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プロ雀士インタビュー

今回のプロ雀士 : 前原 雄大


第25期鳳凰位 前原 雄大プロ



私が競技麻雀というものの存在を知ってから、十数年の月日が流れた。
初めての出会いは確か月刊誌だったと記憶している。
灘麻太郎、小島武夫、荒正義、安藤満・・・
一線で活躍するプロの名前が並ぶ中、私の心を鷲掴みにするのはいつもこの人の書く文章だった。
前原雄大「勝手にしやがれ」
いや、それは何も私に限ったことだけではないだろう。
彼の描く独自の世界に魅入られた若手プロは数知れない。
当時、プロの世界に憧れを抱いたことなどなかったが、
このエッセーとの出会いが私の人生を大きく変えたといっても決して大げさではないような気がする。
新宿歌舞伎町で初めて実物大の前原雄大と対峙し、その勝負強さをまざまざと見せ付けられた時、
私は心の底から自らの置かれている環境に感謝したものだった。
「オレは絶対に強くなる。強くなれなかったとしたらそれは完全なる自己怠慢なのだ。」と。

2009年3月1日、前原雄大は自身二度目の鳳凰位を勝ち取った。
彼との出会いから十年、やはり自分の歩んだ道に間違いはなかったなと思えるほどの完勝だった。

私は元来脇役など嫌いだが、
この人が頂点に君臨したとなれば、もう私以外にこの大役を務められる人間などいないだろう。
ではみなみなさま、しばしのお付き合いを。

   
稽古
   
佐々木
「いやー、前ちゃん、何年かぶりの鳳凰位返り咲きおめでとう!」
前原
「あ、佐々木先生ありがとうございます。つーかお前、前ちゃんはないだろう。
それに何だ、何年かぶりってのは?普通ちゃんと調べておくもんだろ!」
佐々木
「そいつはどうも失礼しやした。だけど森山さんとか荒さんだって前ちゃんて呼んでるじゃないすか?」
前原
「あの二人は大先輩だろうが。お前は遅れてきた大後輩なんだから、
前原大先生とか前原新鳳凰位兼四十九段位様とか呼び方ってものがあるだろ!」
佐々木
「長っ。まーそれはさておき、これ以上グダグダにならないようにいきなり本題から入りますが、具体的に今回の勝因は何だったんですか?
前原さんは常々、麻雀に敗因はあっても勝因はないとおっしゃっていますが、それじゃあこっちも困るもんで。」
前原
「相変わらず横柄なヤツだな。主役はこっちだから。その辺をよくわきまえて喋るように。」
佐々木
「あ、了解す。」
前原
「・・・全く、お前に何を言っても時間のムダに思えてくるよからすごいよな。
勝因ねぇ。そう呼べるのかどうかはわからないけど、まず契機となったのが1月に行われた麻雀トライアスロンだったんだよ。」
佐々木
「どういうことでしょう?」
前原
「そこで競輪の伏見選手と話す機会があったのね。
ボクが“練習大変でしょう?”って聞いたら、“いや、我々にとっては練習が仕事ですから”って返ってきたんだよ。
それを聞いた時、ああいい言葉だなって感じたわけ。それでこっちも負けてられないなって。
やっぱり稽古を怠る人間は結果を出せないよ。だから決定戦までとにかく一生懸命稽古を積もうと思ったね。」
佐々木
「それで我らが駆り出されたわけだ。」
前原
「そういうこと。一号(佐々木寿人)、二号(滝沢和典)、三号(山井弘)をはじめ、
今回ぶつかり稽古に付き合ってくれた全ての人たちには本当に感謝しています。」
佐々木
「いつの間にか三号までできてる(笑)。でも調整期間はほんと楽しかったですよ。
終わった後の飲み会でもタメになる話をいっぱい聞けたし。」
前原
「お前いっつもあくびばかりしてたクセによくそんな思ってもない言葉が出てくるな。
感心するよ。まぁその稽古の話だけど、常にマラソン選手を頭にイメージしながらやってたんだよ。」
佐々木
「?」
前原
「マラソンの選手って高地でトレーニングするイメージあるでしょ?」
佐々木
「はい。ありますね。」
前原
「だから本番が楽に感じられるくらい、とにかく強い相手と戦いたかったっていうのはあったね。
稽古の相手を一号、二号、三号だけに固定しなかったのも、色々なタイプの人間と打って、これから待ち受けるであろう様々な場面を想定したかったのよ。」
佐々木
「へー、色々考えてんすね。」
前原
「いいよなー、お前は単細胞だから。そういうこと一切考えないだろ?」
佐々木
「はい。ボクの場合はまず自分ありきですから。」
前原
「だから、今回の稽古は本当に辛かった。最終的にこの型でいくというものを見つけるまでが勝負みたいな部分はあったかな。」
佐々木
「なるほど。」
前原
「とにかく稽古は大切だよ。これは麻雀プロ全員に知っておいて欲しい。」
佐々木
「でもおかげで肩に炎症を起こしたとか?」
前原
「そう。オーバーワークが祟ったんでしょう。だからペースダウンして稽古の最終段階となる観戦に入っていたわけ。」
佐々木
「去年の十段戦の時もそうでしたね。打ち込みだけでなく誰かの麻雀を観るというその意図は、どういったところにあるんでしょう?」
前原
「局面を客観的に見られるということだね。
例えばヒサトの後ろにいたとして、この場面ならヒサトは何を打つだろうか、また自分だったらどうするかと予測を立てながら観るわけ。
そこでもし予測と出てきた結果にズレがあったら少しずつ修正していくと。この作業も自分にとっては大切なことだったんだよ。」
佐々木
「ということは、お貸ししたTV対局のDVDもずいぶん勉強になったでしょう?」
前原
「はい、佐々木先生の光るプレーの数々何度も拝見させて頂きました。
いや、でもお世辞じゃなく、あれを観ておいて本当によかったっていうのはある。ある時期から自分の日課になってたもん。
朝起きたらロン2で決定戦に残ったメンバーの牌譜を観て、夜はヒサトやタッキー君の麻雀をDVDで観てって、その繰り返し。」
佐々木
「踏んづけられても踏んづけられても根っこだけは絶対に死なないぞオレは、っていうところをお見せしたかったんですよね。
鳳凰位戦の舞台で前原さんの弱気なところだけは見たくなかったので、ある種のエールみたいなもんです。」
前原
「バカはバカなりに考えているんだな。でもそういう気持ちはほんとに嬉しいよ。」


