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第23期 十段戦

準決勝戦 観戦記

プロ連盟員にとって高校野球よりも大きな意味を持つ夏の風物詩『十段戦』。

昨年は史上初の4連覇を狙った河野高志に4人のタイトル経験者が挑み、結果土田浩翔 ( 現鳳凰・十段の2冠 ) が初優勝。

現在最強の麻雀プロである土田十段に挑戦する4名が決定した。

梅雨空のもと、これから繰り広げられるであろう熱く濃い闘いへの期待に胸を膨らませ、私は意気揚々と会場に向かった。

少し前を歩く阿部孝則(現マスターズ)を見つけた。ショーウィンドウの前で足を止めている。のんびりと淡いブルーのシャツを見ているスリムな男性がこれから麻雀界のビッグタイトルの準決勝を戦うなどと、道行く人たちは思うはずもなかろう。

小走りで追いつき挨拶をした。笑顔で返してくれる阿部。私が今日の観戦記を担当する事を告げると「山井君とかここまで結構快進撃だよね、取り上げたら面白い記事になると思うなぁ」などと執筆のアドバイスまでいただいてしまった。このマイペースとも取れる余裕がタイトルを次々に獲得していく強さなのだろうか。

飲み物を買ってから行くと言う阿部と別れ、1人会場に入る。開始30分前。会場係があわただしく準備する中、前原雄大藤崎智が会場の一角で談笑していた。そこに荒正義伊藤優孝藤原隆弘古川孝次と対局者が集まってきた。

これから8人のセミファイナリストが2卓にわかれ4人の生き残りを賭けて闘うというのに、非常にリラックスしたムードが漂う。彼らはこの雰囲気に慣れている。だから楽しむことができる。

一方、彼等とは対照的な様子なのは私と同じ富山出身の山井弘。例年は二段、三段の若手が残っていたものだが今年は一番の低段となる四段の山井。

阿部がこっそり観戦記の主役に推薦していたことなど本人は知るはずもなく、空き卓に浅く腰掛け1人集中力を高めている様子。

阿部が快進撃と言うように、ここまで瀬戸熊直樹、多井隆晴、河野高志と同世代のA汽蝓璽ーを倒しての準決勝進出。本人は「ここまでこれただけでもびっくりだよ」とはにかんで謙遜するがどこまで本音やら。

阿部も会場入りして10分前には8人がそろう。

定刻5分前、立会人による卓割りの発表。B卓で名前を呼ばれた藤崎が「シニアはA卓なんだ」と軽口を叩く。そのA卓は荒九段、伊藤九段、前原八段、藤原七段。

私がまだ小学校のグラウンドでドッヂボールに興じていた頃には、既にトッププロとしての地位を築き、そして今日の連盟の歴史を支えてきた4人である。彼らには「いぶし銀」という言葉がよく似合う。

B卓は古川孝次八段、阿部孝則七段、藤崎智五段、山井弘四段。

春のマスターズ決勝で戦った阿部と藤崎が、夏の十段戦ではここ準決勝で顔を合わせる。安定した強さには脱帽するしかない。

そして古川。過去には史上初の鳳凰戦3連覇 ( その4連覇を阻止した阿部がその後3連覇を達成 ) を成し遂げた円熟の麻雀打ち。近年、大きな舞台からは足遠くなっていたが久しぶりの準決勝進出。古川もやはりいぶし銀を感じさせる打ち手である。

山井は勝てばプロ入り初のタイトル戦決勝進出。穏やかな物腰に闘志を宿す。

どちらの卓も非常に興味深い。日程の都合とはいえ、準決勝2卓を同時に行わざるを得ない事情が恨めしい。できるなら両方の卓を砂かぶりで見たいものだ。

時計が正午を示し、対局が開始された。

 

