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タイトル戦情報

第29期 十段戦 

決勝観戦記 〜最終日〜

(観戦記:望月 雅継)


9月17日月曜日。
運命の瞬間が今、始まろうとしている。
麻雀界の歴史に刻まれるであろう瞬間を、多くの観戦者と共に瞼に焼き付けることになるのだ。
5人の男達の命懸けの戦いを、今ここに伝えたい。


8回戦終了時

瀬戸熊直樹+40.4P 安東裕允+11.9P 堀内正人+9.3P 浜上文吾▲26.0P 仁平宣明▲37.6P 供託2.0P



9回戦(起家から、堀内・安東・瀬戸熊・仁平)抜け番:浜上

仁平は10回戦を自らの意思で抜け番に選んだ。
これは9回戦終了時に、自らが敗退のポジションにいるはずがない、という自信の表れか、はたまた自身に対してプレッシャーを掛けるための選択なのか。
どちらにしても、仁平の思惑とはかけ離れた状況に追い込まれてしまったことは間違いない。

他者の数字に関係が無く、ほぼトップ条件に縛られてしまった仁平の戦い方に注目が集まった9回戦。
とはいえ、プラスしている3者も、優勝するためにはここは取りこぼす事が出来ない戦いであることは間違いない。

そういった状況を把握してか、開局から慎重な戦いが続く。
東1局、瀬戸熊の先制リーチに対しても、東2局の安東のリーチに対しても、誰として無謀な戦いを挑む者はいない。
それは、この一戦の重みを十分に理解しているからだろう。

仁平にとっては後の無い戦いで、失点は即敗退に繋がってしまう事を意味し、瀬戸熊も、それを追う安東も堀内も、
本当に戦わなければならない瞬間までは、じっと足を溜める様な戦い方を選択するはずだ。
それが十段戦決勝のステージの高さであるし、また各人のプライドのぶつかり合う舞台だということなのだろう。


そんな緊迫した戦いが、ある瞬間から急に動き出す。
静から動へ。その瞬間は東2局1本場、4人が一斉に土俵に上がる。
真っ先に土俵に足を掛けたのが親安東と堀内。共に5巡目の1シャンテン。堀内は、

 ドラ

ドラ含みの七対子1シャンテン。対する親・安東も5巡目に1シャンテンも6巡目ツモで選択に。

 ツモ 打  

ここは手牌に変化を求める打ではなく、打と三色に決める一打を選択する。
瀬戸熊と仁平も追いつく。瀬戸熊6巡目、

 

仁平も、

 

ピンフ系の2人だが、どちらもスピード感溢れる牌姿に。
この4人の勝負で幸先良くテンパイにたどり着いたのは、後が無い仁平。
少しでも加点したい仁平は、ツモで打の当然のリーチ。

ここで判断に迫られたのは安東。一発でリーチ宣言牌の裏スジを掴んだ安東は少考に入る。
8巡目に、ツモとさらに十分形になっていたこともあり、現物のではなくここはを強打。
三色とピンフイーペーコーの可能性を残し勝負を挑む。

このを見て受けに入る瀬戸熊と堀内。
仁平と安東の一騎打ちの戦いになったところに、安東待望のツモ
三色が確定し、さぁ打での勝負だ…と感じていたのだが、安東の雲行きが怪しい。

安東 裕允


選択の余地が無さそうなこの瞬間、またもや少考。悩んだ安東が選んだのは打でのリーチ。そして仁平が一発で掴んだのはなんと

 リーチ ロン

結果論で語るのではなく、打牌の整合性を基に検証に入りたい。
まずは6巡目、テンパイ速度や手広さを求めたリーチを打つつもりであるなら、打でなく打でなければならない。
さらに8巡目、ツモと結果的には理想的な形となった後の9巡目、ツモを勝負するのなら、
13巡目ツモと三色が確定した瞬間に、ノータイムで打でのリーチを宣言すべきだと考える。
そうでなければ、打と打の説明がつかないし、打牌の積極性と打点が見合わないからだ。

この瞬間、牌姿と捨て牌を合わせる作業に追われた瀬戸熊と堀内の目が合ったと、対局後の瀬戸熊は語る。
勝負に勝ったのは安東だが、ここでカンの三色を選択しなかった安東の心のブレを2人は共に感じたからなのか。

さらに助かったのは仁平。ここでリーチ三色の7,700を放銃した瞬間、仁平の十段戦に幕が降りる。
仁平にとってはそれくらい大きな勝負局面であったのだ。
それが、結果2,000点の放銃。しかも仁平の目には三色を放銃した格好まで確認できたわけであるから。

「安東クンにを打った時、三色じゃなくて助かった。これでまたチャンスがあるかなと。」

放銃した仁平はそう語った。

放銃して良かったと思えることは稀な事だが、この瞬間の仁平の立場に立って考えてみても、また瀬戸熊や堀内の立場に立って考えてみても、
このアガリ形を見て3者共に“ホッと”したのではないかと推測する。
放銃した仁平はもちろん、瀬戸熊の立場で考えてみても、このアガリがカンでの出アガリだったと仮定すると、
この瞬間に、順位点込みで瀬戸熊に肉薄していたことになるからだ。
また、堀内にとっても追手は自分でありたいはずで、安東の加点が嬉しいはずもない。

以上を複合して考えると、安東のこのアガリが3者に活力を与え、逆に、安東に対してはこのアガリが敗退への坂道を転がり始めるきっかけだったように思える。
こういったケースは極めて稀だが、1つのアガリが心理にはプラスにもマイナスにも作用する稀有なケースもあるのだという事が、
視聴者の皆さんにも感じ取れたのではないか。