『話にならない!』
   
前原
「それにしても、お前を背負って決勝戦を戦うのはとにかくしんどい。
それがもちろんヒサトのいいところなんだけど、思ったことをなんでもストレートにぶつけてくるだろ?こっちだって色々大変なんだぞ。」
佐々木
「ああ、二日目の二戦目が終わったときでしたっけ?」
前原
「そう。」
二人
「話にならない!」
佐々木
「だって、しょうがないでしょうよ。おいらあんな前原雄大みたくないもん。
朝武さんのリーチにひよって2.000・3.900逃しちゃってさ。がっかりですよ。そりゃ愚痴もこぼしたくなるっつーの。」
前原
「悪かったよ。でも愚痴ならこっそり言いなさい。会場中に響き渡るような大声だっただろ?」
佐々木
「愛情表現ですよ。前原しっかりせんかい!っていうね。」
前原
「やっぱりどこかで朝武のリーチを怖がっているんだろうな。あいつのリーチは高いんだから。」
佐々木
「いや、そうかもしれないけど、自分達が森山さんや前原さんからいつも言われていることに反した打ち筋じゃないですか。
落ち目のところには被せろ、っていうやつ。それに加えて、どこかでは必ずぶつけなければいけないっていうことも前原さんの口から何度も聞かされているし。
少なくてもボクにとって、この二つの言葉は今の自分の麻雀に相当プラスになったんですから。」
前原
「ベースはもちろんそう。だけどいずれヒサトにも解るときがくるよ。決定戦に勝つためには様々な要素が必要なんだってことが。」
佐々木
「そういうことなんでしょうね。この三日間を通して振り返ってみると、おっしゃる意味がよくわかるような気がします。完勝でしたもんね。」
前原
「そう?」
佐々木
「はい。ああ、こういう風に決定戦のゲームプランを立てていたんだなーって思いました。」
前原
「決定戦は三日間だから。18回戦だから。それ用の戦い方があるのよ。こっちはもう何度も経験しているんだから。勉強になったでしょう?」
佐々木
「自分ができるかどうかは別にしても、ものすごく勉強にはなりましたね。」
   

