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プロ雀士インタビュー

今回のプロ雀士 : 荒 正義 (第29期王位)

街に正月の余韻が残る1月の初旬、私は荒正義に会いに行った。待ち合わせに指定されたのは、荒の自宅近くの喫茶店。寡黙な荒によく似合う静かで上品な店だ。
席に着くと最高級のブルーマウンテンを注文する。グルメで知られる荒らしい。「同じ物を」と言いかけたが、思い直して「ブレンドを」と注文する。一流が好む一流品を、駆け出しの私が飲むのはおこがましい・・・

「明けましておめでとうございます。今日はお時間を取らせましてすみません。」
「おめでとう。今年もよろしくね。」
「早速ですが、藤井(理プロ)から預かってきた質問と、私からの質問をいくつかさせていただきます。」
「うん」
「タイトル戦の決勝戦に残って、何日間か間がありますよね?その間はどんな調整をするんですか?」


荒 正義

「まず、コンディション作りだね。具体的には酒の飲みすぎに注意する、前日はよく睡眠をとる、勝負の3時間前に起きること。あと、イメージトレーニング。過去、同じルールで打ったときを思い出して、(ツキ)状態を良し悪し5段階くらいに分けて考える。そうすると、どんなパターンになっても対応できるから。ちなみに、今回の王位戦は全部失敗したよ(笑)これが、一回戦7万点を捲られることにつながったんじゃないかと思ってるよ。」
「メンツは気になりますか?」
「全然関係ないよ。麻雀は自分との戦いだから。特に今回の場合は藤崎(智プロ)以外知らないから考えても意味がないしね。まあ、相手は強ければ強いほどいいね。」
「楽しめるからですか?」
「いや、いい麻雀を打って、いい牌譜が残せるじゃない。」
「例えばどんな打ち手ですか?」
「うーん・・・体調を崩す前の石崎(洋プロ)、A1の沢崎(誠プロ)あたりじゃない?」
「王位戦もマスターズに続いて圧勝でしたね。」
「最終戦までもつれるのは心臓に悪いから、勝つときにはぶっちぎる(笑)でも、超上のクラス同士でやると、わりと一瞬で勝負が決まる気がするよ。だって、(上のクラスになると)一回目で(今日勝つか負けるか)だいたい感じるから。」
「王位戦のとき、ミスしたなっていうのはありましたか?」
「ミスは誰でもするし、しようと思ってするわけじゃない。ポイントポイントでミスをしないことが大事。重要なところでミスするやつはダメだから。それは、打ち手の資質だからね。まあ、たとえミスをしても勝負中にめげないのが大事。戦いの姿勢は次の局に向いてないと・・・」
「荒さんにとって麻雀とは?」
「人生そのもの。ただ、終着駅が近づいていることを体力的に感じている。リミットはあと5年とみているけど、もう少し強くなりたいな・・・」
「強くなる秘訣は?」
「オレは週に30半荘くらい打ち込むんだけど、常にタイトル戦の決勝と思ってやってるよ。あとは、体力作り。考えるのは体力だから。」
「分かりやすくいうと?」
「要するに、体力がなくなると思考能力が低下するってこと。」
「過去の話とか聞かせてください。」
「過去・・・あんまり原稿に書けるようなのないよ(笑)まあ、ごまんと強い打ち手がいたけれど、記憶に残っているのは7人くらい。そして、間違いなく灘さん(プロ連盟会長 灘麻太郎)はそのうちの一人に入るね。あとの6人は表の世界にはいない。プロは強さがすべて。プロはもっと(打牌スピードを)速く、もっと強くならなきゃダメ。」
「僕もがんばります・・・」
「あのね、今麻雀の技は3分の1くらいしか世に出てないの。牌流論、デジタルなんていうのはその中なの。まだ誰も発掘していない3分の2の技の鉱脈があるわけだから、それを開拓して欲しいね。というよりもそれがプロの使命だから。」
「難しいですね・・・」

「若い頃2,3年牌譜をとってだいたい次に上がるのが誰か分かるようになったのね。例えばドラが1ソウで第一打に2ソウ、第二打にダブ東を打ってきて、しかも前回トップの連荘中の親。こんなのは相当上がる確率が高いでしょ?こんなのは3分の1の領域。誰が打って、誰が上がるか、それが何点なのかそこまで分かるようになるのが3分の2の未知の領域だから。」

「若手のプロに対して望むことは?」
「(50歳前後)オレ達の時代は後5年で終わるだろうね。そうなったときに20代、30代の時代になるんだけど・・・はっきりいってオレ達が2,30代の頃よりも麻雀の能力は劣っているね。全体的なレベルは上がってるけど、トップクラスがね。もっと精進して欲しいね。」
「耳が痛いです・・・」
「あとは周りを政治的に蹴落とすのではなく、力で目立てるようになって欲しいね。」
「新年なので今年の抱負を教えてください。」
「酒を控えて、雀技を磨く」
「最後にホームページを見てくださっている麻雀ファンの皆様に一言お願いします。」

「牌(放銃)を恐れるな。なぜなら打つことよりも、打たずして上がりを逃すことの方が罪が深い。
あとは博打に狂うな。博打とケンカは自分の甲斐性でやるもの。まあ、ようするに人の金(借金)や人の力を当てにしてはならないってこと。これは自分の人生哲学かな?増田君も博打は自分の金でやらないとね(笑)」

「おっしゃるとうりです・・・」
「最後に一つ。人に何かをしても見返りを期待しちゃいけないってことかな。期待しなければ腹も立たないし、人間関係も壊れないから。麻雀にもいえるよね。」
「確かに・・・今日は、お忙しいところいろいろなお話を聞かせていただきありがとうございました。」

喫茶店を出ると荒はすぐにタクシーを止めた。「このあとちょっとあるから」そうつぶやいて荒は今日も勝負に向かう。現役を引退するまでは約30年続いている生活を変えることはないであろう。走り去った荒のタクシーを見送り、私は逆方向へと歩を進める。寒い季節、家までは30分ほどかかるのだがどうしても歩きたかった。あまりに高すぎる壁を見てしまった絶望感と興奮が、私の身体を支配した。

荒 正義(あら まさよし)
昭和27年4月12日生 A型
北海道留辺蘂町(るべしべちょう)出身
趣味 囲碁(アマ六段)、料理(魚が好きで、肉は週一回)、映画鑑賞、読書
尊敬する人 父、母、長兄
好きな女優 ジュディオング、宮沢りえ
性格 大胆かつ細心。A型の典型かな?(本人談)
最近の著書 麻雀覇王ブックスЧ喟亀舛遼秧「プロの条件」
(毎日コミュニケーションズ刊)

(上記内容は、2004年1月12日現在のものです。)

 (企画・構成)増田 隆一

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