1.
「急所は独眼竜の決断で打て」
「大事の義、人に談合せず、一心に究めたるがよし」
独眼竜政宗の異名を持つ、伊達政宗の言として知られている。
政宗が、己の人生を述懐し、近臣につくづく語った言葉で、重要なことは他人に相談してはいけない。
自力で考え、決断すべきである、という意味。
麻雀の場合、互いに手の内を秘匿し合って進めるゲームであり、すべて自力で判断し手を進めなければならない。
従って、急所の場面で迷わないよう、普段からの訓練が大切である。
例えば、6巡目で図Aの手。難しい局面ではある。
図A
            ツモ ドラ
こういう形になったとき、一見孤立しているように見える 、あるいは に手をかける人も多い。
次に でも引けたならば確かに - - の3面待ちでテンパイになるからだ。
しかし、ここで または に手をかけてはいけない。アタマのないところへの は絶好の引き牌なのだ。
ここで 切りなら図Bのようにアタマが決まり、三色と一通のどちらへも進める形が残る。
図B
            ツモ ドラ
は、234の三色に最も必要な牌なのだ。 を生かす一通なら か 引き。
一瞬のうちに自力で判断できる技術をマスターしてほしいと思う。
2. 「“入局須顧三家”捨て牌で待ちを読め」
麻雀の敵は3人。互いに自分の手の内を隠しながらゲームを進める。
それだけに、読みのポイントは捨て牌で見るのが最善。
入局須顧三家(ルウチュイシエーサンチヤ)は、中国に言い伝えられた麻雀の定石。
試合開始の打牌をよく見守り、なんの待ちかを読めと教えたものだ。
振り込んでしまってから「やっぱりなあ〜」ではダメなのだ。
このやっぱりな、と気懸かりな部分を大切にすることから、手の読みが始まるのだ。
図Cの手。
図C
     
    ドラ
「四」や「六」の数牌がたくさん切れているが、尖張牌の「三」や「七」が通るとは限らない。
それは「四」のほかにまだ「123」というメンツがあるし「六」のほかにまだ「789」というメンツ構成できる牌があるからだ。
これを見落とすと手痛い打撃を受ける。
「四」や「六」というメンツ構成に生かしやすい牌が、こんなにたくさん飛び出ているのは、逆にチャンタ狙いであると見定められる。
が暗刻で切られていると や は安全そうに見えるが、実戦では図Dに示す手だった。
図D
            
なぜこれだけ が切られているのかを考えるべきだ。
この定石を知り、読みに強くなって欲しい。
3. 「リーチを保留すべきとき」
東場3局の親で9巡目、図Eの手が入っていたとしたら、あなたはどう打つだろう。
図E
             ドラ
実戦での東家はこの場面から、いきなりドラの を切り飛ばしてリーチと出かけている。
東家としては三暗刻狙いと、もう1つ、ドラ切りなら は出やすいのではという読みだったのだろう。
だが、このリーチは間違いだ。
まず点数の問題。仮に狙い通り が出たとした場合、ヤミテンでも9.600点となる手だ。
これをリーチと出かければ満貫だが、わずかの違いでしかない。
また、リーチをかけてツモったとしても、
リーチ(1ハン)ダブ東(2ハン)中(1ハン)三暗刻(2ハン)で合計9ハンとなり、跳満。
ヤミテンでも同じ跳満(8ハン)となる。
打ち方としてもこういうドラ含みのときは、 切りでカンチャン待ちがよい。
まず危険を防げるし、ヤミテンでも満貫はある。
ドラをもう1枚引いてこれた場合にはシャンポン、図Fに持ち込めるし、
図F
            ドラ
この後 引きならばリャンメンにというように変化が望める。
リーチをかけてもかけなくても、点差があまり変わらないケースはヤミテンで狙えということだ。
4. 「ジュンチャン狙いのコツはトイツの1枚を先打ち」
図G
            
図Gのような配牌がくると、もし か を引けば123の三色は固い。
これには異存がないと思う。
そのうえに、端牌がらみでメンツを作ることができればジュンチャン三色。
これもほとんど誰もが考える手だ。
ところが、私は以前よく観戦記を担当し、打ち手の後方からその打法を見る機会があった。
その経験からすると、こんな配牌のとき、最終的に図Hのような形でテンパイする人が圧倒的に多い。
図H
            
アタマを に固定した123の三色。
配牌の形は整っている。しかも「うまくすればジュンチャン三色になるゾ」と考えていながら、実際に打ってみるとペン の三色のみ、という展開になる。
これでは少しも面白くない。なぜこうなるのか。その理由は、実はハッキリしている。
トイツがあると、なかなかその1枚を切り捨てる作業ができにくいからだ。
まず を切り、次にジュンチャンには不要な1枚の を捨てる。
この打法が体得されていないから、最後まで がトイツで残ってしまう。
ジュンチャンを目指すなら、 は789の形で使うしかない。
配牌で不要なのは と 、それに のうちの1枚。
配牌をとったとき、こう決断しておけば手は大きく育つのだ。
5. 「メンツ多々の処置法」
本来4メンツあればいいのに、図Iの手のように5メンツがそろっていると、何を残すべきか非常に迷うことになる。
図I
            ドラ
いわゆるメンツ多々の状態であるが、こういうとき私は1つの基準をもって打ち進むことに決めている。
それは「できる限り古いメンツを捨て去り、新しいメンツを残す」こと。
仮に をツモってきたとしよう。すると道は2つに分かれる。
ピンズ部分に を引けば - - の3メンチャンに伸びる。
そう考えてマンズメンツを捨てるのが一法。
もう1つは、もし を引くのであれば、次にソーズメンツを567に替え、 を狙い撃とうとする手。
これなら一気に567の三色をめざすことになる。
これまでいわれてきた戦法は、この2つの岐路に立ったとき「勘に頼る」あるいは、
「二色の芽があるから三色に直進。手役を重視する」という方法だった。
しかし私の場合は、 、 を切るか 、 を切るかはメンツになった時機が問題。
に がついたばかりならピンズを温存して、マンズを処理。
逆に配牌から があって、先ほど を引いてマンズメンツができたのなら、ピンズを捨てマンズを残す。
これが“伸びようとする方向に手を伸ばす”自然の打法なのだ。
図J
            
執筆:灘 麻太郎 文中・敬称略
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