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タイトル戦情報

第23期 鳳凰位決定戦

鳳凰位決定戦観戦記 〜二日目〜

2月17日(土) 鳳凰位戦二日目 気温9℃ 曇

曇天の冬空の下、眠い目を擦りながら、会場へと向かう。
昨夜は、あまり眠れなかった。
横になって瞼を閉じていても、あの場所の光景ばかり浮かんでいた。

7年前、私はあの場所を初めて目の当たりにした。
いわゆる日常と呼ばれるような雰囲気は、そこにはなかった。

張り詰める空気。
息遣い、心臓の鼓動までもが聞こえてきそうなひたすらな静寂の中に、ただ打牌音だけが響いている。
それは、あまりに眩しく、神聖ともいえる光景だった。

俺も、この場所に座りたい。

その時、その場所には前原が居た。
大きな背中がとても印象的で、のちに男の名前を知り、なるほど頷けた。

そうだ。
前原にも、朝武と同じ質問をしてみよう。

あなたにとって、鳳凰位とは何ですか?

「タイトル戦はいろいろあるけど、やっぱり、この鳳凰位戦っていうのは別格なんだ。そう思っているのは僕だけじゃない。
そして、その座に就くのは、神に選ばれし者だけだ。」

『神に選ばれし者』
前原が放ったその言葉が、私の脳裏に焼き付いた。




7回戦(起家から前原、古川、望月、朝武)

私が最初に前原の背中を見た7年前のあの日、神は古川を選んだ。
明暗を分けた両者がこの場所で戦うのは、その日以来のことである。

東3局、西家・古川が先制リーチ。

  カン     ドラ

終盤、南家・前原が追いついた。

見てのとおり、待ちは同じ。
こういった場面で私が思うことは、引き勝った者と負けた者、そしてその結果をもたらした者の行く末である。
その牌がそこにあった、ただそれだけのことかもしれない。
それ以上の何かをそこに見出すことは、もしかしたら間違いなのかもしれない。

しかし、それはあまりに重大な出来事だった。
前原の切った牌に親・朝武が動く。
そして、古川に微笑むはずだった山の精霊は、風に運ばれ、前原の元へと舞い降りた。

この時、その精霊の姿を見た者は古川ただ一人。
なぜなら他三人は、古川が唇を噛んで己の手牌を伏せたことで、
前原の手元に置かれた の本当の意味を知ることが出来なくなったからである。

南2局1本場、
山の恩恵を受けた前原が、先ほど傍観していた南家・望月に幸せの御裾分け。

  ポン   ロン     ドラ

この日の、そしてこの戦いの運命付けが為されたような、そんな半荘だった。

7回戦終了時
前原+29.1 古川+5.3 望月▲7.5 朝武▲26.9





8回戦(起家から望月、朝武、前原、古川)

載冠への土台を築きつつある前原が直線的な歩行を始め、点棒を掻き集める。

特筆はオーラス、
古川と朝武のリーチ、そして親・望月の一色手に怯むことなく突き進んだ前原の右手が、
まるで大きな岩をバキッと砕くかのようなモーションを描いた。

  ツモ     ドラ

「これなんだよ。俺はこういう和了りが見たかったんだよ。どうだ、強い前原が帰ってきたぞ!」
前原を応援する観戦者達は、心の中でそう叫んだ。


このまま前原が突き抜ける。
その場に居合わせた者ならば、この思考を抱かぬはずがなかった。
それだけの衝撃が、この和了りにはあった。

もちろん、三人の男達も、そう発想した。
そしてすぐさま、それを打ち消す作業に追われた。

「あの をツモったとき、古川さんと朝武さんの気迫がやや薄れたように感じたんだ。気のせいかもしれないけどね。
でも、望月くんには、それを感じなかったんだよなぁ。とにかく、彼はいい顔をしてたんだよ。」

戦後に前原は、遠くを見つめ、そう語った。
このとき前原には、他三名には見えていない、遥か上空の景色が見えていた。

8回戦終了時
前原+56.5 古川▲1.2 望月▲2.9 朝武▲52.4






9回戦(起家から望月、朝武、前原、古川)

これで決めてしまえ、の前原が、本手とは言えぬ鳴きで後続に向け障害物を置く。
はて、前原なりの、山の中腹の攻略法なのか。
これが、場にどういう影響を及ぼすか。
目を離さぬように眺めていたら、どうにも雲行きが怪しくなってきた。

