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タイトル戦情報

第24期 鳳凰位決定戦

鳳凰位決定戦観戦記 〜最終日〜

(文責・紺野 真太郎)

3日間という長い戦いも今日で終わる。
ここまで順調すぎる朝武はこのまま逃げ切れるのだろうか。
「ま、大丈夫だろうけどな・・」
私は会場へ向かう電車の中で前日までの取材メモを見ながら朝武の事を考えていた。
ここまでの戦い方はほぼ完璧といってよいであろう。朝武らしくよくアガリ、よく振っている。今日もこのままいけば大丈夫であろう。
「ただな・・・」
頭の中に不安点が過ぎったが、それは強引にかき消した。
駅に着き、改札を出ると外はものすごい強風が吹き荒れていた。朝武のこれからの戦いを暗示するかのように・・





13回戦(起家から望月、古川、朝武、仁平)

東1局、親の望月が3巡目にを重ねた。

 ツモ 打 ドラ

次巡、古川、朝武とが続けて打たれた。私は「動くか」と思ったが、望月は2枚ともスルー。
なにげない事であるが、これを見て今日の望月は違うなと感じた。
余計な焦りが消えている。ここまでの2日間望月はらしいプレイも見せてきたが、らしくないプレイも幾つかあった。
私がよく使う「らしさ」とは、各人が持つ強さの形である。
例えば、先ほどの手牌、を鳴く望月は怖くない。やはり、この手牌であったら最低7.700にするのが望月である。
望月が鳳凰位として体験してきたこの1年は望月にしか解からない。だが、その鳳凰位の冠がこの2日間望月を微妙に狂わしていた気がする。どこか勝つことを意識した戦い方になっているよう見受けられたからだ。
しかし、今日はそんな心配はなさそうである。残り6回、決して逆転は不可能ではない。

望月 雅継

 

東2局1本場9巡目、仁平が先制リーチを打った。

 ドラ

古川が国士気配であったため、どうしてもアガりたいのであったならダマであろう。どちらかといえば牽制の意味合いが強いリーチだ。
そこに朝武が追いついた。

 ツモ

「アガりにいくならより単騎でしょ」
後日、朝武に聞いた話だが、その場では「そうですねぇ」と曖昧な返事を私はしたのだが、何か腑に落ちない。家で牌譜を調べた。
答えは簡単に見つかった。仁平の捨て牌である。



手出し、ツモ切りはあまり関係ない。打のところでリーチである。
本当にアガりにいくなら単騎なのだろうか。
いや、ここは打であろう。単騎よりも--のイーシャンテンのほうが、最終形としては強い。
それに朝武の美意識ならばチートイツを見て、二盃口を見落とすなんてありえない。それだけ目が上がっているということである。
ここで朝武は魔物に憑かれてしまった。ただ、この魔物は憑くだけでは満足しなかったらしく、朝武を底なし沼に引きずり込んでいくのであった。

場面は進み、南2局3本場8巡目、今度は望月の先制リーチ。

 ドラ

親の古川もを仕掛けて7巡目からツモ切りが続いている。その二人に対して朝武ものトイツ落としで対応するも、12巡目にをツモると打つ牌が無くなった。

 ツモ

「古川さんを浮かせたくなかったんだよね」
と、トータルポイント2位の古川の親を警戒し、古川の現物のを望月に当たる覚悟で切ると、その通り5.200の放銃。
戦略としては妥当なのだと思うが、はたしてこれがゴールまで持つのかとも考えてしまう。
大体、戦略という言葉は朝武に似合わない。
私は朝武の麻雀からは常々、競馬の逃げ馬や競輪の先行選手と同様の外連味の無さを感じるのだが、こうなってくるとどう転ぶかわからなくなってくる。相手も歴戦の猛者なのである。

次局の放銃などは完全に歯車が狂ってしまった証拠であろう。古川のリーチを受けて、

 ツモ ドラ

ここから打として放銃。
私は目を疑った。あの朝武が、自分の手を曲げて放銃・・そんなの見たことないぞ・・この手、抜くのであれば、現物の、後筋のなどがある。いくらが1枚切れていてのワンチャンス状態であったとしても、このを切るのはまだ後であろう。
朝武は完全に崩れた。本当にわからなくなってきた・・

13回戦成績
仁平 +21.3P 望月 +7.3P 古川 ▲9.6P 朝武 ▲20.0P (供託1.0P)

