ドラ

いかにも前原らしいリーチ。
カンのテンパイを維持すると、ツモをツモ切り。
すると柴田にポンテンが入り、2.000オールの決着。
それを阻止するかのような単騎リーチ。流石としか言いようがない。

このリーチを受けての14巡目の柴田、打でリーチと打って出る。

 ツモ 打

リーチをするのもを切るのも、手を見るだけでは全く違和感がない。
一人麻雀なら、フリー麻雀なら、を切ってリーチで全く問題がないだろう。

だがしかし、舞台は鳳凰位決定戦。
しかも自分の置かれている立場も加味すると、どうだろう。

リスクを冒してを切ることには同意する。
しかし、その選択をした場合、確実にアガリを拾わなければいけないはずではないか。
を切って勝負してでアガる。またはをツモアガる。それならば、柴田の勝率はグンと上昇する。
しかし、は押さえられて前原の手の内、残されたが王牌ということが柴田の現実なのだ。

この結果に終わるくらいなら、型を意識して、前原の策略に乗ってで放銃するほうが意志が感じられる形で終わる分、有利なのではと思う。

確かに、瞬間点棒は失う。
だが、自分の立ち位置の把握と、今後の対処方法ははっきりとわかるはず。
目先の利益を追う柴田と、半荘18回を見据えて戦う前原との差を感じた瞬間であった。


そんな柴田を横目に、一歩抜け出したのは前原。

 リーチロン ドラ

このアガリで首位に躍り出ると、圧巻は南2局からの3連続和了。
最終日に向けて、十分な手ごたえを感じたのではないか。

残りあと半荘6回、最終日に巻き起こる歓喜の渦は、一体誰のために起こるのだろうか。

12回戦結果
前原 +16.1P 朝武 +6.7P 柴田 ▲5.5P 古川 ▲17.3P

12回戦終了時
柴田 +61.1P 前原 +22.7P 古川 ▲4.5P 朝武 ▲79.3P


二日目を終え・・・、

柴田
「覚悟も決めていたし、意外に良かったです。明日も普通に戦います!」

前原
「最終的には自分との戦いになるだろう。」

古川
「前原さんに打った六と八がなぁ・・・。柴田君を見ちゃったんだよ。今日並ぶつもりだったのに。明日は役満が出るんじゃない?」

朝武
「明日頑張るしかないよ。でも、とりあえずアガリたいなぁ〜。」

泣いても笑ってもあと6回。
鳳凰位の栄冠は誰の頭上に輝くのか?

長かった闘いの終止符が、明日打たれる。
明日もまた、様々なドラマが巻き起こるのであろう。




 

 


(文責 望月 雅継 文中敬称略)

                              

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