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勝ちに向かう打法12

執筆:灘 麻太郎

1. 「慎重さが勝機の分かれ目」

神子上典膳、善鬼はともに一刀斉の弟子であった。
ある日、一刀斉はこの2人を別室に待たせておき、1人ずつ自分の部屋に呼んだ。

一刀斉の部屋の入り口には屏風(びょうぶ)が立ててある。
最初に呼ばれた善鬼は、ヒョイと屏風を飛び越えて入ってきたし、次の典膳は同じく屏風を飛び越えてきたが、一度ピョンと飛びはね、
なかの様子をうかがってから入ってきた。

兵法の上で典膳がまさっていたとして伝えられたエピソードの1つだが、麻雀にもこうした慎重さを要求される部分がある。
例えば図Aの捨て牌でリーチをかけられたケース。

図A

リーチ ドラ

筋はなんでも通るとばかりに一発でを通すといった、とにかく筋をたよりに打つ人がいるが、これはちょっと慎重さに欠けすぎるといえる。
図Aの捨て牌、序盤から456という好牌をブンブン切り出してのリーチなのだ。
こうした場合にはチャンタが予測できる。

打牌する前に捨て牌をよく見て、リーチ者の狙いは何かを読み取ること。
そうすると筋牌は切れないことが分かるはずだ。

実戦での待ちは図Bの構え。
ドラ2丁使いのチャンタで、カンテンパイだったのだ。

図B
 リーチ ドラ



2. 「バカホンはスピードで勝負」

バカホンを狙うぐらいならば、リーチをかけて裏ドラを期待したほうがアガリは大きくなるので、
あまりバカホンは狙わないほうがよいというのが麻雀の1つの常識ではある。

しかし、その牌姿によっては、バカホンに走ったほうがアガリが早くなるという構えがある。
例えば、図Cの手。

図C
 ドラ

3巡目のこの場面に、もしが出てきたとしたならば、すかさず食ってホンイツに走ったほうがアガリは早まるはず。
ポツンと1枚あるドラを生かして何とか面前で手を進めようと考えたとしても、こんな構えではまず手間取ることは間違いない。

そこで、バカホンでは、例えば図Dの手でテンパイできたとしても2ハンだけと安く、得点そのものはあまり魅力はないが、
アガリへのスピードを考えた場合には、この方向に進むのが一番の早道となる。

図D
 チー

牌姿によって、どの方向に進むのが一番の早道か、この見極めを身につけることが安アガリをマスターする1つの道である。
安アガリをバカにして大物ばかりを狙っていたのでは麻雀は勝てない。
場の状況に応じ、うまく安アガリをこなせるよう、駆け引きを早く身につけることだ。



3. 「“マル秘”トップ取り打法」

麻雀で勝つために忘れてならない鉄則は、点棒に合わせた手づくりをするという訓練だ。
どう点棒に合わせるか、これはトップを取るために相手との距離をはかって打つ。

例えば、図Eのような手が入っていたとする。

図E
 ドラ

東場であれば234の三色が目標。
しかし、南場の、特に南3局、4局では手役よりも点棒を第一に考えるのだ。

千点以内の射程距離にトップがいたり、自らが第1位にいるときは三色などではなく、のみの1ハン。
これこそが価値ある手作りと思うべきで、手を広げるのは単なる凡手だ。
図F、1枚目、初牌のであっても決して見逃さず一気に-で勝負を決する。

図F
 ポン

逆に、現在の位置が二番手で三番手走者と競っているとき、二番確保のため白のみに行くのが甘手(あまて)
あくまでトップとの距離をはかり、満貫手でなければ、あるいは跳満手でないとトップに立てないときには、
をトイツで落とし、メンタンピン三色を目指す。

跳満差があるならリーチをかけ、ツモ一本にかけていくのが私の打法なのだ。
現在のマージャンはオヤ(順位得点)を含め、トップ奪取が有利なだけにこの打法が必要なのである。



4. 「四暗刻と七対子の岐路はドラの有無」

暗刻が1組に、トイツが4組。
図Gのような形は意外に迷いが多いものだ。

図G

七対子を目標にして早くを切るべきか、それとも大物、四暗刻を狙ってを捨てるべきか。
あまり長くを温存しておくと将来七対子をテンパイした途端に放銃しそうだし、切ってしまうと千載一遇の役満を逃す危険がある。
そう思うと、なかなかつらい格好ではある。

この悩みを断つために、私ならどう打つか。進路を決断するのはドラの有無である。
もしがドラだとすれば早めにを切り払い、1牌でも広い待ちに持ち込み、
最終的には出やすい字牌タンキとすれば6,400点。リーチでツモなら跳満の手だ。
ドラがなければを切り捨て、のうち3組を暗刻にすべく打ち回す。

これが私の打法だが、1つだけ注意すべき点がある。
暗刻のを手の内で生かして四暗刻にと思った以上、が出てもポンは見送ること。

図H
 ポン

図Hの形ならトイトイ三暗刻になるが、出ればわずかに2.600点。
最後にポンするくらいなら、ハナから七対子一点に絞ってを先切りし、リーチに出たほうが得策なのだ。



5. 「ここ一番での迷いを消す刀の柄の打法」

家康の旗本の1人として知られる加藤正次は、常に刀の柄(つか)に手をかけていたので、人々はあざわらって聞いた。
「戦でもないのに、何でいつも身構えているのだ」

すると正次は胸を張って答えた。
「それがし、姉川の合戦に加わったとき、朝倉が兵二騎、味方のまねをして家康公のそばへ近づき、抜き打ちに切ろうとしたことがある。
それがしは常に刀に手をかけていたので、ただちに敵を切り止めた。このとき家康公も太刀一尺ほど抜き、その太刀へ血がかかるほどであった。
だから、それがしは平生でも刀の柄に手をかけているのだ」

日ごろの心掛けがここ一番というときに役に立ったということである。
麻雀でも、ここ一番という場面で真価を発揮できるためにはこうした心掛けが必要だ。

たとえば、8巡にを引き1シャンテンにこぎつけた図Iの手。

図I
 ツモ ドラ

この手からは三色が大きく期待できる、七対子の1シャンテンにもなっており、役狙いの分岐点に立っている。
どちらに向かうかは難しいが、日ごろ基礎訓練をしっかりやっておれば、確率、あるいは状態からいって、ここは切りで、
図Jのように、ピンフ、三色の道を選べるはずなのだ。

図J





執筆:灘 麻太郎  文中・敬称略

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