続く東2局2本場も安東に疑問手が生まれる。
親・安東、3巡目にをポン。

 ポン 打 ドラ

この牌姿からをポンした安東は、次巡もポン。

 ポン ポン  

ここからツモで何と打
これはテンパイ気配を出した上に、一色の気配を消すといったところなのか。

このに、丁寧に対応したのは仁平。このタイミングでドラを手放す。
堀内がをツモ切った後、次巡、安東がをツモると、このに合わせたように打
この一連の動きに翻弄させられる格好になったのは瀬戸熊。

 ツモ 打 

安東がを切った5巡目、ツモで七対子1シャンテンになった瀬戸熊はを合わせない。
ここは攻め手になりうると考えたのだろう。
しかし、同巡仁平がを合わせたこともあり、急遽方針変更と、安東の2枚目のをポンしてトイトイへ移行する。
そして打は安東、仁平の安牌といったところか。

この仕掛けによって展開が向いたのが堀内。
メンホンの1シャンテンだった堀内に飛び込んできたのは、堀内にとって理想的なツモ


 ツモ 打 

ここで堀内はヤミテンを選択する。
テンパイを組んだ場合、リーチを宣言することが非常に多い堀内のこの瞬間のヤミテンは強烈である。他の選手の比ではない。

瀬戸熊の手が一歩進むと堀内への放銃。
それが観戦者の目にも見えているだけに、ギャラリーも一気に緊迫ムードに包まれる。
瀬戸熊陥落へのカウントダウンが始まったかのような緊張感の中、11巡目、ついにその瞬間が訪れる。

堀内ツモ。少考に入る。は安東、瀬戸熊共に危険牌。
安全度を買って打と進めるか、それともここが勝負所と踏んでをツモ切るか。

瀬戸熊は語る。

「この局の堀内君には気配を感じていましたよ。7巡目のにテンパイ気配が出ていましたからね。」

瀬戸熊の目は確かである。
安東の動きを見極め、堀内が安東に向けて勝負したへの気配で瞬間に堀内へのマークに切り替えたというのだから驚きだ。

堀内は意を決して打
その堀内に呼応するように瀬戸熊がをポン。そして打


 ロン 

2日目7回戦東4局1本場の6,400を再現するかのような、堀内の見事なヤミテンでの12,000。
堀内が対瀬戸熊対策として狙う形はズバリこの戦い方。2度目のヤミテンが一気に瀬戸熊を追いつめることとなる。

動画再生

それにしてもこの局の結末がこのようになった原因は何だったのだろうか。
そのように考えた私は、この局の牌譜を、実際に牌を並べ一から調べてみることにした。
・安東が全く仕掛けなかったケース
・安東がをポンし、を仕掛けなかったケース
・安東が共にポンするも、を河に放たなかったケース

この3パターンを調べてみた。すると面白い結果が導き出されたのだ。

安東の仕掛けが成就する可能性があるのは、をポンしを仕掛けなかったケースのみ。
この場合は、堀内に流れたが暗刻になり、

 ポン ドラ

この牌姿から、安東がドラを勝負する格好となる。
この時、堀内の手はメンホンのシャンテンになっているはずで、この瞬間にテンパイした時だけ、堀内は勝負する形になりそうだ。
このケース以外は、全て堀内が先手を取り、のシャンポン待ちのメンホンテンパイが入るのだ。

堀内はこの牌姿からドラを放つことになる。
仕掛けが入っているケースは、堀内のことであるからテンパイ取らずの打も十分に考えられるだろう。
しかし、全員が門前で手を進めているケースは、ドラを切ってのリーチも考えられるため、局面はさらに縺れることになる。

どちらにしても、瀬戸熊がをポンするのは、安東がNを河に放った結果、仁平がを合わせ、場にドラのが2枚走ったからであって、
また、安東がをツモ切っておけば、ドラが顔を見せていない以上、堀内の2枚目となるを瀬戸熊が仕掛けることもありえない。

全てを複合して考えると、この結果をもたらしたのは安東の動きであり、直接的に安東には害がないとは言え、
前局の結果が何かの引き金になっている可能性は否定できないのだ。これが麻雀の難しい所でもあり、また面白い所であると言えるだろう。

瀬戸熊を下位に沈め、そして抜け出すことに成功した堀内、番手につける安東。
2人にとってはこの瞬間の結果は最高だったに違いない。しかし、勝負はこれでは決まらない。

痛恨の放銃をした瀬戸熊、迎えた次局東3局の親番で、瀬戸熊らしさを見せる。
瀬戸熊6巡目、絶好のを引き慎重にヤミテンに構える。


 ツモ 打 ドラ

形もいいだけにリーチを宣言したくなるところだが、ここはグッと堪えた瀬戸熊。
この手を滑るわけにはいかないと考えたのだろう。

ここで登場は仁平。
先程の、堀内の会心のアガリによって苦しくなったのは瀬戸熊だけではない。
仁平はこの半荘、トップを取らないことには10回戦での敗退が濃厚になってしまうからだ。

同巡仁平、かなり苦しい所からホンイツへ向かいをポン。
もう一局の猶予も無く、仁平らしくない仕掛けだとはいえ仕方のないところか。

 ポン 

このポンで助かったのは安東。本来安東がツモる牌は2巡目に自身が切ってある。このが堀内に流れる。
堀内はこのを前巡に処理しており、間に合った形になっていたのだが…さすがにこのは止まらない。