まずは1回戦のB卓。東1局西家の阿部がダブリーを宣言する。

   ドラ

まだ最初のツモも見てないのに上家に牌を横にされた北家の藤崎は親の山井に、

「しっかりサイコロ振れよ!」

と心で叫ぶ ( 本人談 ) 。

藤崎智

いきなりの失点は避けたい3者は受けざるを得ない。

しかし藤崎に心で責められて発奮したのか山井、安全牌を切るうちにドラの が暗刻になりイーシャンテン。

残りツモ4回のところで を引き入れてテンパイ。ここまでそれほど危険な牌を切っていない山井もテンパイとなれば話が違う。

ション牌の を力強く曲げて「リーチ!」

配牌を得たときはスタートダッシュ成功を信じたはずの阿部が一発で をつかみ 12000点 を山井に奪われた。

「まさか打ち込みにまわるとは思いもしなかった」

と後に語った阿部。次局も古川のリーチに押し出されたように 1300点 を放銃する。

しかし次局、阿部は8巡目に大物手をテンパイする。

   ドラ

捨て牌にソウズは切られていないが、メンホンテンパイにはとても見えない。

ドラの を持ってきた阿部は と交換。高目安目なしのハネマンへと変化。

次巡再びの 倍満逃しはあくまでも結果論。すぐに藤崎の打った で 12000点。

手牌の読みに関しては自信を持つ藤崎も

「まさかハネマンに当たるとは…」

と困惑気味。

そんな藤崎の反撃は南3局。山井もまくりトップに立っていた東家・阿部は、再逆転を目指し追いすがる西家・山井のリーチを受けて

  ツモ   ドラ

ドラ2枚があるが山井が をアンカンしているだけに、阿部は 勝負を避け、打

そこに南家・藤崎からの「ロン」の声。

  ポン  ロン

一見、ダブ 高目のトイトイかと思いきや実は でも三色同刻。「 8000 」と言われた阿部も少々驚き顔。

この打ち込みで山井がトップ目に再浮上。阿部はオーラスにも2着目古川に 2600 を放銃し原点割れの3着。トップは山井。

準決勝B卓

 

荒れた1回戦だったが、大きな失点を避け丁寧に2着を守った古川。

そんな古川の2回戦東2局8巡目。

  ツモ   ドラ

配牌はマンズ8枚からの一気寄せで静かに打 。ヤミテンに構える。

先ほどの阿部同様にメンホン気配など全く感じられない。

ドラ2枚のピンフイーシャンテンの阿部が と続けてツモ切る。

今か今かと が河に置かれるのを待つ古川。ここで古川が引いたのは

を切れば阿部がたった今通したばかりの が高目になる。

しかし古川は待ち替えを拒み をツモ切り。すぐに藤崎から が出て 8000点。

またもノーケアのメンホンに藤崎が犠牲になった。

2回戦は古川がこのリードを崩すことなくトップをキープ。1回戦トップの山井はラスになってしまった。

 

山井弘

 

A卓に視点を移してみる。

回戦、2回戦と藤原が2連勝。実は藤原は50歳を超えてなお、この卓では最年少。

回戦開始前には伊藤が

「藤原君、決勝進出おめでとう」

などとジョークで揺さぶる。

伊藤優孝

しかし1年前のチャンピオンズリーグの優勝で20年間ノンタイトルの汚名を返上してからは、自分が少し精神的にたくましくなったと語る藤原。

先輩からの卓外口撃にも負けず、3回戦は東1局にマンガンツモ、東2局は親番でダブリーピンフツモの 2600 オール。

昔から藤原を知る荒、前原、伊藤は、この展開は予想していなかっただろう。

大物手を連発する藤原、東2局1本場では「緻密な仕事師」の本領を発揮する。

   ドラ

親とはいえサンショクやドラ受けのあるこの手は当然のダマ。

そこに北家・前原が

をポンして打 ドラでも でもマンガンのテンパイを入れる。

この役なしのあがり牌に対して藤原は「チー」。打 でタンヤオへの移行とする。

調子がいいときにメンゼンを崩すのを嫌がる人が多いが仕事師の血が鳴かせた なのだろう。

この鳴きで前原のツモるはずだった が藤原に流れ、ドラタンキで流局。

マンガン親かぶりをテンパイ料獲得+親番維持に換える、という大きなお仕事。

仕事師は緻密さと大胆さを織り交ぜてこの半荘で7万点を超える。

さすがに同卓の3人は一つ目の決勝のイスを諦めた。この後も藤原は暴れに暴れて1〜5回戦を圧巻の5連勝。

「少しリーグ戦に取っておきたい」

といいながらも先輩に気を使って笑顔を隠す藤原。

準決勝A卓

 

