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プロ雀士コラム

第26期鳳凰戦の軌跡 〜序章〜

執筆:瀬戸熊 直樹

 

皆さんこんにちは。
編集部のご厚意により、今回より次回の鳳凰位決定戦までの間、数回に分けて第26期鳳凰戦の時の様々な心境を書かせて頂く事となりました。
平凡な人間の極限の緊張感や達成感を、鳳凰戦という多くの先輩達によって築き上げられてきた特別なステージをバックに、
まだその領域を未経験の人達やファンの方々に少しでも味わって頂ければなと想い筆をとりました。

僕が何を感じ、戦ったかを正直にありのままに書いていきたいと思います。
つたない文章ではありますが、お付き合いくださいませ。

「山頂の上に山あり」荒プロがよく色紙に書かれる言葉です。
ほんの数ヶ月前までは、言わんとする所はわかっていても、実体験としては未知の世界でした。
山頂にようやく登った今、改めて次に目指す山の高さ、そして大きさにとまどうばかりであります。では、本編の始まり始まり。


今から5年前の冬、山の頂が目の前にあった。
第22期鳳凰位決定戦の全18回戦の17回戦を終え、トータルトップ。2着とは35,6P差。
連盟Aルールのポイント制をよく知っている方なら分かると思うのだが、35,6Pのリードと言うのは、半荘1回勝負なら、10回中8〜9回は逃げ切れる数字である。

しかし、僕は逃げ切れなかった。と言うより、まさに自分の実力不足を露呈する結果となった。
当時の連盟新聞には「瀬戸熊は大魚を逸す」と大きな見出しがおどった。
運命のいたずらか、この期の決定戦の観戦記者は前原プロである。
おそらく、前原プロの目には、当時の僕は青二才に映った事であろう。
その年を最後に、リーグ戦は5位、8位、5位と決定戦を外から見る立場となった。

今だから言えるのだが、第22期鳳凰位決定戦、負けて良かったと思う。
「良かった」と言うのは変だが、あの負けがあるおかげで、今日の僕があるのも紛れもない事実である。
泣かず飛ばずのりーグ戦。第26期のリーグ戦も、第9節を終った時点では、また外から決定戦をみるはずだった・・・・。

2010年2月6日、晴れ。A汽蝓璽虻能節。
第25期鳳凰位は前原雄大プロ。そして、ここまでのポイントは、

1位 柴田弘幸  +186,4P
2位 板川和俊  +149,6P
3位 右田勇一郎 +103,3P
4位 石渡正志   +80,5P
5位 荒 正義   +42,4P
6位 老月貴紀   +32,8P
7位 瀬戸熊直樹  +32,1P

こうなっていた。ボーダーラインとなる3位の右田プロとのポイント差は、71,2P。
同卓とは言え、正直8割いや9割無理だなと思っていた。なぜなら、たとえ、右田プロを差しても、別卓の石渡プロもいる。
最終節に4連勝すればとか言う程、A1リーグはあまくないし、僕自身も経験で、いかにこの並びが可能性ゼロに近いかを知っている。

当時の自身のブログを読み返すと、
「雲ひとつない青空のもと我思う、ホント駄目人間だけど、麻雀だけは一生懸命やってきました。今日は卓上に全てを捧げてきます。」とある。
かなりカラ元気で無理に自分自身を鼓舞しているのがわかる。

この年、僕は荒プロ、森山プロ、前原プロに本当に色々と教えて頂いた。
前原プロが4年前、弱い僕を目の当たりにした時から、いかに成長したかを、この年の鳳凰位、十段位、グランプリと3冠を達成した最強の男に、
「ようやくここまでになりました」と恩返しの意味も込めて、最高のステージで披露したいと強く思った1年だった。

しかし、最終節を迎えたその日、「また1年頑張らないとなぁ」と現実的に考えている自分がそこにいた。
そして、一方でこう思う自分もいた。
「決定戦に残った場合、負けた時のあのエネルギーの浪費に、今の自分は耐えらるのだろうか。
今の実力なら、もう少しステップアップしてから挑戦した方が良いのではないだろうか」 
2つの想いが交錯する中、「絶対残ってやる」と言う気持ちは、微塵もなかったのである。
もちろん、後輩達には「頑張って残るよ」と言っていたのだが・・・・。

会場は、最終節独特の空気が流れていた。勝者と敗者が必ず決まる日。1年に何度も経験する勝ちと負け。
僕はそういう世界に足を踏み込んだのだと強く実感させられる日。
こういう日がある自分を幸せだと思う反面、もっと穏やかに生きる事の方がいいのではないだろうかと常に思う自分がいるのも事実である。

僕の卓は、「柴田プロ現1位+186,4P」「右田プロ現3位+103,3P」「荒プロ現5位+42,4P」
そして、「瀬戸熊、現7位+32,1P」となっていた。

1回戦、右田プロの焦りを少し感じた。僕も5年前、4位に30P離して最終節を迎えたことがある。
だから気持ちは手に取るように分かった。

僥倖の12,000を右田プロからアガる。右田プロは苦しんでいる。
しかし、彼は追う立場の僕と荒プロを半荘4回の中で、たった1回だけ振り切ればいい。
これから苦しむのは追う立場の人間だ。右田プロをラスにして1回戦をトップで終える。

