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タイトル戦情報

第2期グランプリMAX 

決勝観戦記

観戦記:滝沢 和典


日本プロ麻雀連盟のタイトル戦決勝が生中継されるようになってから、約半年が経った。
今回の、第2期グランプリMAX覇者である勝又健志は、最初に放送された十段戦から司会者兼ナビゲーターという立場で出演している。

勝又健志 四段 東京都出身 B型

 

その勝又は今回のグランプリMAXが、3度目のタイトル戦決勝出場となる。
彼の麻雀は実に理論的で、例えば1つの局面について質問すれば、必ず説得力のある答えが返ってくる。
また、その打牌について別の視点から見た場合についても解説してくれることもある。
常に客観的に場面を捉え、的確な状況判断から打牌を選択することができる打ち手なのである。


小島武夫 九段 福岡県出身 O型

 

 

藤崎智 七段 秋田県出身 O型

 


奈良圭純 三段 青森県出身 O型

前回の鳳凰戦から、個人データが掲載されるようになったので、観戦記と合せてお楽しみいただきたい。

・第2期麻雀グランプリMAX 個人データ

 

※ルールは日本プロ麻雀連盟Aルール(一発裏ドラ、カンドラなし)

【1回戦】(起家から、勝又・奈良・小島・藤崎)



東1局、南家・奈良の配牌。


奈良は唯一、今回の決勝メンバーの中でカメラが入った対局が初めてとなる。
第一ツモのをツモリ、少考の後、打
一発裏ドラなしのルールに慣れている打ち手に、この何切るを問えばと答える打ち手が多いはずだ。

初めてのテレビ対局で浮き足立ってしまう打ち手もいるが、奈良は落ち着いているようだ。
と引き入れ、この形でリーチ。

  リーチ

リーチを受けた小島が同巡、この形の1シャンテン。

すぐにを引き入れ、躊躇なく追いかけリーチをかけると一発目にを叩きつける。

小島の2,000、4,000ツモアガリで1回戦がスタートした。
東2局、藤崎の2巡目、

 ツモ ドラ

とりあえず様子見といった感じでを打ち出すと、続々と有効牌が押し寄せ、8巡目にテンパイが入る。

2巡目に打ったを引き戻し、打でヤミテンを選択。
場を見渡すと、奈良、小島の河にマンズが安い。打点的に考えてもリーチをかける手も悪くはないであろう。
藤崎らしい選択だな、と思った次巡、おもむろにをツモ切りリーチをかける。
同巡、奈良はダブ東とドラがトイツの1シャンテンにツモでテンパイ。

 ツモ

奈良の選択は打
決して受け入れは広くないが、打点力を重視してテンパイ取らずと構えた。
12巡目の打でテンパイが入った奈良。

藤崎と奈良のアガリ牌は4対2、このめくり勝負は藤崎が制し、1,300・2,600のツモアガリとなった。
長い戦いであればこのままヤミテンを続行し、他家の動向を見つつ、ドラ引きのノベタンリーチまで想定するのが藤崎流であると思うが、
今回のグランプリMAXは半荘5回勝負の短期戦。早い段階で勝負をかけたということであろう。
ただ、リーチに至るまでの1巡の間合いが戦略的なものなのか、それとも躊躇であったのかは興味深いところではある。

南1局1本場、

勝又の南場の親番、ここまで静かにせざるを得ない展開が続いた勝又にドラ2枚のチャンス手が入る。
勝又は小島の7巡目リーチ宣言牌をポンして、全面対決。
成り行き上仕方がないが、3344の不本意なテンパイが入り、12巡目に小島の1,000、2,000ツモアガリとなった。

 ツモ

南3局7巡目、勝又がこの手牌からを打ち出すと、

 ツモ ドラ

小島がこの形からポン。

 ポン

ミスターにしてはめずらしい仕掛けである。
これを受けた対局者は最低でもドラのトイツ以上、またはトイトイなどの高い打点力の手牌を想像して、伸び伸びと手を進めることができなくなってしまう。
続いてカンを仕掛けて、

 チー ポン

さらに迫力が増したところに藤崎がこの手牌。

カンチーによってタンヤオを確信した奈良がを打ち出し藤崎がポン。
当然の打でテンパイをとると小島の2、900に放銃。
で打っても2、900であることは読みの範疇だが、小島武夫がこのような仕掛けをしていることは想定外であったはず・・・
1回戦は小島の1人浮きで終了となった。