 ロン 

瀬戸熊の力強いロンの発声。倒牌する瀬戸熊の手が僅かに震え、瀬戸熊の精神状態が極限まで高まっていることが画面越しからも十分に伝わってくる。
数分前には、3者横並びにまで迫られていた瀬戸熊だが、このアガリで一気に息を吹き返したのだ。

堀内にとっては不運としか言いようがない。
それでもまだ並ばれただけであり、十分に復調する可能性はあるはずだったのだが…この瞬間、卓上から気配が消える。

安東は、仁平の動きで踏みとどまった。
ここで仮に11,600の放銃があるようだと、一気に置き去りにされてしまいかねない。
神様はもう一度安東にチャンスを与えたのだ。

しかし、安東はこのチャンスをモノに出来なかった。
東3局1本場4巡目、誰もが追いつけないスピードでテンパイを果たすものの、

 ドラ

北は安東の自風。役無しドラ無しのこの先手で、安東はリーチを宣言出来なかった。
結果、堀内のリーチを受け2人テンパイ。

続く東4局2本場4巡目、

 ツモ 打 ドラ

このをツモ切り。素直に打としておけば、アガリ手順があった安東だったが、結果、安東はこのがネックとなり痛恨のアガリ逃し。
ここまで、これだけ多くのチャンスをもらいながらモノにすることが出来ないと、さすがに風向きが変わってくる。ここで浮上するのは後が無い仁平。

南1局、瀬戸熊の先制リーチを受け、丁寧にトイツ手に寄せる。
瀬戸熊の当たり牌である-をどちらも重ね、腹を括ったドラ単騎リーチ。
そして、ラス牌のドラを力強くツモ。

 リーチ ツモ ドラ

このアガリで、微差ながら首位に立つと、南場は仁平の独壇場。
南2局1人テンパイ。南3局1本場は、瀬戸熊→仁平への2,000で加点すると、南4局は、

 リーチ ツモ ドラ

このアガリで安東をマイナスすることに成功し、理想通り1人浮きになりトップを不動のモノにするのだ。
仁平にとっては本当に苦しい展開が続いた。
東2局1本場には放銃。その後は全くと言っていいほど手が入らず、常に後手を踏む展開が続いていたのだから。
それでも仁平は諦めなかった。ギリギリまで最善を尽くそうと我慢を重ね、その想いを一気に爆発させたのだ。

「最後まで全然諦めてなかったですよ。」

十段戦終了後にそう語った仁平の言葉には、一回りも二回りも大きくなった仁平の姿が感じられた。
苦しい展開が続いたことは事実だが、他家の細かい手順やアガリ逃し、仕掛けの有無などで少しずつではあるが風向きが変わっていったのもまた、事実なのだ。
トップ条件という、苦しい条件を見事にクリアした仁平。大逆転で11回戦の椅子を自らの物にしたのだった。

仁平 宣明

 


9回戦結果
仁平宣明+27.6P 瀬戸熊直樹▲3.6P 安東裕允▲3.6P 堀内正人▲20.4P

9回戦終了時
瀬戸熊直樹+36.8P 安東裕允+8.3P 仁平宣明▲10.0P 堀内正人▲11.1P 浜上文吾▲26.0P 供託2.0P




10回戦(起家から、浜上・堀内・瀬戸熊・安東)抜け番:仁平


10回戦開始時点での敗退ラインは、堀内の▲11.1P。
仁平が9回戦で大トップを取り、▲10.0Pとなったため、この数字が具体的な目標となる。
現在最下位の浜上は、トップなら38,000点以上、2着なら42,000点以上の点数が必要となる。(2人浮きの場合)
堀内は、浜上の状況次第だが、仮に浜上がトップでも浮けばOK。安東は、仮にラスを引いても20,000点以上なら11回戦に進むことが出来る。

瀬戸熊が飛び出したことで、ワンサイドゲームになるのでは?と感じさせた今回の十段戦だったが、
ここへきて、各自が十分に持ち味を発揮し始め、稀に見るロースコアでの決着になりそうな雰囲気が漂ってきた。

さて、そんな状況でもやはり先手を取るのは堀内。
東2局1本場、最低でも原点を維持しなければならない親・堀内は7巡目リーチを放つ。

 リーチ ドラ

ここに立ち向かうのは後が無い浜上。
浜上の手牌は、

 

234の三色の1シャンテンにツモ
三色のテンパイを果たすと堀内に放銃となるところ、浜上はツモ。打と放銃を回避し、こちらもリーチと勝負に出る。
この二軒リーチに挟まれた安東。15巡目、

 ツモ 打 

この手から、ノーチャンスの、後スジのではなく、堀内の現物でワンチャンスのを切って浜上へ2,600の放銃。
このアガリが浜上に落ち着きを与える。
続く東3局、親・瀬戸熊の仕掛けと堀内のリーチをかい潜り、価値あるアガリをモノにすると、
東4局1本場、この半荘の浜上の勝利を決定付けるアガリが生まれる。

10巡目、先手を取るのはまたしても堀内。堀内らしい正確な手順で必然のリーチ。

 リーチ ドラ

このリーチにも、浜上は勇気を持って立ち向かう。
11巡目にテンパイを果たすと、続く12巡目に三色に手変わりして堀内に勝負を挑む。
堀内の-は山に4枚。対して浜上の-は山に2枚。
それでもこれが勢いの差なのか。堀内が力を込めてツモった牌はなんと

 ロン 

この大きなアガリで通過条件をクリア。
トップの座を不動にしたばかりか、この瞬間、瀬戸熊を追う2番手まで一気に浮上することに成功したのだ。

こうなると後が無いのは堀内。最低でも原点に戻さないことには敗退が確定してしまう。
並びが出来てからは3者共、より慎重に局を進め、南3局を迎えた時点で堀内の点数は18,600点。
残り2局で12,000点弱を叩き出さなければならないのだ。