やはり今回の決定戦をベストの状態で迎えられたという自信からくるものなのだろう。
これを聞いて私は、今回の決定戦で一番気になっていた質問をぶつけてみることにした。


最終日
   
佐々木
「三日目なんですけど、前日までの二日間とは打って変わって突然摸打が遅くなりましたね。あれは?」
前原
「ヒサトにはもどかしかっただろ?」
佐々木
「はい。速く切らんかい!って思ってました。」
前原
「あれはね、自分が納得できる一打を答えが出るまで考えようってことだったんだよ。
最終日まできて自分のボーンヘッドで負けてしまうようなことだけは避けたかった。
麻雀プロって、どこかで楽しんでいる部分があると思うんだよ。でも、ああいう舞台では楽しんで負けるか、苦しんで勝つかのどっちかだもん。」
佐々木
「いや、三日目に顔を合わせた時、今日は上手く睡眠が取れたって言ってたでしょ?
それを聞いていたからか、あの摸打の遅さになんとなく違和感を覚えてたんですよね。そういうことだったんですか。」
前原
「上手く睡眠が取れたのは、たぶん欲がなくなったからだと思う。
その前の二日間は勝ちにこだわっていたんだけど、どこかで開き直っちゃったんだよね。
とにかく自分らしくあろう、それで負けたらしょうがないって。」
佐々木
「睡眠てほんと大事ですよね。
僕はもちろんまだ決定戦の経験はないですけど、たとえばTV対局って三日間の短期集中で撮ったりするんですよね。
初日は気持ちが昂ぶっていることもあるんでしょうけど、それ以上に日々の生活が不規則だから、まずもって睡眠不足で臨むことになってしまう。
だけど疲れきって家に帰るから二日目は睡眠ばっちりの万全の体調で戦いに臨める。
で、麻雀もやっぱり二日目の内容のほうがいいから、実感するんですよね。何をさておき睡眠が大切なんだなーって。」
前原
「でもさ、実際に最終日が終わってしまうと、もう一日あったらもっと良い麻雀打てるのになーって思ったりするんだよね。
もうこれで終わりかよ、寂しいなー、みたいな感じ。」
佐々木
「贅沢な悩みですね。あ、そうか、これで一年間はリーグ戦でも戦えないんですもんね。前原さんを観られず寂しがる人も大勢いるでしょうね。
来年はディフェンディングとして決定戦の舞台に立つわけだ。一年間の空白って不安に感じるもんなんですか?」
前原
「不安は全くないね。だって、その分だけ観戦に充てられるじゃない。A気魄貲戦い抜く人たちの色んな情報を取り入れられるでしょ。
観戦は最大の稽古だから。結果は別として、来年の決定戦でも最低限今持っているレベルのものは出し切れると思うよ。」



鳳凰位決定戦にて対局中の前原 雄大プロ





麻雀プロとは?

夜の十二時過ぎから始まった今回の祝勝インタビュー。
アルコールが入ったほうがより本音の部分で喋れるからと御大がおっしゃるので、私も連られて中ジョッキ二杯のビールに飲まれている。
私がアルコールに打ち勝つことなど、この先も一生ないであろう。
始まった頃からすでに、マリアナ海溝よりも深い睡魔が私を襲っていたのだった。
   