1回戦成績

小島武夫+32.5P  藤崎智▲6.4P  勝又建志▲9.5P  奈良圭純▲16.6P



【2回戦】(起家から、奈良・小島・勝又・藤崎)

東1局、

ドラが2枚の勝又が、同じくドラトイツの藤崎に5、200放銃で2回戦がスタート。
赤牌や一発裏ドラがなく、さらに順位点が小さいルールの麻雀ではドラのウェイトが大きくなるため、このような決着が多くなる。
ドラや手役が絡む手牌でなければ、勝負に出る回数が少なくなるのである。

誰に高い手(もしくは早い手)が入っているのかを読む理由が増え、読む意味も出てくるため、簡単に急所を仕掛けることもできなくなる。
この局も、勝又、藤崎両者ともお互いに手が入っていることがわかった上でのやりとりであろう。

東2局、

5、200を放銃した勝又にツモ、打で満貫のテンパイが入る。
ここで、前巡の藤崎の捨て牌に注目していただきたい。勝又のに合わせた格好で打
(牌譜で明るくなっている牌が手出し、暗くなっている牌がツモ切り)

つまり、も勝又に合わせ打ちしているのだ。奈良がドラを打ち出しているため、勝又だけを警戒しているわけではないが、すでにこの局を見切っている。
この「捨て局を作る」ということが麻雀に勝つために重要なことで、技術が出る部分でもある。
勝又のテンパイ打牌のは藤崎のポン材ではあるが、もちろんこれを仕掛けることはなく、藤崎にとっては2巡の安全が約束されるラッキーな出来事なのだ。

12巡目、


勝又はを引き入れ-に待ち替え。
ホンイツ模様の小島がいることに加え、藤崎に警戒されていることはわかっているため、1枚でも待ちが多いほうに受けるのは当然だ。
結果、1シャンテンだった奈良にもテンパイが入らず、勝又の1人テンパイで流局となった。

東4局3本場、

3巡目のこの場面で、藤崎の選択は打。ドラの処分を保留して、345、456の三色を見据えた親番らしい一打である。
ホンイツ一本で進める手もあるが、ドラ色のホンイツでは上家と手がぶつからないアガリは難しい。
先程も書いたように、今局を捨て局にした打ち手からは、一切の甘い牌が期待できないからだ。
数巡進み、を引いたところでドラ打ち。

 ツモ

10巡目にが暗刻になり、11巡目にツモ

が2枚打たれているので、単純に三色だけを考えれば打だが、ドラとの振り替えを想定して打と構えた。
先程の時点より、ドラを打ち出すのが怖い巡目になっていることが主な理由であろう。
このとき南家の奈良には、ドラ単騎のテンパイが入っていた。

ここまで、イマイチしっくりこない感がある藤崎だが、それでも1巡毎に変化する場面に対応する、藤崎らしさは出ている。
ツモでヤミテン。奈良から出アガリ、2,000は2,900。

南2局、藤崎手牌。

 ドラ

西家、トップ目の藤崎が5巡目にを仕掛けると、南家・勝又のツモが動き出す。
勝又のこの配牌が、

 リーチ

このリーチまで辿り着いた。
ドラトイツでテンパイが入っている親の小島がで放銃。
このとき藤崎は、以下のテンパイが入っていた。

 ポン

藤崎が仕掛けた瞬間、「らしくない」ようにも感じた。藤崎の仕掛けとしては軽すぎる、楽をしようとしている印象を受けた。
トップ目だから局回しに徹するのは当然でもある。
毎回同じように仕掛ける打ち手にとっては単なる結果論でしかないが、藤崎は毎回これを仕掛ける打ち手ではないから、「さてこれは?」と疑問に思った。

すると、1回戦のタンピン-待ちリーチに踏み切るまでの1巡も、ひょっとしたら「リーチ」と発声したことも、
藤崎のコンディションの悪さを物語っているのではないか、という考えが私の頭をよぎった。
続く南3局、再び藤崎が仕掛けると・・・

手なりで打った勝又にテンパイが入る。

仕掛けた以上は・・・という手順で藤崎が打ち進めると、勝又のリーチに3,900の放銃。
私の勝手な見解でしかないが、これは先程の仕掛けと違って、トップ目勝又の親落としというテーマがはっきりしているからOK。
同じような仕掛けだが、客観的に見ている私の目にはそのように映った。