残されたのはたった2局。
この南3局で失点してしまえば、ほぼ敗退が確定。

しかし、苦しくなった堀内に最後のチャンスが舞い降りる。
堀内6巡目、ツモで、

 ツモ 打 ドラ

ジュンチャン三色に照準を合わせる。
しかし、先にテンパイしたのは好調浜上。8巡目、

 

役無しのテンパイだけにここはヤミを選択。
同巡、堀内はツモ、9巡目ツモ。これで条件を満たし渾身のリーチを放つ。

  リーチ

条件を満たすためにはヤミテンの選択もあるところではあるが、このカンをリーチするからこそ堀内はこの舞台に立ち続けるのだ。
しかしこれは純カラ。このリーチを受け、3者は丁寧に対応。当然のように1人テンパイとなった。

1人テンパイの収入を入れ、各人の点数状況をおさらいすると、

浜上48,000、瀬戸熊26,500、安東23,900、堀内20,600、供託1,000。
これに順位点を入れると、

浜上+30.0P、瀬戸熊▲4.5P、安東▲9.1P、堀内▲17.4P

となり、これに9回戦までの成績を加えると、

瀬戸熊+32.3P、浜上+4.0P、安東▲0.8P、仁平▲10.0P、堀内▲28.5P

堀内にとって絶体絶命の状況となったのだ。
それでも、神は堀内を見放さなかった。瀬戸熊曰く、

「堀内君は本当に十段戦には縁があるなぁと思いますよ。」

と語るように、最後の最後に大きな見せ場を作ったのだ。


南4局1本場、堀内配牌。

 ドラ

条件の跳満を満たすには、清一色か七対子ドラをリーチで引きアガるか。
もしくは四暗刻。どの可能性も考えられる堀内の第一ツモは。ここから堀内は清一色に進む。

ツモ
ツモ
ツモ
ツモ
ツモ

僅か5巡でこの牌姿。

 

でテンパイとなる堀内。時間は掛かったものの、9巡目、ツモでテンパイを果たす。

「昨年は『失う恐怖』、一昨年は『もう二度と乗れないのでは?』という想いがありました。
昨年よりは、すがすがしい気分で決勝に挑めそうです。早くやりたいと思います。」

戦前にそう語った堀内。
決勝に残った者にしかわからない怖さ。タイトルを獲ったことのある者にしかわからない不安。
そういった感情を堀内は素直に語る。それは、堀内の純粋な人間性がそうさせるのだろう。

「数字は大切ですが、数字は決め手にならないですから。」

堀内ファンの皆さんに、この堀内の言葉を届けたい。
理屈では語りつくすことの出来ない舞台で、私達麻雀プロは戦っているのだ。
そうでなければ、この勝負所で条件を満たす形を2局連続で入れることなど不可能に近いのだから。
堀内が選ばれた男だからこそ、夢を繋ぐアガリを成就させるのだ。

 ツモ 

この見事な跳満ツモの結果、僅か1.9P差で安東の敗退となった。
浜上が放銃すれば浜上が、瀬戸熊が放銃すれば仁平が敗退となる際どい争いの中、親カブリによって安東が涙を呑んだのだ。

安東の敗退の要因はこの半荘ではない。
腹を括り、もう少しだけ大胆に戦うことが出来れば違う結果になっていたはずだ。

十段戦決勝終了後、打ち上げ会場に安東の姿はなかった。
それだけのダメージを受けたのだと私は感じ、時間を空け1週間後にインタビューの電話を試みた。
安東はまだ、現実を上手く受け止めることが出来ていない様子であった。
仕事も手につかず、牌譜の確認も出来ていないと語る安東の声には、開始前の凛とした姿を感じることが出来なかった。

「我武者羅に戦えばよかったのかもしれないけど…そういった戦い方はしたくなかったのです。」

十段戦に対する想いを数多く聞いていただけに、安東の気持ちは痛いほど伝わってくる。それでも、

「仲間たちや友達からの応援は本当に嬉しかったです。負けたことは真摯に受け止めて、また次回のチャンスに頑張ります!」

そう語る安東には、近い将来また必ず大きなチャンスが巡ってくるだろう。


10回戦結果
浜上文吾+22.9P 堀内正人+7.9P 瀬戸熊直樹▲10.6P 安東裕允▲20.2P

10回戦終了時
瀬戸熊直樹+26.2 浜上文吾▲3.1P 堀内正人▲3.2P 仁平宣明▲10.0P 安東裕允▲11.9P(敗退) 供託2.0P




11回戦(起家から、浜上・瀬戸熊・仁平・堀内)

10回戦で大トップを取った浜上と、オーラス起死回生の跳満ツモでなんとか踏みとどまった堀内が、勢いそのままにぶつかり合う形となった11回戦。

東1局、堀内7巡目、

 ツモ 打 ドラ

この手で堀内は打のヤミテンとする。
堀内というと、テンパイ即リーチのイメージが強いが、堀内の中では明確な“決め”があったらしい。
子方の役無しドラ無し愚形テンパイはリーチしないと決めていたと語る。

ここで浮上は浜上。10巡目、

 ツモ 打 

浜上が選んだのは。手牌変化は上目1本に絞る。が、ここは打が結果的には正解。
次巡、ツモとテンパイを果たすも、前巡に瀬戸熊が2枚目の打としただけに、打ならばカンとカンの単純比較でカンを選択していた公算が高かった。
浜上はカンで“引きに行く”リーチを放つものの、ツモ筋には。この局から少しずつ浜上の歯車が狂いだす。