5回戦終了時には伊藤は

「今日はまだトップを取ってないなぁ・・・あっ!前ちゃん ( 前原 ) も荒ちゃんも一緒かぁ」

と今度は自虐ジョークで会場を和ませる。

卓内で2着になれば決勝に進めるとあって、むしろここから戦いはヒートアップしていく。

最終戦開始前のポイントは 伊藤 ▲38ポイント、荒 ▲43ポイント、前原 ▲54ポイント。

彼等は競技者として、また勝負師として誰よりも修羅場をくぐってきた3者である。

開始前の和やかな雰囲気が、ここにきて嘘のように張り詰めた空気に変わった。

東1局は荒が5巡目にドラ切りリーチ。

   ドラ

親の前原も同じ - 待ちで13巡目に追いかける。

この局のあがりは前原。 ツモで 2600 オール。これで前原は2着浮上の布石を完成させる。

前原雄大

次局は荒がサンショクのペン でリーチ。数巡後、4枚目の をツモで 2000-3900 。

そして東2局は前原にチャンス手。

   ドラ

上記の配牌にツモ 、ツモ 、ツモ で3巡目で高目ハネマンのリーチ。

決まれば決定打となるリーチだ。

9巡目に追いついたのは親の伊藤。

  ツモ

で前原の高目を雀頭にしての追いかけリーチ。待ち牌の枚数で勝る伊藤が をあっさりとツモ。 2600 オール。

2着争いがますます混沌としてきた。

勝負師と呼ばれている間に昭和から平成へと時代が変わった。

才能ある若手の台頭など数々の逆風の中で一流でありつづけた3人の争い。

誰か1人だけが決勝に進める。

張り詰めた空気の中で東3局、その均衡は崩れた。

きっかけは前原だった。追いかける前原は少しでも打点を稼ぐために当然手役にこだわってくる。

東3局にはホンイツ仕掛けで局の主導権を握る。

  ポン  ポン   ドラ

藤原は前原の上家でもあり慎重に切る牌を選ぶ。「ピンズじゃない牌を」と河に置いた

そのとき気配さえ感じなかった親の荒から「ロン」。荒は静かに牌を倒した。

  ロン

あまりにも大きなアガリ。

「ピンピンロク…」 (11600 点の意 ) 。

荒は静かに点数を申告した。

なぜこの状況でダマテンにしたのか。  をツモっても後悔しないのか。もしや荒は を見逃す気だったのか。

そんな私の疑問に対局後、荒は答えた。

「あそこはダマしかないだろう…」

何と言ったらよいのだろう。培ってきた勝負勘、長年の経験則、卓越した展開読み。どの表現もこのときの荒を表現するには不十分だと思う。

皆さんにこのときの衝撃を伝える文章力を、私はまだ持ち合わせていない。わずかでも行間から読み取っていただければ何よりだ。

こうして勝負師たちの何度目かもわからない真剣勝負は終局した。

決勝2つ目のイスは北海の真剣師、荒正義。

 

勝ち上がりを決めた藤原と荒はもう1卓のギャラリーになる。

対局時同様の刺すような視線で決勝の対戦相手決定を見守る両者。

B卓も既に最終戦であった。

回戦終えて古川がほぼ当確。2位の阿部を藤崎と山井が 45ポイント差で追いかける。

最後まで手を抜かずリーチに仕掛けにと果敢に攻める古川。反対に防戦一方で手が明らかに落ちてきた阿部。

南1局で親の古川がダメ押しのリーチ。

   ドラ

山井はツモり四暗刻で追いかけるも古川が ツモで 2600 オール。大逆転のチャンスを逃したかに見えた山井がその1本場で再び4巡目の大物リーチ。

   ドラ

今度は ツモで 3000-6000 。

続く南2局は親の藤崎がタンヤオリーチをハイテイでツモり 3900 オール。山井、藤崎ともに阿部に肉薄する。

オーラスをむかえ親は山井。山井は阿部をまくるまで連荘、藤崎は順位点の兼ね合いもあり阿部から 3900 以上の直撃かハネマン以上のツモあがりで2着浮上となる。

決着は早かった。藤崎は11巡目にチートイツドラ2をテンパイすると自らの感覚にゆだねて敢えてドラが にも

かかわらず 待ちリーチを選択した。

2巡目からイーシャンテンの阿部だがテンパイが入らない。

藤崎の逆転かと思われたそのとき、藤崎の切った牌に古川の「ロン」。

古川が最後まで自力で決勝を決めた。

安堵のため息を漏らす阿部。

無念そうに、されどすがすがしく笑う山井と藤崎。

こうして残りのイスは古川、阿部という鳳凰戦3連覇の2人に決まった。

 