13回戦終了時
朝武 +74.8P 古川 +6.5P 仁平 +1.1P 望月 ▲83.4P (供託1.0P)




朝武はなぜ崩れてしまったのだろうか。

それは、プレッシャーに他ならない。
朝武にとって鳳凰位は夢であると公言している。夢をかなえられる人間というものは限られたごく一部でしかないだろう。
しかもそれが自分の生きてきた世界の1になれるというのだから、プレッシャーを感じないわけがない。
それがまた鳳凰位戦のステージの高さなのであろう。私達は皆、そこを目指して生きているのである。
なんにせよ、朝武は目の前の相手だけでなく、もう一人の自分にも打ち勝たねばならなくなった。

朝武 雅晴









14回戦(起家から古川、望月、朝武、仁平)

ここまで万全であった朝武が体勢を崩した。三人はこのスキを見逃さず、朝武を引きずり下ろしにかかった。
東3局、朝武の親、南家の仁平が今までのお返しとばかりにカブせにいく。

 ドラ リーチツモ

朝武から切られた2枚のには見向きもせず、門前テンパイが入るや即リーチ。
このアガリ形を見せられた朝武は、さぞ嫌な感じであったろう。親を蹴りにではなくカブせにきているのだから。
本来麻雀は親対子のゲームである。子方は親がいいと思えば蹴りにいくし、悪いと思えばカブせるのである。ということは、仁平も朝武の変調は感じとっているということ、それは望月、古川も同様である。

南3局、朝武の親、今度は古川が来た。

 ツモ 打 ドラ

当然の即リーチ。朝武も古川の当たり牌のを暗刻にして追いつくが、間に合わなかった。
古川が同巡にをツモってしまったのだ。
三人の思惑通り、朝武は一人沈みを押し付けられたのであった。

14回戦成績
古川 +9.6P 望月 +4.2P 仁平 +2.0P 朝武 ▲15.8P

14回戦終了時
朝武 +59.0P 古川 +16.1P 仁平 +3.1P 望月 ▲79.2P (供託1.0P)







15回戦(起家から古川、仁平、望月、朝武)

ここまで14回を終えて、望月は未だにトップがなかった。
さっきも書いたが、どこか勝つことにこだわっていたように思う。望月もまた防衛戦という鳳凰位としてのプレッシャーと戦い続けてきたのだろう。
しかし、今日に入ると本来の姿を取り戻しつつあった。

東1局7巡目、望月テンパイ。

 ドラ

ここはダマに構える。ただしセオリーでのダマではない気がする。これは朝武を勝負の土俵の上に立たせたいが為のダマなのであろう。
11巡目に朝武がテンパイを果たすと、次巡、望月はリーチに出た。直後、朝武もを入れ替え追っかけリーチ。

朝武は自分の型でのリーチであったろうが、今の状態は四人の中で1番下である。を掴み、軍配は望月に上がった。

南1局、望月は仁平が目一杯に広げて打ってきたドラを仕掛け、うまくまとめた。

 ポン ポン ツモ ドラ

これが決め手となり、望月待望の初トップ。
一方の朝武は3連続ラスとなってしまった。朝武の踏み入れた底なし沼はどこまで深いのだろうか。

15回戦成績
望月 +14.4P 古川 +4.1P 仁平 ▲4.4P 朝武 ▲15.1P (供託1.0P)

15回戦終了時
朝武 +43.9P 古川 +20.2P 仁平 ▲1.3P 望月 ▲64.8P (供託2.0P)







16回戦(起家から朝武、古川、望月、仁平)

あれだけあった差も、気づいてみれば20P程度。
表面上は平静に見えるが、朝武の内心はどうなのか。
ただ、15回戦の終盤はあえて無理をせずにラスを引き受けにいっているようにも見え、立て直しに必死なのは感じられた。

東1局、起家の朝武、9巡目にテンパイも取らず。

 ツモ 打 ドラ

この時、下家の古川の捨て牌はソーズのホンイツ模様。
朝武は鳴かれる(当たる)リスクよりも攻めを選んだ。古川は動かず、次巡を引くと続けざまに打。ここも古川は動かない。もう手は出来上がっているのか。
11巡目、望月がタンヤオへの移行でを落とすと、ついに古川が動く。そして、2巡後に古川がをツモ切り、朝武が仕掛け返しテンパイ。勝負の打