対する堀内は順調そのもの。
東1局1本場、瀬戸熊とのリーチ合戦を制し勢いに乗ると、

 リーチ ロン ドラ

続く東2局は仁平から3,900。

 ポン ロン ドラ

そして東4局1本場、堀内のセンスが光る1局が飛び出す。

仁平が6巡目ポン。そして場を一瞥して打

 ポン ドラ

この打は、場にが3枚出たことを確認しての繊細な一打。ではなくを選ぶところが仁平の良さであり持ち味だ。
すると下家・堀内が珍しく少考する。そしてこの形から、

 

をチー。いったい何が始まるのかと思わせるほどの仕掛け。しかも、今回は仁平の仕掛けが先手であり、手牌は明らかに後手なのだ。
しかし、ここからが堀内の真骨頂。
次巡、仁平からが切られるも堀内は微動だにせず。ツモを仁平がポンしてテンパイ。

 ポン ポン

8巡目、仁平からが放たれてもここもスルー。一貫して自分の形になるまでは動かないのが堀内の良さ。カンは急所だからこその仕掛け。
だが、次手以降は他の形は弱いため動かないのが堀内の仕掛けの特徴であり良さである。
闇雲にシャンテン数をあげない堀内の仕掛けを、皆さんも参考にしてもらいたいと思う。

すると堀内のツモは急激に動き出す。ツモ、ツモ、ツモでテンパイ。そして高めのをツモ!

 チー  ツモ 

この3,900は4,000オールで一気に抜け出すと、続く東4局2本場も堀内らしい仕掛けを見せる。
堀内の7巡目、

 ドラ

この牌姿からをポンすると、テンパイ取らずの打でトイトイへ移行。すぐにも鳴け、
をツモって2,600は2,800オール。

 ポン ポン ツモ 

さらに続く東4局3本場は、浜上とぶつかり合う。堀内6巡目、

 ツモ 打 ドラ

ここも少考後打。ホンイツへ歩を進める。
7巡目、ポン打、8巡目ツモでテンパイを果たす。

こちらは浜上の13巡目、

 ツモ 打 

メンホン1シャンテンの浜上、仁平の仕掛けによって喰い下がったをツモ切り。
痛恨の5,800は6,700の放銃となってしまった。

 ポン ロン 

この放銃が、浜上の敗着打だと考える。
この時点での浜上の点数が25,700、対する堀内は59,400。大きく離されてはいるが、ここはまだ勝負所ではない。
堀内の勢いが止まらない以上、ここはグッと堪えこの半荘でのプラスを目指すことが出来れば、最終戦での戦いに参加する権利を得ることが出来るからだ。
放銃さえしなければ、周りに対しても自身の存在をアピールし続ける事が出来る。
いくらメンホンの1シャンテンだとはいえ、テンパイを果たしていないだけに、勇気ある決断をしてほしかったと思っている。

浜上 文吾

 

この放銃で浜上の緊張の糸が切れたのか、続く東4局4本場も今度は仁平へ連続放銃。仁平の6巡目、

 ツモ 打 ドラ

この、優勝を諦めない仁平のテンパイ取らずが夢を繋いだ形となり、9巡目ツモで理想的な一通のテンパイ。
浜上もテンパイを果たしリーチを打つものの、それは自らの失点を挽回したいという欲からくるものだった。

 リーチ ロン 

浜上は次局、

 ドラ

という大物手を育て上げるものの、ここも堀内に捌かれ不発。

「いろんな方が見てくれていて…『負けたけど良かったよ!』『次頑張れよ!』と言ってもらえて。普段とは違う自分があの舞台にいたような感覚です。
負けたのは悔しいですけど、そう言ってもらえて本当に嬉しかった。あの時感じた気持ちを忘れないようにしようと思っています。」

この2日間で、人間的にも麻雀プロとしても一番大きく成長することが出来たのは浜上だろう。
彼の懐の大きさも、粘り強く我慢する姿も、十段戦という舞台で全てを出し切ることが出来たのではないか。
結果は残念な形となってしまったが、浜上の存在が九州本部を、地方で頑張るたくさんの若手プロたちの心を奮い立たせたのではないだろうか。
安東、浜上という同世代の活躍を、同じ地方で戦う仲間として心から讃えたいと思っている。


さて話を本題へ戻そう。
堀内を独走させたくないのは仁平も瀬戸熊も同じ。
もう加点するしか道の無い仁平は、南2局、決死のフリテンリーチを見事にツモり、原点復帰。

 リーチ ツモ ドラ

瀬戸熊もオーラス、

 リーチ ツモ ドラ

「安目のだけは見逃すつもりでした。」
と、堀内との差を詰めることに成功。こちらも最終戦に希望を残した。

10回戦オーラスには敗退の危機にあった堀内が、今シリーズ待望の初トップで一転して首位に。
瀬戸熊との差を大きく離して、2度目の栄冠に一歩近づいた。

逆に瀬戸熊は、初めて首位の座を明け渡す結果に。
2人の差は26.2P。最終戦に劇的なドラマが繰り広げられるとは、この時は誰にもわからなかった。


11回戦結果
堀内正人+42.1P 仁平宣明+4.0P 瀬戸熊直樹▲13.5P 浜上文吾▲32.6P

11回戦終了時
堀内正人+38.9P 瀬戸熊直樹+12.7P 仁平宣明▲6.0P 浜上文吾▲35.7P 安東裕允▲11.9P(敗退)




12回戦(起家から、瀬戸熊・仁平・浜上・堀内)