そして、別卓の石渡プロもラスで1回戦を終えトータル、

右田  現3位 +80,6P
瀬戸熊 現4位 +67,3P
石渡  現5位 +57,5P  

3者が残り1席をかけて、残り半荘3回となった。
まだこの時、僕は平常心だった。そして右田プロのつらい気持ちもしっかり捉えていた。
少しずつ、僕の中に眠る闘争心に火が付き始めていた。

2回戦、しっかり攻めてトップを取った。
右田プロも南場に入って腹をくくってきたのが分かった。そして浮きの2着にスベリ込む。
別卓の石渡プロも浮きをキープしたようだ。

2回戦終了時
右田  現2位 +87,9P
瀬戸熊 現3位 +80,7P
石渡  現4位 +63,8P

ここで、初めて勝ちを意識してしまう。
「勝つと思うな、思えば負けよ」と言う言葉があるように、変な意識は勝負においての最大の敵である。 
このあたりの自己の心をコントロールする事が、麻雀において占めるウエイトは非常に高い。
高ぶる心をおさめるのも忘れ3回戦に入ってしまった。弱い自分が顔を出し始める。
案の定、右田プロの方が卓に集中していた。3回戦が終わりを告げた。
あの負けた時に味わう徒労感が、肌から吹き出る感覚がいつもに増して襲ってきた。

右田+19,1P、瀬戸熊▲15,7P、別卓の石渡プロも当たり前のように+4,1P。

3回戦終了時 
右田  現3位 +107,0P
石渡  現4位 +68,9P
瀬戸熊 現5位 +65,0P  

右田プロとの点差は42,0P。僕の第26期鳳凰戦はここで終幕となるはずだった。
長い競技生活、屈辱の逆転負けも腐るほど経験してきたけど、奇跡の逆転もそれに負けないぐらい演じてきた。
しかし、さすがに今回は、明らかに自己の心をコントロールできなかった分、「麻雀の女神」も許してくれはしないだろう。
多くの観戦者に失礼のないよう、ベストを尽くす事だけを心に秘めて卓に着いた。

4回戦東1局、親番。右田プロが僕に5,800を放銃。心がざわめく。
直後、右田プロが七対子ドラドラをツモアガリ、希望の灯が消える。
その後、僕もアガるが、右田プロもアガり返し局は進む。

南3局、親・右田プロ。持ち点38,000点。
西家の僕は40,000点持ちのトップ目。42Pの差を残り実質2局で逆転しなければならない。
右田プロの浮きをなくし、特大の1人浮きトップ。心の中の思考としては、「最低3,000・6,000」か「8,000以上の直撃」をシミュレーションしていた。
心の片すみでは、「麻雀マンガじゃあるまいし」と客観的な自分もいた。

運命の配牌。

 ドラ

第一ツモに手を伸ばす。ツモ「」何かが弾けた。忘れかけていた感覚が蘇ってきた。
ある最終形を目指し、「無心」となっていく。
を暗カンする。リンシャン牌は「」。その後を2枚引く。また暗カン。

 暗カン 暗カン

は前巡に切っていた。退路を完全に断つ為に。

12巡目、ツモってきた牌は。「リーチ」。

 暗カン 暗カン  リーチ

「絶対ツモりあげる」と思っていたと皆さんは思うでしょうが、僕自身は全然違う事を思っていた。
「よく、こう言った、(何とか形づくりしましたって)手牌は成就しないんだよなぁ。
この手牌が組めてしまった以上、アガれなかったら余計くやしいんだろうな」と考えていた。

今までになかった感情があふれ出ていた。
不思議な事に、余計「何とかアガりたい」「おしかったで終らせたくない」の気持ちへと繋がっていったのである。

数巡後、今まで聞いた事のないギャラリーの歓声に包まれていた。
何がこの手牌を成就させてくれたのか今の僕には解らない。
そして、1つだけこの時頭に浮かんだ事が、「プロリーグで初めての役満だな、これ」とふと思ったのであった。
オーラスが終わり、別卓の結果にさらに驚かされる事となる。
右田プロを微差で差していると、石渡プロをまくれなかったのである。

こうして僕は再びあの場所へ帰ってきた。ついに、最強の男への挑戦権を得たのである
終了後、運営席で森山プロに軽く頭をこづかれた。その瞬間、僕のもろい涙線がゆるみだしたので、トイレに逃げ込んだのは内緒である。

確かに、あの日、僕は勝者の側に廻った。しかし、その喜びが大きければ大きいほど、次の敗戦が与えるダメージが大きい事も経験済みである。
この時、喜ぶのは1日だけにしようと心に誓ったのだった。


以下、鳳凰位決定戦初日、〜乱心〜に続く。






執筆:瀬戸熊 直樹

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