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プロ雀士インタビュー

今回のプロ雀士 : 滝沢 和典 (後編)

今から7年前の或る日。
  
雀荘での勤務を終え、程近い友人宅に立ち寄った私は、端正な顔立ちをした一人の男と出会った。
男は、麻雀打ちという雰囲気をまるで放ってはいない。
ただその寡黙さゆえ、おぼろげなりとも、どこか陰のようなものを私に感じさせていた。
麻雀プロになったばかりだというその20歳の男に、私は興味を示した。初対面の人間と言葉を交わすことなど稀な、人見知り気質な私ではあったが、その時ばかりは何故か、さほど時間を要さずに、この男のことを知りたいと思った。
それだけの不思議な魅力が男にはあった。

しばらくして私は、傍らに置いてあった一冊の本を手に取った。その冒頭文に目を遣ると、たちまち体じゅうに電流が走ったような心地好い衝撃を受けたのを、今でも鮮烈に憶えている。
「まるで、自分のことを言われているみたいだ。」そう無邪気に言い放った私を見て、男は小さく頷いた。
そして、ただ静かに笑っていた。
  
  
今回のプロ雀士インタビューは、前回に引き続き、第32期王位・滝沢和典プロの後編「これまで、そしてこれから」をお送りします。インタビュアーは、前回と同じく松崎良文が務めます。   

  

  

松崎 「よろしくどうぞ。」
滝沢 「こちらこそ。」
松崎 「タッキー、今日はインタビューだからさ、いっぱい喋ってよ。」
滝沢 大丈夫です。」  
松崎 「ほら、さっそく口数が少ないじゃない。本当に大丈夫?」
滝沢 「たぶん。」
松崎 「たぶんじゃダメだから。ちゃんと頼むから。」
滝沢

「はい。」

     

  

故郷にて

     

松崎 「では最初に、生い立ちから。小さい頃は、どんな子供だったの?」
滝沢 「小学校の頃は、野球ばっかりでした。あとはトランプを少々。勝負事という感覚で。」
松崎 「すでに勝負師としての才が目覚めていたと。そんな滝沢少年が麻雀を覚えたのはいつ?」
滝沢

「中学校に入ってからです。部活で野球をやりながら、仲間たちと手積みで始めました。同じ頃、音楽にも関心を持ち始めました。どちらもドップリとハマりましたね。」

松崎 「麻雀はどうやったら勝てるかを、音楽は自分にとっての良い音が何かを追求したわけだ。」
滝沢 「そうですね。麻雀は仲間内で負けなくなって、もっと強いヤツはいないのかと。音楽のほうは洋楽ばっかり聴いてて、そのうちギターを持って半日弾いたりと。坊主頭で。」
松崎 「それはそれは、さぞやお似合いだったことでしょう。じゃあ、誰か好きなアーティストっている?」
滝沢 「数え切れない程いますが、強いて挙げるならNIRVANAのカートコバーンかな。自分の思想と近い所が多いと感じます。阿佐田哲也氏のそれとも通ずる所があるかと。」
松崎 「その思想とは具体的に?」
滝沢 「腐敗した社会に対して憂鬱さや苛立ちを抱えて生きる人間の代弁者的思想とでもいいましょうか。」
松崎 「なるほど。では話を戻して、高校時代のことを。」
滝沢 「それまでは勉強しなくても良い成績を取っていたので、調子に乗って偏差値の高い高校に入ったんですけど、そこで完全に落ちこぼれてしまうと。」
松崎 「俺も。まぁ、我々はだいたいそうなるよね。」
滝沢 「もう勉強はいいから、好きなことを好きなだけやろうと思いました。麻雀は仲間内を飛び出し、次のステップへ。」
松崎 「街へ出たと。」
滝沢 「微々たる有り金を握り締めて臨んだ最初の半荘で四暗刻をツモったんですけど、終わる頃には勝ち分は全溶けしてしまいまして。」
松崎 「きっちり洗礼を喰らったと。」
滝沢 「はい。でもそこで日和らずに、再戦を挑みました。ただ強くなりたいという一心でした。」
松崎 「負けず嫌いだね。今でもそうだろうけど。ならば、喧嘩もした?」
滝沢 「たしなむ程度に。決して自分からは行かないですけど、売られたら必ず買ってました。でも弱いから、大概ボロボロになって帰って、その姿を見た母親に泣かれたこともありました。」
松崎 「おふくろさんを泣かせるのは良くないよ。まぁ俺が言っても説得力の欠片もないが。」
滝沢 「間違いない。」
松崎 「さて、高校生ともなれば、みんなそろそろ将来の進路のことを考える時期なんだけど、どんな感じだった?」
滝沢 「軽音部に所属してた時期があって、他校の生徒とバンドを組んだら、これが人気出ちゃって。もしや音楽の道で行けるかも、と思ったりしたけど、やはり自分は麻雀をやって行きたいという気持ちが強くて。それで三者面談の時に、麻雀で生きて行きます、って言ったんですよ。そしたら担任の先生に、何を馬鹿なこと言ってるんだ、って怒られました。」
松崎 「そりゃそう。そんなおまえさんを目の当たりにして、親御さんは何と?」
滝沢 「何を言ってもムダだということを分かっていたらしく、黙ってましたね。おそらく諦められていたかと思われます。」
松崎 「理解ある親御さんで何よりです。」