次局は藤崎が2,000、4,000のツモアガリで2回戦のトップを決める。

2回戦成績

藤崎智+18.1P  勝又建志12.1P  奈良圭純▲11.6P  小島武夫▲18.6P

2回戦終了時

小島武夫+13.9P  藤崎智+11.7P  勝又建志+2.6P  奈良圭純▲28.2P



【3回戦】(起家から、勝又・小島・奈良・藤崎)

東1局、

親番の勝又は5巡目にこのテンパイが入る。リーチはかけず、打を選択。
すると、南家・小島がと引き入れ即リーチをかける。

  リーチ

リーチに対してを通してさらにヤミテンを続行すると、小島からドラが打たれる。

その後、を引いた勝又が追いかけリーチをかけたが、

 リーチ

すぐに小島の7,00、1,300となった。

リーチを受けてツモ切りリーチをかけていれば、小島のをとらえることができた。
しかし、もしそのような手段をとるようなら、それは勝又本来のフォームがブレている証拠であると思う。
結果、4,800点の収入があるが、その結果に至るまでの過程がよろしくない。

まだまだ変化が見込める手牌で、先制リーチにドラのカンチャン待ちで追いかけるのは「積極的」ではなく「無謀」な行為であるから。
特に勝又のように、1局の手順に一貫性を持たせるタイプがこの局面でとって良い手段は、

・カンでの即リーチ
・または東を中心に手を組む打のテンパイ外し。
・そして、勝又が実際に選択した、ヤミテン後、待ちが変化してからのリーチ。

この三択であろう。
例えば今回のデータを見ると、もっともリーチ成功率が高かったのが勝又。リーチ9回中、なんと8回成功。
もちろん短期間の記録は大きな意味をなさないが、長期間でデータをとったとしてもそれなりの数字が残る打ち手であることは間違いない。
1,300点とリーチ棒、親番を失ったが、内容的には悪いものではない1局だ。私はそう思う。

東2局、藤崎の先制リーチにドラトイツの奈良が追いかける。

藤崎

 リーチ ドラ

奈良

 リーチ

藤崎がツモで2,000、4,000。
奈良は続く東3局の親番でもドラがトイツで、勝又に3,900を放銃してしまう。

奈良手牌

 ツモ →打 ドラ

勝又手牌

 チー ポン ロン


勝又の東1鳴き+リャンメンチーは、捨て牌に手役の特徴が表れていない以上は、ドラがトイツ以上であることを想定するべきだ。
奈良の手牌だけを見ると、少し淡泊な放銃にも見える。
しかし、奈良自身もドラを2枚持っていること、そして親番であるといった理由があるため、奈良の打つ牌に甘えが出てしまうのも無理はない。
ドラがあってもアガリに結び付かない状況が続くと、手が入らないときよりも失点する可能性が高くなるものだ。
しかも、トータルポイントでマイナスを背負っている奈良の目にはさぞかしドラが魅力的に映っていることだろう。

東4局、北家の奈良が13巡目にリーチをかけると15巡目に西家の小島が追いかける。

奈良

 リーチ ドラ

この終盤のリーチ合戦は小島が制し、1,300、2,600のアガリとなった。

小島

 リーチ

南1局、親番の勝又はこの仮テンパイに2を引き入れリャンペーコーのリーチ。

 ツモ ドラ

前巡に5を打ってあり、もともとメンツ手の手順を踏んでいるため、捨て牌に変則手の特徴は出ていない。
これに飛び込んだのは、前局のアガリでトップ目に立った小島であった。

しかしこの放銃はボーンヘッド。普段仕掛けやリーチに対して、人一倍丁寧に対応する小島が打つ牌ではなかった。
75歳の小島御大は、連日の対局の疲れが出てしまったのだろうか。続く1本場も、仕掛けた小島が勝又に11,600の放銃。

勝又は親番が落ちた後も安定した局回しを見せ、3回戦は1人浮きで終了。

3回戦成績

勝又建志+49.7P  藤崎智▲2,1P  奈良圭純▲16,5P  小島武夫▲31,1P

3回戦終了時

勝又建志+52,3P  藤崎智+9,6P  小島武夫▲17,2P  奈良圭純▲44,7P



【4回戦】(起家から、藤崎・勝又・奈良・勝又)

東1局は、勝又が丁寧にヤミテンで1,000点のアガリ。

東2局、親番・勝又手牌。

 ドラ

3巡目に上家の藤崎から打たれたをスルーすると、5巡目にこのテンパイが入る。

 ツモ

を打ってシャンポンでリーチをかけると、あっさりとをツモアガリ、3,900オール。
4回戦が始まった時点で、トータルポイント2位の藤崎と勝又の差が42,7P。
このアガリで約16P、順位点も含めると60P以上の点差で首位に立つことになる。
ところが、機械のように精密な勝又の麻雀がブレ始める。