復調の兆しは朝武。
南2局1本場の親番で、

  ツモ     ドラ

これをリーチでツモり上げ、前原独走に待ったの一声。

しかし、朝武はこのリードを守れなかった。
南3局、西家・望月の、


この捨牌のリーチを受けて、

  ドラ

ここから、打
すると、望月の赤く充血した目が、大きく見開かれた。

  ロン

全18回戦、そのちょうど半分の行程が終了した。
ここで、前原と朝武に濃霧注意報が発令。
『見通し悪し、前方注意』

9回戦終了時
前原+48.8 望月+15.9 古川▲21.6 朝武▲43.1






10回戦(起家から前原、望月、朝武、古川)

小刻みに和了りを重ねた古川と好調の前原が二人浮きの状態で迎えたオーラス、
をポンした親・古川が、ツモ で加カンをすると、
役なしドラなしのヤミテンに構えていた西家・望月がチャンカンのみでパタリ。

肝を冷やした古川だったが、望月の和了形を見てホッと一安心。
和了ってラスの望月は、はい次回次回、の心境。

そんな二人の傍らで、みるみる血相が悪くなっていった男がいた。
南家・前原、

  ドラ

「ここで迷わずリーチを打てるような戦い方をしてきたはずだったのに、満貫を和了りたいという欲に負けてしまった。」

前原がリーチをしていれば、古川の対応も違うものであったと推測できる。
ここまでの登山の証を、その足跡を、リーチという行為で明確に刻むことで、
この先の登頂における足場にするはずだった。
きっと、そういうことだろう。
前原に掘り起こされるはずだった 4枚は、ただひっそりと山中に眠っていた。

10回戦終了時
前原+56.4 望月+0.9 古川▲8.0 朝武▲49.3






11回戦(起家から前原、朝武、望月、古川)

前原の大きな背中が次第に遠のいてゆくのを、男達はどのような心境で見つめていただろうか。
おそらく、実際の数字ほどの差を感じてはいなかったように私は思う。
前原が何かを、それは栄光への足場であるのだが、大切なものを失ったことを、
男達は敏感に察知していたに違いない。

そしてここで、目覚しい躍進を遂げる男が現れた。

東3局、親・望月リーチ、

  ツモ     ドラ

圧巻は、南1局。
親・前原の、

  ポン     ドラ

これに、真っ向からリーチで挑む。

望月が をツモると、この戦いで初めて、観戦者から歓声が起こった。
その声を耳に響かせた望月、その瞳がはっきりと、前方を歩く前原の背中を射抜いた。

11回戦終了時
前原+52.7 望月+44.1 古川▲37.3 朝武▲59.5






12回戦(起家から朝武、古川、前原、望月)

結果から言うと、この半荘は朝武が一人浮きのトップで終了。
安堵の表情を浮かべた朝武には、これといった決定打があったというわけではない。
それは、頂への想いが手繰り寄せたトップであった。

トータル争いという観点から、東4局1本場に山場あり。
親・望月

  チー   ポン     ドラ

対して、北家・前原

  ポン   カン

望月が を加カンした後、 を掴んだ前原。
唸った末に、これを引き放った。
ここまで先頭を歩んでいた前原を、ついに望月が捕らえた瞬間だった。

12回戦終了時
望月+38.2 前原+36.5 朝武▲36.2 古川▲38.5




残すは、あと一日。

古川「前原さんをマークし過ぎてしまい、自分らしさが出し切れなかった。
   まだ、チャンスはある。明日は、全局攻めるくらいの気持ちで行くよ。

朝武「もう、失うものはない。開き直って、いつも以上の攻撃姿勢でやるよ。」

望月「前原さんが抜け出したとき、負けるもんかっていう気持ちで食い下がれたので、手応えは良いです。
   改めて、このメンツで、多くのギャラリーを背負って麻雀が打てることに、心の底から喜びを感じています。」

前原「こうなった自分に、2着はない。頭になるか、転げ落ちるかのどっちかだ。
    欲を捨て、無心で臨みたい。」

「それと・・・」と、前原が話を続ける。
「この戦いの途中、ずっと頭に想い浮かべていることがあって。今から3年ほど前、
当時疎遠になっていた安藤さん(故・安藤満)が亡くなる少し前のことなんだけど、いきなり電話が掛かってきて、
『俺はね、前ちゃん。今度もし麻雀を打つことがあるなら、そのときは相手に感謝の気持ちを持って卓に座りたいと思っているんだ。
いいか、前ちゃん。頑張って麻雀打ちなよ。』って言ったんだ。そのときに抱いた感情は、いまだに言葉に出来ないでいる。」




儚くも切なき想いは虚しいほどに純粋で、頂で待つ鳳凰の涙を誘ったか、
いつしか、空は雨雲に覆われていた。

それはまた、あの男が明日流す涙の雫をも予表していた。






 


(文責 松崎良文 文中敬称略)

                              

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