11回戦の初トップで念願の首位に立った堀内。後は残り1戦、逃げ切るだけだ。
堀内の戦い方を通して見てきた私の頭の中に、最終戦開始前、不思議な思考が過ぎったのだ。

長い戦いの十段戦決勝だが、そんな中、堀内の狙う形は超スプリント勝負だったのではないか?
そのために、序盤から局を地道に潰すことに精力を注ぎ、自分の得意の形になる瞬間が来ることを虎視眈々と狙っていたのではないのだろうか?
そのエネルギーが爆発した瞬間が11回戦であり、これが堀内の狙う形だというのであれば、ここまでの戦い方に一貫性を感じるからだ。

東1局、親・瀬戸熊は早くも2巡目に1シャンテン。

 ドラ

対する堀内は、6巡目にネックのペンを引き込み1シャンテンも打

 ツモ 打  

ピンフの1シャンテンに取り、目一杯の形には取らない。
ここまでの堀内の戦い方を見る限り、11回戦までならここは打としていたはず。
それがリャンメン固定の打という事は、無駄なリーチを打たず、局回しに徹するということなのだろう。
この戦い方を、堀内はしたかったはずなのだ。

9巡目、ツモでテンパイを果たすと、次巡、浜上からが出て瀬戸熊の親を落とすことに成功する。
開局で瀬戸熊にリードされると、その後に苦しい展開が待っているだけに、このアガリは点数以上に価値のあるモノとなった。

続く東2局、堀内はタンヤオに手を寄せていくものの、思いとは裏腹に牌は縦に重なる。
牌の動きに身を委ねた堀内、自然な形での七対子を引きアガリ独走態勢に。

 ツモ ドラ

この時点で堀内は37,400。対する瀬戸熊は28,400。
開局前の点差が26.2P差あるだけに、堀内が原点をキープさえすれば、瀬戸熊が堀内を逆転するためには50,000点を超える大トップが必要となる。
このアガリで、堀内が2度目の栄冠に向けて大きく前進したのだ。

東3局、3番手につける仁平はとにかく加点し続ける事が大逆転への絶対条件だ。
そんな仁平の6巡目は、ドラ含みのタンピン三色の1シャンテン。僅かな可能性に懸ける。

 ドラ

逃げ切りを図りたい堀内は、8巡目に三色の1シャンテンに。

 

どちらの手が早いかと考える間も無く、次巡に堀内は高めを引き込みテンパイへ。
堀内打。そしてヤミテン。その指先は微かに震えはじめる。優勝を意識したのか。
この十段戦決勝での戦い方、そして堀内のスタイルとの一貫性を考えれば、ここはリーチの一手で間違いない。
しかし、ここは30P以上離した最終戦のトップ目、局を流したい堀内の思惑からすれば、ここでのヤミテンは必須と考えたのか。

このヤミテンにより、仁平と瀬戸熊に1本の細い糸が舞い降りた。
同巡、瀬戸熊テンパイ。しかし手変わりがあるためこちらもヤミに。
さらに同巡、仁平はテンパイを果たすもツモは。三色にならない安目だが、もう一刻の猶予も無い。当然のリーチ宣言。

 ツモ 打リーチ  

仁平のリーチを受けた堀内。ツモは無筋の。ここで少考に入る。
ニコ生のカメラが堀内を映し出す。腕を組み、場を凝視していた堀内が一瞬、視線を卓外に落としたのだ。

「ツモられるのは仕方ないが、放銃は良くないと思ったので。得点表を見たのは慎重になったから。仁平さんにはツモられてもいいと。」

そんな堀内の一瞬の動きを瀬戸熊は見逃さなかった。

「堀内プロがサイドテーブルのポイント差を見た瞬間、チャンスありと思いました。この瞬間が勝負の分かれ目でしたね。」

逃げ切りを図りたい堀内の一瞬の心の隙を、瀬戸熊は見逃さなかったのだ。
苦しいのは堀内も同じ。我慢をすればきっとチャンスは舞い込んでくるはずだと。

堀内は手牌の唯一の現物牌を静かに抜いた。
すると、瀬戸熊の手が倒される。

 ロン 

堀内の戦い方は理に適っている。
大きく点数をリードした者が、有利にゲームを進められることを十分に理解している打ち方だろう。
事実、その様な戦い方に長けているからこそ、激戦の続くトーナメントを何度も勝ち上がってきているのだから。

しかし、この瞬間だけは何回振り返っても堀内らしくないと思っている。
前局、前々局のアガリで十分なリードを得ているトップ目、だからこそ先手の本手である-はリーチしてほしかったと思うのだ。損得勘定は抜きにして。

この放銃をきっかけに、大きな歯車がゆっくりと動き始めた。


とはいえ、堀内の絶対的有利は変わらない。
東4局、堀内の親番。ここで加点すればさらに優勝への一歩は盤石なモノになるであろう。
ここも堀内と仁平がぶつかり合う。

先にテンパイを果たしたのは親・堀内。
8巡目テンパイも、ここも少考して打。手牌変化の強さを優先した一打だ。

 ツモ 打 ドラ

仁平の1シャンテンは6巡目。8巡目に手牌が変化して以下の形に。

 ツモ 打 

堀内9巡目ツモで打。ここは形の強さより待ちの強さを重視。
仁平9巡目ツモ。さらに打点UPで打。すると10巡目ツモはテンパイ逃しのツモ切り。
待ち変えさえしなければ、このを堀内はナチュラルに捕らえていた公算が高い。
堀内にとっては残念な結果に、仁平にとっては一瞬とはいえ助かったと言えよう。