「東2局の親番でをツモったリーチには感触があった」と言う勝又は、
「同時にこのアガリで優勝を意識してしまった」と対局後に語っていた。

東4局、ここまで無心で麻雀に没頭することができていた勝又に雑念が入りこんでしまったようだ。

勝又は上家から出たをチーして打
ドラがトイツでトップ目、シャンテン数も上がる。当然とも取れる仕掛けではあるが、やはりこれは悪手であろう。

手牌の苦しい部分を処理するために仕掛けるならまだ良いが、マンズが連続形になっているため、カンは急所ではない。
雀頭候補のは1枚打たれており、もう一方はドラの。仕掛けたあとの形は決して強いものではない。
他家、特に親から反撃がきたときに攻めきるのは無謀に思えるし、オリ切れる手恰好でもない。

勝又がチーと発声した瞬間、記録室の山田浩之はこちらに目を向け、首をかしげた。
優勝に向けてさらに突き放すチャンス手だろう?3,900をガツガツ取りにいく場面じゃないよ。
山田浩之の目はそう言っていた。
もちろん仕掛けた勝又も、瞬間(俺は何やってんだ?)と思ったことだろう。
結果、

奈良の仕掛けは、字牌が余ってピンズが余るという典型的な一色手、テンパイ模様の捨て牌になっている。
テンパイとはいえ、残り巡目が少なく不安定な手牌からの放銃。
勝又は、絶対的な点数状況を作りあげるチャンスを自ら放棄してしまった上に、手痛いダメージを受けてしまった。
普段の勝又からは考えることができないほど甘い放銃だ。こちらの想像以上に勝又かかっている重圧は重いようだ。

さらに勝又の苦しみは続く。
南2局の親番では、南家の奈良の4巡目リーチを受けて、

藤崎のをチー。
絶対的に有利な位置にいる勝又が、なぜか一番追い込まれているような印象を受ける。
このテンパイ形のまま突っ込むと、11巡目のが奈良の3,900に放銃となってしまった。

奈良手牌

 ロン

4回戦成績

奈良圭純+15.0P  小島武夫+8.4P  藤崎智▲7.4P  勝又建志▲16.0P

4回戦終了時

勝又建志+36.3P  藤崎智+2.2P  小島武夫▲8.8P  奈良圭純▲29.7P

奈良は初トップで最終戦に望みをつないだ。
勝又にとって不幸中の幸いは、トータルポイント最下位の奈良がトップであったことだ。
勝又はトータル2位の藤崎と、30Pの差を残したまま最終戦を迎える。



【最終戦】(起家から、藤崎・小島・奈良・勝又)

東1局は、西家・奈良がピンフリーチで先制。
親番の藤崎がドラトイツのリーチで追いかけるが、奈良のツモアガリ。

 ドラ

奈良リーチ。

 ツモ

東2局、

南家・奈良は、1枚目のを5巡目のをポンして打。8巡目にを重ねている、ドラのを打ち出すと親の小島がそれをポン。
小島はこの東のポンでテンパイが入っており、一瞬で4,000オールのツモアガリ。

 ポン ツモ

奈良の打ちについては、当然のように議論になる。賛否両論あるが、話題として取り上げられるのもこの結果があったからだ。
そもそもをポンするかしないか、というところから意見が分かれる場面である。

今回の観戦記で何度も書いていることだが、奈良がいつもこのフォームで打っているであれば、
このフォームで勝ち上がってきたのならば、この局はこれで良いと私は考える。
がむしゃらに勝ちにいくだけ、若手の麻雀はそれだけでも観戦者や視聴者の方を魅了することができるから。

東2局1本場、

9巡目、小島にドラトイツのテンパイが入っている。
全員に警戒されていることを確認した小島は、ツモ切りリーチをかけると、流局間際18巡目にを叩きつけ4,000オール。

 リーチ ツモ

このアガリで早くも小島は勝又をまくり、トータル首位に躍り出た。
小島がヤミテンに構えている間、勝又が打ったを見て、いつが打ち出されても不思議ではない印象を受けたが、勝又はツモの瞬間オリを選択。
小島の現物であるを抜き打った。4回戦で崩れた勝又であったが、結果はともかく、すでに本来の鋭さを取り戻してかけている様子だ。

