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プロ雀士コラム

まごころ

 


『お父さん、神様は本当にいるの?』

十年ほど前、久方ぶりに出あった娘は私にそう尋ねた。
私は無神論者である。
神は、いてもいいしいなくてもいいと思っている。
私は娘に本当の気持ちを告げようと思った。
神様なんていないんだよと。
娘の真剣な眼差しを見つめた。
何か切ないものを抱えているように私の目に映った。

『たぶん神様はいると思う』

私はまた嘘をついた。
そして瞳をとじた。




プロ連盟ができた当初、メインタイトル戦は二つあった。
一つは鳳凰戦であり、もうひとつは牌将戦で、これは一日に十回戦戦うハードなものだった。
そしてそのタイトル戦の数時間前に研修会が行われていた。
研修生は私達新人であり、研修生教育係は森山茂和さんだった。
当時敬愛してやまない瀬田一輝さんに尋ねた。

『対局の前に研修会を催すことは森山さんにとってもエネルギーの消耗のように感じるし森山さんの対局にも影響を及ぼすように思えてならないんです』

瀬田さんはこたえた。

『それはね今のあなたには言ってもわからないだろうけど森山くんが連盟のまごころだということなんだよ。
いつかわかる時がくるからその時まで覚えておけばいい。そしてまごころというものは受け継ぎ伝えていくものだということも覚えていてほしい。』

愚かだった私に瀬田さんは丁寧に答えてくれた。




昨年の9月から10月にかけて何日もの眠れない切ない時を過ごした。
毎夜のように森山さんと電話で話した。
その時に忘れられない言葉がひとつある。

『前ちゃん、人は必ず生まれたからには死ぬ。例えば死ぬ時に連盟がよくなるなと思えれば俺は安心して死ねる。』

森山茂和さんとはそういう人なのである。




十段戦当日の朝8時に、後輩である石田純平くんからモーニングコールがあった。

『おはようございます10時には会場である新橋に到着してます。実はいよいよ今日娘が生まれそうなんです。』

『まあわかったよ。でも対局開始は12時なんだよ、そんなに早く行ってどうするの?』

『いや理由はありません僕がそうしたいだけです』




新橋に向かう途中、森山さんからメールが届いた。

『前ちゃんの敵は自分自身です。焦らず自分の麻雀を貫いて下さい。』

私は勇気づけられた。




十段戦決勝最終戦、トータル首位を走る私が卓についた時、荒正義さんは多くのギャラリーの前で叱るような口調で言った。

『姿勢がわるい!麻雀は背骨で打ちなさい。』

『はい。』

これも荒さんのまごころなんだろう。





十段戦決勝最終戦オーラスをむかえ、私はトータル順位が3着まで落ち込んでいた。
ギャラリーの中ですすり泣く声が聞こえた。
北野由実さんの声だったと思う。
私は気息を整えるべくサイドテーブルにあったミネラルウォーターに手を伸ばした。
その時、真っ赤に目を潤ませていた北條恵美さんの視線を見つけた。
その脇にいる観戦記者である滝沢和典くんと視線が重なった。
滝沢くんはその視線をそっと外した。
真後ろにいるはずの石田くんとヒサトの視線を見る勇気を私は持っていなかった。


配牌を取っている際中、恩師であり私の命名者である伊集院静さんの言葉が私の中でフラッシュバックした。

『雄大、奇跡というものは信じるものにしか訪れないものなんだよ。』

私は願うように、祈るような気持ちで配牌を取り終えた。

南四局一本場 ドラ



五巡目に嵌は埋まり



私は迷わず打

次巡ツモ

『リーチ!』

数巡後、私はをツモあがった。



すべてが終わり優勝者としての挨拶をさせてもらった。

『私一人の力で優勝できたと思っていません。応援してくださった皆様のエネルギーのおかげだと思っています。一緒に戦って下さった対局者の皆様に感謝しています。
そしてこの会場にはいらっしゃいませんが森山茂和さんのおかげだと思っています。そしてこれから連盟を背負っていくのはここにいる若い人たちです。どうぞ応援していって下さい。』

あとは何を言ったか私には記憶はない。
覚えているのはいつもと違い、やたらはしゃいでいるヒサトの顔と目を赤く充血させた石田純平くんと何もしゃべらず静かに微笑んでいるタッキーくんの顔であり鼻水までたらしている南里はるみさんの顔だった。




その晩、私はみんなに何度も尋ねた。
『なぜあそこにはいたんだろう?』

『神様がいたんじゃない?』

みんな口を揃えたようにそう言った。



明け方、巣に戻ると先ほどまで一緒だったタッキーくんから優勝祝いのメールが届いた。
私は返信をした。

『今回の十段戦でわかったことが一つだけある。いかに私は麻雀が弱いかということだけである。』



今度娘に逢ったら告げよう。
 
間違いなく神様はいるよ――







文責:前原 雄大 (執筆:2007年08月29日)

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