仁平11巡目ツモ。それはまたしても待ち望んでいた牌ではなかった。
安目で、しかも選択が残る形。打のシャンポンリーチか、打のカンチャンリーチか、打のドラ切りリャンメンリーチか。

「シャンポンリーチも十分に視野に入れていたんですけどね。リーグ戦なら切りヤミテンですし。」

と語る仁平が選んだのは、ドラ切りでのリャンメンリーチであった。

このドラ切りリーチを受け、アガリ逃しが発生した堀内はすぐに撤退。
仁平が力を入れてツモった一発目の牌はなんとドラの
それでも仁平は14巡目にをツモ。首の皮1枚残すことに成功する。

 リーチ ツモ 

南1局、この時点での3者の持ち点は、堀内32,200、仁平31,000、瀬戸熊30,700。
ここからは各自の親番がかなり重要となってくる。

堀内の立場とすれば、このままの点差で親を落としさえすればOK。
瀬戸熊と仁平は、堀内の点数を原点以下にすることが最優先事項で、その後は条件を満たすまで自身の加点を目指すこととなる。
この局が、この十段戦の結果を大きく左右する1局となる。
堀内にとっては痛恨の1局。生涯忘れることの出来ない一瞬となっただろう。

動画再生

トップを走る堀内、そして親の瀬戸熊共に、なかなかの好配牌に恵まれた今局、先に手が締まった形になったのは瀬戸熊。
7巡目には、

 ドラ

三色の見える好形1シャンテンに。
遅れること3巡。10巡目の堀内は、

 

こちらも三色と役牌の天秤の好形1シャンテンに。
11巡目瀬戸熊、をツモ切り。同巡、

は早く処理したかったんでタイミングを計っていました。」

とのコメントは浜上。

 ツモ 打 

僅かな望みを懸けて歯を喰いしばりながら戦っていた浜上。
牌姿だけならのツモ切りも十分に考えられるところ。ここで瀬戸熊のに合わせ打とする。
ここでもし浜上が打としていると、堀内は迷わずチー。-のテンパイとなっていたところ。
そして、すぐに瀬戸熊が打での決着となっていた。ここは浜上の粘り強さを讃えたい。

すると、ここでこのに堀内が反応する。チーでテンパイしてこの形。

 チー 打  

「鳴かない方が良かったかもしれないけど、を鳴くのが僕のスタイルだし、絶対に鳴く牌だから。」

対局終了後のインタビューでこのように語る堀内に、少し意地悪な質問を投げかけてみる。

「結果がこうなるとわかっていて、もう一度あの時間に戻れたとしてもこのはチーするの?」

「はい。絶対に鳴きますよ!」

芯の強い男である。
結果に左右されないほどの自身の信念に自信を持っているということなのか。
それが堀内の良さであり、そしてそれが、結果敗着となってしまうのだ。

次巡瀬戸熊、をツモ切り。堀内、メンゼンでのテンパイを逃がす。
そして13巡目、堀内ツモ。役無しのをツモるも、当然ツモ切り。

瀬戸熊14巡目、ツモ。堀内はメンゼンでのシャンポンテンパイだとこのがツモアガリ。チーしてシャンポンのバックに受けても、このでロンアガリ。
16巡目、瀬戸熊ツモでテンパイを果たすと、17巡目ツモ。堀内はメンゼンの三色でもをツモアガリ。

堀内にとってはこのチーが全て。
グッと一声我慢すれば、9割方十段位が堀内の手元に舞い戻ってきたはずだったのに…。


しかし、この局の真の立役者は浜上であった。
前述したように、瀬戸熊のを合わせなければ堀内の優勝が決まってしまう一打になってしまっていたし、
さらに堀内のチーの後も、このを場に下ろすことはないまま終局まで粘り通したのだ。
一瞬でも楽な打牌を選んでしまえば、自らの手で十段位を選ぶことになってしまう。
最後の最後まで、浜上は自らの意思を貫き通したのだ。

兎にも角にも、堀内は千載一遇のチャンスを逃し、瀬戸熊は絶体絶命のピンチを乗り越えたのだ。

こうなると勢いは瀬戸熊に傾きかける。
南1局1本場、瀬戸熊7巡目に渾身のリーチ。

 リーチ ドラ

続く南1局2本場も12巡目にリーチを放つものの、

 リーチ ドラ

このどちらのリーチも不発に終わってしまう。
しかし、このリーチに挑む者は誰もいないのは当然の事。ノーテン罰符で着実に加点し、この半荘のトップに躍り出る。
後は、堀内の点数を原点以下に削り、さらに自身の加点を続けること。

南1局3本場、瀬戸熊9巡目、澱みない手牌進行から必然のリーチ。
このリーチを受けた堀内、10巡目にテンパイを果たす。

 ドラ

次巡ツモ。ここで堀内、またも少考に入る。

のワンチャンス。は瀬戸熊のスジに当たるが、場況的にも絶好に見える牌。
を勝負してでのアガリに賭けるか、比較的安全にを切るのか。
私達解説陣も、そして見ていた観戦者も、恐らくその二択の選択を堀内が考えているものだと思っていただろう。

しかし堀内の思考は違っていた。

を勝負するか、打でオリるか。」

ここまで煮詰まった局面になっても、堀内は自らの型を貫き通すのだ。
次巡、瀬戸熊打。私達の目からはアガリ逃しに見えるこの瞬間も、堀内の視点からは違った景色に見えていたようだ。