 

それでは決勝進出者からのコメントである。

 

 

古川孝次。A汽蝓璽綾蠡亜K英狎鎔瞥茲離織ぅ肇訐鏃莨 十段戦の決勝は1987年以来3回目。

 

「タイトル戦の決勝も久しぶりだし、十段戦においては15年以上決勝から遠ざかっていた。せっかく決勝まで来たので獲りに行きます。」

 

 

藤原隆弘。A汽蝓璽綾蠡亜K英狎鎔瞥茲離咼奪哀織ぅ肇觀莨 

十段戦の決勝は初。

 

「これで4大タイトルは全部決勝に残ったことになった。チャンピオンズリーグを優勝してもう1年、そろそろ大きいタイトルも獲りたいと思っていたので当然だけど勝ちに行く。今日の準決勝を圧勝して思ったけど50歳以上に限れば俺が日本最強かも ( 笑 ) 。マスターズは準決勝で負けて阿部くんと打てなかったから『やっと打てるな』って感じ(阿部と藤原はともに故安藤満門下)。とにかく楽しみだ。」

 

 

阿部孝則。A汽蝓璽綾蠡亜8愁泪好拭璽坤織ぅ肇詈飮者。十段戦の決勝は4年ぶり。

 

「去年の鳳凰戦で土田さんにタイトルを奪われてやっぱり悔しかった。でも思ったより早くリベンジのチャンスが来た。『取られたら取り返せ』を合言葉に頑張るよ。僕の麻雀は華やかさがないかわりに難しいこともしない。基本に忠実にやって最後には勝つ。アマチュアの人や若手プロにはどんどん見に来て欲しい。」

 

荒正義。A汽蝓璽綾蠡亜勝てば史上初の4大タイトル完全制覇。

 

「年齢的にも体力的にも競技者としての終点が近い事を最近感じるようになった。誰が相手かとかを意識しないで自分らしい麻雀を打つ。あくまでも麻雀は自分との戦いだと思っている。持てる力の全てを使って獲りに行くよ。」

 

ディフェンディングの土田浩翔2冠。

 

「ベスト16に勝ちあがった顔ぶれを見たときに『A気量埃圓燭舛箸侶莨 戮鰺輯兇靴拭D戦者が決まった今は予想通りといった感じかな。今年はプロリーグの立会人とかもやって、初めてわかったことがたくさんある。決勝戦は実に興味深い対局になりそうで楽しみで仕方ない。特に、気合の入った荒正義プロとの対戦には、いろいろな場面を今から想像している。できるなら自分自身が1人の観戦者としてこの戦いを観戦したい ( 笑 ) 。

観戦に来場される方は、長時間立ちっぱなしで大変とは思うけど1局単位でなく半荘単位でこの戦いを見て欲しい。『アガった』とか『振り込んだ』とかよりも対局者の『間』や『呼吸』などを自分が卓についているように感じて欲しい。

見た人が『麻雀ってこんなに面白いんだ』と思える決勝戦にしたいし、そうなる予感がある。」

 

 

 会場を出ると薄暗くなっていた。食事を済ませ帰りの電車の中。カバンには移動中に読むために持ってきた本がある。だがページを開く気にはならなかった。それほど今日の余韻は大きかった。

最寄り駅を出ると雨。小走りに帰宅。身体を拭くのも適当に、私は机に向かった。

この興奮を今すぐに伝えたい、という思いを抑えきれなかった。

もし、一流の戦いに興味を持った方がいたならば、決勝会場に足を運んでみて欲しい。

( 文責:櫻井 文中敬称略 )

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