東2局2本場、奈良1,000(勝又放銃)

 ポン ロン ドラ

東3局、勝又1,000(藤崎放銃)

 ロン ドラ

東4局流局、藤崎1人ノーテン。
東4局1本場、小島1,300(勝又放銃)

 ロン ドラ

南1局、勝又1,300(小島放銃)

 ポン ロン ドラ

南2局流局、奈良1人テンパイ。
6局連続でアガリにドラや高い手役が絡まず、大きな点数の動きがないまま南3局へ。
南3局1本場、

勝又は6巡目に藤崎から打たれたをポン。
通常時の勝又の雀風ではあまり見ない仕掛けではある。
最後のチャンスである親番・奈良は、下家の勝又が露骨な一色手の捨て牌でも真っすぐに打ち抜いてくる。
それを利用しない手はない、と考えたのだろうか。10巡目、

親の奈良からリーチが入り勝又は打
そして、残りツモ2回のところでテンパイが入る。

勝又手牌

 ポン ツモ

テンパイをとれるは危険牌。
藤崎、小島の両者は完全にオリているため、リーチをかけている奈良以外から出アガリは期待できない。
残り2巡で勝負する手牌ではないだろう・・しかし数局の展開に焦れてしまったのか、4回戦の不出来を引きずっているのか、勝又の選択は打
そして次のツモの打まで河に置いてしまう・・・

この11,600放銃で勝又と首位小島のポイント差は17.0ポイント。
誰もが小島の勝ちを意識した場面だ。

南3局2本場は奈良が小島から1,500は2,100。
3本場に勝又が1,300で奈良の親を落とす。

 ロン

南4局、親番の勝又とトータルトップ小島の点差は16.9ポイントとなっている。
例えば4,000オールをツモってもまだ点数が足りず、アガリ止めやテンパイ止めもないため、まだ続行しなければならない。
その間、小島には打点の制限がなく何度もチャンスがあるため、勝又は圧倒的不利な状況。
4巡目、

小島が4巡目のカンを仕掛ける。
小島らしくはない仕掛けではあるが、決勝戦のオーラスとしては常識的な仕掛けである。
勝又の手牌は1シャンテン。チャンタや三色が見える手牌だが、小島の仕掛けに対応して、まずはスピードを優先すべき場面だ。
このチーの直後にと勝又にツモが流れ、

一発でツモアガリ、6,000オール。
一気にトップまで返り咲き、次局のノーテン宣言で勝又の優勝が決定。
第2期グランプリMAXはオーラス一発の超逆転劇で幕を閉じた。

勝又は打ち上げの席でコーラを飲みながら、思わず苦しみを吐露する。

「いや〜あんなに頭が真っ白になったのは初めてだよ」
「恥ずかしい牌譜残しちゃったな」

嬉しい嬉しいタイトル戦初優勝の対局が終了。しかし、数時間が経過しても勝又の表情が冴えることはない。
隣に座っている、今回解説を務めた瀬戸熊直樹に対して、しきりに質問を繰り返している。
常日頃、麻雀に対する熱意には目を見張るものがあるが、それとまったく同じ光景だ。

短期間であれば誰でも勝てるのが麻雀で、それが面白さでもある。
しかし、プロと名乗る者通しの対局には、結果だけでなく内容が求められる。
麻雀の「内容」というのは漠然としたものとして捉えられることが多いが、これには私なりの答えがある。
第三者に伝える意志を持って打つこと。または言わずとも伝わるものがあること。
それは本人なりにでも良いと思う。

小島は魅せる麻雀を打つことを信条としているが、勝又の麻雀は華やかな麻雀とは対照的に地味とも言える。
しかし、彼の麻雀は実に理論的で、的確な状況判断をもとに打牌が選択されており、どこを突かれても一向にボロが出てこない、という強みがある。
勝又の堅実な麻雀も同じようにプロの麻雀なのである。

勝又が自分でも語るように、一か八かの勝負を繰り返すだけならプロを名乗る資格はないであろう。
今回は、今までに優勝経験が無い大舞台で勝ちを意識してしまったがために、重圧に押しつぶされそうになった勝又。
この経験でメンタル面が強化され、今後、太い幹が出来上がっていくことは間違いないであろう。

勝又に授けられた最後の大物手は、ここまで積み重ねてきた彼の雀力が本物である証ではないかと思う。



 

 

(観戦記:滝沢 和典 文中敬称略)

 

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