「このは無理だろ!ここでを打つのは俺じゃない!」

この瞬間の堀内は心の中でこう呟いたそうだ。

堀内 正人


麻雀は忠実なゲームだ。スタイルは違えど、自らの進むべき道を信じていた2人。
堀内がミスと考えない動きを繰り返す中、瀬戸熊は自らの信じる十段への階段を着実に歩み続けていたのだ。
堀内の信じる道。そして瀬戸熊が信じる道。2人の行く末がはっきりと二分した瞬間であった。
このアガリ逃しが発生した次巡、瀬戸熊の手にはしっかりと十段位連覇への切符が握られていた。

 リーチ ツモ 

この瞬間、瀬戸熊が堀内を僅か2.5P交わし、再びトップに躍り出る。
それでも、堀内は原点に復活すればすぐに瀬戸熊を再逆転できるポイント差だけに、瀬戸熊としても更なる加点をして、堀内との差を広げておきたいところだ。

南1局4本場、こちらもまだ諦めていない仁平がダブリー。

 ダブルリーチ ドラ

ここに飛び込んだのは堀内。この放銃は責められないか。

南2局、大逆転優勝を目論む仁平の最後の親番。
それでも先手を取るのは堀内。7巡目、逆転を目指し渾身のリーチ。

 リーチ ドラ

出アガリでも瞬間的には条件を満たすこのリーチ。
リーチ時には山に2枚あったこのも、後が無い仁平に全て吸収される。
放銃を回避しながらも必死に前に出る仁平。そんな仁平の想いとは裏腹に、無情にも仁平の十段戦はここで幕を閉じるのだ。

「しばらくは悔しかったです。決勝に残るチャンスはそれほどないので…。思い通りにはいかなかったですね。最後は力の差かなぁと。」

そう語る仁平だが、それでも、

「最後まで全然諦めてなかったですよ。こういう舞台で打てたのが良かったですね。」

十段戦を戦った5人の中でも、圧倒的に苦しい牌勢で戦いを強いられた仁平。
普段の仁平とは全く違った一面が見られたのも、この十段戦のステージの高さがそうさせたのだろう。
新たなスタイルの構築が見られたことで、これから先の大きな飛躍を感じられそうな、そんな仁平の勇敢な戦いに拍手を送りたい。


残されたのは後2局。
何とか逆転を狙いたい堀内は、ドラ暗刻の勝負手。10巡目にをチーして、

 チー ドラ

この手も、上家・浜上が粘り強く対応しテンパイ止まり。
瀬戸熊、仁平も必死に喰らいつきテンパイでオーラスへ。

オーラスの各人の優勝条件は、トータルトップの瀬戸熊はアガリトップ。
堀内は30,000をキープした状態で終局出来れば優勝。仁平は役満ツモ条件。

配牌は、

瀬戸熊
 ドラ

堀内
 

どちらも苦しい配牌。この配牌が9巡目に、

瀬戸熊
 

堀内
 

瀬戸熊ツモで打。このを堀内がポン。メンゼンでは仕上がらないと思ったか、ここから親番維持の形テンに向かう。そして打
このを瀬戸熊がポン。打。14巡目、ツモ。打でテンパイ。

連覇への階段を一気に登りきった瀬戸熊は、自力で栄冠を掴み取ったのだ。

 ポン ツモ

瀬戸熊 直樹

 

「良く勝ったなぁと。いろいろなモノが自分にプラスに働いたなぁと。」

瀬戸熊が語るこの想いは正しく本物だろう。

「みんな必死で戦っていたから強かったですよ。ダメな部分もあったかもしれないけど、みんな頑張ったんじゃないかな。」

十段戦連覇という偉業を達成したというのに、どこか瀬戸熊のコメントは他人事のように感じる。
その真意は、この一言に凝縮されているだろう。

「周りがみんな喜んでくれたのでホッとしたのが一番です。」

瀬戸熊と同期でデビューして、瀬戸熊の戦う背中をずっと追いかけてきた。
対局中のギラギラした眼差しと、ギャラリーにまで伝わってくる闘志。そんな姿にたまらなく憧れていた自分。

瀬戸熊の魅力はそういった部分だけではない。
周りを気遣う優しさと、プロ連盟や麻雀界の発展を願う心。
今回の瀬戸熊の勝因の1つは、自分の事だけではなく、共に戦う仲間たちや、応援してくれる者達への感謝の想いが、
最後の最後に瀬戸熊を後押ししたのだろうと勝手ながらに考える。

そんな瀬戸熊に、今回の勝因を聞いてみると、

「最後まで勝とうと思わなかったことが勝因かな。最終戦も全く焦っていなかったのは経験だと思います。」

と、謙虚な答え。
こんな所が、瀬戸熊が皆に愛され、慕われる要因なのではないか。

誰が勝っても不思議ではなかった今回の十段戦。
それぞれが持ち味を如何なく発揮し、その思いの丈を打牌に込めて戦った結果、これだけの素晴らしい名勝負に繋がったのだろうと私は思う。

それぞれの男の生き様を、一瞬の摸打に乗せて戦う。
不器用な生き方ではあるが、そんな麻雀プロという生き方がたまらなく好きだ。
改めてそう感じさせてくれた5人の対局者に、感謝の言葉を伝えたい。

「名勝負を、ありがとう。」


12回戦結果
瀬戸熊直樹+31.8P 仁平宣明▲4.5P 堀内正人▲7.1 浜上文吾▲20.2P

優勝  瀬戸熊直樹  +44.5P
準優勝 堀内正人   +31.8P
3位  仁平宣明   ▲10.5P
4位  浜上文吾   ▲55.9P
5位  安東裕允   ▲11.9P(途中敗退)



個人成績はこちら 個人成績(グラフ)はこちら

 







 

(観戦記:望月 雅継 文中敬称略)

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