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プロ雀士コラム

第26期鳳凰戦の軌跡 〜乱心〜

執筆:瀬戸熊 直樹

 

2010年2月26日金曜日。ついにきてしまったかと思った日。
第26期鳳凰位決定戦の初日を迎える。
世間はバンクーバーオリンピック一色となっていた。
前日は、浅田真央とキムヨナのフィギュアスケートのショートプログラムが行われ、日本中がこの話題でいっぱいとなった。

世間一般の人達から見れば、僕の戦いはオリンピックの舞台よりも圧倒的に小さい世界に違いない。
でも僕をはじめ、この道で生きて行くと決めた人間にとっては、その舞台は戦場であると同時に、誰もがあこがれる夢の舞台なのだ。
3日間の死闘が終れば、その後には歓喜か失望しかない。

5年前は何故か自信に満ち溢れていた。
「俺が勝つに決まっている」そう信じていた。自分の全てを卓上に開放してきた。
しかし・・・・・敗れた。

敗戦後、眠れない日々が続いた。悔しくて、情けなくて、麻雀をやめたいとさえ思った。
挫折を知ってしまった自分の心をとり戻すにはリベンジしかない。
だが、またあの気持ちを味わうかもしれないという恐怖心の方が勝った。
特に今回は、奇跡の四暗刻で決勝に残っている。その事がさらに僕に余計なプレッシャーとなった。

プロリーグ最終節が終わってから多くの人に、
「あの劇的な残り方は、絶対瀬戸熊さんが獲る追い風になっていますよね」という言葉を多くかけられていた。

初日の会場は有楽町にある「錦江荘」。僕が連盟に入った当初からプロリーグの会場として使われている会場だった。
しかし、3階、4階とあるフロアの中で、今日の会場は4階。実は4階ではあまりいい想い出がない。嫌な予感がした。
数時間後、この嫌な予感は的中してしまう。

会場に向かう電車の中で、この3日間の基本的戦略と、やってはいけない禁止事項を何度も心の中で復唱する。(前々回コラムとインタビュー参照)
会場に到着。前日はかなり睡眠時間をとったつもりだが、この時、体中がけだるさを感じていた。
緊張感がマックスになり、早く勝負に入りたかった。立会人の藤原プロの説明がやけに長く感じられた。
この時思った事はただひとつ。

「3日間、全18回戦が終った時、倒れてもいい。それぐらい全力を出し切ろう。長かった道のりを終らせよう」と。

遂に、第26期鳳凰位決定戦が開始された。



1回戦、東1局8巡目、親の板川プロからリーチが入る。

僕の手牌は上図のようになっていた。
この時は、うまくをトイツ落としている間に、と引き入れればと考えていた。
しかし、そう上手く行くはずもなく、ベタオリに入る。そして13巡目。

板川プロのマチ、を5枚上手く使い切った前原プロから追いかけリーチが入るが流局。
開かれた前原、板川両プロの手牌を見て、前原プロの勝負の入り方への凄さに改めて武者震いがする。

「前原プロはしっかり戦っている。それなのに俺は何をやっているんだ」と。

3日間、18回戦の戦いの入りは難しい。トップギアに入れても、ローギアで行っても道中は長いからどちらでもいいと思う。
どちらにしても、攻める時間も耐える時間も交互にくる。
ただ、耐える時間をヒヨる時間にしてはいけないし、攻める時間を自分で断ち切ってしまってもいけない。

僕の入りは4者の中で3番目か4番目の入りである。
このような気持ちの入り方では結果は見えている。
オーラスまで、3,900点が最高アガリ点で進むも、入り方と同様に、前原38,000、板川30,200、柴田24,900、瀬戸熊26,900となっていた。

完全に前原プロのペースになりつつある。
前原プロ以外の3人が、会話もしてないのに同じ気持ちになっているはずである。
恐らく僕を含め3人がこう思っていたはずだ。「この半荘はここで切ろう」

しかし、オーラス。

を引けば出ないはずのが出てしまう。板川プロにしか分かってないが、さらに不穏な空気が流れる。

「ヤバイ、次あたり本手が入るはずだ」

そして、オーラス1本場、恐れていた場面がおとずれる。「リーチ」の発声。もちろん声の主は前原プロ。

もう、何度となく経験した場面。100%本手のリーチである。「誰かいけるか?僕はステイだ」 
16巡目、高目ピンフ三色ドラドラをテンパイした柴田プロから、前原プロの高目となる牌がこぼれ出る。

前原プロ以外の3人は、こうなる事をオーラスの1,500点のアガリを見た時から解っていた。
しかし、その解りきった結果を変える事が出来ない。これが僕の目指す山頂の高さなのだ。
次局、ようやく柴田プロが2,000点を僕からアガリ、1回戦が終了する。

1回戦成績 
前原+33,4P  板川▲2,3P  瀬戸熊▲8,7P  柴田▲22,4P

短い2回戦までの小休止の中、猛省をしていた。
「何とかしないと、今日で全てが終ってしまう」と。


2回戦、東1局またもや5,200点の失点からスタート。


このは柴田プロがテンパイした後に引いた牌。
柴田プロの開けられた手牌を見て、僕の高目のが4枚もあるのを確認。
折れてしまいそうな弱い気持ちを封じ込めるのに必死であった。
「今日は耐えよう。明日、明後日の為に」何度も脳内に指令を出す。