   

  

上京

松崎 「さて、いよいよ上京と。」
滝沢 「はい。いちおう音楽の専門学校に行くという名目はあったものの、当然のように麻雀漬けと。」
松崎 「そりゃそう。」
滝沢 この頃に行き始めたのが、高田馬場の麻雀大学です。」  
松崎 「あ、あの伝説の。」
滝沢 「オーナーの勝見さんを筆頭に、従業員やお客さんに色々なことを教わりました。」
松崎 「本当に色々ね。こうして新潟生まれの純朴な青年が、みるみる東京の色に染まっていったと。」
滝沢

「様々な人がいて、毎日とても刺激的でした。」

松崎 「さぞかし充実なされていたんでしょうね。」
滝沢 「そして、当時連盟に所属していた店長の加藤勝久さんを通して、荒正義プロを紹介して頂きました。」
松崎 「お、プロへの道が開けたと。」
滝沢 「はい。最初セットに誘われたんですけど、いったいどれだけ負けるんだろうと思ってたら、圧勝してしまいまして。」
松崎 「あんた、スゲェな。」
滝沢 「競輪で例えたら、ただひたすら踏んでただけ。相手の強さを感じながらも、練習よりいいタイムが出て、若さの勝利と。下向いてもがいてたから、ゴールしてもまだ踏んでるみたいな感じで。」
松崎 「若いって素晴らしい。その時が荒さんとの出逢いだったわけね。」
滝沢 「いや、実はそれ以前に、タイトル戦を観戦しに行ったことがあって、会場を見渡した時に一番目を引いたのが荒さんでした。」
松崎 「やっぱり、独特の雰囲気があるからね。」
滝沢 「それで、後ろで観ようと思って近付いたら、サイドテーブルにショートホープを発見したんです。昔お世話になった人に、今の若いヤツは軟弱なのが多いから煙草くらいはガツンとショートホープを吸わないとダメだ、と言われたことがあって、それから煙草を吸う時はショートホープと決めていたので、荒さんがそれを吸っていると知った時は、妙に嬉しかったなぁ。」
松崎 「へぇ〜、タッキーにもそういうのってあるんだね。なんか意外だよ。」
滝沢 「うん。今でもハッキリと憶えてるなぁ。あれ、そういえば松崎さんも…。」
松崎 「(しらじらしくショートホープに火を付けて)じゃあ、荒さんの太鼓判が押されて…。」
滝沢 「日本プロ麻雀連盟のプロ試験を受けました。」
松崎 「麻雀プロ、滝沢和典としての道が始まると。」

  

  

麻雀プロへ

松崎 「プロになってから、何か変わった?」
滝沢 「自分の中で特に強く意識したこととかはないですね。生活自体も劇的に変化したわけでもないし。ただ、セットの回数は増えましたね。荒さんや安藤さん、前原さんとの麻雀は今でも印象深いです。」
松崎 「凄いメンツだね。恐怖心はなかったの?」
滝沢 「自分の根底にあるのは、とにかく強い人と麻雀が打ちたい、という想いなので、その欲望に忠実に従っただけです。  
松崎 「あんた、男前だな。」
   
 

滝沢和典

   
滝沢 「それで、麻雀が終わると美味い店に連れてってもらって、そこで酒や食の味を覚えました。」
松崎 「なんとも羨ましい話だ。どんどん交流も広がっていっただろうし。」
滝沢

「そうですね。麻雀界に限らず、多くの出逢いがありました。中でも、特に強烈な出逢いが二つ。」

松崎 「ほぅ、それは誰?」
滝沢 「弾飛瑠の足木オーナーと作家の白川道さんです。足木さんには本当にお世話になってます。白川さんは有名作家なのに全然気取ってなくて、友達のように接してくれるので、お互いに気を使うことのない不思議な関係です。」
松崎 「たぶん、可愛い息子みたいな感覚なんだろうね。」
滝沢 「嬉しいですね。そういった、温かく柔らかみのある人達との多くの出逢いが、自分を成長させてくれたんだと思います。」

  

  

日常

松崎 「普段って、どんな感じなの?」
滝沢 「どんな、と言われても…。」
松崎 「基本的にのんびりしてるよね。」
滝沢 「落ち着いている、とはよく言われます。  
松崎 「怒ってる姿とか想像できないなぁ。最近何か怒ったことある?」
滝沢 「ん〜、覚えてない。つまらない事は忘れるように脳が出来てるみたいで。  
松崎 「便利だな。じゃあ、ストレスなしと。」
滝沢 「どうやら。  
松崎 「さすがです。麻雀中心の生活は、精神的な余裕が必要不可欠だろうしね。」
滝沢 「そう思います。  
松崎 「麻雀は、いつもセット?」
滝沢 「そうですね。でもたまに、中野の虹の牌や吉祥寺の弾飛瑠に出没します。  
松崎 「同卓を希望される方はそちらの方まで。ところで、麻雀を打つ時間以外にしている趣味みたいなものって何かある?」
滝沢 「だいたい音楽聴いてるかなぁ。あとは本読んだり、最近は結構『ロン2も打ってますよ。そして、就寝前には必ずお酒を。
松崎 「じゃあ、フリーでの同卓が難しい方は『ロン2にて。しかしまぁ、酒好きだよねぇ。ほぼ毎日?」
滝沢 「はい。麻雀で勝った後は実に旨い酒、負けた後はヤケ酒と。どちらにせよ、酒は百薬の長と。
   