前原
「お前なー、インタビューだからってわざわざ時間割いてんのに、よくもそこまで帰りたいオーラが出せるよな。何秒おきにあくびしてんだよ。これだからO型ってイヤ。」
佐々木
「じゃあ、そろそろお開きにします?時間も深くなってきたことですし。前原さんもお疲れでしょうし。」
前原
「お前が早く帰って寝たいだけだろうが!。」
佐々木
「はい。じゃあ最後に一個だけいいですか?前原さんにとって麻雀プロって何ですか?」
前原
「じゃあ逆に聞くけど、ヒサトにとっての麻雀プロって何だよ?
プロになることを決断するまでに五年も六年もかかって、その間に自分の中で色んな葛藤があったわけだろ?」
佐々木
「そうですね。そりゃ色々悩みましたよ。麻雀プロって何?何のためにみんなその道を選ぶの?って。
よくプロ入りの動機を聞かれて、強い人と打ちたいからとか、リーグ戦をやりたいからって答える人がいるけど、僕はそれは動機として違うんじゃないの?って思っちゃうんですよね。
そういう人って結局、数いるうちの一人にしかなれなくて、まず光を浴びることはないだろうなって。
どの世界でもそうでしょうけど、プロというものは自己顕示ができてこそだと思うんですよ。
特に麻雀の世界は“プロ”と名のつく人間が多いわけでしょ。でも、そのほとんどがサークル感覚でやっているようにしか見えないんですよ。
滝沢ともよく話すんですけど、全ては自分の中の意識だからなーって。
そういうのって誰かに教わるものじゃないでしょ。ある程度最初から持っていなきゃいけないものだと思うんだけどなー。」
前原
「そういうことなんだよな。難しい言い方になるかもしれないけれど、結局麻雀プロって何だろうって考えること自体が麻雀プロであることの証明なのかもしれないな。
初めはなかなか答えが出ないかもしれないけどね。
今回の決定戦でも、麻雀プロ・前原雄大って一体何なんだ、ということを常に意識しながら戦っていたんだけど、
あの舞台は自己証明の場でもあったんだよ。人は言葉じゃ動かないんだから。その人の持つ何かによって動くものなんだよ。」
佐々木
「なるほどねー。確かに今回、前原さんの背中を見て動かされた人たちも多かったでしょうね。自分も新しい発見ができましたよ。」
前原
「そう言ってもらえるとありがたいね。」
佐々木
「今日は長いこと付き合っていただきありがとうございました。なんかいいものができそうな気がします。」
前原
「足りないようだったらいつでも連絡くれればお付き合いしますので、頑張って。」
佐々木
「はい。お休みなさい。」
   

こう言って私は、取材の場である池袋をあとにした。

タクシーの中でアルコールとともに様々な名言たちが頭の中を行き来する。
ふと、気づく。
そういえば、一つ聞き忘れたなと。

明くる日、メールを打つ。
これこそ、今回の締めを飾るのにふさわしいもののはずだ。
ではそのやりとりを原文にてお届けし、みなさんとお別れしようと思う。



聖域

To前原雄大
Sub昨日はすいませんでした

本文
かねてから鳳凰位と十段位は聖域とおっしゃっていましたが、その両方を同時に併せ持った現在の心境をお聞かせ下さい。


From前原雄大
Sub未だ旅の途中

本文
私の中では鳳凰位・十段位は聖域、あるいは聖地と呼ばれるものであることは今も変わっていないように思えます。
ただ、併冠した今思うのは、
そこにたどり着くことにそれほど意味はなく、大切なのはその聖域を目指すこと。
たとえば巡礼者がそうであるように、
聖地を目指し、その道中で自分の弱さや強さを見つけ、知ることに意味があるように思えてなりません。
達成感とか喜びというものが、数日経った今もそれほどないことを考えると、
やはり戦いそのものや結果より、聖地に向かう姿勢が私にとっては大切だったように思えます。

山上に山在り

この言葉は、前回鳳凰位に就いた時にある方から贈られた言葉なのですが、
やはりその通りだなと今改めて実感しております。


   

前原 雄大  ( まえはら ゆうだい )
日本プロ麻雀連盟1期生
⇒プロフィール(ロン2)はこちら      

(このインタビューは2009年3月現在のものです)

 インタビュアー:佐々木 寿人

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