東2局、たまたまと言える3,900点を前原プロからアガリ親番を迎える。
東3局、親である僕の配牌。 

 ドラ

絶対に逃せない配牌が来た。第一打、選んだ牌は
初日が終えた後、何人かに聞かれた。
「3倍満もありましたねあの手牌」
「ええ、そうですね」と答えはしたが、実際は何を言われているのか、呆然としてまったく分かっていない自分がいた。

牌譜を見てもらえれば解るが、第一打をとして、次巡ツモで打と出来たら、

 ツモ

この3倍満となる可能性もあったという事である。
ただ、ピンズの部分をほぐすのはちょっと無理っぽいので、なかなか3倍満の最終形を捕らえるのは厳しいと思うが、
問題は初日終了後に、この質問に「???」となっていた事である。
それほどショックを受けた初日だったのだ。そのショックとなる出来事は4回戦に起こるのである。

とにもかくにも、この6,000点オールがきいて、初戦トップの前原プロを大きく沈めて待望のトップを取る。

2回戦終了時 
瀬戸熊+19,4P  板川+4,9P  前原▲3,8P  柴田▲20,5P



3回戦、開始前、意味もなくホッとしている。何と言う愚か者なのであろう。
そのオーラスを迎えて点棒は、前原20,200点、板川31,600点、瀬戸熊24,300点、柴田43,900点となっていた。
まあ、3着致し方なしと思っていた。本当にあまい。

ここから前原プロの怒涛の連荘で、終ってみれば、前原+22,9P、柴田+14,2P、板川▲16,5P、瀬戸熊▲20,6Pのラス。
僕は何をやっているのだろう。これが鳳凰戦だと言う自覚がないのだろうか。

3回戦終了時 
前原+19,1P 瀬戸熊▲1,2P 柴田▲6,3P 板川▲11,6P

まだまだ数字を全く気にする必要のない段階。しかし、前原プロが1人プラスなのが気になって仕方なかった。
この時点で今日の負けは決まっていたのかもしれない。
気持ちが内側に入りたがっている。



4回戦が始まった。
僕は毎日、三行程の麻雀日記をつけている。その日の印象に残った手牌を書いたり、どういう打牌でどう言う結果になったかなどだ。
この日の日記にはこうある。
「初日、カン4オリ打ちしてから、ややおかしくなった。全体的に調子が悪い中、踏んばったかな。
オリる時は中途半端はやめろ!明日は今日の屈辱を晴らせ」

その場面は東3局。

板川プロのリーチを受けて、打とすれば--のテンパイ。
しかし、あまりにも薄い--。そこで、単なるスジを頼りに打とするとそれに「ロン」の声。

失点以上に己の覚悟のなさに嫌気がさす一打。戦略の1つに、板川プロのリーチには注意する事があった。
完全に忘れている。この一打から、僕のこの日は「ステイ」の声しか聞こえなくなってゆく。

4回戦成績 
板川+18,0P  前原+10,4P  柴田▲7,0P  瀬戸熊▲21,4P

4回戦終了時 
前原+29,5P  板川+6,4P  柴田▲13,3P  瀬戸熊▲22,6P

5回戦成績 
柴田+33,9P  板川▲2,0P  瀬戸熊▲10,5P  前原▲21,4P

5回戦終了時 
柴田+20,6P  前原+8,1P  板川▲4,4P  瀬戸熊▲33,1P



6回戦のオーラスも、点棒は、前原29,500点、柴田32,700点、瀬戸熊24,400点、板川33,400点となっていた。
オーラスの親番は、またしても前原プロ。嫌な予感がする。そして嫌な予感だけは必ず当たっていた初日。
案の定、前原プロに1,500点放銃。1人沈みとなり、1本場。

僥倖の8,000点出アガり。奈落の底から、光がちょっとだけ見えた気持ちであった。

6回戦成績 
板川+11,4P  柴田+5,7P  瀬戸熊+2,2P  前原▲19,3P

6回戦終了時 
柴田+26,3P  板川+15,8P  前原▲11,2P  瀬戸熊▲30,9P


かくして、初日が終了した。
自分自身への怒りを押し殺していた。何度も何度も自分に言い聞かせた。
「お前は、こんな情けない麻雀を打つ為に、何十年も費やしてきたのか? あの悔し涙を忘れたのか? 
死ぬ覚悟でやれないのか? 腹をくくれないのか?」

この日が終って決めた事は2つ。
寝れるだけ寝る事。2日目の初戦は玉砕覚悟でトップかラスかの麻雀を打つ事。

家に戻りテレビをつけると、銀メダルになってしまった浅田真央が涙を流しながらインタビューを受けていた。
まるで5年前の自分とかぶるかのように。
そして、金メダルを獲ったキムヨナのセリフの一言が耳にこびり付いた。
「負けた時の気持ちも作っていました」と。

この言葉が2日目を終えた僕の気持ち作りへつながって行く事となる。
悔しさと希望を胸に夜は更けてゆく。

以下、第26期鳳凰戦2日目  〜昇華〜 へ続く。






執筆:瀬戸熊 直樹

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