 

滝沢和典

   
松崎 「酒の話はそのへんにしといて、食の話を。好きな食べ物は?」
滝沢 「困ったなぁ。松崎さんは?」
松崎 「え?いや、特にないなぁ。その時に食べたいものを食べるだけだなぁ。」
滝沢

「あ、それだ。じゃあ、自分もそれで。」

松崎 「いやいやいや、じゃあとかダメだから。何かないの?」
滝沢 「煮魚。」
松崎 「おっ、渋いねぇ。」
滝沢 「いや、今煮魚が食べたいんですよ。」
松崎 「・・・・・。じゃあ、聞き方を変えよう。人生最後の晩餐は何にする?」
滝沢 「その季節の旬のものを、適量のお酒とともに。」
松崎 「さすがです。」

  

  

これから

松崎 「さて、今後のことについてだけど、何か考えていることは?」
滝沢 「とりあえず、余計な事に左右されず、生涯純粋に麻雀を打って行きたいです。」
松崎 「うん。それが、あなたらしい。最近、新人プロ研修の講師を務めたって聞いたけど、後輩に向けて何か伝えたいことは?」
滝沢 もっと視野というか、麻雀観を拡げてほしい。自分の場合、多くの個性的な先人達から学んだものが今の雀風に随所に活かされています。アナログ的思考は古くさいと評されたとしても、自分にはそれが一番しっくりくるし、それが正しいと思っているし、麻雀の在るべき姿だとも思っているので。だから、それらが自分より後の人達に自然な形で伝わっていけば、と思います。」  
松崎 「いいこと言うねぇ。」
滝沢 麻雀にはいろんなスタイルがあっていいと思うんですけど、それらを頭ごなしに否定するのではなく、一度受け入れて吟味できるような柔軟な思考力をいつまでも持ち続けたいですね。そして、そんな自分に賛同や支持をしてくれる人がいたら、それはとても嬉しいことです。」  
松崎 「そうだね。今後は目標にされる立場だと思うけど、自分自身の目標は?」
滝沢 「なんとなくですが、鳳凰位と十段位は手の届く位置まで来たかなと。  
松崎 「やっぱり、なんといってもG1タイトルは欲しいよね。」
滝沢 そうですね。でも、そういうのは時が来れば自然に獲れるだろうし、獲れないうちは、まだそこまでの実力ではないんだなと考えます。」  
松崎 「ストイックだね。あと、ちょっと気になるのがライバルの存在なんだけど、特に意識してる打ち手って、やっぱりヒサト?」
滝沢 ん〜、特定のライバルっていうのはいないですね。その場面場面で、目の前の敵を倒すだけと。」  
松崎 「我が道を行く、と。」
滝沢 「はい。まぁ、ヒサトあたりとは、これから先もウンザリするほど対戦するでしょうけど、いつまでも真剣勝負を楽しんで行けたらと思います。
松崎 「では最後に、ファンの皆さんへ一言。
滝沢 「麻雀は本当に素晴らしいゲームだと思います。でも、気を抜いた人が一人でもいると全く面白くないので、常に真剣勝負を心掛けて下さい。自分も、常に真剣にやってますので。同卓の際には、よろしくお願いします。
松崎 「お疲れ様。ありがとう。」
滝沢 「こちらこそ。」

   

このインタビューから間もなく、滝沢和典は王位になった。
優勝が決まった瞬間、沸き起こる拍手と歓声の中で表情一つ変えぬ彼の姿を、私は観戦者としてではなく、対戦者として見届けていた。

遥か未来の自分を射抜いているかのような彼の真っ直ぐな瞳を見つめ、この瞬間が彼にとって到達点ではなく、あくまで通過点に過ぎないことを悟った。
その凛々しく美しい彼の在り方は、悔しさに満ちているはずの私を、勝者に対して心から祝福させるに至らしめた。

そういう力が、滝沢和典という男にはある。

自然体を貫く彼のこれからを、その背中を、我々は今後も見続けていくことだろう。

 

ふと、樹の下に目を向けた。

すると、ひときわ眩しい光を放つ一葉があった。

そっと手に取ると、
なぜだか心が安ぐような気がした。

そんな不思議な魅力を持つ才葉は、
これからも、僕らの心の中で、
輝きを失うことなく生き続ける。


たとえ、朽ち果てようとも。

滝沢 和典 ( たきざわ かずのり )
日本プロ麻雀連盟16期生 新潟県出身 12月6日生まれ B型
⇒プロフィール(ロン2)はこちら

(このインタビューは2006年12月現在のものです)

 インタビュアー:松崎良文

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