 ポン

「ポン!」
古川から発せられた言葉はロンではなかった。
これで勝負になる。朝武はそう思ったことであろう。
しかし、待っていたのは無情な現実であった。

 ポン ポン ツモ

この瞬間、トータルで捲られた。7回戦でも一度古川に捲られているが、あの時とは状況が違う。四暗刻一発で捲られたのと半荘4回かけて捲られたのでは意味が違うのである。

南1局、朝武の配牌は、

 ドラ

・・・なんだ、この配牌は。朝武はこのまま後続に飲み込まれてしまうのではなかったのか。ハハーン、わかったぞ。多分これは絵に書いた餅というやつだな。周りがあっという間に蹴っとばしちゃうんだろ・・
しかし、朝武はそんな私の思考をあざ笑うかのようにあっさりとアガり切った。

 リーチツモ

次局の配牌も軽い。

 ドラ

これもアガリ切る。

 リーチロン

朝武復活か、と思わせたが、南2局、西家・仁平のリーチに対してリーチ後に掴んだをテンパイで打ち出すと捕まってしまう。

 リーチロン ドラ

これはどういう事なんだろう。光が差してきたかと思えば、当たり牌を掴まされる。
ちなみにこの局は誰も仕掛けていない。人為的に掴まされたのではなく、掴んだのだ。女神と魔物の綱引きなのか、朝武は翻弄されていた。

そして、オーラスを迎えた。ここまでの持ち点は、
仁平36.800 古川32.300 朝武26.100 望月24.800
朝武は望月にアガられてラスになってしまったら、もう逆転は不可能であろう。点数的にはではなく、体勢的にだ。
望月も最低跳満をアガりトップをとらなければ絶望となってしまう。こちらは点数的な話である。
古川、仁平とすれば朝武をラスに落としたい。そうする事で自分達の栄光が現実味を帯びてくる。

望月の配牌は平凡なものであった。

 ドラ

跳満を見るには456か567の三色か。一方の朝武、

そんなに悪くはないが、ネックもある。
朝武は第1ツモでを引くと、第1打にを選んだ。三色も一気通貫も消えるこの第1打は朝武らしくはないかもしれないが、ここは己を貫く場面ではないと感じての事であろう。
望月の方はツモが噛み合っていた。第1ツモから順にと引き456に照準を定めた。

朝武はとドラを2枚引いてイーシャンテン。

引きなら迷わずリーチだろうが、ソーズが埋まると難しい。
先にテンパイしたのは11巡目の朝武であった。を引き打引きでなかっただけ、ダマ選択はさほど迷わなかったか。
すでにを引きイーシャンテンにしていた望月も同巡にテンパイを入れた。

 ツモ 打

もう以外でアガる気はない。全身全霊、望月の持つ全てを込めリーチ。
は山にまだ3枚ある。その迫力を感じた古川と仁平は完全に引き、望月の行く末を見守った。
朝武は見守ってなんかいられない。3巡後を引いた。--に受け打



「リーチだ!」
会場にいた者の大半がそう思ったに違い無い。実際、終了後には朝武の選択が話題になっていた。
この場面、朝武は静かにを河に置いた。その口からは何も発せられなかった。
この状況では望月の現物のでさえ脇から出ることはない。ならば、望月がを掴んだ時に逃さない為にもリーチではないだろうか。
だが、朝武は全く別の思考でこの場面を見ていたのだ・・
朝武のを見た時にもしかしたら望月はほんの少しだけ嫌な感じを受けたのではないだろうか。
を掴み、全てを悟ったように河へ置く望月を見た時、そう思わずにはいられなかった。
「はい!」
いままで以上に清々しい表情で丁寧に点棒を渡す望月。彼の鳳凰位戦は、事実上ここで幕を閉じた。
朝武は最後の一線のところで踏みとどまった。頭の先まで引きずり込まれていた沼から自力で顔を出したのであった。

16回戦成績
仁平 +14.8P 古川 +5.3P 朝武 +2.0P 望月 ▲22.1P

16回戦終了時
朝武 +45.9P 古川 +25.5P 仁平 +13.5P 望月 ▲86.9P (供託2.0P)

「なぜ、リーチしなかったんですか?」
後日、朝武に尋ねた。答えを聞いた私は衝撃を受けた。
「だって、望月君の当たり牌を引かされた時にオリられないじゃん」
いつも笑顔の朝武だが、この時は真顔であった。
あの追い詰められた場面でそこまでなかなか考えられるものでは無い。この懐の深さが、苦しみを乗り越え鳳凰位に導いたのであろう。







17回戦(起家から仁平、朝武、望月、古川)

得点差はさほど無い。まだわからないと古川、仁平は思っていたはずだが、立ち直った朝武は強かった。

東2局、仁平のリーチ。もうここまできたら戦略のリーチは無い。本手である。

 ドラ

対する親の朝武、直後に追いつきを押す。

 ツモ 打

形は仁平の方がいいが、先に掴んだのは仁平であった。
「あのカンが効きました」
後の仁平のコメントである。今回の鳳凰位戦で仁平の牌勢は決して恵まれたものではなかった。一つ間違えれば常に脱落だったように思う。

仁平 宣明

 

それを持ち味の我慢で耐え、少ないチャンスをものにしてここまで戦ってきた。その存在感は賞賛に値するものであった。仁平の戦いもここで幕を閉じた。

東3局1本場、古川8巡目テンパイ。

 ドラ

一旦ダマに受ける。そして、次巡引いたのが。場にピンズはが1枚ずつ。待ちとしてはどちらも互角である。そして、古川が選択したのはツモ切りであった。
「ロン。」
朝武が手を倒した。

 ロン

次局も古川は朝武に5.200を放銃するのだが、古川にとってはこちらのほうが痛かったであろう。
今回の古川は全体を通して、安定感は群を抜いていた。
しかし、得意のサーフィン打法を繰り出す場面がほとんど無かったように思う。朝武を相手に正攻法での戦いを強いられた。

古川 孝次

 

しかし、2日目の四暗刻や3日目の逆転など、朝武を一番苦しめたのもまた古川であった。
朝武の前にはもう誰もいない。相手は全て競り落とした。あとはゴールへ駆け込み冠を手にするだけである。

17回戦成績
朝武 +48.2P 望月 ▲10.4P 仁平 ▲12.8P 古川 ▲25.0P

17回戦終了時
朝武 +94.1P 仁平 +0.7P 古川 +0.5P 望月 ▲97.3P (供託2.0P)







最終18回戦(起家から仁平、望月、古川、朝武)

オーラス、親の朝武が手を伏せると、敬意を示すかのように三人も手を伏せた。
そして、自然に拍手が沸きあがる。私が見た今までのどの決勝戦よりも大きな拍手であった。


優勝決定の瞬間

この場面に敵も味方もない。会場にいる全ての人が朝武を祝福していた。
朝武は笑顔であったが、周りには涙を流している者もいた。差し出される無数の掌。それを1つ1つ丁寧に握手していく朝武。拍手はいつまでも鳴り止むことはなかった。

こうして第24期鳳凰位、朝武雅晴が誕生したのであった。


最終18回戦成績
朝武 +20.7P 古川 +5.2P 望月 ▲9.2P 仁平 ▲16.7P

最終成績
朝武 雅晴 +114.8P 古川 孝次 +5.7P 仁平 宣明 ▲16.0P 望月 雅継 ▲106.5P (供託2.0P)




後列 左から 4位:望月 雅継 3位:仁平 宣明 準優勝:古川 孝次
前列 優勝:朝武 雅晴



朝武 雅晴インタビュー

━優勝おめでとうございます。
朝武「ありがとうございます。」
━今まで長かったですね。
朝武「そうだね。でも、勝つと今まで勝てなかったのはなんだったんだろうって思うよ。」
━優勝した瞬間、何を思いましたか?
朝武「うーん。とにかくホッとしたよね。あーやっと1番になったんだなと。」
━勝てると思ったのは?
朝武「16回戦のオーラスかな。あの--がアガれたのがでかかったね。」
━夢が叶っちゃいましたが?
朝武「そうだね。今度の夢っていうか目標は、今まで一度も戦った事が無い十段戦の決勝に乗ることと、鳳凰位の連覇かな。夢は鳳凰位と十段位の併冠かな。」
━では、最後にファンへメッセージを
「こんな弱い俺を応援してくれて、本当にありがたく思っています。やっと1つお礼が出来た気がします。ありがとうございました。」





帰るころには、朝の嵐のような強風はすっかり静まっていた。
朝武の人柄のように穏やかな星空であった。




 

 


(文責 紺野 真太郎 文中敬称略)

                              

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